日本 プロライフ ムーブメント

「合理的配慮」義務化(3)

III 『合理的配慮』には対話が重要です!  P.13〜P.19

● 合理的配慮の提供に当たっては、社会的なバリアを取り除くために必要な対応について、障害のある人と事業者等が対話を重ね、共に解決策を検討していくことが重要です。このような双方のやり取りを「建設的対話」と言います。

● 障害のある人からの申出への対応が難しい場合でも、障害のある人と事業者等の双方が持っている情報や意見を伝え合い、建設的対話に努めることで、目的に応じて代わりの手段を見つけていくことができます。

建設的対話の具体例①    P.13

障害のある人の保護者(発達障害)

うちのこどもは特定の音に対する聴覚過敏があり、飛行機の音が聞こえると興奮して習い事に集中できなくなってしまうので、飛行機の音が聞こえないように、教室の窓を防音窓にしてもらうことはできますか?

事業者( 習い事教室)

防音窓の設置は、工事も必要だし、すぐに対応することは難しいな。障害のあるお子さんが習い事に集中できるよう、他に、飛行機の音を聞こえなくするような工夫はあるだろうか?

防音窓をすぐに設置することは難しいので、お子さんが習い事に集中できるよう、一緒に他の方法を考えましょう。お子さんは、普段、飛行機の音が聞こえないように、どのような対応をしているのですか?

障害のある人の保護者(発達障害)

家ではイヤーマフを着用することがあるのですが、習い事では音声教材等を利用することもあるので着用させていませんでした。着用の際には声掛けや手伝いが必要なので、習い事でイヤーマフを使うと先生にご迷惑ではないでしょうか。

事業者( 習い事教室)

飛行機が通過する時間帯は大体決まっているので、その際には、先生がイヤーマフの着用の声掛けやお手伝いをします。また、音声教材の使用タイミングについても配慮を行うことができます。

障害のある人の保護者(発達障害)

わかりました。こどもにイヤーマフを持っていかせ、先生がお手伝いしてくれるからね、と言っておきます。

本ケースにおける建設的対話のポイント     P.15

● 合理的配慮は、障害のある人にとっての社会的なバリアを除去することが目的ですので、ある方法について実施することが困難な場合であっても、別の方法で社会的なバリアを取り除くことができないか、実現可能な対応案を障害のある人と事業者等が一緒になって考えていくことが重要です。

● このためには、例えば、普段本人が行っている対策や、事業者が今ある設備で活用できそうなものなど、情報を共有し、双方がお互いの状況の理解に努め、柔軟に対応策を検討することが重要です。

建設的対話の具体例②     P.16

障害のある人(車椅子利用者)

そちらのライブハウスで開催されるコンサートの通常席チケットを1枚お願いします。当日は車椅子で参加する予定です。

事業者( ライブハウス)

以前、通常席で他の参加者と車椅子の方がぶつかってケガをしてしまったことがあったな。また事故が起きないか心配だ。

車椅子での参加ですね。このアーティストのコンサートの通常席は立見席のみとなっており、通常席エリアを自由に動き回ったり、飛んだり跳ねたりされる参加者が大勢いらっしゃいます。このため、バランスを崩した参加者が車椅子利用者の方に倒れこんでケガをされるおそれがあります。

値段は高くなりますが、特別席なら他の参加者とぶつかる心配もありませんし、通常席にはない特典もありますがいかがでしょうか。

障害のある人(車椅子利用者)

特別席のチケットは値段が高いので購入が難しいです。車椅子でも通常席に参加できるような手段は何かないでしょうか。

通常席での参加ができるなら、他の立見席の参加者のように通常席エリアであちこち自由に動き回れなくても構いません。

事業者(ライブハウス)

障害者差別解消法に基づけば、過去例だけで一律に判断せず、個別のお客様に応じて対応を検討する必要があるんだったな。

今の車椅子利用者の方のお話を踏まえ、何か工夫できることはあるだろうか。

それでは、例えば通常席のエリア内を一部区切って車椅子用スペースを設けることとし、そのスペースでコンサートを鑑賞していただくというのはいかがでしょうか。他の参加者にもお声がけをして、車椅子用スペースにご配慮いただけるように周知をします。

この方法ですと、通常席エリア内であちこち移動することは難しくなりますが、他の参加者とぶつかる可能性も低くなるので、安全性を確保した上で、通常席に参加してもらえると思います。

障害のある人(車椅子利用者)

車椅子用スペースでの鑑賞でも大丈夫です。通常席で鑑賞できるようで安心しました。

事業者(ライブハウス)

承知いたしました。それではコンサート当日は車椅子用スペースを用意しておくようにします。ご来場、お待ちしています。

本ケースにおける建設的対話のポイント      P.19

● 本ケースのように、過去例等を踏まえると当初は対応が困難に思われるような場合であっても、建設的対話を通じて個別の事情等を互いに共有すれば、事業者と障害のある人双方にとって納得できる形で社会的障壁の除去が可能となることもあります。このため、まずは障害のある人との対話を始めることが重要です。(続く)

Yasuo  Yoshikawa (ヨシカワ  ヤスオ)

吉川 康夫

出典 内閣府政策統括官(制作調整担当)付 障害者施策担当

https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo2/daikatsuji_print.pdf

Copyright © 2025年4月13日

2025年4月13日掲載許可