日本 プロライフ ムーブメント

従来型栄養指導の実態


患者さんへの食生活改善に対して最も大きな役割を果たすのは栄養士さんです。

医師は医師になる過程で栄養学のまとまった勉強を実はしていないということは以前の記事でも紹介した通りです。

そういう背景もあって医師であってもよほど勉強している人でない限りは、栄養学の知識では栄養士さんには遠く及びません。

しかし、それはあくまで従来の栄養学、での話です。

従来の栄養学では糖質の位置づけ・理解を根本的に間違っていたということがわかりました。

今や従来の栄養学を抜本的に見直して新しい栄養学を構築しなおすべき時期に来ています。

しかしその事を認めない(そして行動を変えようとしない)栄養士さんが圧倒的大多数なのが現状だと思います。

御他聞に漏れず、当院の栄養士も糖質制限には反対の姿勢を示しています。

本日はそんな当院の栄養士の栄養指導の1例を御提示します。

症例は60代男性、コントロール不良(HbA1c 8.9%)の糖尿病があり、この度脳梗塞を発症され当院へ入院されました。(身長175cm, 体重84kg, 標準体重67.4kg)

幸い脳梗塞は軽症で済み、ほとんど後遺症を残すことなく改善しましたが、精査の結果、左の脳への血管がほとんどつまりかけているということがわかりました。つまり脳梗塞再発のリスクが非常に高い状態です。動脈硬化をこれ以上進めないようにしなければなりません。

そこで食生活の見直しも必要だ、ということで私ではない主治医が糖尿病食の食事指導をオーダーしました。
(エネルギー1840kcal, 蛋白質80g, 脂質52g, 炭水化物258g, 食塩8g, 熱量構成P18%, F26%, P/S比 1/1.5)

以下はそのオーダーに基づき当院栄養士が行った栄養指導記録です。

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(S)
・生野菜は少ない
・魚は好きでないので食べない
・酒は、毎日ビール500ml×3~5本くらい呑んでいたが、今はやめている。
・辛いものが好きで、塩分も多く摂っていた。
・果物は、酒を呑まなくなってから三食食べている。
・仕事は、今は業務軽減で事務仕事をしているが、その内に復帰する予定
・御飯の量も100gちょっとにしており、腹は減るがおかずの量を増やしているので慣れた。
・牛乳は低脂肪にしている。
・揚げ物は、週2回くらい食べる

(O)
朝:御飯、みそ汁、卵料理、煮物、果物、牛乳
昼:弁当
夕:御飯、肉料理、煮物料理
間食:しない
酒:やめた
・脳梗塞後
#主食量が少ない

(A)
・塩分も多く、酒なども多い食生活であったが、かなり改善されています。
・間食をしないのが良いですが、その代わりに果物が増えてきており、食べ過ぎないようにお願いしております。
・まだ、塩分摂取は多めですが、砂糖や味醂などと共に、更に減らして頂くようにお話ししております。
よく理解して頂けました。

(P)
・主食を180g/食はきちんと食べる。
・野菜類をしっかり摂取し、食物繊維の量を増やす。
・肉類は脂肪を避ける
・牛乳は低脂肪を勧める。
・揚げ物は、週1回までにする。
・油はオリーブ油を使用。
・味付けは、薄味とし、醤油、砂糖、味醂をできるだけ控える
・漬け物などの塩ものはできるだけ口にしない
・食後のエネルギー消費を心がける
・毎日こまめな水分摂取
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いかがでしょうか。

糖質制限の理論がわかっている人であれば、これがいかにおかしな指導かがわかると思います。

例えば糖尿病の食事療法は血糖値を上げさせないようにすることが目的なのに、主食が100gになっているのをわざわざ180gまで増やすように言っています。

「主食≒炭水化物」「炭水化物=糖質+食物繊維」「三大栄養素のうち糖質のみが血糖値を上昇させる」という基本的な事実から考えれば、わざわざ血糖値を上げさせるように仕向けていることになります。明らかに矛盾した指導です。

なおかつ白米180gには約66gの糖質が含まれていますので、糖尿病の人には禁忌である75gOGTT試験に匹敵する非常に多い糖質量です。

こんな食事をしていたら、血糖値の乱高下が防げず、動脈硬化は進行してしまいます。

それに低脂肪にしなさいとか、揚げ物は週に1回までとか、野菜をよく食べよとか、ことごとく私の治療方針と異なる指導内容です。

しかも、この患者さんはSU剤も併用しているので実際にはHbA1cが6.4%まで下がっており、その結果栄養指導がうまくできているということになっています。

この患者さんがその後再発予防のために私の外来に通院されてきました。私は軌道修正するために患者さんへ新しい食事療法である「糖質制限食」を提案しました。

しかし、患者さんは栄養士を信頼しているためか理解してもらうことはできませんでした。

こうした栄養士たちは今までもこれからも、自分たちの指導が正しいと信じて疑わず、同様の指導を繰り返しているわけです。

私が入院患者の主食を抜いてくれないかとお願いした時も、彼女らは「そのような食事には対応していない、それは糖尿病の先生に了解を得ているのか」と返し、決して聞く耳を持ちませんでした。

非常にやるせない思いです。

こうした保守的な栄養士が一日も早く自らの行いを改めることを願うばかりです。

Shuugo・Tagashira(タガシラ シュウゴ)

田頭 秀悟

オンライン診療医

出典 たがしゅうブログ

主体的医療ダイアロジカルスクール(Proactive Med Dialogical School)

Copyright ©  2013年9月29日

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