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「相違点」から「共通点」への飛躍

ウィーン市庁舎前のクリスマス市場が先月17日、オープンしたことは既に報じたが、同市のメトロ新聞「ホイテ」 が今月5日報じたところによると、欧州最 大のクリスマス市場を管理している人がイスラム教徒だという。ホイテは写真付きでその人物を紹介していた。 イスラム教ではイエスの生誕日のクリスマスを祝 わないが、同イスラム教徒は「キリスト者の祝賀を共に祝いたい」という心情から2005年以来、市庁舎前の市場を管理 、運営してきたという。 

ドイツのヨアヒム・ガウク大統領は6日、ローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁を訪問し、 ローマ法王べネディクト16世と会見した。大統領は元ルター派教会牧師だった人物だ。 その時から兄弟教会のカトリック教会にはかなり批判的だったという。 

バチカン放送独語電子版は「2人の神学者の出会い」 というタイトルで独大統領とベネディクト16世の会合をトップで報じた。ガウク大統領は会見後、「同 じキリスト者として欧州が直面している危機について話し合った」と述べ、新教(プロテスタント)と旧教( カトリック教会)の神学的相違にとらわれず、語り 合ったと強調した。 

ウィーンのホーフブルク宮殿で先月26日夜、新しい国際機関「宗教・文化対話促進の国際センター」(KAICIID )の創設祝賀会が開かれた。キリスト 教、イスラム教、仏教、ユダヤ教、ヒンズー教の世界5大宗教の代表を中心に、他の宗教、非政府機関代表たちが集まり、 相互の理解促進や紛争解決のために話 し合う世界的なフォーラムだ。そこでは宗派間の相違点ではなく、共通点を模索し、対話を促進していくのが主要目的だ。 

ナイジェリアのジョン・オロルンフェミ・オナイイェカン大司教は先月24日、枢機卿に任命されたが、同大司教は「 われわれは相違点ではなく共通点を大切 にすべきだ。貧困と疾患は宗派に関係なく襲ってくる。モスキート(蚊)は相手がどの宗派かを考えて刺すことはない。 モスキートはキリスト信者もイスラム教 徒も同じ様に刺す」と述べた。 

過去1カ月余りに起きた出来事を羅列しながら、面白い点に気がついた。それは「相違点」ではなく、「共通点」を探し 、そこから対話を始めるという姿勢があることだ。 

現代は多くの難問に直面している。経済、政治、宗教、あらゆる分野で対立と紛争が生じている。程度の差こそあれ、 意見、見解、利害などの相違が原因だ。 

そのような時に、相互の共通点を探し、対話を開始するという姿勢がさまざまな分野から聞こえ出してきたのだ。 これは新しい“思考トレンド”というべきかもしれない。 

例えば、宗教分野でも教義の相違点に拘り、対立するのではなく、共通点を探し、議論を進めていけば、 宗教の統一という大きな課題も現実味を帯びてくる。 パレスチナ問題もパレスチナ人とイスラエル人が相違点や対立点に拘れば、半永久的に共存できないが、「 平和に暮らしたい」という願いは両者とも共有してい る。議論の出発点は両民族の「共通点」を探すことから始めるべきだろう。   

新しい2013年を前に、従来の「相違点」を重視した思考パターンから脱皮し、「共通点」 を模索していく思考形式を確立すべきだろう。これは思考の新しいパラダイムだ。 

Editorial (オピニオン) 
国連記者室 
出典 ウィーン発『コンフィデンシャル』 
2012年12月8日掲載 
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