日本 プロライフ ムーブメント

彼女がキレるとき–月経前緊張症(PMS):パート2

PMSに穀果菜食(ベジタリアン)が有効

ハーバード大学の研究者たちは、24名のPMSの女性を対象として、炭水化物(砂糖のような精製した炭水化物でなく未精白の穀類、野菜、豆、果物などの複合炭水化物)が豊富な食事を与える実験を行いました。

その結果は驚くべきものでした。

食事を摂取して90分から180分後、 PMSの特徴であるうつ、憤り、混乱、甘いものに対する強烈な欲求などがおさまってしまったのです。

さらに、記憶力や、判断力も明らかに改善していました。その理由について研究者たちは、血液中のトリプトファンが相対的に増加しているためであろうと言っています(1)。

パリセントルイス病院のセルファテイ先生は植物から抽出した、代表的な抗酸化物質であるフラボノイド (Daflon 500 mg)を1908名のPMSの女性に投与した結果、37.4%の女性が完全に症状が消え、60%が症状緩和されたそうです(2)。フラボノイドは、植物とくに大豆などの豆科の植物に多く含まれている抗酸化物質ですが、こんなに効果があったとは驚きです。

穀果菜食(ベジタリアン)はフラボノイドのような抗酸化物質をバランスよく含み、インスリンレベルを下げ、脳内物質のセロトニンなどが枯渇しないようにしてくれます。PMSで悩んでいる方にはぴったりのライフスタイルです。

前回もお話しましたが、マグネシウム、マンガン、亜鉛などの微量元素の欠乏がPMSの発症に関連があることが指摘されています。農薬をたくさん使う農業になってしまったせいか、最近食物のなかの微量元素が少なくなっているようです。知らず知らずのうちに、私たちの体が微量元素欠乏になっている可能性があります。しかし、不足を補うためといって微量元素を薬のように用いることは危険です。これが多すぎると体に毒になるからです。また、微量元素間には一方が増えれば他方が減るという拮抗関係がありますので、へたするとバランスを崩しかねません。基本的には、食物から摂取するようにして下さい。マグネシウムは大豆やナッツ類、バナナ、海藻、人参、ほうれん草などから摂取するようにするとよいでしょう。マンガンは海藻、ナッツ、緑黄色野菜に多く含まれています。亜鉛は胚芽や豆類、海藻から摂取すればよいでしょう。

5)アルコール、タバコ、カフェイン

ジョンスホプキンス大学のマックロード博士らは、アルコール依存症の両親がいる家庭に育った女性は、 PMSの症状の一つでもある「不安感」がとても強く、不安をまぎらわすためにアルコールに依存しやすいと言っています。

(3)カフェインを含んだ飲料はPMSでみられる、不眠やイライラ、不安感などをさらに悪化させるので避けた方が無難でしょう。緑茶、ウーロン茶(以外と多い)、コーラ、コーヒーを飲み過ぎないようにして下さい。カフェインを含んだ飲料を制限するだけでかなり症状が抑えられると考えている臨床医も多くいます。

PMSに対して私の行っている治療

私と中国系カナダ人Yao Fuei Lin先生と共同で開発したリプロキュアが、劇的に効きます。これは、子宮内膜症、子宮腺筋症、月経痛のための薬草ですが、PMSにもよく効くことがわかりました。

月経前症候群の原因や治療についてはまだ医師のあいだでもコンセンサスがありませんが、わたしは食生活の改善や運動療法によっても、かなり良くなることを経験しております。必要な場合に限って精神安定剤や、乳房痛をおさえるパーロデル、むくみをとる利尿剤を短期間使用します。排卵を抑制する目的で、経口避妊薬が広く臨床的に用いられていますが、効果に対して疑問をもっている研究者も多く、私も使っていません。漢方では、女神散、五苓散、などをよく使います。月経前症候群については、最近やっと注目されてきた病気ですので、患者さんにお聞きしますと、産婦人科でもあまり相談にのってくれないところもあるようです。できれば、産婦人科と心療内科の複数の医師に相談されることをおすすめします。

(1)(Sayegh R; Schiff I; Wurtman J; Spiers P; McDermott J; Wurtman R :The effect of a carbohydrate-rich beverage on mood, appetite, and cognitive function in women with premenstrual syndrome. : Obstet Gynecol (United States), Oct 1995, 86(4 Pt 1) p520-8)
(2)(Serfaty D; Magneron AC: [Premenstrual syndrome in France: epidemiology and therapeutic effectiveness of 1000 mg of micronized purified flavonoid fraction in 1473 gynecological patients] : Contracept Fertil Sex (France), Jan 1997, 25(1) p85-90)
(3)McLeod DR; Foster GV; Hoehn-Saric R; Svikis DS; Hipsley PA :Family history of alcoholism in women with generalized anxiety disorder who have premenstrual syndrome: patient reports of premenstrual alcohol consumption and symptoms of anxiety. : Alcohol Clin Exp Res (United States), Jun 1994, 18(3) p664-70 )

Tominaga Kunihiko (富永 國比古)
産婦人科 医師
米国公衆衛生学博士
Copyright ©2018.7.27.
2022.5.19掲載許可取得