日本 プロライフ ムーブメント

死刑に関する事実と数字

1999年12月18日改訂のアムネスティ・インターナショナル統計

1. 死刑制度廃止国家と保有国家

世界の半分以上の国々が、法律上あるいは実際に死刑を廃止しています。アムネスティ・インターナショナルの最新情報によると次のようなことがわかります。

  • 70の国や地域で、すべての犯罪に対して死刑を廃止しています。
  • 13の国で、戦争犯罪など例外的な犯罪を除くすべての犯罪に対して死刑を廃止しています。
  • 23の国では、事実上死刑を廃止していると考えることができます。それらの国々は法律上死刑制度は有していますが、過去10年以上一度も死刑を執行したことはありません。従って、合計106の国が、法律上、あるいは実際に死刑を廃止していることになります。
  • 他の90の国では、死刑制度を有しそれを行使しています。しかし、実際に毎年死刑を執行している国ははるかに少ないのです。(下記参照)

2. 世界中の死刑廃止に向けての動き

一九七六年以降、平均して年間2ヶ国以上が法律で死刑を廃止したり、通常の犯罪に対して死刑を廃止したのち、死刑を全廃する方向に進んでいます。

一九九0年以降30を越える国や地域で、通常の犯罪あるいはすべての犯罪に対して死刑を廃止してきました。それらの国々には、アフリカにおいては、アンゴラ、モーリシャス、モザンビーク、南アフリカ、南北アメリカにおいては、カナダ、パラグアイ、アジアにおいては、カンボジア、香港、ネパール、ヨーロッパにおいては、アゼルバイジャン、ブルガリア、キプロス、エストニア、グルジア、ラトビア、リトアニア、モルドバ、ポーランド、太平洋諸国では、ニュージーランドが含まれています。

3. 死刑再導入への動き

死刑は、いったん廃止されれば再び導入されることはめったにありません。一九八五年以降、35ヶ国以上が法律で死刑を廃止したり、通常犯罪に対する死刑を廃止したのち、全ての犯罪に対する死刑の全廃に移行する形をとってきました。その同じ期間に、死刑を再導入したのはわずか4ヶ国でした。そのうちの1ヶ国、ネパールでは、その後再び死刑を廃止し、フィリピンでは死刑を再開しましたが、他の2国(ガンビアとパプア・ニューギニア)では死刑の執行は全くありません。

4. 死刑の宣告と執行

一九九八年の間に、少なくとも37ヶ国で2,258人の囚人が処刑され、78ヶ国で4,845人の囚人が死刑宣告を受けたことがわかっています。この数字には、アムネスティ・インターナショナルでわかっている件数しか含まれていません。実際の数字はもっと多いに違いありません。

一九九八年以前と同様に、記録に残っている処刑の大多数が少数の国によって行なわれました。中国で1,700件、コンゴ民主共和国で100件以上、アメリカ合衆国で68件、イランで66件という処刑の報告をアムネスティ・インターナショナルでは入手しています。これらの4ヶ国だけで、一九九八年に世界中のアムネスティ・インターナショナルで記録された死刑執行件数の86%を占めています。アムネスティ・インターナショナルはまたイラクでは何百件という処刑の報告も受け取っていますが、そのほとんどを確認することができませんでした。

5. 少年犯罪者に対する死刑の適用

国際人権規約によって、犯罪時18才未満の少年に対する死刑の宣告は禁止されています。「市民的及び政治的権利に関する国際規約」や、「米州人権条約」、及び「国連子どもの権利条約」にはすべて、この条項があります。100以上の国々には、特に少年犯罪者の処刑を排除する法律がある、あるいは上記の条約のどれかに加わることでそのような処刑を排除しているものと考えられます。しかしながら、少数ですが、少年犯罪者の処刑を続けている国があります。

一九九0年以来、イラン、ナイジェリア、パキスタン、サウジアラビア、アメリカ、イエメンの6つの国で、犯罪当時18才未満の囚人が処刑されたことが知られています。少年犯罪者の死刑執行を最も多く行なったことがわかっている国はアメリカで、一九九0年以来10件の処刑が行なわれました。

6. 抑止論

死刑が他の刑罰よりも犯罪の抑止効果にすぐれているという説得力のある証拠を発見できた科学的な研究は、今までに一つもありません。国連によって、一九八八年に行なわれ新たに一九九六年に行なわれた死刑と殺人事件の発生率の関係についての最新の研究調査結果では次のように結論が下されました。「研究では、死刑が終身刑よりも抑止効果があるという科学的根拠を発見することはできなかった。そしてそのような証拠が出てくる可能性は極めて少ない。依然として、全体的に、証拠は抑止説を肯定的に支持するものではない。」

7. 犯罪率に対する死刑廃止の効果

死刑適用の変更と犯罪率の関係における証拠を再検討してみると、一九八八年と一九九六年の研究によって、「すべての証拠が同じ方向性を示し続けているという事実は、国が死刑への依存度を少なくしても、犯罪の数が突然深刻な変化をきたすということを恐れなくてよいという説得力のある演繹的な証拠である」ことがわかりました。

廃止国家の最近の犯罪数からは、廃止が有害な影響を与えているとは言えません。カナダでは、人口10万人あたりの殺人率は、殺人に対する死刑を廃止した前年の一九七五年に3.09とビークに達してから、一九八0年には2.41に減少し、それ以後比較的安定しています。廃止から17年後の一九九三年は、10万人あたり2.19で、一九七五年より27%減少しました。カナダで報告された殺人の総数は一九九三年に2年連続で減少しました。

8. 死刑廃止の国際協定

近年の最も重要な進展のひとつは、国が死刑制度を持たないという約束をする国際条約を採用してきたことです。そのような条約は現在三つあります。

  • 「市民的及び政治的権利に関する国際規約についての第2選択議定書」これは現在40ヶ国で批准されています。他に3ヶ国が遅れて議定書に調印し、それに加わる意志を示しています。
  • 「欧州人権条約第6議定書」これは現在ヨーロッパの33ヶ国が批准し、他に6ヶ国が調印しています。
  • 「死刑廃止のための米州人権条約議定書」これは現在米州の6州で批准され、他に2州が調印しています。

欧州人権条約第6議定書は、平和時での死刑廃止に同意する協定です。他の二つの議定書は、死刑の全廃を定めたものですが、例外として戦時には死刑を維持したい国はそうすることが許されています。

9. 無実の人間の処刑

死刑が存続する限り、無実の人間を処刑する危険性は決して消えることはないのです。

一九八七年の調査によれば、一九00年から一九八五年の間にアメリカで死刑の宣告を受けた350人の人々は、告発された罪に関しては無実でした。寸でのところで死刑を免れた人もいましたが、23人が実際処刑されました。

一九九三年十月の「市民権及び憲法で保障された権利に関する下院小委員会による合衆国議会報告書」には、一九七二年以降、死刑の宣告をされながら死刑を免れた人が48人記載されています。その報告書は、不当な処刑を防ぐための法的な安全策の不十分さを非難し、刑事裁判制度固有の数々の欠点を並べています。その報告書は、「過去の経験から判断して、かなりの数の死刑囚が実際は無実であり、幾人かの死刑囚が無実のまま処刑される危険性が高い。」と結んでいます。

10. アメリカ合衆国での死刑

  • 一九九八年にはアメリカで68人の囚人が処刑され、一九七七年に死刑適用が再開されてから合計500人に達しました。
  • 一九九九年四月一日現在で、3,500人以上が死刑宣告を受けました。
  • アメリカ50州のうち38州が現在法律で死刑を定めています。そしてさらに、合衆国の軍、民の両法で死刑制度が定めれています。

アムネスティ・インターナショナル
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英語原文より翻訳
http://www.lifeissues.net/writers/amn/amn_01deathpenaltystats.html