日本 プロライフ ムーブメント

遺伝子工学と生命特許

科学者は遺伝子組み換えができるようになりました。この技術は人類に恵みを与えると共に問題も起こしています。 

恵みとしては、例えば、新しい治療を与えます。何千もの病気の原因は遺伝子にあります。科学者がその原因となる遺伝子を見つけて直すか取り替えることができれば、今まで癒すことができなかった病気を遺伝子工学によって癒せるようになって来ます。体細胞遺伝子療法によって血友病患者が既に癒されています。又、遺伝子組み換え黴菌は糖尿病の患者のためにインシュリンを作っています。 

問題としては科学者が今までなかった物、自然界にあり得ない物を作っています。黴菌の遺伝子をジャガイモに組み換え、魚の遺伝子をトマトに組み換え、人間の遺伝子を豚や鼠に組み換えています。又、クローンの作り方も急いで研究しています。 

もう一つの問題は、遺伝子工学を進める特許制度にあります。遺伝子工学は膨大な利益をあげる事ができるので、企業、大学などは新しい植物、治療などを作るために利用できる遺伝子を発見して、それに特許を設定する競争している所です。 

生命に特許?

遺伝子は生命の基礎的成分ですから、遺伝子に特許を設定するのは生命に特許を設定することになります。特許によって一人の科学者、或いは一つの会社か大学が生命を所有する事になりますが、宗教の考えでは生命は神様がお造りになるもので、みんなのためです。会社や大学が生命を所有していいでしょうか。 

又、物に特許を設定するのは、その物に経済的な価値があるという意味ですから、生命に特許を設定するのは、生命に経済的な価値があるということになります。しかし、宗教の考えでは生命は神様からの贈り物で、それに経済的な価値を付けてはなりません。 

キリストによって、あなたは常にすべてのよいものを造り、 
とうといものにし、これに生命を与え、 
祝福してわたしたちにお恵みになります。(第一奉献分) 

従って、生命は商品、企業製品として売買するものではありません。 

多くの科学者も生命に特許を設定するのはよくないと言っています。英国王立学士院もアメリカ科学アカデミーもひとゲノム(人間の遺伝子の全体)はみんなのものだと言っています。教皇もそう言っています。 

皆が一番知っているのは遺伝子組み換え食品でしょう。遺伝子組み換えトウモロコシ、大豆、菜種、などがあります。会社が作って私たちが食べています。以上に書いたようにこの食品は自然ではありません。異物が入ってこないように植物や動物ができています。しかし、遺伝子組み換え菜種などは自然界に組み替えできない遺伝子が組み替えされています。この食品は人間の体に安全でしょうか。 

信じられないようなことですが、遺伝子組み換え植物を作成する、食品にする許可を出している米国食品医薬品局は安全性の検査を行っていません。開発企業のデータのみで審査をし、安全としています。内部告発によって分かったことですが、企業のデータに重大の問題があります。しかも、開発企業に勤める人が食品医薬品局に転職して作成許可を出して開発企業に戻ったこともあります。人間の体に安全かどうか分からないのに作ったり食べたりしています。 

こういう笑い話のような話もあります。あるポテトにはポテトを食う虫を殺すように黴菌の遺伝子が組み替えされています。ポテトが虫を殺すためにこのポテトは殺虫剤として登録されています。米国食品医薬品局殺虫剤を規制する権力を持っていないためこのポテトを規制しません。殺虫剤を規制するのは環境保護庁の役ですが、環境保護庁はポテトは食品として規制しません。 

遺伝子組み換えでない植物が消えるか

遺伝子組み換え植物の花粉が風や虫に寄って広まって自然(遺伝子組み換えでない)の植物が汚染されて知らないうちに遺伝子組み換え植物に変わってしまう事があります。運送中の遺伝子組み換え大豆などがこぼされて生えることもあります。2004年の12月に静岡県の清水港の近くに遺伝子組み換えトウモロコシと大豆が生え、又博多港の近くに遺伝子組み換え菜種が生えている報告がありました。こういうふうに全世界の主な食べ物(小麦、米、トウモロコシ、大豆、など)は遺伝子組み換え物になってきて自然の物は消えてしまうでしょう。米国の「遺伝子組み換えでない」トウモロコシ、大豆や菜種の三分の二は既に汚染されています。 

そうなったら私達に食べられるのは遺伝子組み換え食品だけになり選ぶことが出来なくなります。これと一緒に生物の多様性がだいぶ影響を与えられます。 

特許を持つ会社が、作物が汚染された農家を、品種を勝手に栽培した、つまり知的所有権を侵害したとして、起訴したこともあります! 

それから、例えば遺伝子組み換え菜種が全世界に広まって、自然の菜種がなくなったら、遺伝子組み換え菜種の特許を所有する会社が全世界の菜種を支配する事になります。一つの会社が全世界の菜種を支配(独占)していいでしょうか。アメリカと日本は今は仲がいいですが、仲が悪くなって来たら、その特許の種を持っている会社は、日本の農家にその会社の種を売らないことにするかも知れない、こういうことも考えられます。 

生物医薬品による汚染

生物医薬品やプラスチックを生産するために遺伝子を組み換えられたトウモロコシがあります。このトウモロコシが既に他の植物を汚染しています。堕胎薬を生産するトウモロコシを知らないうちに食べているかも知れません。 

使用料は毎年支払う

遺伝子組み換え種の場合、農家は毎年特許を持つ会社に使用料を払わなければなりません。種を買って蒔いて作物を作って収穫して来年の為に種を取っておいてそれを蒔いていいわけではありません。使用料を払わなければ自分で作った種を取っておいて蒔いてはいけません。勿論貧しくさせられた国々の農家は毎年使用料を払う事ができません。 

生物海賊

この技術を研究している会社は科学者を全世界の貧しい国々に遣わしてその国の植物、動物、原住民の遺伝子を探しています。いいもの、いいお金になるものを見つけたら、それをアメリカやヨーロッパへ持って帰って特許を設定して貧しい国の植物や動物や人間の遺伝子をその会社のものにしています。このために貧しい国々の人びとは非常に怒っています。 

西アフリカでは、ベリー品種ブラゼインは強い甘味をもつ果実として広く知られています。アメリカのウィスコンシン大学の研究者が、西アフリカで人や動物がこのベリーを好んで食べている様子を見て、このベリーから分離したたんぱく質に対する特許をアメリカとヨーロッパで申請しました。このベリーは砂糖よりもかなり甘く、過熱されても味が損なわれないため、年間売り上げが1千億ドルにも達するノンシュガー製品の業界にとっては、まさに理想的な甘味料といえます。ブラゼインを作り出す遺伝子組み換え生物の開発も現在進められています。これが成功すれば、南アフリカでこのベリーを栽培する必要性がなくなってしまいます。今それを栽培している農家はその収入を失ってしまうでしょう。もっと貧しくさせられるでしょう。 

インドのニーム木から取られた物に外国(米国、ドイツ、日本)の会社は特許を90も 設定しています。 

植物だけではありません。パプアニューギニアのハガハイ族は1984年にはじめて「外界」と接触しました。その結果彼らは、これまで接触のなかったさまざまな新しい病気にも触れることになってしまった為、自分たちの命を救うのに必要な予防接種を施してくれる海外の研究者とコンタクトをとることにしました。しかしこの時この研究者は、彼らのDNAサンプルを採取し、アメリカに送ったのです。その後の研究により、ハガハイ族が白血病やその他いくつかの病気に対して免疫をもっていることが明らかになった為、アメリカの研究者らはハガハイ族の人の遺伝性質に関する特許をアメリカで取得しました。血液を採取された原住民はこのことについて一切知らされませんでした。 

日本の遺伝子を守るために去年、日本政府は知的所有権(特許)だけのための新しい裁判を作ることになりました。又、病気の原因となる遺伝子を集めるために「30万人遺伝子バンク」というプロジェクトを始めました。 

植物か動物か

魚の遺伝子が組み換えされているトマト、黴菌の遺伝子が組み換えされているジャガ芋ができています。こんな野菜をヒンドゥー教徒や他の菜食主義者は食べられません。  

動物虐待

遺伝子組み換え鮭がいます。早く、もっと大きくなるように他の魚の成長ホルモンが組み換えられています。この鮭の頭が大きくなる為に、呼吸ができなくなって苦しみながら死んでしまいます。こういうふうに動物を虐待していいでしょうか。 

異種移植

製薬会社や保健当局は、遺伝子を組み換えた豚や人間以外の霊長類などの動物を、臓器や細胞を人間に移植する「ドナー」として使うことを提案しています。 

豚の神経細胞を使ったパーキンソン病の治療では、遺伝子を組み換えた雌豚を妊娠させてから殺し、胎児を取り出し、頭部を切り落として脳細胞を吸い出し、人間の脳に注入します。 

食人族?

雌豚の肉を豚肉として販売している話があります。それを食べる人は人間の遺伝子を食べることになります。 

動物か人間か

実験や治療などのために人間の遺伝子を鼠などに組み換えています。その動物はいつ動物でなくなって人間になるでしょうか。 

人間をどこまで遺伝子組み替えしていいか

人間の病気を癒す2つの遺伝子工学があります。例えば、患者の病気を癒すために壊れている一つの遺伝子を取り出して、健康の遺伝子を入れ替えるのは体細胞遺伝子療法といいます。この入れ替えた遺伝子は患者の子ども(子孫)に伝わりません。 

お父さんかお母さんが遺伝病をもっていることがわかり、その赤ちゃんに伝わる可能性が高い時に、医者は受精卵の中に病気の原因となる遺伝子を探して、出して、普通(健康)の遺伝子を入れ替えることは生殖系列遺伝子組み換えといいます。この場合は入れ替えられた遺伝子は赤ちゃんの子孫に伝わります。 

遺伝子組み換え技術がもう少し進んできたら子どもが欲しい人はデザイナー赤ちゃんが注文できるようになります。例えば、頭のいい子どもが欲しい人は、東大の先生の知識の遺伝子を買って、ひと胚に組み換えてもらってその子どもを生む事ができます。スポーツの優れた子どもが欲しい人はオリンピック選手の遺伝子を買ってそういう子どもを生むでしょう。しかし、金持ちだけしかこの遺伝子を買う事ができません。科学者によると、このデザイナーベビーが少しづつ別な人類になってくるでしょう。そして今までの人間は新しい超人類の人間と結婚できないぐらい、違うニンゲンでしょう。古い人間は新しい人間の労働者や僕になるでしょう。 

体細胞遺伝子療法や生殖系列遺伝子組み換えの場合は健康の遺伝子をどこから取るかという問題があります。必要な遺伝子を作るためにクローンを作ることになるかも知れません。1978年に鼠を利用してこれをやり始めました。 

遺伝子工学はまだ確実でない

新しい技術で未だ失敗することが多いです。モンサント社が作った遺伝子組み換え大豆には間違えて関係のない遺伝子の断片も組み換えました。この技術が始まった時に一つの遺伝子には一つの役割しかないと考えられましたが、今はそうではない、つまり一つの遺伝子には複数の役割があり得ることが分かっています。それで、望みの役割を植物か動物に加えたいと思ってその役割を規制する遺伝子を組み換えますが、他の役割も規制するかも知れません。望みの役割の他に望みのない役割があるかも知れません。 

体細胞遺伝子療法によって病気が癒された人に癌ができたこともあります。新しい遺伝子は変な所に入ったためです。 

特許は健康の妨げになる

遺伝子治療のことでも特許を設定すればお金になるので会社は特許設定が出来上がるまで秘密にします。ある会社はある病気のことを研究しました、その病気の治療と原因が大分分かってきました。この病気が起こった時、医者が会社にその病気に必要な知識(データ)を与えてくれるよう頼んだら会社は拒否しました。この知識はうちの会社のものですから病気の人のためでも与える必要はないと言っています。 

生命特許によって検査や治療の費用が高くなることがあります。乳癌のスクリーニング検査に使われる1つのヒト遺伝子の特許を申請したアメリカの企業が、イギリスの公共資金で運営されている研究所に対し、この遺伝子を使った遺伝子検査を実施するたびにロイヤルティーを支払うよう求めました。アメリカ企業側は、イギリスの研究所が検査費用としていた額の倍額を請求しています。人がその高い費用が払えないため、検査を受けれなくて癌にかかっている事が分からない為、癌に命を取られる事があるかも知れません。 

特許が研究を妨げる事もあります。会社が遺伝子に特許を持つ場合、許しを与えないかぎり、他の会社はその遺伝子について研究することも許されません。アメリカ国内の研究機関の所長に対するアンケート調査では、4人に1人がバイオテクノロジー企業に雇われた弁護士から、アルツハイマー病や乳癌など様々な疾患の臨床実験の中止を命令する手紙を受け取ったことがあるそうです。事態を憂慮したアメリカ人医師及び研究者のグループが以下のような声明を発表しました。「医師や臨床実験機関による遺伝子検査の実施を阻止するために、特許権を持ち出したり法外な特許料を課したりすることは、医療の受給を制限し、質を脅かし、不当に医療費をつり上げるものです」。 

遺伝子が赤ちゃんを殺す理由になる

遺伝子を使って出生前診断を行って病気の原因となる遺伝子を持つ赤ちゃんを中絶することがあります。病気の原因となる遺伝子を持つ人を雇わない、保険にも加えないことが既にあります。 

生きる受精卵を実験に

女性が普通に妊娠できない時に体外受精があります。この時に一つだけの受精卵だけでなく、いくつかを作るのです。その中から一つだけ選んで女性の体の中に入れます。残った受精卵を利用してヒト胚幹細胞(胚幹性細胞=ES細胞)を取り出したり、クローン作成に利用することがあります。ES細胞は人間の体のどんな部分にでもなれることが出来ます。手になれる、脳になれる、骨にでもなれることができます。 

問題はこの受精卵は生きているものです。既に人間になっているか、人間になる可能性があります。このように実験などに利用していいのでしょうか。 

受精卵をわざと作って(残った受精卵を使わない)クローンを作る研究もしています。人間クローンはもう作られています。ただ、そのクローンを早く(細胞の数がまだ少ないうちに)死なせています。 

2004年に京都大学が実験などの為にヒト胚幹細胞(胚幹性細胞=ES細胞)を提供することにしました。 

不滅な人間?

細胞の中の染色体には尻尾みたいな物があり、それに小さな玉みたいな物がついています。細胞が分かれてからだが成長することにつれてこの玉が落ちます。全て落ちてしまったら私たちは死にます。アメリカの科学者は遺伝子工学によってこの玉が全て落ちることがないようにやろうとしています。 

こういうふうに生命特許は遺伝子(生命)の商品化を進めています。アメリカが世界で一番遺伝子組み換え技術が進んでいる国で、その特許制度を全世界に認めさせようとしています。このために世界貿易機関(WTO)の知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)などを利用しています。 

遺伝子工学は人類のためになるでしょうか、ならないでしょうか。使った方がいいでしょうか。それとも使わないほうがいいでしょうか。この重要な決心を政府や企業に任せていいでしょうか。信仰者としてはどうしたらいいでしょうか。

 

McCartin, Paul (マッカーティン・ポ−ル)
Copyright ©2005.3.15.許可を得て複製
英語原文より翻訳:www.lifeissues.net