「世界で最も貧しい大統領」として知られた、南米ウルグアイのムヒカ元大統領。世界で高まる過激なナショナリズムや人生と死、日本の若者へのメッセージなどを語りました。大統領時代、収入のほとんどを寄付し、質素な暮らしを続けたことから「世界で最も貧しい大統領」と呼ばれました。
*** . 今年は、ロシアがウクライナに侵攻しました。これについてはどうお考えでしょうか?
『残虐行為です。残虐行為ですが、その予兆はあった。15年前にすでにあそこで戦いが起こっていたからです。プーチンは野蛮ですが、宣戦布告をしかけていたにもかかわらず、誰も交渉しようとしなかった』
広島の平和記念資料館を訪れたことに触れ、 「絶対に忘れてはいけない人類のための教え」 だと話したムヒカ元大統領。
ロシアによるウクライナ侵攻を契機に世界で高まるナショナリズムについては、戦争に直結する「過激なナショナリズムの高揚」に危機感を示しました。
『自分の母国を愛すること、それは自然なことです。それは人間だけじゃない。しかし、それが唯一だと過信してしまうような“高揚”は非常に危険です。過激なナショナリズムは、常に戦争と表裏一体なのです』
今も農作業をしながら、質素な暮らしを続けています。生と死について聞くと、「人生は、何はともあれ美しいもの」「死が私に話しかけてくるなら、もう一戦したい(もう一回生きたい)と言う」と話しました。
最後に、日本の若者たちにメッセージをお願いすると、「働くこと」に加え、「愛情や人間関係のために、人生に時間を与えなければならない」と話しました。
『奇跡というものが唯一あるとしたら、それはこの世に生まれてきたということ。若いなら愛のための時間、子どもがいるなら子どものための時間、老いているなら、友人たちと憂鬱を共有する時間。意志を持って生きてください。自分がされて嫌なことは、他人にしてはいけません。そして、生きてください』
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ムヒカ元大統領の言葉には、不思議な重みがあります。
それは彼が立派な言葉を並べる政治家だったからではなく、自らが投獄され、暴力の時代を生き、権力の頂点に立ちながらも質素な暮らしを貫いた人だからでしょう。
近年、世界では再び 「国を愛せ」「敵に負けるな」「強い国になれ」 という声が大きくなっています。
もちろん、自分の国や故郷を大切に思う気持ちは自然なことです。
しかし、その気持ちが 「自分たちだけが正しい」「異なる考えを持つ人は敵だ」 という方向へ向かい始めたとき、社会は急速に息苦しくなります。
歴史を振り返れば、 戦争はいつもそうした空気の中から生まれてきました。
ムヒカ氏が警戒したのも、 その「熱狂」だったのだと思います。
そして彼は最後に、政治でも経済でもなく、 「愛する人のための時間を持ちなさい」と語りました。
人生の価値は、どれだけ所有したかではなく、 誰と時間を分かち合ったか。
便利さや競争に追われる現代だからこそ、 この言葉は以前にも増して深く響く気がします。
人はいつか必ず死を迎えます。
限られた時間を憎しみや分断ではなく、 愛情や友情、そして人とのつながりのために使いたい。
ムヒカ氏の言葉は、 そんな当たり前で忘れがちなことを思い出させてくれます。
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自分は、ムヒカ氏が 人類に対して少し困ったように笑いながら、「まだ同じことを繰り返しているのか」と言っているような気がします。
ムヒカ氏は若い頃、武装闘争に身を投じ、投獄され、長い独房生活を経験しました。
その中で憎しみの連鎖や暴力の限界を身をもって知った人です。
だから彼は、 人間の愚かさを知らなかった理想主義者ではありません。
人間は争う。権力は暴走する。人は恐怖に流される。
そうした現実を十分知ったうえで、それでもなお、 「人生は美しい」と言い続けた人でした。
もし今の世界を見ているなら、 ウクライナも、ガザも、 世界各地で広がる排外主義や分断も、 深く憂いているとは思います。
しかし同時に、「絶望するな」とも言うでしょう。
なぜなら彼は、人生の大半を絶望してもおかしくない環境で過ごしながら、人間への信頼を捨てなかった人だからです。
自分は、ムヒカ氏が最後に残したメッセージの中で、『若いなら愛のための時間を。 子どもがいるなら子どものための時間を。』という言葉が特に好きです。
戦争や政治や経済の話をしているのに、 最後はいつも「人間」に戻ってくる。
それがムヒカ氏らしさでした。
もしかすると今頃、天国で奥様のルシアさんや先に旅立った友人たちと再会しながら、『人類は相変わらず面倒な生き物だな。 でも、まだ捨てたものじゃない』そんなふうに微笑んでいるのではないでしょうか。
彼が最後まで信じ続けたのは国家でも市場でもなく、人と人とのつながりだったように思います。🌿
Hiroshi Kanei(カネイ ヒロシ)
自然主義者 / 夢想家 / 平和主義者
出典 Facebook TBSテレビ 2022年12月21日(水)
掲載許可取得 2026年6月24日