日本 プロライフ ムーブメント

中絶の浸透

人口調査研究所(PRI)は1996年4月18日、国際家族計画連盟(IPPF)についてのレ ポートを発表し、それにはIPPFが発展途上国全域において熱心に中絶を促進実行しよ うとする様が詳述してあった。

(国際家族計画連盟がいかに世界で中絶を促進しているか)

人口調査研究所(PRI)は1996年4月18日、国際家族計画連盟(IPPF)についてのレ ポートを発表し、それにはIPPFが発展途上国全域において熱心に中絶を促進実行しよ うとする様が詳述してあった。

その最初のレポートの発表後も、IPPFが中絶合法化と実施の促進に、特に発展途上 国において力を入れている事実を明瞭に表す新しい証拠資料をPRIは数多く入手して いる。

国際家族計画連盟(IPPF)は世界最大で、且つ一番の影響力を持つ家族計画団体であ る。1952年にボンベイで創始されて以来、IPPFは当初の9つの国ごとの関係団体から 140の家族計画協会(FPA)にまで大きくなり、それぞれの国の人口問題に関わる政策に 未曾有の影響を及ぼすようになった。IPPFはここ25年間だけでも、その目的の遂行の 為に20億米ドル以上に当たる資金を(これらはほとんど先進国政府から出ている)費 やしている。1

創始当時のIPPFの使命は、「世界各国における家族計画サービスの設立と維持」で あった。ところが15年程前から、純粋な「人口管理」団体と見られる事をIPPFは不本 意と思うようになり、最近では「信頼できる親づくり」や「家族や若者の健康保持」 といった名目を強調するようになっている。2ところがこの表向きの姿勢にもか かわらず、実は国際家族計画連盟ほど世界中に中絶を広げている団体はないのである 。すでに得た成功に安んずるに飽きたらず、世界中すべての国での中絶合法化に向け て、どんな方法を使ってでも助力していく意思を何度も力説しており、また中絶セン ターの建設や装備、中絶手術に必要な専門知識や技術の提供を大規模に展開していく 、という意気込みを表明している。

このレポートでのIPPFやその他の文書から分かることは、国によって異なる慣習や 法律や姿勢にかかわらず、IPPFが明らかに世界各国での中絶合法化を積極的に扇動し ようとしている事である。

あらまし

「中絶を規制する法律は、どんな小さな規制でも将来的にすべて無効にし、中絶を 自由化させよう」と、国際家族計画連盟は30年以上に渡り、世界中で運動してきた。 その姿勢は、以下に記述してあるIPPFの主要方針声明のすべてに現れている。

IPPFの「2000年の展望」戦略プラン

「IPPFは世界規模の中絶合法化に向けてトータルに関わっていく」という最も決定 的な声明は、その1992年の戦略プラン「2000年の展望」に含まれている。これはそれ ぞれの国で機能する140の家族計画協会(FPA)のメンバーにより満場一致で承認され たものである。FPAメンバーにとっては「進撃命令」と考えられるこの「2000年の展 望」文書の中で、現在法律で中絶を禁止している国での中絶合法化の実現をIPPFは何 度も明瞭に要求している。

[IPPFとそのメンバーである協会]…家族計画や安全な中絶サービスの情報や弁護や アクセスを通じ、母体と子どもの健康について、特に危険な中絶を排除し安全な中絶 について強調していくこと。

活動:FPA…それが可能な地域では、女性の「安全な中絶手術を受ける」権利につ いて知らせる…中絶を規制する法律や政策、習慣や伝統を分析し、それらを変えてい く必要性を説く…性・生殖医療サービスを促進する他の団体と協力し、政府が中絶手 術へのバリアーを取り除くよう、圧力をかけていく…危険な中絶の高い発生率を減ら し、安全で法にかなった中絶を受ける権利を確立する…中絶が許可されている地域な ら、中絶の危険度の低下や安全な中絶サービスへのアクセス改善を求めて、積極的に キャンペーンする…危険な中絶の廃絶や安全な中絶へのアクセス確保に向けて活動す る各FPAに助力する為、情報や専門的知識を提供する…法律が厳しいところでは、安 全な中絶を対象とした法律の作成に向けた分析や説明や情報を与え、安全な中絶への 規制は取り除くべく方針や法律を変えるよう運動する。法律で中絶が認められている 所では、安全な中絶を受ける合法的権利の存在を女性達に知らしめ、安全な中絶手術 を受けるにはどの様にしたらよいのかを親密に教え、カウンセリングもする。安全な 中絶サービスの利用方法を教える。このサービスへのアクセスを継続的に改善してい く。そしてどんな政治的、行政的、社会的バリアーでも、この権利を奪えないように する。出来るときはいつでも、政界、宗教界、文化界のオピニオンリーダーに接触し 、彼等の姿勢が安全な中絶の許可へと向かうように会話を持っていく。

目標第4:うまく行かなかった中絶に対する治療として現在どの様な医療が行われ ているのかを調査し、適切で人間的な医療サービスの実現を確実にするため積極的に 動く。活動:国際的/地域的:安全な中絶を提供するため常に新しい技術を備え、中 絶の施術者は全員安全な中絶に向けてふさわしい訓練を受け、適切な器具を得られる ようにしなければならない。

モーリシャス会議

国ロ的または地域的に行われるIPPFの会議概要書の多くにも、この団体が持つ中絶 合法化に関する哲学や戦略がハッキリと現れている。

例えば1994年のモーリシャス会議の概要書には、その総体的信念として、「安全な 中絶は、いのちを救い健康を守る医療行為である。それをしないでいるのは非道徳的 である」とある。IPPFアフリカ地域担当の法定弁護士リチャード・タークソン博士は 、同じ文書の中で、この団体の総合的な戦略を明瞭に概説している:「今は例外的に 行われている中絶がやがて一般的な習慣になり、許可されない中絶の方が逆に例外と 変わっていくように、中絶に関する法律の改正は徐々に広がっていく形を取らねばな らない。」

モーリシャス会議概要書の「より安全な中絶:FPAに何が出来るか」と題された項 目は、メンバー団体が中絶法の自由化をいかに扇動していけるか、そして中絶が合法 化されたら、いかに中絶手術の実行準備に向けて関与していけるかのガイドラインに なっている:

「中絶が法律違反である地域において家族計画団体に出来ることは:「テストケー ス」を取り上げ、いくつかの法律についてもっとおおまかな解釈をするよう圧力をか ける。こちらの法律解釈に当てはまる範囲で医療関係者がうまく動ける明確なガイド ラインを作る為、我々に同調的な法律専門家と接触を持つようにする。中絶が法律違 反ではない地域においてFPA団体に出来ることは:更に新しい中絶技術を取り入れ る土台作りに参加し、安全な中絶のための技術訓練を提供する。」

モーリシャス会議のレポートには、非常に詳しく書かれた12ページに及ぶ国ごとの 「活動プラン」が含まれている。それには、アフリカの発展途上国における中絶奨励 活動にIPPFがどう関わっていくかも事細かに示されている。

これら「活動」の範囲は多岐に渡り、それは中絶合法化を唱える組織化した熱心な 討論から、中絶クリニックの器具装備や医療関係者への中絶手術の訓練にまで広がっ ている。

IPPFの活動はもちろんアフリカに限られていない。似たような会議をアジア、オセ アニア、ラテンアメリカにおいて定期的に開いている。

文書付録Aには、IPPFの中絶促進や現実化の明細な戦略について、モーリシャス会 議レポートからのいくつかの抜粋がある。3

IPPF中絶擁護のその他の例

「2000年の展望」と「モーリシャス会議概要書」はもちろん、中絶合法化実現への IPPFの政治的支持と関係あるものである。中絶禁止法の「改革」、「廃止」、中絶の 「合法化」、そして中絶を広く普及するための自らの関与を呼びかけており、IPPFの 刊行物も行き渡らせようとしている。

沢山の実例の一つとしてIPPFの医療会報を見ると:

「安全な中絶の実現が規制されている地域においてFPAがしなければならない事は 、他のNGOや団体で危険な中絶の減少化や法律の改正等、この問題に関する特別活動 をしている所と建設的な意見交換を行い、協力し合うことである。安全で信頼できる 中絶が可能な地域においては、この医療サービスを不当な批判や規制から守るのが FPAの義務である。出来ればFPAは法律のその時々の解釈範囲内でそれを補佐し、また 女性がこの医療サービスを自由に受けられるようにしていかなければならない。」

「中絶が法律で規制されている地域では:同意見の法律専門家と接触を持ち、法律 の条項に「条件によっては中絶を許可するかもしれない」部分があれば、「安全な中 絶手術をしている」と法律上の解釈が出来るように、医療関係者向けガイドラインを 作る。「中絶許可の条件は健康状態に左右される」という除外条項については、{以 下原文のママ}「女性のいのちに関わる場合」という条項より広く解釈される必要が ある。我々と同意見の法律家で、担当している依頼人に中絶の施術や斡旋の罪で刑罰 に処せられようとしている医療関係者を持っている人達と接触する。「テストケース 」を取り上げ、いくつかの法律についてもっとおおまかな解釈をするよう圧力をかけ る。」4

IPPFは「2000年の展望」戦略プランの付属としていくつかの見解書を発行している 。この見解書はすべて中絶支持の強い立場をとるものである。「2000年の展望:カイ ロと北京からの前進」は、「NGOやFPAの活動」「中絶の法的位置付けに注目し、中絶 に罰則を与える法律の改革と排除を唱える」というタイトルで始まっており、内容は 中絶賛成派のよく使う典型的な言い回しを使って書かれている。5

中絶に関するIPPFの「中立性」

IPPFは中絶に関して「中立」だと主張しているが、実は親団体だけでなくその関係 団体もすべて中絶支持グループとして思考し行動するよう求められているという証拠 が挙がっている。

国際家族計画連盟の前会長フレッド・サイ博士は、中絶の合法化を 精力的に支持しない家族計画協会はIPPFのメンバーとして迎え入れられない、と秘か にほのめかしている;

「私は、中絶に対する主張を改めて見直し、90年代の女性の生殖の健Nの現実と合 わせてその立場を見つめ直すべきだとIPPFに強く訴えてきた。2年経ち、連盟は向上 していると私は満足して言える…90年代に入り、IPPFは中絶する権利を守る最前線に いると言えるが、理論的にも実践的にもこの立場に立つ用意の出来ていない団体があ れば、その団体は自分がIPPFグループの一員かどうか考え直すべきである…去る10月 にニューデリーのメンバー集会で満場一致で採択されたIPPFの戦略プラン「2000年の 展望」は、「危険な中絶を排除し、安全で合法的な中絶へのアクセスを増やしていく 」というIPPFの明瞭なゴールに向かって、事務局とFPAと両レベルで更に押し進めて いくことを、初めてここで明確にしたのだ。」6

IPPF、強制的中絶とメキシコシティ政策

「どの様な形であれ、中絶を奨励する人口問題プログラムに関わっている団体には 、アメリカ政府はこれ以上資金を提供しない」とした1985年のメキシコシティ政策に 従わず、アメリカからの資金援助をあきらめる方を選んだIPPFは、その無条件で確固 とした中絶への取り組みを(自発的であってもなくても)、ここで明らかにしたと言 える。

「これ以上中絶の推奨や実施はしない」と証明しない限りアメリカ政府は金銭援助 をしないとIPPFは警告された。それに対しIPPFは、そのような保証は出来ないと拒否 した。このIPPFの態度がよく映し出されているのは、IPPFメンバーであるアメリカ家 族計画協会(PPFA)の国際プログラム部門副会長のダニエル・ワイントラウブ氏の発言 である。1985年3月12日にウィスコンシン州マディソンで開かれた家族計画立法議会 でのスピーチでワイントラウブ氏はこう言った:我々は妥協するべきだ、また我々は 政府のメキシコシティ政策を受け入れるべきだと、本当に思っている人達がこの国に いることは私も分かっています。その人達はこう言うのです、「この国の国際プログ ラムに占める中絶関係の割合は、全プログラムに対してほんの少しである。戦略的に も家族計画をうまくやるには中絶をなくす方がよりいいのである」と。しかしこの人 達は間違っています…アメリカ家族計画協会の原理の一つは、「妊娠や出産をするし ないの自由は不可分である」ということです。自由を得るか得ないか、どちらか一つ なのです。」

中絶問題における非妥協的態度で、IPPFは財政的援助を失った。しかし、その態度 は変わっていない。

IPPFはこれまで、強制的な「家族計画」プログラムは支持していないし関係もして いないと、何度も主張している。例えば「危険な中絶と生殖の健康における声明書」 でも、「IPPFは強制中絶と、性別の産み分けのための中絶は無条件に否認する」と断 言している。

しかし、1979年に中国の強制的一人っ子政策が始まって以来、IPPFがずっとその援 助をしてきた証拠がある。中国の国立家族計画委員会の副委員長ポン・ユー夫人は、 国際家族計画連盟は「中国への協力を拡大している大手の国際機関」の一つであると 明かしている。720年以上も中国に関係した以上、強制避妊や不妊、強制中絶、 普及している性別産み分け中絶、そして悪名高い五体満足でない新生児の「死の部屋 」等を含む北京の強制的家族計画プログラムに、IPPFが綿密に親しいというだけでな く、全力を尽くしてサポートしているということが結論付けられるであろう。

10歳の少女達のセックスと中絶

中絶を普遍化するというIPPFの運動は、大人だけでなく若い子ども達も対象になっ ている。IPPFは1994年の「若者を理解する」という本の中で、「若者」を10歳から19 歳の子ども達であるとしている。IPPFが主張するには、これら若者は、「健康と性に 関しては、大人達とほぼ同じ権利を持っている。それは性生活において、情報の収集 、避妊、安全な中絶、性病の防止、秘密性、そして助けの手を差し伸べてくれる人を 信じることを積極的に求めるかどうかを自分で選ぶ権利である。」

IPPFの持つ他にはない権限

1970年代の初め、かつてのIPPF医療責任者マルコム・ポッツ氏は、人口の制限を目 的とする家族計画プログラムを始めるに当たって、中絶の普及なくしてそれは不可能 だと思った。またIPPFは(現在もそうだが)世界中に中絶を広める唯一の立場にいる と認識した:

中絶と避妊は、その利用においてしっかり絡み合っている。社会に少子化という観 念が広まると、社会が避妊具を使用し始めた時点で、中絶の発生率も高くなってきた …中絶は避妊の習慣を社会に引っ張り込んだ馬のようなものである。中絶がなおざり になれば、家族計画プログラムは、その方向付けを失ってしまうのである。

予想されるとおり、政府間の機関、例えば国連人口活動基金や世界保健機関は、中 絶を推奨できない弱い立場にある。とはいえ、それが出来る供給源に命令はする。つ まり特定の責任が、人口協議会や国際家族計画連盟といった非政府機関に覆い被さる 事になるのである。幸いにも、貧乏階級や少なくとも都市のスラム街に現実的な中絶 サービスを広げスいとしている供給源は、適度にあったのである。8

戦略

IPPFの主要スポークスメンは最近、「危険な中絶の廃絶」を唱える以外で「中絶」 に触れる事は一切止めるという作戦をとっている。この言葉使いの作戦は、中絶討論 に参加している団体には効いているかも知れないが、実は中絶の合法化に向けたIPPF の単なる暗号論法でしかないということは忘れてはいけない。

このことは、1995年11月10日から13日にフィリピンのマニラであったIPPFメンバー集会で採択された「性と妊娠出産に関する権利の宣言」にはっきり現れている。その 宣言とは:

「3年毎のメンバー集会に出席した代表者達は、「望まない妊娠をした場合、安全 で合法的な中絶にアクセスできる女性の権利の擁護をFPAに要求する」といった、危 険な中絶に対する強固な方針も採択した。FPAがしなくてはならないことは:危険な 中絶が女性にもたらす影響の重大さを知らしめる。危険な中絶によって起こった合併 症の治療は医療施設で受けられることを保証する。自分の国における中絶の法的位置 を分析し、現行の法律の元で安全な中絶サービスの提供が最大限に可能になるよう働 きかける。安全な中絶へのアクセスを妨げている法律や政策や規制を取り除くべく運 動する。」9

当時IPPFの事務局長だったハーフデン・マーラー博士は、1994年9月5日から13日に エジプトのカイロで行われた「人口と開発」における国連国際会議で、早くも「危険 VS合法化」のテーマを使っている。

それはIPPFの4度目のチャレンジであり、この会 議で特に議論を呼んだのは危険な中絶の撲滅であった。IPPFは女性のいのちや健康へ の大きな脅威について発言するに当たって、力強く大胆な姿勢を見せている…「必要 とも不必要ともされた中絶と戦っていくには、すべての女性に良質の婦人科医療を用 意することが必要で、その中には避妊と、もしどうしてもというなら安全な中絶が含 まれている。最近あったIPPFの会議(前述のモーリシャス会議)では、アフリカの20 ヶ国の代表者が、家族計画の強化、中絶規制法の自由化、そして「危険な中絶の全貌 を国民の目と良心から何十年にも渡って隠してきた沈黙の陰謀」を終わらせることで 、「危険な中絶のもたらす悲劇と不必要な苦しみを今こそ終わらせよう」という最終 宣言に賛成している。

ここで重要なのは、IPPFが危険な中絶を唱える時は、違反して いる中絶施術医を精力的に摘発していくということでなく、「2000年の展望」に書か れているとおり、ただ単に中絶の合法化を意味するという事である。

中絶に対する「中立性」

IPPFは中絶に対して中立の立場をとっているとも主張しているが、世界中で中絶の 合法化を唱えていることを考えてみれば、それは奇異なことである。

 IPPFの前期の会長だったフレッド・サイ博士は、この奇妙な中絶についての二重思 考を、「IPPFは中絶に関して中立の立場だが、中絶の合法化とその実行を求めて戦っ ていく」と最近口にした:「中絶に関しては我々は中立だ…だがもしFPAがその政府 と中絶問題について争うことになったら、我々はFPAを支援する。もしその国が中絶 を合法化したら、我々はその国の人が正しく手術できるように養成する。」10

不法な活動を奨励する声明

国際家族計画連盟(IPPF)は、「連盟の「主義」や「道義心」は、各国の不便な法 律や慣習よりも、ずっと人を引きつける力を持つ道しるべであると考えている」とこ れまで何度も表明してきている。

IPPFは、「家族計画協会は法律の許すぎりぎりの所で、時には法律があいまいな部 分や国民の声と矛盾している部分では法の範囲を超えて、活動していかなければなら ない。政府は尊敬されるべき存在として短期の尊敬は受けるが、自発的団体は責任を 持って悪名高くなることにより長期の尊敬を受けるのである。」と言う。11

前IPPF医療責任者マルコム・ポッツ氏は、「法律には、違反できる法律と違反すべ き法律がある。中絶規制法…これは現代には時代遅れで不適切であり、まるでニュー ヨーク州法令のようである。12

「家族計画における人権」という文書の中でIPPFは、「家族計画協会は、「当ては まる法律がないから」とか「好ましくない法律があるから」といって、それを活動し ない理由に挙げてはならない。法律の外での活動、又は法律に違反することも、改革 につながる刺激のひとつのプロセスなのである。」13

広く読まれている別の文書でIPPFはこう自慢している。「多くのIPPF/WHR(西半 球地帯)のメンバーは、自分の国で家族計画が法律違反だったり何の法的位置を持っ ていない場合でも、家族計画サービスを導入してきた。」14

国際家族計画連盟(IPPF)の違法活動

IPPFは、法律の違反について単に口にしているだけでない。実際に大規模な法律違反を犯している。

IPPFはフィリピンで、少なくとも20年間に渡り、違法である中絶を奨励し実行させてきた。またバングラディッシュ、韓国、シンガポール、香港、タイ、ベトナム、インド等の開発途上国には、大量の中絶用器具を提供してきた。

以下のヘースティングス・センター・レポートの記事の抜粋には、IPPFが自分の加盟グループによる不正な活動を組織的に隠匿しながら、それらグループが開発途上国の法の目をくぐり抜ける手助けをしている様子が書かれている。

国際家族計画連盟(IPPF)ロンドン支部は、発展途上国における中絶事業合法化を最もあからさまに主張する支部である。活動の中心的存在として、AID(アメリカ国際開発庁)を含める世界中の寄贈者から基金を受け取り、そのお金や供給品をそれぞれの支部に支給している。IPPFが唱える自らの立場とは、「中絶は、中絶を望む人には合法化されるべきであり、地方支部は、可能であれば、必要なサービスを提供するべきである」というものである。

「中絶は違法であり、国の人口政策に明確に反する」とするフィリピンで、IPPFは200個の「月経調整法」(妊娠3ヶ月以内での中絶)用具一式を、デモンストレーションを目的として供給した。FPOP(フィリピン家族計画団体。IPPFの加盟団体)が地元の医師らに「月経調節法」キットを配った時には、多くの議論がかもし出された。フィリピン政府が中絶用具の輸入を法律で明確に禁止しているにもかかわらず、このような用具一式が「検査のためのサンプル組織」を得る為の「医療器具」として国に持ち込まれていたのである。このような例を見ると、IPPFやその賛同団体が、法律や政策をいかにうまく回避する能力を秘めているかが分かるであろう。

IPPFの最も大きなプロジェクトのひとつは、バングラディッシュで6万2千ドルかけた、地元の家族計画団体への5000個の真空吸引キットの配布であった。同じような用具一式は、韓国、シンガポール、香港、タイ、ベトナム、インドにも供給されている。ところが、これらのプロジェクトのほとんどが約3万ドル以下の比較的小規模なものだったとしても、IPPFはその活動の詳細をレポートに載せておらず、寄贈団体への主要レポートにも書いていない。その理由のひとつは、これらの活動が違法で議論を呼びがちな性質を持つという他に、IPPFがヘルムズ修正箇条に違反していないかどうか、米国政府が団体を常に監視している事にあるであろう。15

「月経調整法」の定義

「月経調整法」(MR)又は「子宮吸引中絶」(ME)という言葉は、「発展途上国における中絶禁止法をうまく欺く中絶方法」と同じ意味である。何故なら、これらの中絶方法では中絶があまりにも早い段階で行われるため、「証拠」が処置中に消え去るか、または簡単に消し去ることが出来るからである。

「医者の為のIPPF家族計画ハンドブック」によるMRやMEについての説明

月経調整法とは普通、普段定期的に月経を迎えていた女性が、月経が来るべき日より最高14日の間に月経がなく、しかも妊娠した可能性がある場合に、子宮の中を吸引することを言う。それは、妊娠した確証が得られる前に行われる事が多い。この方法は、1)診断的・治療的な掻爬術として2)不完全な中絶の手当てとして3)月経サイクルの後半に卵管結紮が行われる場合、妊娠していないことを確かめるための子宮吸引4)妊娠の可能性がある場合の子宮吸引という目的に使われる。

月経調整法は一部の国では大変普及しており、時には一人の施術者が一年に何千件もの手術を行うこともある。また、中絶法違反で訴えるには、実際妊娠していたものが人工的に終結されたことが証明される必要があるラテンアメリカ諸国のように、「治療上の中絶は法律違反だが月経調整法は合法的である」という国もあるのである…16

IPPF医療会報では更に、MR・MEは中絶手段であると明言している

「手で持って使う真空洗浄機を使った子宮内膜吸引は、早期妊娠を人工的に終結させるのに費用がかからず安全で効果的な技術であり、様々な医療関係者に使い方を教える事が簡単に出来る。一部の国での子宮内膜吸引方法は、女性の月経が最高14日遅れた状態で、まだ妊娠は確認されていない場合に使われている。こういう場合、この方法は月経調整法と呼ばれている。」…(4)

IPPFは、その称するところの「組織のサンプルを集める為」または「不完全な中絶を処理する為」に、何千個もの真空吸引機を供給しているが、それらは実に簡単に早期吸引中絶に使われることも出来るということを想起して欲しい。

マルコム・ポッツ氏は、IPPFが発展途上国の文化の中に、「要求すれば得られる中絶手術」の糸口をいかに作ったかを30年近く前に話している。またポッツ氏が、「MR・MEとはまさに中絶処置である」と認め、更に「中絶法違反ではあるが、起訴されにくい形で中絶を行えるシンプルで便利な方法である」と言っていることに注意すべきである。

「月経調整法」という名前を用いる事で、物事の本質がすり替えられてしまっている。バングラデッシュでは、新聞にあからさまに中絶について書かれる事はあり得ないが、首都ダッカで月経調整法についての大っぴらな会議が開かれることは許されるらしい。フィリピンでは、家族計画における中絶の役割について秘かに論じるだけでも「分別がない」とされる。しかし月経調整法についてなら、あっという間にあちこちで話されるようになった。「月経調整法は、もしかしたら他の中絶方法よりも安全なのかもしれない…子宮から取り除いた組織を顕微鏡で見ない限り、妊娠していたという証拠はない」と。中絶が法に反する国では、論点こそが、とても大切である。(8)

法律の裏をかくMR

国際家族計画連盟はしばしば、連盟自身や他の人口管理団体が、いかにMRを使って発展途上国の法律の裏をかいてきたかと自慢している。これは前述の通り、「危険な中絶」を減らすという名目で行われてきたことである。IPPFはこう言っている。

「一部の地域で、危険な中絶は大きな懸念である。しかしそれに対処できるFPAの活動は、現存する法律や設備の不足で束縛されてしまっている。中絶が法律違反である国では、多くのFPAは自分達の主張をバックアップ出来るように、この問題を研究し、主張運動を続けている。勢力を持つ人、宗教界や社会のリーダー達や政治家達と会って、話し合うこともある。一部のFPAは、中絶後に起きる合併症を管理するサービスや中絶後カウンセリングや避妊サービスの提供もしている。一部では月経調整法を施す事も出来る。中絶が合法的な国では、FPAは安全な中絶を提供出来る。」17

「MRを使ってどのようにラテンアメリカの法律の裏をかくか」をFPAに説明するIPPF;「しかし、南アメリカの大部分のように異なる司法システムを持つ所では、中絶を行う理由として妊娠している証拠を示すことが前もって必要となっている。こういう場合、月経調整法の実施を「月経が遅れているが妊娠はまだ認められない女性から求められた助けに応じる合法的な処置」と弁護すれば、事はもっと簡単になる。また、中絶に関わる法律にMRが違反したというケースはこれまで世界中にもないし、そのような先例がないことから、支持者は法律に頼らなければならないと言うことを忘れてはならない。18

月経調整法は、IPPFの将来計画の大きな部分を占めている。IPPFはこう予測する:「妊娠初期の真空吸引中絶は、更に増加し大規模に使用されるようになるだろう。手で持てる月経調整機も重要になってくる。」19

IPPFの医療会報はこう説明している。「中絶が合法的とされる国では、FPAは中絶の提供が健康と生殖規制サービスの一部であることを確実にしていかなければならない。又いくつかのFPAによれば、中絶の法的立場があいまいか規制されている国でも、その法律を細かく見ていけば、解釈に柔軟性の余地が見つけられる所もある。」20

発展途上国でIPPFがいかにMRを使って法律の裏をかいているか、多くの例があげられる。以下はその内のいくつかである。

バングラディッシュ:バングラディッシュでは中絶は法律違反であるにも関わらず、IPPFは、「ここでの中絶の22%は、訓練を受けた者によりMRセンターで行われている」と認めている。

ケニヤ:ケニヤでも中絶は法律違反であるが、IPPFは手動真空吸引機(MVA)の導入を、初めは「不完全に終わった中絶の処置」を理由に、次には実際「中絶を行う為」と言って承認した。IPPFの出版物の中でカーマ・ロゴ氏は、「法律が変わるのを待つのはもう止めよう、まだ法律が変わらなくたって出来ることはしよう」と書いている。

インドネシア:中絶はインドネシアでも非合法であるが、IPPFによれば「インドネシア家族計画協会(IPPA)は月経調整法を導入している。最初は避妊の失敗の対処のみに使われていたのだが、今ではMRにはいろんな可能性が考えられている」という。IPPFは今では15軒のクリニックを経営しており、そこでは法律を無視し、一年に何千件ものMR中絶を行っている。22

IPPFとその加盟団体は、MRには法律の「柔軟性の余白」が当てはまる事に目を付けた。国や地方の中絶を禁止する法律が元々意図する意味を無理に引き伸ばしてしまうのは以前述べたとおりである。その目的はもちろん、一人一人の良心を和らげ、中絶合法化に向けて、すべての中絶禁止法を施行不可能にしてしまうことである。

国際家族計画連盟は少なくとも過去30年間、多くの発展途上国において、中絶の大規模な奨励と実行に深く携わってきている。IPPFは、あらゆる種類の家族計画を奨励するために何十億ドルも使っており、家族計画プログラムには中絶が不可欠であると明言している。

IPPFは、発展途上国の中絶禁止法の廃止を援助するに当たって、独自のポジションにいる。NGOであるから、発展途上国の国内問題に働きかけたり口出ししても「新植民地主義」と非難されずに済む。実際はもちろん、IPPFの得る財源のほとんどは、先進国の寄付でまかなわれている。オーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、ドイツ、日本、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、イギリス、そしてアメリカ。23

一番重要なことは、IPPFが、戦略プラン「2000年の展望」や他の多くの関係文書の中で、140ある国別加盟支部すべてを通して中絶を奨励し促進し続けていくという意思を強く述べていることである。

IPPFは、その主要な根本方針として、「家族計画とは人間の権利であり、中絶は家族計画に含まれるべきである」としている。つまり推測するに、IPPFは「中絶は人間の権利である」と考えているようである。

先進国からIPPFへの経済的援助は、「すべての発展途上国における中絶の合法化」というIPPFの最も大きな目的のひとつを促進していることになる。

ベニン、ブルキナファソ、カメルーン、コートディヴォワール、ギニア(コナクリ) 問題点:「中絶を禁止する法律」戦略:「安全な中絶サービスの可能性とアクセスを改善する。」

エチオピア 問題点:「中絶は法律で禁止されている」目標:「中絶を含む家族計画サービスの規制の廃止と、女性がそれらサービスを利用する権利を求めてキャンペーンする。」目的:「女性に不利な慣習や法的制限を除外し、女性が家族計画サービスをもっと利用しやすくする。安全な中絶をサービスできるセンターを作る」活動:「女性や若者の生殖的健康状態に影響する中絶禁止法律を法律家とサービス供給者と協力して廃止していく。」

ガンビア 問題点:「中絶法の現状」活動:「安全な中絶サービスの提供を擁護していく。」

ケニヤ 目標:「危険な中絶の確率を減らす為に、家族計画サービスや中絶と中絶後のケアサービスを向上させていく。」戦略:「現在の中絶法の見直しを主張する。家族計画と中絶サービスを向上させる。」目的:「5年以内にもっと自由な中絶法への改正を達成する。3年以内にMVA(手動式真空吸引機)によるサービスを、すべての県や地域の病院、また10軒のミッション系病院で可能にする。」

モーリシャス 問題点:「中絶を禁止する法律がとても厳しい」目標:「現在の法律を改正し、中絶を非犯罪化する。」目的:「2000年までに、女性活動グループの75%が危険な中絶に危機感を抱く様にし向け、法律改正を求める活動を起こすように持っていく。」

ナイジェリア 問題点:「中絶規制法」目標:「どんな社会グループの調査にも、中絶の測定基準を導入する。政治家やオピニオンリーダー、伝承や宗教のリーダー、若者や女性の団体に、家族計画と適切な環境での安全な中絶の大切さを教育する。」

タンザニア 問題点:「とても厳しい中絶禁止法」目標:「生殖的健康についての情報提供やサービス・中絶合併症の有効治療・中絶後のカウンセリング・避妊サービス・安全な中絶の実践を促進することで、危険な中絶の合併症からくる母体の死亡率と罹患率を減らす。」戦略:「いずれは中絶が犯罪でなくなるよう働きかけると同時に、女性の利益のために現存する法律をこちらに都合良く解釈し、安全な中絶へのアクセス提供の基礎をうち立てる。」目的:「安全な中絶サービスの提供を許可する法律を確立する。」

ウガンダ 問題点:「中絶の研究や議論さえ禁止する中絶禁止法」戦略:「中絶禁止法と政策の改正を主張。」

ザンビア 戦略:「1995年末までに、主な4つの病院に形式的な中絶ケアセンターを作る。1997年末までに、同じようなセンターを残りの州立病院や、主なミッション系病院に作る。2000年には地方の病院に作る。1996年末までに主な病院の産科・婦人科のすべての医師に、手動真空吸引(MVA)技術の訓練をする。1998年末には、看護業務、医療・臨床職員の教育過程に「安全な中絶手術の訓練」を組み込む。1997年末には、人工的妊娠終結条例(1972年)についての法的・政策的ガイドラインを修正する。」

IPPFアフリカ地域女性相談委員団(RWAP)。 問題点:「規制的で不適当な中絶法」目標:「全地域において、母子健康・家族計画(MCH/FP)サービスに中絶を組み込み、危険な中絶を減らす。女性相談委員団(NWAP)は、安全な中絶の合法化を確実にするため、現存する法律の改正と自由化を働きかける。」戦略:「NWAPは、現存する中絶禁止法の改正と、必要な場合はその廃止に向けた陳情運動の先頭に立たなければならない。」目的:「1995年から1997年の間に、少なくともこの地域の10ヶ国で中絶禁止法が再審・廃止・自由化され、危険な中絶の発生率が少なくとも10%減ること。」

References:

1.   IPPF Income and Expenditure Account for the year ended 31 December 1991 and accompanying chart entitled “Growth of IPPF’s Income.” Amount is in adjusted 1995 U.S. dollars, corrected for an average five percent inflation. [Back]

2.   IPPF Annual Report, 1989-1990. [Back]

3.   International Planned Parenthood Federation, Africa Region. The Mauritius Conference: Unsafe Abortion and Post-Abortion Family Planning in Africa. London: IPPF, 1994. Pages 13-15 and 24 to 35. [Back]

4.   “Statement on Unsafe Abortion and Reproductive Health.” IPPF Medical Bulletin, Volume 26, Number 1 (February 1992) [Back]

5.   International Planned Parenthood Federation. “Vision 2000: Moving Forward After Cairo and Beijing.” London: IPPF, 1996, page 30. [Back]

6.   Dr. Fred Sai, former president of IPPF. “Unsafe Abortion Must Be Tackled Now.” Planned Parenthood Challenges: Unsafe Abortion. 1993. [Back]

7.   “An Interview with Peng Yu, Vice Minister of the State Family Planning Commission.” Integration, March 1994, page 32. [Back]

8.   Malcolm Potts, Peter Diggory and John Peel. Abortion. London: Cambridge University Press, 1970. Pages 230 to 232. [Back]

9.   Internet news release entitled “IPPF Strengthens Stand on Reproductive Rights and Unsafe Abortion,” dated November 29, 1995, taken from IPPF’s home page at http://193.128.6.150/ippf on April 2, 1996. [Back]

10.   “Encounter: Dr. Fred Sai, International Planned Parenthood Federation.” Sunday Inquirer Magazine, November 26, 1995, pages 3-5. [Back]

11.   International Planned Parenthood Federation. “The Voluntary Sector in Population and Development.” London, 1979. [Back]

12.   Malcolm Potts, M.D., former director of the International Planned Parenthood Federation (IPPF). “Population Growth and Abortion,” in Gerald I. Zatuchni, John J. Sciarra, and J. Joseph Speidel (editors). Pregnancy Termination: Procedures, Safety and New Developments. New York: Harper & Row Publishers, 1979, page 424. [Back]

13.   International Planned Parenthood Federation. The Human Right to Family Planning. 1984, paragraph 106. [Back]

14.   Undated IPPF/WHR pamphlet entitled “20 Questions About International Planned Parenthood Federation Western Hemisphere Region.” [Back]

15.   Donald Page Warwick. “Foreign Aid for Abortion.” The Hastings Center Report, Volume 10, Number 2, page 33, April 1980. [Back]

16.   IPPF Family Planning Handbook for Doctors. Chapter 15, “Menstrual Regulation,” pages 241, 242, and 247-248, date not given, but post-1987. [Back]

17.   International Planned Parenthood Federation. “Sexual and Reproductive Health: Family Planning Puts Promises Into Practice.” London: IPPF, 1995, page 25. [Back]

18.   Translated from the Spanish. Federacion Internacional de Planificacion de la Familia [International Planned Parenthood Federation].Regulacion Menstrual. London: IPPF, 1976, page 10. [Back]

19.   “The Challenge of the 1990s: Induced Abortion.” IPPF Medical Bulletin, Volume 25, Number 1 (February 1991), page 2. [Back]

20.   “[IPPF] International Medical Advisory Board Statement on Abortion.” IPPF Medical Bulletin, Volume 27, Number 4 (August 1993). [Back]

21.   International Planned Parenthood Federation. Challenges: Unsafe Abortion. London: IPPF, 1993, pages 31 to 35. [Back]

22.   “Support from Around the World,” International Planned Parenthood Federation/Western Hemisphere Region 1990 Annual Report. [Back]

人口調査研究所発行のレポート2000年
Steve Mosher (スティーブ・モッシャー)
Copyright ©2002.9.5.許可を得て複製
英語原文より翻訳: www.lifeissues.net