日本 プロライフ ムーブメント

出生前診断のページ:出生前診断を受ける方々へ私から贈りたいと思います

(初めてメールさせていただきます。1年前、妊娠16週で性染色体異常がみつかり、娘を殺してしまいました。)

出生前診断・・・近年の医学の発達はものすごい
もう、人間はついていけなくなりつつある 
私はけっして医学の発達を非難はしない
ただそれについていけない社会を憂いている

アナタは妊娠20周目のお母さん 
「あぁアナタのお子さんは障害をもちますね」
「この病気は治る見込みはありません」
「出産を諦めることもできます、今なら」
と言われたらあなたはどう思うだろうか?

医師が言うことは正しい
医師は可能性を言う

確かに子どもが障害を持つかも知れない
確かに障害は治らない
確かに出産をあきらめるなら今だろう

でも、それでいいの?

私は身体障害者 
今の医学なら妊娠20周目で私の病気は発見できる 
今この時代に私がまだ母のお腹にいたら
私はこの世に存在できただろうか?

私はまだ医学が未発達だった人間 
それでよかった!

私は障害を持って生まれた 
私の障害は治らない 
でも、出産してくれた母に感謝

障害者は不幸? 
だったら健常者はみんな幸せなの?

私は身体障害者
でも幸せ 
なぜ?

障害をもっていてももっていなくても 
みんな同じ一人の人間 
そう私は人間 
だから幸せを感じることができるんだ

喜怒哀楽
全てを感じることができる
それが幸せ

2つの選択肢 
決めるのはアナタ
どちらを選んでもいい
選んだ勇気をたたえたい

ただ一つ
体に障害があっても不幸ではない
それだけは知っていてほしい
1998.4.2 

ある方とのメールでのやり取り 

初めてメールさせていただきます。1年前、妊娠16週で性染色体異常がみつかり、娘を殺してしまいました。 初めての子供で、妊娠が分かった時はとても嬉しく思っていました。 もちろん育てていく自信がなかったし、私の方が先に死んでしまう。 彼と別れて(彼が出産反対だったので)1人で育てようか、悩みました。 結局自分の選択というより、親族に説得されて(周りのせいにしている訳ではないけど)中絶に至りましたが、 いまだにこの選択が正しかったかわからず、娘を殺したという罪悪感があります。 のぶさんのHPを見て、涙が止まりません。 私は、妊娠するのが恐いです。する資格もないように感じます。のぶさんはどう思いますか? お時間ありましたらご返信いただけると嬉しいです。 

***** 

はじめまして。きっと、私へメールをするのには、勇気と決断があったことと思います。また、この1年間、 きっと様々な苦悩があったことでしょう。心中をお察しいたします。がんばりましたね。 あなたがしたことは、みんなで決めたことであり、あなたが一人で背負う問題ではないように感じます。 最初の娘さんは、みなさんの選択に「正答」はないと思います。みんなで考え、悩んだ末に出した結論なのですから、 それがあなたのご親族の中の正答だと思います。 あとはあなたの心の中で、いつまでも育ててあげて欲しいなと思います。あなたが、 娘さんのことを忘れないでいてあげることが、あなたにできる唯一のやさしさのように私は思います。罪悪感ではなく、 あなたと一緒に年を重ねることが大切かと思います。 私のHPをみて、涙を出されたとのこと。それでいいと思います。ありがとうございます。 娘さんからいろんなことを学びましたね。それが、一緒に年を重ねている、 つまりお互いに成長しているということかと思います。 次のお子様については、あなた自身がお子さんがほしいかどうかが大切のように思います。 最初の娘さんをもう少し大切にしたいのならば時期を待った ほうがいいでしょうし、あなたの心にゆとりが出てきたのならば、お子さんを育てることを経験してもいいでしょう。 生まれてくるお子さんに、10数年後、き ちんとお姉さんがいたことを素直に伝えられる、そんなお母さんになれたら、 娘さんもあなたを理解してくれるのではないでしょうか? 苦しむのではなく、心の中で共存してほしいと私は願います。 (2005.7.10) 

出生前診断に関しての私の考え 

1.診断技術の進歩について 

私は診断技術の進歩はますます進むべきと考える。妊婦や胎児への安全性はもちろん、診断確度をもっと向上させ、さらに非侵襲的診断技術を確立していただきたい。特に血清マーカー法などのように低侵襲、非侵襲的検査法の技術向上に強い期待をしている。 

2.診断の目的について 

現実的には、診断により胎児が身障児の確率が高いことが判明すると、出産をあきらめる夫婦がほとんどである。しかし、本来の出生前診断の目的は違う と思う。出生前診断の技術により身障児の出産の可能性が高くなった際には、早期に医師団の結成、医療設備の整った病院での出産、親や親族への早期通知による事前知識の習得などに役立てるべきであると私は考える。 

3.現実の問題

身障児の出産の可能性が高くなると、医師らは親と親族に対し、障害の内容や可能性を告げ、出産をするかの意志の確認をする。確かにそれは重要な行為 である。しかし、次のことが欠けている場合がある。それは、身障児の親の気持ちや身障者として成長してきた私たちの強さや喜びまで、医師らが説明するのは 難しいということである。しかし、それが行われなければ、親や親族は、片手間の情報でしか判断が出来ないということである。しかも、今の社会システムで は、出産の意志を確かめる前に実際の身障者や親たちと直接に話を聞いたり、接したりすることは、実質できない。 

4.身障児の出生に関し

身障児を生むことによる、親の‘負担’を危惧する声は大きい。しかし、私は言いたい。子どもを生むことは多かれ少なかれ負担は増えることになる。大きさが違うだけである。その責任を負えないのならば、子どもを生もうだなんて考えないでいただきたい。どのような子どもでも、それはあなたのお腹から出て きた素敵な一人の人間である。それを自分の負担が増えるからという情けない、親の思い込みだけで出産をあきらめることはしないでいただきたい。 

5.身障者自身の負担について

よく身障者は生活するのが大変であり、不幸な存在だという声を耳にする。しかし、私は言いたい。身障者でなければ生活は楽なのか、身障者だと生活は 大変なのか、身障者でなければ幸せなのか、身障者だと不幸なのか。戦場にいる子どもはどうだろうか。飢えに苦しむ地域で生を授かったらどうだろうか、体に 障害があっても毎日が笑顔にあふれていたらどうだろうか、毎日が充実していたらどうだろうか。なぜ、今、私は幸せなのだろうか。 もし、あなたが「身障者は不幸だ」と考えるのならば、幸せとは何なのかをもっと考えていただきたい、もっと視野を広げていただきたいと思う。 

6.社会の負担について

身障者が生活するには、医療費・福祉費の観点から、経済的に負担になるとの話を時に耳にする。しかし、私は言いたい。だったら、人を殺すための軍事費を0にしてから言え! 人を殺す金があるのに、人を生かすための金はないのか。金は何のためにあるのだ? 人間が幸せに生きるために金を使うことが最優先ではないのか。社会保険や福祉費とか、という狭い観点で物事を捉えていては話にならない。スカッドミサイル一発で何人の身障者の一生の社会的負担額を生み出せるかを計算してから、論じていただきたい。 

7.出生前診断を受ける方たちへ

出生前診断を受けることは止めないし、どんどん受診すればよいと思う。ただし、診断前に胎児が身障児の可能性が示された時にどう対応するかを事前に 決めておく必要がある。本来は、妊娠を考える、すなわち子どもがほしいと思った時点で考える必要がある問題である。けっして、安易な考えで受診などしない でいただきたい。もし、事前に身障者の声が直接聞きたくなったら、いつでも私へメールをくれればよい。 

8.出生前診断を受け、出産をあきらめた方へ

出生前診断を受診したということは、あなたはきっと子どもがほしかったのだろう(そうでなければ早期に堕しただろうからね)。その中で出産をあきらめる決断をした勇気をたたえたい。恐らく苦悩や葛藤があったことだろう。そのことは思い出したくもないかも知れない。しかし、それを乗り越えてほしい。 その時、あなたは納得した上での決断だったのだろう。あなたはもう苦しむ必要はない。その経験を今後に役立てればよいのだ。また子どもがほしくなったら、 どうするだろうか。どちらを選択してもよい。ただし、身障者は不幸でもないし、身障者である前に一人の人間である。それをあなたは新たに知った上で、出生前診断を受診していただきたい。 

9.出生前診断を勧める医師らへ

医師らは医学的な側面からの可能性を告げる必要がある。それはわかるが、それだけでは片手落ちと思う。あなたは親の気持ちや症者本人の考えを代弁することは難しいのである。その難しさを知った上で、出生前診断に関しインフォームドコンセントを実施すべきである。失礼ながら、医者はけっして満足な存在ではない。身障者が身障者の前に一人の人間なのと同様に、医師は医師である前に一人の人間であるということを、ご理解いただきたいと思う。 

10.身障者であるあなたへ 

あなたは身障者として生を授かった。それには必ず意味がある。あなたは社会の先駆者、開拓者なのだ。あなたと知り合った人は‘身障者は身障者である 前に人間なのだ’ということを体感してもらえる生活を、あなたは送っているだろうか。自信をもって生活しているだろうか、充実した毎日を過ごしているだろうか、笑顔にあふれた人生だろうか。 それらを実行しよう! そうすれば、あなたが身障者として生を授かった意味は大きい。恐らく、あなたの知り合いの方たちは、身障児を生むことに対し、ためらいは少なくなるだろう。あなたの笑顔に自信を得るだろう。身障者は身障者である前に一人の人間であることを知るだろう。さぁ、多くの人と知りあおう、もっといろいろなことに 挑戦をしよう、楽しいことをどんどんやろう、そして毎日を楽しく、充実して過ごそうではないか! 1998.11.13改訂 

Suzuki Nobuyuki (スズキ ノブユキ)
鈴木 信行 
出典 NOBU CAFÉ(医療・福祉ゾーン) 
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