日本 プロライフ ムーブメント

先端医療の論じられ方

私の出身は科学史で、もともとの研究テーマはヨーロッパ近代以降の医学・科学における生命観の歴史的な変化です。そしてここ15年ほど、歴史研究をベースにして先端医療と生命倫理の在り方も検討してきました。また、そもそも私は、自己決定権を基盤としたアメリカ型の生命倫理学に違和感をもっていましたので、主催者の思惑通り今回のシンポに際しても、アメリカ型の生命倫理学を擁護しているかに見受けられる岡本さんの『異義あり!生命・環境倫理学』(ナカニシヤ出版、2002年)を再読し、批判を加え、議論を交わそうと思って参ったわけです。しかし、ただいまのお話を伺って、むしろ岡本さんと私の問題意識は重なっていると感じました。岡本さんのおっしゃったように私もまた、現状から様々な問題性をえぐり出して議論の場を創っていくこと、それが生命倫理学の役割だと思っています。結論は出ないとしても、永続的な議論の場を形成すること自体が重要だという立場です。したがって、当初の意気込みと話の予定を変えざるを得ないので、いささか当惑しているのですが、ともかく「先端医療の論じられ方」という本論に入ります。 

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