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スペインの中絶法は社会の自殺だ

よほど頭にきているのだろう。法王庁生命アカデミーのイグナシオ・カッラスコ・デ・パウラ新会長はスペインの人工中絶法を批判し、「まったく無能な法」と評したのだ。少々荒っぽい表現だが、新会長の「怒り心頭」といった胸の内が伝わってくる。人工中絶法によると、16歳以上の女性の場合、妊娠14週目まで両親の許可なく中絶ができる。同国カトリック教会は「テロ行為だ」として批判している。新会長が懸念するのは、スペインのリベラルな中絶法が南米諸国にも影響を及ぼすのではないかということだ。ブルゴス教区のフランシスコ・ギル・へリン大司教(Francisco Gill Hellin))は国民に中絶法への抵抗運動を呼びかけているほどだ。 

バチカンがサパテロ政権を批判するのはこれが初めてではない。サパテロ社会労働者党(PSOE)が2004年発足して以来、政府と教会との関係は険悪化してきたのだ。左派政権はカトリック教会の特権摘発に熱心に取り組み、学校の宗教授業にも異議を唱え、宗教授業の代わりに「公民学」を導入してきた。それだけではない。サパテロ政権は同性愛カップルを公認し、養子権を認める法を施行してきた。 

同国の主要宗派カトリック教会関係者は「社労党政権下でわが国の家庭崩壊が急速に進んできた」と警告を発する。具体的には、離婚件数の急増という形で現れている。そしてEU諸国の中でもリベラルな中絶法の施行だ。国民の80%以上がカトリック信者の伝統的なカトリック国スペインは現在、欧州の「中絶王国」に向かって邁進している、といったところだ。 

前ローマ法王ヨハネ・パウロ2世は生前、中絶が増加する現代社会を「死の文化」と呼び強く警告したが、マドリード大教区のアントニオ・マリア・ロウコ・ヴァレラ枢機卿(Antonio Rouco Varela)は「生命を保護し、尊重しない文化は自殺する」と述べている。 

Editorial (オピニオン) 
国連記者室 
出典 ウィーン発『コンフィデンシャル』 
2010年8月4日掲載 
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