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友を作るための戒律

今から二千五百年以上も前、人はモーゼから十戒を授かった。それから何世紀が過ぎ、18世紀の啓蒙主義を経ても、いまだにその戒律の有効性と重要性に疑いを差しはさむ余地はない。しかしなんとかそれを実行しようと苦労している時に、再びモーゼが二枚の新たな石板を手にかの山から下りてきて、人が他人、神、人生、そして自分自身とよりよい関係を築くためのルールを説き明かしてくれたなら役に立つに違いない。その新たな十戒とはおそらく次のようなものになるであろう。

1)人間性とうまくつき合う

 人間というものは過ちを犯すものであり、傷つき、恐れ、罪深い。およそ完璧とはほど遠い歴史をたどり、その共同体や家族、教会にしても同じことである。だから何人をも非難したり、告訴したり、他人に腹を立てたりしてはならない。それは人間の特性と呼ばれるものである。それとうまくつき合うこと。嘆き悲しめ、しかしののしるな。非難することではなく、天地創造以前の混沌のことを考えてみよ。我々の先祖はこれを「原罪」と呼んだ。今、家族というものが機能しなくなっていると言われているが、常にそのようなものだった。不機嫌になるなかれ。

2)自分の持てるものに満足せよ

 自分の傷を通して世間を見ている限りは、自己憐憫、苦痛、嫉妬心で胸がいっぱいになる。しかし自分の持てる最良のものというプリズムを通して見るならば、嫉妬は賞賛へと変わり、他人の良いところに気付いてまた驚かされるであろう。人は二種類の心を持っている。広い心には神の姿が描かれ、天の恵みを常に忘れない。一方狭い心は、傷ついたことからくる苦痛と嫉妬で満ちている。我々はこの目も耳も、ことばも気持ちも、広い心の方に向け、自分の持てる最良のものをもっとよく知ることである。

3)愛してくれる人に愛を示せ

 人生にはたった二つの悲劇しかあり得ない。つまり愛するということをせずに生涯を過ごすという悲劇と、自分を愛してくれる人々に対して愛情を表すことなく生涯を過ごすという悲劇である。友人とはもっと仲良くすべきである。愛情や感謝の気持ち、賞賛、悔恨の念をもっと素直に表現すべきである。愛してくれてありがとうと感謝せよ。彼らの愛を決して当たり前だとか、そうする義務があるなどと思ってはならない。もっと多くのほめことばを口にせよ。常に「ありがとう」の一言を忘れずに。

4)純真であれ

 心の痛みや不安の多くは我々に純真さが欠けているために生じるものであり、またそれを認めないので、人は合理作用(訳注:自分の行為、考えなどをもっともらしく理由づけすること)したり苦痛を覚えたりする。世慣れたために自らを不幸に陥れてしまったの。いろいろ知っているにもかかわらず、幸せではない。純真さを知るがよい。幼子や処女に対しては天国の門はより広く開かれていると聖書も断言している。サンタやイースター・バニーを再び信じるようになるがよい。うぶで純真であることをもう一度楽しめ。メリーゴーランドに乗るもよし。厳粛かつ正直な告解をすぐに行うこと。

5)身体を大切に

 自分の身体を恐れてはならない。その良さも、セクシャリティも、身体がもたらす悦びも、疲れも、その限界も。いずれにせよただ一つしかない自分の身体なのだから。大事にすることである。酷使したり、甘やかしてだめにしたり、軽んじたりしてはならない。身体は教会であり、聖霊の宮である。十分な休息と十分な運動を与え、十分に鍛錬し、そして十分尊重せよ。

6)異性と仲良く

 父親と母親が、夫と妻が争っている。子どもたちが苦しんでいるのも無理はない。性別の問題を決して軽んじてはならない。男女が新しいレベルで互いを尊敬し、思いやる必要が生じている。異性が持っている最も恐ろしい思える特性を理解するよう努めよ。

7)父親を大切に

 父親に対する飢餓感というものは、西洋諸国で今日人々が最も強く感じている飢餓感の一つである。自分の父親、他の父親、父なる神と和解せよ。父の恵みが、締め付けられている心を解き放ってくれるであろう。彼の力量不足は許してあげなさい。自分が父親を求めているのだということを認めることである。

8)限りある生を受け入れる

誰にも死は訪れるものである。年を取ることや、しわ、白髪、もう若くはない身体と仲良くつき合うこと。受け入れ、なるがままにし、悲嘆にくれ、そして前進せよ。若者を祝福せよ。自分の持つ知恵を彼らに分け与えよ。残りの人生を人に捧げること。若者の沸き立つ喜び、美しさ、人を引きつける活気から元気をもらうがよい。

9)ユーモアを大切に

 笑いの中で人は神の超越性に気付く。ユーモアは悲劇的要素を乗り越えさせてくれる。笑いは空飛ぶ翼を与えてくれる。トーマス・モアは、今まさに自分の首を斬ろうとしている男に向かってジョークをとばした。それは我々が軽視しがちな、高潔な素質である。

10)神と親しくなれ

 福音とはよきアドバイスというより、「よき知らせ」としての役割の方が大きい。福音とは神がどれほど我々を愛して下さっているか、また我々のためにすでにどんなことをして下さったのかを教えるものである。母親が子どものことを誇りに思うのと同様に、神は我々のことを誇りに思っていて下さる。そのご好意を享受することができて初めて心に平安が訪れる。愛であり復活である神と近づきになれ。神はあくまでも心安く、そのお顔からは素晴らしいシンフォニーのように光が放たれている。死者をよみがえらせるその力は、最後にはすべてよしとなること、賢明に生きたもの全てが救われるということを我々に確信させるものである。聖書の中で365回も「恐れるな」と呼びかけている神について行こう。信じて歩め。

Ron Rolheiser OMI
ロン・ロルハイザー
英語原文より翻訳: www.lifeissues.net
Copyright ©January 1, 2001
2002.9.5.許可を得て複製