最新の統計で、農業全体の就労者の平均年齢は69.2歳(2024年)だと言います。
これだけでもその高齢化に驚きますが、農産物販売額1位のお米で調べると、稲作を主業とする個人農家では実に86.5%が60歳以上、3人に2人が70歳以上!です。
私も自分でやっている事業で、相当量のお米を買っていることもあり、農業に従事している人たちと話すことが非常に多いのですが、つくづく感じることがあります。
それは、農家の人たちが実年齢ほど歳をとったように見えないこと。
80歳を超えて、自分でトラクターやコンバインを動かして、という人など珍しくもないですが、そういったみなさんが、どう見ても60代、せいぜい70代くらいにしか見えないことが多いのです。
で、もうひとつ感じるのは、多くの人たちがめだった病気をせず、陽気に見えることが多いということ。
スウェーデン人女性を20年間追跡した研究があります。
参加者を日光に当たる機会がほとんどない群、中程度の群、多い群に分けて追跡したとこと、屋外で過ごす時間が多い女性ほど、心血管疾患やがんなどを含む総死亡率が低かったという結果になったものです。その研究で興味深いのは、日光をよく浴びる喫煙者と、日光をあまり浴びない非喫煙者の死亡率が同程度だったこと。これは観察研究といって、参加者個々の運動量や生活習慣とのばらつきを調整した研究ではないため、日光に当たらないと病気になりやすいという因果関係を証明したものではありませんが、それでも、私が医師として見ている「毎日積極的に日光に当たっている人たちの様子」を考えると、十分納得できるものです。
こうした「日光」や日光浴の話を持ちだすと、必ずといっていいほど「皮膚がん」になるのではないかと尋ねられます。私は皮膚科医ではありませんが、それでもこれまで皮膚がんの末期の方を何人も看取ってきました。その人たちの全員が、ほとんど室内で仕事をしてきた人たちであったことに違和感を感じていたのと、農家や漁業、林業などはるかに日光に当たっている人たちで、皮膚がんの話を個人的に聴いたことはなかったのです。
イギリスの研究者(Richard Wellerら)によるUK Biobankを利用した数十万人規模のデータを検証した研究では、紫外線や日光への暴露が多い人ほど、総死亡や皮膚がん以外のがん死亡が少ない傾向を示しただけでなく、皮膚がんの代表である悪性黒色腫の増加は見られなかったという結果が示されています。
認知症についていろいろと調べていくうちに、ここでもまた日光の話がしきりに挙げられていることに気づきました。
太陽光とミトコンドリアの関係についてです。
難しいことは必ずしも知らなくても構わないと想います。
「ミトコンドリア」とは、身体に取り込んだ燃料(糖や脂肪)と酸素を使い、全身で使えるATPというエネルギーを生み出す装置のこと。電気というエネルギーで言えば、発電所にあたります。
このミトコンドリアという発電所の出力アップのレバーをいっぱいに上げるのが、太陽光に含まれる赤色光や近赤外線なのです。しかも、その出力アップを図るのに要する時間は15分程度。近赤外線は衣服も簡単に通るので、肌を露出する必要もありません。
私は、自分でこのミトコンドリアの出力レバーを上げるときの様子を、宇宙戦艦ヤマトの波動砲の発射用意の沖田艦長になったつもりでイメージしています。
…と、いろいろ話してきましたが、私がもっとも感動したのは、ここからなのです。
(すみません。いつも話が長いとコメントをいただくことが多くて。)
朝夕の太陽は、光のなかでも波長の長い青系の光や紫外光は大気を通過しにくく、特に赤色光、近赤外線が能率よく地上に届きます。曇った日でも、それなりの量の太陽光が私たちのもとに届いています。私がこれまで、(自分の体感をもっていいと感じていたことが大きかったとはいえ、)朝は早起きして朝日に当たろう、朝の太陽を眼で見ようと進めていたことが間違いではなかったのかなとうれしく感じる毎日です。
ちなみに、現代人の多くが(米国やイギリスでは92-93%)一日のほとんどを室内で過ごしています。一方で、農業を手伝うとわかりますが、もっとも作業がはかどるのは早朝から午前中の早い時間です(それ以降は暑くなるので)。面白い話をもうひとつ加えておくと、「Green Heart Study」でしょうか。
簡単に説明すると、「緑が豊かな場所で過ごすほど病気になりにくくなる可能性がある」というもの。ケンタッキー州ルイビルで行われた研究では、都市部に約8,000本の樹木を植えた後、住民の高感度CRP(心筋梗塞やがん、糖尿病、自己免疫疾患などの起こりやすさと関連づけられる慢性炎症の勢いを評価する数字)が低下したという結果が出ています。
話をまとめます。
① 人間は加齢とともにミトコンドリア機能が低下し、特にミトコンドリアのエネルギー産生量の多い脳で、その違いが目立ちやすくなります。
② 赤色光や近赤外線を15分程度浴びるだけで、脳を含む全身のミトコンドリアの出力アップのスイッチが入ります。
③ 赤色光は木々の葉や、田んぼや畑の緑に反射されやすい。
④ もともと、赤や黄、青の波長の光をすべて含む太陽光も、特に朝(夕も)は、紫外光がほとんど含まれない状態で地上に届く。
つまり、私たち日本人が大昔から繰り返してきたことなのでしょう。
●朝は早く起きて、朝日を見つめ、「今日も生きていることにありがとう」を言う。
●コンクリートのビルの中で働いている人も、日中は15分でよいので外に出る。
●緑豊かな環境になくても、鉢植えの緑でよいので世話をしながらよく見る。
この暑い夏こそ、ミトコンドリアの機能をアップさせる伝統食はなんといっても、
『 梅干し 』
です。私は、自分でつけた去年の梅干しを1日に5から7粒食べています。
なんというのか、疲れにくさが実感できて、気分が5分くらいで上がります。
もしかするとご存じない方のために言っておくと、認知症を発症した人、その前段階にある人はミトコンドリアの機能が低下していることは科学的に明らかになっているのです。
日本では、どちらかというと、子どもが悪いことをしたときなどに「お天道様が見てるよ」と、ちょっとネガティブな使い方をすることが多いですが、元気に生きたいなら、私たちのほうから「お天道さまを見上げる」ことこそ、大事なのかもしれません。
※ちなみにヤマトの作中の沖田艦長は52歳の設定だったはず。
(ふなきたけのり・百姓医者 2026/08/14)
Takenori Funaki(フナキ タケノリ)
医療法人社団ビジョナリー 王子北口内科クリニック 医師
Copyright © 2026.8.14.
掲載許可取得 2026.7.12.