日本 プロライフ ムーブメント

目覚め:昏睡患者が回復することもある

30年間の看護の間に、私があまりにも多くの患者を昏睡状態からよみがえらせたので、他の看護婦たちは私のことを魔女ではないかしらと尋ね始めました。 

しかし、「ミズ-リナ-シ-ズフォライフ(いのちを尊重するミズ-リ州の看護婦)」の会長であり、「全国プロライフ看護婦協会」のスポ-クスマンである私の手法は、患者に話しかけること、患者の好きな音楽をかけること、簡単なことを要求することといった簡単なことだと言いました。 

私は、昏睡状態の患者に話しかけることでよくからかわれたものです。冷蔵庫にも話しかけるのかとも尋ねられたことがあります。 

しかし、私の話しかけには成果がありました。ある日、17才の少年が深い昏睡状態で病院に運ばれてきました。当直の神経外科医は、「明日までもたないだろう。そのほうがいい。助かっても、彼は植物人間になるんだから。」と言いました。 

その少年は死なずに、まもなく看護婦の指示に反応を示すことができるようになりました。しかし彼は神経外科医がいるときには決して反応しようとはしませんでした。 

最終的に彼は救われましたが、私は再び彼に会えるとは思っていませんでした。しかしある日、ハンサムな若者が病棟に入って来て、「僕のことを覚えていますか?」と言いました。 

その17才の少年は、自分のいのちを救ってくれたことに感謝するために帰ってきたのでした。私が神経外科医のことを口に出したとき、その少年は非常に真剣な顔になりました。そして、「神経外科医が僕のことを植物人間と言ったことを覚えているよ。彼にはどうしても反応したくなかったんだ。」と言いました。 

私が経験したことを他の人も経験しています。多くの昏睡患者を診ているロングアイランドの神経外科医のミハイ・ディマンセスク医師は、たとえ何週間も昏睡状態が続いても、脳に何らかの損傷を受けた人々が回復する可能性が実際にあるという認識が高まっていることに注目しています。たくさんの病院、とくに大学病院や地域の大病院は、治療の最初の段階において積極的に取り組んでいます。 

ディマンセスク医師は、確実な技術は全く何もないことを強調しましたが、脳に関する新しい知識によって、「つながりが失われた脳細胞の間に新しいつながりが作られることがあることがわかってきた。そして脳のある部分が、失われた他の部分の機能を引き継ぐことがある。」と説明しました。 

そして技術は絶えず進歩しているのです。ニュ-ヨ-クに本拠地を置く「コ-マリカバリ-アソシエイション(昏睡からの回復協会)」のプログラムコ-ディネ-タ-のポ-レット・ディマ-トは、アマンタジンと呼ばれるインフルエンザの薬でいくつかの成功例があると言いました。ニュ-メキシコのある女性は、インフルエンザの通常の治療としてアマンタジンを投与され、16年もの昏睡状態から醒めたとディマ-トは話しました。 

昏睡患者にチャンスを与えよう

これらの治療は稀で不確実なものです。しかし大病院は、昏睡患者に対する基本的な治療方法を変え始めています。 

しかし小さな病院では、多くの医者や患者の代弁者は、管理医療の財政的圧力のために医者が費用のかかる治療を打ち切らざるを得なくなっていると言っています。 

そして医者でさえ、昏睡状態からの回復について間違った知識を与えられていることがあるのです。 

特に高齢の患者について、医療関係者は「彼らが目覚めることはないだろう。十分に人生を生きたんだからもう全ての機械から解放してあげたらどうだろうか。」と言うだろうとディマ-トは話しました。 

彼女は「家族はしばしば何が起きるかを待って見る機会が与えられていないのです。医療関係者が強引に家族に決断をせまり、治療を打ち切ることを納得させようとすることが非常に多いのです。」と付け加えました。 

ディマンセスク医師は、昏睡状態にある患者は、本質的に医療関係者によって無視されてきたので、適切な栄養補給や感染に対する治療が行なわれていない可能性があると警告を発しました。 

教皇ヨハネ・パウロ2世は、1998年10月2日に行なわれたカリフォルニア、ネバダ、ハワイの司教のアド・リミナ(司教の使徒座訪問)で、栄養補給や通常の医療を打ち切ることは倫理的に認められないことだと強調されました。「いのちを擁護する全キリスト教会の取り組みの成果が進展しているので、負担になったり、危険であったり、予想される結果と不釣り合いな医療を続けないことと、栄養補給や水分補給や通常の医療のような生命を維持する一般的手段を打ち切ることとの実質的な倫理的相違点を教え明確にするために非常な努力が必要とされている。」と教皇は言われました。 

84才の女性が、医者と家族が栄養補給の打ち切りを決断しかけた時に、回復するのを見たことがあります。私たちは彼女を遠くから連れ戻したのです。その後、彼女はスプ-ンを使って自分でジェリ-を食べ、私たちは彼女にふざけ方を教えました。その女性は完全にだめだと考えられていました。実際、彼女には栄養補給の必要無しの印がついていました。 

患者の中には、反応をしない人がいますが、それは亀に似ています。びっくりして首を引っ込めるのです。 

長い間頑張りすぎ?

しかし、「死にいく者たちにより良いケアを与えるアメリカ人」という団体の会長であるジョア-ン・リンは、「がんばって治療されなければならないほど長期間昏睡状態にある」人が昏睡から醒めることはほとんどありえないので、昏睡からの覚醒は「奇跡の領域」に入るでしょうと言いました。 

「一般的な間違いは、あまりにも長い間頑張りすぎて、家族にあまりに多くの苦しみを経験させることです。『数週間あるいは1、2ヶ月間』昏睡状態にある人が昏睡から醒めることはきわめて稀なことなので、家族はそれに応じた行動を取るべきです。」とリンは言いました。彼女は、劇的な昏睡からの覚醒の話を「死の状態からよみがえった人々の話」に例え、「私たちは3日も待たずに埋葬するのです。」と言いました。 

しかし神経外科医のディマンセスク医師は「昏睡患者についての第一の誤解は、一度1週間以上の昏睡に入ると、状況は好転しないと信じてしまうこと」だと主張しました。 

彼は、「多くの人がそうでないのに昏睡だと診断されています。彼らはいくらかのことは理解できているのです。」と付け加えました。彼は医者たちに「違った方向から患者の反応を捜すこと」を促しました。瞬き1回がイエスで2回がノ-のこともあるし、指を動かすことで反応できることもあるのです。 

彼は、昏睡状態の人が音を聞くことができる可能性を強調しました。「最後に無くなるのは聴覚です。最初によみがえってくるのも聴覚なのです。私たちがしなければならないことは、想像力を働かせるように努めることです。脳にひどい損傷を受け、病院のベッドに横たわっていて、おそらくとても怯えている人の立場に自分を置いてみて下さい。」と言いました。 

ディマンセスク医師は、「患者の症状の経過がどうであれ、刺激と療法は無限に奨励されるものだと信じているがために、昏睡状態の人に対する刺激を懐疑的に思っている人々もいます。刺激を無限に行なうことは資源の無駄であって、家族に間違った期待を抱かせることになります。実際集中的なケアが必要なのは、普通約3ヶ月くらいなのです。」と言いました。 

彼が付け加えて言ったことを私が要約すれば、「私たち医者や看護婦は、自分たちが知っていると思っているほどは知らないのだ。」ということになります。 

Valko, Nancy (ヴァルコ、ナンシー)
Copyright © 2002
2002.9.5.許可を得て複製
英語原文 www.lifeissues.net