日本 プロライフ ムーブメント

緊急避妊薬(ECP)の真実

ここでもう一度、ホルモンを使った避妊薬の働きと子宮内での人間の発育の当たり前な真実について、よく考え直すべきだろう。間違った情報が、「一般的な知識」としての地位を最近着々と築いている事に、立ち向かっていく時が来たのである。

 

命はいつ始まり_いつECPで終わるのか

高校生ならほとんど誰でも、現役の高校生でも昔高校生だった人でも、専門用語を思い出すのは難しいかもしれないが、生命がいつ始まるか、くらいは説明出来るだろう。又、確かな科学者であれば、一般的な生物の教科書に載っている生命の起こりを順を追った説明に対して、疑問を唱える者はいない。避妊薬のプロセスを理解するには、まず女性の生殖能力について復習すると分かり易い。 

毎月の周期:

女性の周期は平均して28日であるが、一人一人の個人差は大きい。この周期は、生理の初日から始まる。やがてしばらくすると、下垂体が卵胞刺激ホルモン(FSH)を分泌する。このホルモンは、卵巣の卵胞とその中の卵子(卵とも卵母細胞とも言う)の生育と発達を促すものである。卵胞はそこで急激に大量のエストロゲンを分泌する。エストロゲンは、子宮頸管を刺激し、受精を助ける粘液を出させるホルモンである。排卵の約一日前に、エストロゲンの量は最高となり、そこで下垂体はLHホルモンの量を増加させる。これは卵胞に卵子を放出させる(=排卵)ホルモンである。 

一度放出された卵子は、受精しない限り、24時間しか生きることが出来ない。排卵すると、下垂体(この時点からは黄体と呼ばれる)はプロゲステロンを11日から16日間分泌する(=黄体期)。プロゲステロンは、この周期での更なる排卵を防ぎ、子宮の内膜の状態を維持し、子宮頸管の粘液を増やしたり減らしたり、また子宮頸管を閉じたりする働きのあるホルモンである。エストロゲンは排卵の後、24時間程で急激に量が減り、又その後増加するが、より大量のプロゲステロンのせいで陰がうすくなってしまう。どちらのホルモンも黄体期の終わる2、3日前から減っていき、その後生理が始まるのである。 

女性の周期の最初の数日間、受精能力は非常に低い。この期間の後、粘液が新しく変わり、受精能力のある5日間が来る。これは一番兆しがある日と、それから3日間の間に最高に達し、排卵の1日か2日後に終わる。最も受精しやすいのは多くの場合、この一番兆しがある日の2、3日前から、1日後までである。最高の兆しの日と排卵の日における妊娠する可能性は、30%である。そして受精能力は、そのピークの日から3日間の内に終わる。 

では、受精していない卵子の寿命は24時間だけなのに、なぜ受精可能の期間は5~7日あるのだろうか?それは精子が子宮頸管の中で5日間位生きられるからで、卵子が放出されたらすぐ受精出来るように待っているからである。 

受精:

卵子は卵巣から放出されると、卵管またはファローピオ管と呼ばれる、卵巣と子宮をつなぐ導管の中に入る。精子は卵子を探して卵管に移動してくる。 

受精とは、精子が卵子と接触する事から始まり、お互いの生殖核が融合して染色体が混ざり合い、新しい細胞を作る事で終わる、一連の事象の結果である。この受精した受精卵と呼ばれる卵子は、染色体を倍数持った大きな細胞であり、それが—人間のいのちの始まりである。 

人間の一生は連続的な営みであるが、受精はその中でも重大な画期的出来事であると言えるだろう。何故なら普通の状況の中から、新しい、遺伝子学的にも独立した人間の生命体がそこで作られるのだから_それぞれの生殖核にある23個の染色体が合体する事により、接合体には46個の染色体があることになる。そこでその二倍の数ある染色体が元に戻り、胎児のゲノムが作られるのである。ここで胎児は、遺伝子的にも個体として存在する。 

ほとんど全ての高等動物は、その生命を一つの細胞、受精卵(接合体)から始める。いつ受精したかが、一人一人のいのちの歴史、又は個体発生のスターティングポイントを表す。 

胎芽:

胎芽とは、発育の最も初期の段階にある生物体の事である。人間で言うと、受精した時から子宮内での二ヶ月目の終わりまでを指す。 

受精した卵は、その後、正式に胎児と呼ばれるのだが、受精した場所から子宮へと移動しなくてはならない。 

受精してから約6日経った頃から、理想的な条件が揃っていれば、胎児は子宮の内側に着床する(子宮にたどり着いて、着床してしまうまでなお数日要する。)。「避妊テクノロジー」の著者等が推測するには、例えいのちを奪う要因が直接的になくても、「約50%の胎児は2週間以上生き残る事が出来ない」。この弱さが、受精した時ではなく着床できた時が、妊娠の始まり又はいのちの始まりであるという考え方の正当性として使われている。この論法からすれば、まだ着床していない人間の胎児に対して(別の言い方をすれば、死ぬ確率の高い新生児に対して、とも言える!)致死的実験さえ行える事になる。しかしこのか弱い者は、疑う余地なく人間である。その子のか弱さは、更なる保護を必要としこそすれ、消滅させられてしまうべきではない。 

ホルモンECPとは何か

性交後に施す「避妊」としてFDA(食品医薬局)が許可しているものとして、6種類の普通の避妊ピル(OC)があるが、それらにはエストロゲンやプロゲスチン(黄体ホルモン)が含まれている。これらの薬は「避妊していない性交」後、72時間以内に大量に飲み、その又12時間後にも大量に飲むように、となっている。一九九八年九月に新しく市場に出たプリベンという薬は、ただ単に、大量のOCが二セットと、それ以前の性交による妊娠を除外するための妊娠検査キットの一式なのである。 

ホルモンECPは、どのように働くのか

性交が行われたのが女性の毎月の周期のいつに当たるかによって、そしてECPを飲むタイミングによって、薬がどのように働くかは異なってくる。例えば、平均28日間の女性のサイクルの内、普通21日間は受精能力はない。卵子は影も形もないのだから、性交しても子どもが出来る可能性は、あまりない。薬が持っているどの効果も、例えば次回の排卵を中断させるような効果もそこで作用するかもしれないけれど、しかし受精、受胎や着床を防ぐ為の効果は、全く必要ない。 

ただ、受精可能な状態が始まった場合は、クラウス博士によると、「性交後ECPを飲む事で体内のエストロゲンの量を増やすと_それは実際は排卵を促進することになる事もある。そうなると、受精しにくくなるというより、逆に受精しやすくしてしまう。」そういう場合、いのちに関わる子宮外妊娠になる危険性が増えることが分かっている。 

排卵の4日前から、性交で妊娠する平均的可能性は、0%から11%へと跳ね上がる。そして排卵の前日と当日には30%にも上がり、その後3日間で、9%、5%、0%へと下がっていく。性交してすぐにECPを飲むと、受精を阻止できないこともある。そうなると、受精して出来た胎児は、ECPによって引き起こされた子宮内膜の変化のせいで着床出来ずに死んでしまう、という結果になるのである。 性交の時に卵子がファローピオ管にいた場合、受精の過程は性交の15分~30分後に始まる。「翌朝」ではどんな避妊作用をしても、すでに遅すぎる。だから一部の研究者は、「性交後に飲む薬というのは、主として、生存能力のあるいのちを子宮内膜を操作することによって殺してしまうことである。翌朝飲んだピルによって妊娠が妨げられた場合というのは、実はこういう薬の作用によるものだったわけである。」と結論付けている。 

妊娠を防いだり妊娠しにくくするのに、ECPはどの位効果的なのか?

ECPについてよく言われる74%の効果という率は、一九九六年のトラッセルやその他の研究所による10回の臨床テストの後続分析の結果である。この確率は、55.3%~94.2%という薬の効果を現わす率の幅の平均値である。最近ワシントン州で行われたプロジェクトでは、効果の率は低いほうが多く出た。これは緊急避妊プロジェクトという、健康の為の適切な科学技術プロジェクト(PATH)等をスポンサーとした、製薬者等の共同研究である。このプロジェクトでは、熟練の製薬者達がECPの処方を書くことが出来るようになっていた。PATHの報告書によると、最初の5ヶ月の実験の結果は、「52%の失敗率」であった。(ここでの失敗とは、子どもが出来て、その後もECPのホルモンによる攻撃を生き延びた事を意味する)。生き延びた子どもの運命には、驚嘆するばかりである。 

このプログラムのもう一つの不安な面は、宣伝によって引き起こされる薬への要求である。この研究をやっている間、ECPホットラインへの電話の数は10倍に増え、1ヶ月で1160件に登った。最初の4ヶ月だけで2700件以上の処方が書かれた。 

もし女性が自分の薬箱の中にECPを持つことが許されたとしたら、ECPを使い過ぎるようになるものかどうかを調べようと、アン・グレイシャー医学博士とデイビッド・ベアド科学博士は、スコットランドのエディンバラで、女性達を二つのグループに分けて研究した。そして以前にECPを服用したことがあったり、中絶手術を受けた経験のある女性1083人が選ばれた。ミネソタ州ロチェスターのマヨクリニックの婦人科医、マーガレット・ファイファー医学博士によると、これらの女性たちは、厳密には、全女性の代表者になり得るとは言えない。何故なら中絶やECPの使用の経験により、他の女性よりECPを使う可能性が高いからである。彼女達は学歴も高く、薬の試用方法については書面と口頭で指示が与えられた。 

ここで得たデータは1071人分のものが有効だった(そのうち549人には自宅でECPが持てるという条件があり、他の522人には医師の処方箋がないとECPを手に入れられないというコントロールされた条件があった)。そして2年間のテスト期間中に少なくとも一回はECPを使った率が、コントロールされたグループでは27%だったのに比べ、試験グループの方の結果は47%だった。又それぞれのグループの10%は、期間中一回以上ECPを使っている。ある女性は4ヶ月間で4回以上ECPを使ったので、テストからはずされている。試験グループの方では28件妊娠が認められ(5%)、コントロールグループでは33件(6%)あった。その内、試験グループでの8人、コントロールグループでの4人の妊娠は、緊急避妊を使ったサイクル中での妊娠と見られる。ECPを生き延びた子ども達は、その後中絶されている。 

ECPの副作用は?

約50%の女性が吐き気をもようし、実際20%が嘔吐している。もっと深刻な副作用は子宮外妊娠の可能性が増すことである。プリンストン大学の持つECPを奨励するサイトでも注意している。「ECPを使用した場合、避妊用ピルを普通に長い期間使用した時にごくまれなケースとして報告されている、危険またはいのちに関わる合併症と同じ副作用が出ることもある。それら合併症は:血栓静脈炎(足に出来る血塊)、肺血塊、心臓発作、脳卒中、肝障害、肝腫瘍、胆嚢炎、そして高血圧等である。」 

ECPを使うのに危険な要因は?

喫煙する女性や、以下の条件に当てはまる女性は、ECPの使用をやめた方がよいとされている。足や肺に血塊がある人、乳ガンの人や生殖器官にガンがある人、脳卒中、心臓発作、それから糖尿病、肝疾患、心臓病、腎臓病、ひどい偏頭痛がある人や高血圧の人は止めた方がよい。 


 

Documents, Official(ドキュメント, 公文書)
米国カトリック司教会議
2000年1月25日
2004.5.22許可を得て複製