日本 プロライフ ムーブメント

緊急避妊ピルの副作用と問題点

ピルの成分と副作用

日本で現在ピルと言われているものには、いわゆる経口避妊薬と月経困難症治療薬そして緊急避妊薬の3種があります。経口避妊薬も避妊目的以外に月経困難症や子宮内膜症にも使われています。最近この中の緊急避妊薬を医師の診察処方無しで、ドラッグ等で自由に購入出来るようにしようとする運動が起きています。はたしてそれで良いのかを知る上で、ピル全体から考えてみましょう。 

ピルは合成エストロゲンと合成プロゲステロンの二種の分解し難い合成女性ホルモンの合剤が一般的で、合成エストロゲンとしてエチニールエストラジオールが使われています。一方合成プロゲステロンは世代ごとに種類が異なり第1世代・ノルエチステロン、第2世代・レボノルゲストレル、第3世代・デソゲストレル、第4世代・ドロスピレノンと分類されています。ミニピルはレボノルゲストレル0.03mgのみ含有の経口避妊薬ピルの一種です。黄体ホルモン活性は世代が変わるにつれ何倍も強力になっています。第3世代や第4世代ピルは体重増加やニキビ等の男性化症状が出にくいとも宣伝されますが、恐ろしい血栓症のリスクは2倍にもなるとWHOが注意しています。 

第4世代ピルの超低用量ピル、ヤーズは日本では月経困難症用として認可されています。緊急避妊薬ノルレボはレボノルゲストレル1.5mgを一回に飲みますが、これは毎日1錠飲むミニピル50錠分です。 

これらのピルの避妊機序は
1)排卵を抑制する(約10%前後に突破排卵がある)
2)頸管粘液の粘張性を増し精子の上昇を遅らせる
3)子宮内膜に作用し受精卵の着床を阻害したり、着床直後の受精卵を流産させてしまう極早期化学的中絶作用があるとされています。

緊急避妊薬の場合は、特に3)の作用が強調されています。性交後受精すると5~6日で受精卵は子宮内膜に到達します。緊急避妊薬を服用すると急激なホルモン量の変化により子宮内膜は3日から2週間以内に剥落して消退出血(擬似生理)という形で体外に排出されます。受精卵の着床を阻害するだけではなく、着床後の胚を排出したりその成育を阻害したりします。 

副作用を検討するには、これらの作用はピルが女性の体のどの部分に作用して起きるのかを知る必要があります。ピルは卵巣や子宮組織に直接作用するよりも、まず脳の視床下部下垂体系に作用して、卵胞刺激ホルモン及び黄体化ホルモンの分泌を抑制してしまう事によって作用しているのです。脳のこの部分は全身の健康を保つ為の中枢で、ここが狂わせられると体全体に変調を来す危険があります。緊急避妊薬は勿論他のピルも、健康な女性の身体を中枢から病的な異常な状態にさせ、その副次的効果を目的とした物質なのです。恐ろしいことに一度でも服用するとその悪影響は長期間残ってしまいます。全てのピルの添付文書には副作用として一応血栓症の事も書かれていますが、一般的なものとして吐き気、頭痛、腹痛等が記載されています。 

厚労省の回答

日本で1999年に経口避妊薬ピルが解禁された時、生命尊重センターが英国の実情を調査し、ピルによる死者や血栓症で一生苦しむ女性をビデオに収めました。20年経ち日本でも一般的な副作用だけではなく、死亡例や血栓症など重篤な副作用が起きているのではないかと厚労省に問い合わせたところ、-「2004年から 2020年8月17日までに独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告された経口避妊薬(いわゆるピル)等での重篤な副作用症例は3238例であり、内訳は経口避妊薬(緊急避妊薬除く)814例、緊急避妊薬17例、月経困難症治療薬(ヤーズ、ルナベル他)2407例です。また、重篤な血栓症の報告は1678例あり、うち死亡症例(死因問わず)は27例です。死亡症例27例の内訳は、経口避妊薬(緊急避妊薬除く)9例、緊急避妊薬0例、月経困難症治療薬18例です。」-との回答がありました。重篤な血栓症とは脳梗塞、肺動脈血栓、深部静脈血栓、大脳静脈洞血栓など生涯苦しむ深刻な疾患ばかりです。 

2011年解禁されたばかりの緊急避妊薬による重篤な副作用については、-「緊急避妊薬の重篤副作用症例17例について、副作用名と投与開始日から発現日までの日数の内訳は、異所性妊娠5例(20日2例、17日及び47日各1例、不明1例)、自然流産7例(28日2例、19日及び25日各1例、不明3例)、稽留流産4例(17日、30日、35日、44日各1例)、切迫流産1例(不明)です。」-との回答でした。異所性妊娠とは子宮外妊娠とも呼ばれ、お腹の中で多量の出血を来すなど、重篤な状態を引き起こす可能性があります。発見や対応が遅れると、妊婦の命にもかかわる病気です。以上の重篤な副作用の発生は、他のピルは連日飲み続ける中で起きてきますが、緊急避妊薬はたった一度の使用で短期間に起きている事は重大です。女性の健康といのちを守る為にも緊急避妊薬の医師の処方無しの購入自由化は決して認められてはならないと思います。また今日本で各種ピルによる死者や血栓症など生涯苦しむ重篤な副作用が、非常に多く発生し続けている事は、もっと広く伝えられなければならないと思います。

Hirata, Kunio (ヒラタ・クニオ)
医学博士 平田國夫
出典 生命尊重ニュース 2020年10月号
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