II 合理的配慮の提供とは p6〜p12
● 日常生活・社会生活において提供されている設備やサービス等については、障害のない人は簡単に利用できても、障害のある人にとっては利用が難しく、結果として障害のある人の活動などが制限されてしまう場合があります。
● このような場合には、障害のある人の活動などを制限しているバリアを取り除く必要があります。このため、障害者差別解消法では、行政機関等や事業者に対して、障害のある人に対する「合理的配慮」の提供を求めています。
● 具体的には、
① 行政機関等と事業者が、
② その事務・事業を行うに当たり、
③ 個々の場面で、障害者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合に
④ その実施に伴う負担が過重でないときに
⑤ 社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずることとされています。
● 合理的配慮の提供に当たっては、障害のある人と事業者等との間の「建設的対話」を通じて相互理解を深め、共に対応案を検討していくことが重要です(建設的対話を一方的に拒むことは合理的配慮の提供義務違反となる可能性もあるため注意が必要です)。
※「意思の表明」には、障害特性等により本人の意思表明が困難な場合に、障害者の家族や介助者など、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含まれます。
※「合理的配慮の提供」に当たっては、障害のある人の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた配慮が求められることに留意する必要があります。
合理的配慮の具体例 p7
※合理的配慮の内容は個別の場面に応じて異なるものになりますので、以下の例はあらゆる事業者が必ずしも実施するものではないこと、また以下の例以外であっても合理的配慮に該当するものがあることに留意しましょう。
物理的環境への配慮(例:肢体不自由)
【障害のある人からの申出】 飲食店で車椅子のまま着席したい。(絵あり)
【申し出への対応(合理的配慮の提供)】 机に備え付け椅子を片付けて、車椅子のまま着席できるスペースを確保した。(絵あり)
意志疎通への配慮(例:弱視難聴)
【障害のある人からの申出】 難聴のため筆談によるコミュニケーションを希望したが、弱視でもあるため細いペンや小さな文字では読みづらい
【申し出への対応(合理的配慮の提供】 太いペンで大きな文字を書いて筆談を行った。(絵あり)
ルール・慣行の柔軟な変更(例:学習障害)
【障害のある人からの申出】 文字の読み書きに時間がかかるため、セミナーへ参加中にホワイトボードを最後まで書き写すことができない。(絵あり)
【申し出への対応(合理的配慮の提供)】 書き写す代わりに、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット型端末などでホワイトボードを撮影できることとした。(絵あり)
「合理的配慮」の留意事項
●「 合理的配慮」は、事務・事業の目的・内容・機能に照らし、以下の3つを満たすものであることに留意する必要があります。
① 必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること
② 障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること
③ 事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと
☆例えば次のような例は合理的配慮の提供義務に反しないと考えられます。
● 飲食店において食事介助を求められた場合に、その飲食店は食事介助を事業の一環として行っていないことから、介助を断ること。
(必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られることの観点)
● 抽選販売を行っている限定商品について、抽選申込みの手続を行うことが難しいことを理由に、当該商品をあらかじめ別途確保しておくよう求められた場合に、対応を断ること。
(障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであることの観点)
※上記はあくまでも考え方の一例であり、実際には個別に判断する必要があります。
過重な負担の判断
●「 過重な負担」の有無については、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。
① 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
② 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
③ 費用・負担の程度
④ 事務・事業規模
⑤ 財政・財務状況
☆例えば次のような例は合理的配慮の提供義務に反しないと考えられます。
● 小売店において、混雑時に視覚障害のある人から店員に対し、店内を付き添って買い物を補助するよう求められた場合に、混雑時のため付添いはできないが、店員が買い物リストを書き留めて商品を準備することを提案すること。( 過重な負担(人的・体制上の制約)の観点)
※上記はあくまでも考え方の一例であり、実際には個別に判断する必要があります。
合理的配慮の提供における留意点
(対話の際に避けるべき考え方) p12
「前例がありません」
・ 合理的配慮の提供は個別の状況に応じて柔軟に検討する必要があります。前例がないことは断る理由になりません。
「特別扱いできません」
・ 合理的配慮は障害のある人もない人も同じようにできる状況を整えることが目的であり、「特別扱い」ではありません。
「もし何かあったら…」
・ 漠然としたリスクだけでは断る理由になりません。どのようなリスクが生じ、そのリスク低減のためにどのような対応ができるのか、具体的に検討する必要があります。
「○○障害のある人は…」
・ 同じ障害でも程度などによって適切な配慮が異なりますので、ひとくくりにせず個別に検討する必要があります。(続く)
Yasuo Yoshikawa (ヨシカワ ヤスオ)
吉川 康夫
出典 内閣府政策統括官(制作調整担当)付 障害者施策担当
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo2/daikatsuji_print.pdf
Copyright © 2025年4月13日
2025年4月13日掲載許可