日本 プロライフ ムーブメント

アフリカにおけるエイズ

西側諸国がいかに手を貸してくれないか!

1991年7月、中央情報局CIAは、世界的エイズ被害に関する非公式文書91-10005を発表し、アフリカの人口均衡を乱すだろうと予測した。他の多くの警告がそうであると同様、この警告もやはり、以後10年間、国際社会において無視され続けた。多くの省庁が、人々の健康や安全について、他に優先すべき問題があると考えたのか、あるいはこの問題を解決するには莫大な費用がかかると脅かされたのか。手を貸すべき立場の面々は、アフリカ人の状態に無関心だった。しかも中には、アフリカは人口過多で、エイズは減少への近道とすら信じる人までいた。

ワシントンポスト紙はある国の情報機関の要人が「アフリカは人口が多すぎるのでエイズはちょうどいい」と述べたと紹介している。1皮肉なことに、アフリカの人口過多とコンドーム普及が問題であると、世界中が根拠もなく考えているのと同じ位、エイズに対する国際社会の反応は、あまりにも認識不足である。故意にしろ怠慢にしろ、エイズへのこうした誤認識は、結果的にアフリカを危機に追い込む。コンドームによる家族計画・化学的避妊・避妊リング・不妊・中絶といった問題と同じレベルでエイズを考えていたなら、アフリカの国連家族機関代表キャロル・ウゴチュクが嘆いたように、西側は間違いなくアフリカ民族を途絶えさせようとしている。2

アフリカの人口減少

CIAの91年の警告は現実となった。7月上旬南アフリカ・ダーバンで開かれた第13回国際エイズ会議で、米国国勢調査機関は「21世紀の地球規模流行病、エイズ」と題するカレン・スタネッキー氏の報告を取り上げた。その中に出てくる、アフリカにエイズが及ぼしている被害の規模たるや、状況を知っている人々ですら驚き、呆然とした。腺ペスト以来初めて、病気が人口減少を引き起こしている。HIVウイルス感染によりジンバブエ・ボツワナ・南アフリカ共和国は、2003年までに減少の始まりが予想される。他のアフリカ諸国でも同様の兆候が見られる。国勢調査機関はまた、今後10年間に、サハラ以南の国々で平均寿命が30も短くなり、死亡率は2~3倍に、乳児死亡率と5歳以下の幼児死亡率も劇的に増加すると見ている。国勢調査機関によると、エイズ発症以降、約1500万のアフリカ人がいのちを落とし、約1100万の子ども達が孤児となった。アフリカにおける死因の断然1位をエイズが占める。この流行病により、アフリカの国々のうち、軍事・経済・政府の組織構造が存続の危機にあるとの最新報告もある。3

アフリカにおけるエイズ流行は、感染者との性行為による危険にとどまらず、輸血用血液の汚染という事態も招いている。しかも免疫力が低下していると他の感染症を培養しやすいという、おまけまでつきまとう。こうした理由から結核がアフリカで再流行している。さらに状況を深刻化させる要因として、アフリカの医師達にHIVやエイズを正しく見極める医療知識や技術が十分に備わっていない。エイズに似た症状の患者をエイズと診断し、実際は治療可能な病気だった例が、しばしばある。治療優先順のきまりから、治療可能な患者用の薬を保管する、ごくわずかのスペースしかなく、エイズと誤診された患者は治療を拒まれてしまう。この流行病に対する、あまりに生ぬるい国際社会の対応に、エイズが集団殺戮の元凶だと嘆くアフリカの国家指導者も少なくない。

ナミビア大統領サヌ・ムジョマはジュネーブで6月8日に行われた演説で、HIVは人間が作り出した病なのだから、最初にばらまいた国が責任をもって治すべきだと主張した。4南アのタボ・ムベキ大統領は、HIVが本当にエイズを引き起こしているのかどうか、大勢の前で疑問を投げかけ、その起源や伝線経路について、さらなる調査の必要性を唱えた。現状では、エイズ患者の85%を占める途上国で、エイズ資金のうち10900ドルしか使われていない。5分析にばかりお金をかけ、実際の研究にほとんどお金をかけていないと不満の声もアフリカでは聞かれる。

国会は何もせず

国会議員達は手助けの必要性を認識している。最近国会で、エイズ撲滅のための国際予算を増やし、第三世界の国々のための債務救済額を3倍にする案が可決された。世界的流行病で生命の危機に瀕している途上国に対する、確かな前進の一歩である。だが、残念ながら債務救済措置は短命に終わるだろう。国会がバックアップする独自の政府組織、輸出入銀行は、サハラ以南の国々に、エイズ治療費用として1億ドル年利7%で融資すると提示した。6画期的なようでいて、エイズ治療薬に年間ひとりあたり2000ドル支払わねばならない立場にすれば、相当な額の債務となる。平均年収の4~10倍にあたる。アフリカの国家指導者の中には、申し出を断ったものの、薬代をどうやって捻出するかのジレンマに悩む人もいる。

USAIDの無駄遣い

エイズを倒しアフリカを助けるためと言いながら、認識不足や明らかに無駄な対応をしているさらなる例として、米国の国際発達組織、USAIDを挙げたい。USAIDは国会が支援し、エイズ基金をまかなう。USAIDはまた、海外における家族計画への資金提供も行っている。1997年~98年にUSAIDでエイズ担当を務めたダフ・ギレスピー氏は、アフリカの人口過多が最も重要課題と主張した。7現在USAIDの資金のうち3億8500万ドルが家族計画用で、1億2500万ドル以上がエイズ撲滅用にあてられている。USAIDのホームページには、家族計画の主たる目標は、人口増加を抑えることとある。エイズ防止とコンドームによる家族計画がUSAIDの2本柱であると言う。2000年6月9日付の報道では、USAIDがエイズ防止のため10億ものコンドームを配布したとある。UDAIDエチオピアのホームページには、エチオピアだけでも家族計画のため年間2500万ものコンドームが供給されたと出ている。8USAIDの管轄下にある国々における家族計画実施例と、それに費やされた費用とを照らし合わせてみると、巨額な資金と、相当な量のゴム樹液が投じられているのがわかる。

コンドームを推進してもエイズが防げないと判明した。実際、USAIDのエイズ撲滅コンドーム推奨運動は、むしろ問題を悪化させてきた。英国の医学新聞ランセットが最近発表した研究結果によると、コンドーム推奨はエイズ増加につながるという。エイズ防止の安全かつ確実な方法としてコンドームを奨めると、それまで以上に危険な行為に走る人が増えるだろう。9

さらに、コンドームやその他の避妊具を積むかわりに、他のもっと重要な医療用品が荷物から外されてしまう。ケニアの医師ステファン・カランジャ氏は人口調査機関に対して、次のように申し立てた。避妊リング・ピル・ノルプラント・デポプロヴェラ等で店が埋め尽くされ、わずか数セント薬ですむマラリアで、何千人ものケニア人が死亡するだろうと。10ルワンダの国連平和維持軍は、本当に必要な薬を犠牲にしてまで過剰にコンドームを備蓄し「アフリカをゴムだらけ」にしている。11

人口過多への強迫観念

人口過多に対するUSAIDの思い込みは、現実とかけ離れている。金や銀をはじめとする豊富な天然資源に恵まれたアフリカの人口密度は1平方マイルあたり66人、これに対し英国は1平方マイルあたり634人である。12それでもUSAIDは毎年、アフリカでコンドーム・化学的避妊・不妊推進のために何千万ドルも費やし、その上、エイズ対策として、何千万ドルをコンドーム強化に投じている。要するに、人口抑制計画、またの名を家族計画とは、薄いヴェールに包まれた民族主義の一種で、結果的に経済発展を停滞させていく。この理由ひとつをとっても、終了させる必要がある。年間200万人もがエイズで亡くなり、100万もの子ども達が孤児となり、人々はごく基本的医薬品を待ち望んでいる地域に、米国は何百万ドルも投じて、人口増加を食い止めようとしているのは、どうしても理解しがたい。 USAIDの家族計画予算3億8500万ドルは、今すぐ子ども達生存救済計画や伝染病の根絶のために回すべきである。

アフリカに広がる危機は理解の域を越えている。にもかかわらず、国際社会の対応は底なし地獄のようである。アフリカのため、あらゆる手を尽くして、調査・禁欲推進・医療援助等を遂行しなければならない。

References:

1 Barton Gellman, Death Watch: The Global Response to AIDS in Africa.” Washington Post July 5, 2000, section A, pages 3.9.10. [Back]

2 LiteSite Daily News, July 18, 2000, “Rubberizing Africa and the Financing of Genocide,” Carol Ugochukwu, President of United Families of Africa, interviewed by Mary Mostert of Original Sources. http://www.originalsources.com/0S7-00MQC/7-13-2000.1.html. [Back]

3 David F. Gordon. Central intelligence Agency Report, The Global Infectious Disease Threat and Its Implications for the United States – NIE 99-17D, January 2000, pg.28. [Back]

4 Gellman, 14. [Back]

5 Ibid., 13. [Back]

6 Associated Press, “U.S. To Offer Africa AIDS Relief,” July 19, 2000. [Back]

7 Gellman, 9. [Back]

8 http://www.usaidethiopia.org/so2.htm; page 2, October 19, 2000. [Back]

9 “Condoms and seat belts: the parallels and the lessons” The Lancet, Vol. 355. January 29, 2000. [Back]

10 Dr. Stephen Karanja, “Eventually everything hidden comes into the light,” PRI Review, March/April, 1997, 4. [Back]

11 LifeSite Daily News July 18, 2000 (above) [Back]

12 www.africa2000.com/XNDX/xdensity.htm source — World Population Resource Data Sheet 1998. [Back]


Jim Vitito
ジム・ヴィティトウ
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