日本 プロライフ ムーブメント

「初期中絶方法の比較と考察」

① 経口中絶薬による方法
② 吸引手術による方法

母体全身に与える影響。

① は黄体ホルモンの作用を阻害するようにまず脳中枢の下垂体に作用するので、全身の健康に対する影響の恐れがある。
②は脳中枢に作用する恐れは無い。

アクセス

①による場合は事前に適応者かどうかの検査を厳しく行う必要がある為、②による場合よりも回数多く診察を受ける必要がある。特に誤診すると死の危険のある子宮外妊娠を完全否定するには、経験ある産婦人科医でも簡単ではないからである。
① の適応者ではない場合として、平成16年10月25日厚生労働省医薬食品局から、外国での情報として以下の項目をあげている。

#医師による経過観察が受けられない人、特に服用後2週間、容態が急変した時に速やかに医療機関を受診する事が困難な人。
#最後の月経が始まった日から49日を超えた場合は、この医薬品の適応の対象となっていません。また、次の方は服用してはいけないとされています。
 ・ 卵管妊娠(子宮外妊娠)
 ・ 子宮内避妊具(IUD)使用者
 ・ 副腎に障害のある方
 ・ ステロイド薬物治療を受けている方
 ・ 異常出血のある方、抗凝血剤を使用している方
 ・ ミフェプリストン、ミソプロストールあるいは同様の薬に対してアレルギー反応を持っている方

事後の経過

①は頭痛や下腹部痛があり、日本の治験でも59%で嘔吐や腹痛があり、胎児の排出不完全や大量の出血の為に、結局数%で掻把手術等の追加が行われている。FDAは5~8%で手術が必要となったとしている。外国文献においても膣からの出血が9~16日継続し(時に輸血が必要な程の大量)8%の女性に30日以上の遷延出血が認められている。②における手術時間は10~15分で通常静脈麻酔で行われるので、痛みは少なく当日帰宅可能である。追加手術などは極めてまれで、①のような長期間に渡っての出血、腹痛、嘔気、頭痛症状はない。また①は不潔な自宅で医学的知識のない女性自身で行われる事、また排出が不完全な場合などで時に死に至る感染による敗血症の可能性が有り、腹痛や発熱が無くても、白血球数など血液検査での通院も必要となる。(FDAの報告では2011年に敗血症で6人死亡)②は清潔な手術室で医師によって医療として行われ、排出の確認も行われるのでその危険は非常に少ない。

中絶後遺症候群(PAS)

方法の如何にかかわらず、中絶後には肉体面の他に精神面にもダメージが現れ、
トラウマとなって生涯苦しめられる場合が有る。
① は母親自身が薬を飲む行為で中絶が行われ、排出された大きな血塊の中の、我が子の遺骸を見ながら自らの手で処理し、容器に入れ次回受診時に確認のため医師に渡し、超音波検査などで子宮内の遺残の有無の検査を受けなければならない。料理などで似た光景を見ると、フラッシュバックしてパニックを起こすなど、長期に渡り重いトラウマを負う事がある。
② は全て医師の手で行われるので、母親が直接排出された胎児の遺骸や出血塊を目にする事はない。

医療費

①は通院回数が前後共に②よりも多く、しばしば必要となる追加手術や長期の出血などでの医療費で、②の場合よりも高額になる。

考察

初期中絶法は手術が掻把法で行われて、かつ医療レベルが不安定な国においては①経口中絶薬も選択肢に入れる場合がある。しかし近年初期中絶において②吸引法が導入され、更にEVA・自動吸引法からより安全で体の負担の少ないMVA・手動吸引法へと進歩している現在、特に世界的にみて医療レベルの高い日本においては①経口中絶薬の必要性は全く無いと言える。それゆえ日本において①経口中絶薬の製造販売に承認を与えるのではなく、厚生労働省の通達やWHOの勧告に従って、初期中絶においては②吸引法それも更に体への負担の少ないMVA・手動吸引法が全ての日本の産婦人科医で行えるように徹底する事こそ、行政の責任と思われる。

Hirata Kunio(ヒラタ クニオ)
平田國夫
医学博士
2022年1月30日掲載許可取得日