日本 プロライフ ムーブメント

荻野久作博士(世界の荻野)

日本の医学史を飾る偉人の名前を挙げるとしたら、小学生でも野口英世、北里柴三郎などの名前を言うことができる。 しかし視点を海外に置き、日本人の医師の中で最も有名な医師は誰かと外人に訊けば、 それは新潟に住んでいた一介の勤務医、荻野久作先生が間違いなく第一位になるであろう。 

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生きる意味

私たちは何のために生きるのか。「病院のため、患者のため、人々の平和のため」これらは試験では模範解答であろうがウソである。「欲望のため」この答えは正直で、そのように思い込めれば、それもよいだろう。しかし好きにはなれない。「愛する人のため」これは正しいが、愛する人が死んだら、何のために生きているのか分からなくなる。 

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成人T細胞白血病(昭和51年)

昭和47年頃から、熊本大学の高月清教授は成人に特有な新しい型の白血病を何例か経験していた。 白血病は白血球がガン化する病気である。高月清が経験した白血病は、白血球増加に加え、 リンパ球細胞の核に花びらのような切れ込みがみられる点が他の白血病と違っていた。さらにこの奇妙な白血病患者は九州 、特に鹿児島出身者に多いという特徴があった。昭和52年、高月清はこの白血病を医学雑誌Bloodに記載、 成人T細胞白血病(ATL:AdultT-cellLeukemia)という新しい疾患概念を提唱した。 

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心身障者安楽死事件(昭和42年)

昭和42年8月2日、生まれてから27年間寝たきりの重症心身障者である息子を医師である父親が思いあまってエーテルをかがして絞殺する事件が起きた。東京都千代田区に住む開業医・森川宗男は結婚してすぐに子どもが生まれたが、息子の達夫さんは脳水腫症で手足を動かすことができず精神薄弱で寝たきりの状態であった。母親は下の世話から食事の世話まで27年間つきっきりの介護を行い、自分の時間のない生活を送っていた。 

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コインロッカーベビー(昭和48年

アメリカで生まれたコインロッカーは、昭和39年の東海道新幹線の開通に合わせるかのように日本にも登場し、以後、大阪万博開催などの旅行ブームとともに全国の駅にコインロッカーは増えていった。それまでは手荷物預かり所で住所や氏名を書かなければいけなかったが、匿名性と便利性がうけ、昭和48年には全国のコインロッカーの数は18万個に増えていった。

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恍惚の人(昭和47年)

恍惚の人とは有吉佐和子の小説「恍惚の人」から生まれた言葉で、恍惚の人はすなわちボケ老人を意味していた。小説「恍惚の人」が昭和47年6月に出版されると大きな社会的反響をよび140万部を売り上げるベストセラーとなった。小説の題材としては暗く深刻になりがちなボケ老人を恍惚の人というネーミングを用い、全体的に明るくユーモアを含んだタッチで書かれていた。 

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どうする医療と介護(序文)

私たちはたとえ元気でも、年齢を重ねれば、いずれ病気になり介護を受けます。若者は老人になり、震災や事故で障害者になる可能性があります。このような運命を背負った私たちにとって、生命の必要経費ともいうべき医療介護の惨状をこのまま放置していてよいのでしょうか。 

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幸福と豊かさを考える責任

平成18年9月、英国の社会心理学者エードリアン・ホワイトが、世界各国の国民の幸福度の順位を示す「世界幸福地図」を作成しまた。178ヶ国を調査対象として、各国の基礎データや国際機関の報告書を調べ、8万人から聞き取り調査を行い、幸福度を調べたのです。その結果、1位はデンマーク、2位はスイス、3位はオーストリア、米国は23位、英国は41位、中国は82位、日本は90位、韓国は102位、インド125位、ロシア167位でした。アジアではブータンが8位、マレーシアが17位、台湾は68位、香港は63位、シンガポールは53位で幸福度は日本より高かったのです。つまり日本は幸福度後進国と言えるのです。 

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優生保護法の成立(昭和23年)

昭和23年7月13日、優生保護法が公布され、妊娠中絶の条件が緩和された。当時の優生保護法の目的は中絶によって終戦後の人口増加を抑制することであり、さらに重要なことは、危険なヤミ堕胎を減らし妊婦の健康を守ることであった。それまでの国民優生法(昭和15年)は、富国強兵政策をすすめるため兵士となる子どもを「生めよ増やせよ」の時代の法律で、妊娠した女性は国家によって出産が義務づけられていた。女性は国のため、あるいは家系制度の存続のため子どもを産むのが当然とされていた。

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美徳の倫理を中絶の問題に当てはめる

道徳論では、倫理的な人生を送ることの重要性は、人がその言動において、良くも悪くも成り得るという事実にあると言われている。すなわち、人の言動のひとつひとつ、つまりは人間要素の意図的な選択から生じる個々の言動が人の種類、言い換えると、個人が持つ人格を決定するのである。したがって、個人が持つ人格は、その人の意思決定に影響する。この見解に同意する人にとって、道徳的要素の観点から行動の正否を判断する上で最も重要になるのが、「このような言動により、自分はどんな人になるのか?」という疑問である。

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愛への挑戦

回勅:“フマネ・ヴィテ”は愛への挑戦 愛への挑戦 回勅:“フマネ・ヴィテ”に向けられた敵意が余りにも大きいので、人工避妊が初代教会のころから論争点でなったと初めて聞いた人はあっけにとられるほどです。一九三0年八月十四日、英国国教会は重大な理由があれば夫婦が避妊することは許されると決定したのですが、キリスト教諸派はそれまで避妊に関して一致して反対していたのです。教皇ピオ十一世は同年十二月三十一日、回勅『カスティ・コンヌビイ』で、避妊は本質的に悪であるというカトリック教会の伝統的教えを確認なさいました。

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避妊と中絶の関係

中絶反対運動に関わっている人々の中には避妊と中絶を結びつけて考えたがらない人々が多くいます。そのような人々は、これらは別個の非常に異なった行為、つまりいのちが生まれるのを妨げる避妊と、すでに始まってしまったいのちを奪い取る中絶は全く違ったものだと主張しています。

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やさしく殺して:無意味な延命治療の革命

私たちにはサービスを拒否する権利があります。よくレストランや小売店でこういう表示を目にします。しかし現在、患者のいのちに質的に治療費をかけるに値するものが欠けていると医者が判断するような場合、その患者に対して、延命治療を望まれても医者にノーと言える権利を与える「ヒュータイルケア(無意味な延命治療)」のガイドラインを支持して、病院の入り口にそれとなくそのような意味を表す掲示物を掲げている病院がいくつかあります。 

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幹細胞研究に関して焦点をぼかすこと

公判弁護士の間では古くから次のような格言があります。それは、「もし事実を論じることができない場合は、法律を論じよ。もし事実も法律も論じることができない時は、煙にまいて焦点をぼかせ。」というものです。この諺は政治的な議論にも同様にあてはまります。 

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慈善事業の勇気ある新世界:与える側が、人の生死を決定することになるのだろうか?

20世紀初頭の30年あまりの間、アメリカや多くの西欧諸国では優生学運動が盛んであった。『生まれながらに優れた』という意味を持つこの優生学の推進論者は、選択的生殖技術を用いれば、肉体的、精神的、文化的、そして社会的健全性を改善し、その結果、精神薄弱や癲癇、犯罪行為、精神病、アルコール中毒症、貧困状態を社会から一切なくす事ができると信じていた。

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食の砂漠」高齢者のむ

人口減少による過疎化と高齢化に直面する我が国の地方においても、生活インフラの弱体化問題は対岸の火事ではない。 2010-2020年において、人口の減少率は人口が少ない地域ほど高く、 過疎と高齢化は一緒に進むものであることがわかっている。日本国内でも、 交通手段を持たないお年寄りらが生鮮食品を食べられなくなる「フードデザート(食の砂漠)」が広がっているようだ。 大型店の郊外進出や車社会化で、中心市街地の商店が廃業していることが、「買い物難民」の増加を深刻化させている。 

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