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HPVワクチンの男性への接種拡大は拙速かつ不合理


HPVワクチン薬害訴訟でHPVワクチン接種と被害者の症状との因果関係について争われてる最中まだその結論が出ていないにも関わらず、2022年4月より国でしれっとHPVワクチンの積極的接種が再開の方針となっています。

この動き自体も非常におかしいし、こんなものサラッと聞いただけだと誰もが「HPVワクチンの安全性は確認されたんだ」と感じてしかるべきだと思います。

そしてその感覚をさらに強めてしまう、もう一つの国のHPVワクチンにまつわるおかしな動きとして、「男性へのHPVワクチン接種を急速に拡大しようとしている」というものがあります。

そもそもHPVワクチンはもともと「子宮頸がん(予防)ワクチン」という通称でよく呼ばれていました。

その名前だと「子宮頸がん」を予防するワクチンというイメージしか伝わらず、「子宮」を持たない男性にとっては無関係だと普通は考えると思います。

だからなのかわかりませんが、2017年12月に国は「子宮頸がん(予防)ワクチン」の呼称を「HPVワクチン」に変更しています。

そして、2020年12月に4価HPVワクチン(商品名:ガーダシル)において肛門癌と尖圭コンジローマの予防に対して、男性への適応拡大が承認され、2025年8月に9価HPVワクチン(商品名:シルガード9)において、同じく肛門癌(男女)と尖圭コンジローマの予防に対して、男性への適応拡大が承認される流れとなっています。

これは「添付文書」という、いわゆる薬の説明書に正式に「効能・効果」の欄に、男性へのHPVワクチン接種に関する病名が掲載されたことを意味しています。

ただ、現時点では男性へ適応拡大されただけで、いわゆる接種費用が公費で賄われる(といっても国民が前払いで納めたお金が原資ですが)となる「定期接種」の対象にはなっていません。

ワクチンのような任意で受けるかどうかを決める予防医療に保険は効きませんので、現時点では男性がHPVワクチン接種を受けようと思うと、全額自己負担となります。

HPVワクチン接種に積極的な東京都のホームページによれば、男性1人合計3回の接種の場合、4価ワクチン(ガーダシル)で5~6万円程度、9価ワクチン(シルガード9)で8~9万円程度になるそうです(※これに東京都は補助を出すルールとしています)。

しかし自民党は男性へのHPVワクチンの定期接種化に向けて前向きだという話も耳に入ってきています。

ここで、もう一つの2価HPVワクチン(商品名:サーバリックス)では、なぜか男性への適応拡大が通っていないのがちょっと不思議ですね。

一方、その追加された男性への適応病名(肛門癌、尖型コンジローマ)についても、本当にHPVワクチン接種による予防効果が証明されたのかどうかは、これだけ予防効果が証明されたと喧伝していた子宮頸がんの予防効果でさえ、20年経過した今でも明確になっていない現状を踏まえますと、またしても統計学のトリックを使っている可能性が非常に高いので、盲信することなく別途検証が必要と思います。

いずれにしても、こんな風に男性への接種拡大の動きが国によって進められているということになれば、普通の人は「HPVワクチンの有効性も安全性も証明されているんだ」と考えてしかるべきではないかと思います。

一方で、今回問題にしたいのは、そんな適応病名にさえ、まだなっていないにも関わらず、HPVワクチンを男性に接種する理由として、「中咽頭がんを予防する効果がある」と推進する動きがあるということです。

たとえばこちらのページです。一部引用してみます。

(以下、こちらのページより部分引用)

HPV関連中咽頭がん
世界で急増中!ワクチン接種が“予防の要”


HPV(ヒトパピローマウイルス)という名前を聞いたことがある人は多いでしょう。

ただ、そんな人でも「子宮頸(けい)がんの原因で、女性が注意すべきウイルス」と思っているのではないでしょうか。

実は、HPVは口の奥(中咽頭)のがんも引き起こすのです。しかも、男性の患者が多いのが特徴です。

そして、このHPVが原因となる中咽頭がんが急増しています。

HPVと中咽頭がんの関係、そのがんの特徴、患者数の状況や予防方法について解説します。

⚫︎HPVが引き起こすさまざまながん

HPVは非常にありふれたウイルスです。皮膚や粘膜の小さな傷口から感染します。

感染しても、ほとんどの場合は免疫の力で自然に排除されます。

しかし、時にウイルスが感染した状態が持続すると、がんを発症することがあるのです。

HPVが引き起こすのは女性の子宮頸がん、外陰がん、膣がん、男性の陰茎がん、そして男女共通の中咽頭がん、肛門がんなどです。

そして、この中咽頭がんの患者が急増しており、問題になっています

200種類以上が知られているHPVのタイプ(遺伝型)のうち、がんの原因となるのは一部です。

HPVによる中咽頭がん患者の85~90%では「タイプ16(16型)」が検出されることが分かっています。

(中略)

喫煙・飲酒が原因の中咽頭がんは通常50代以降に発生するのですが、HPV関連の場合、40代などの比較的若い世代にも発生することが特徴です。

また喫煙・飲酒が原因の場合、食道がんなどを併発することが多いのに対し、HPV関連中咽頭がんでは他のがんが重複することがほとんどありません。

一方でHPV関連中咽頭がんは喫煙・飲酒が原因の中咽頭がんより首のリンパ節へ転移しやすい――などの違いがあります。

(中略)

HPVワクチンの接種によって、HPV感染リスクがどの程度減るのかを米国人をモデルにシミュレーションした論文※1があります

この論文によると、12歳時点のワクチン接種率を男児、女児共に40%とし、これを現在から維持すれば、HPV関連中咽頭がんの患者の多くが感染している16型の感染リスクを全体で約75%減少させられるといいます。

接種率80%を男女共に維持できると、16型の感染減少率はほぼ100%に達し、ウイルスの撲滅が可能になると考えられています。

さらに感染リスクだけでなく、HPV関連中咽頭がんの発生をワクチン接種でどの程度減らせるのかを予測した論文※2もあります。

この論文によると、米国で男女ともワクチン接種をまったく実施しない状態を続けると、2030年ごろから男性10万人あたりの中咽頭がん罹患数は10人程度になるといいます。

これが現状のHPVワクチン接種率、女性約60%、男性約50%を維持すると、2100年には10万人当たり4~5人に減少させることができると予測しています。

接種率が増加すれば、さらに中咽頭がんの発生率が減少することも予測されています。

同様に日本国内でも今から男女共にワクチン接種率を上げていけば、やがては中咽頭がん発生率減少の効果が現れ始めると考えられます

逆に言えば、今から対処しなければ将来の子供や孫の世代に禍根を残しかねません

※1 Brisson M et al. Lancet Public Health. 2016;1:e8-e17.

※2 Damgacioglu H et al. Lancet Reg Health Am. 2022; 8:100143.


(引用、ここまで)


これは、横浜市立大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授の折舘伸彦氏が監修した一般向けの中咽頭がん啓発用のホームページのようです。

ざっくりとここで書かれていることの流れをまとめると、

「HPVは中咽頭がんの原因にもなり、今急増中です」
→「中咽頭がんはとても怖い病気で、40代の若い人でもなってしまいます」
→「そんな中咽頭がんの発症をHPVワクチンを打てば抑えられるという試算があります」
→「だから男性もHPVワクチンを打ちましょう!さもないと将来の世代が大変です!」


私からすれば、不安・恐怖をあおる「不安ビジネス」にしか見えません。

しかも、ここで書かれている有効性の論文は、また後できちんと読む必要はあるものの、少なくとも試算や予測ばかりです。

だからなのか、「と考えられます」「しかねません」などの断言を避ける表現になっているところも見逃せませんが、あまり深く考えずにこの情報に接したら、きっと有効なワクチンが怖いがんを打たなきゃと思う人が大半であって、歯止めがあるとすれば5〜9万円の自費負担に見合うと考えるかどうかというところなのでしょうけれど、これが現政権によって定期接種化させられたら、一気にダムが決壊して、HPVワクチンを接種する男性が一気に増えて、被害がさらに拡大してしまいそうです。

また、「HPVによる中咽頭がん患者の85~90%では「タイプ16(16型)」が検出」とも書いていますね。

そうすると、同じ16型と18型のHPVをカバーするとされる2価ワクチン(サーバリックス)も同様に適応拡大にならないとおかしい感じがしますね。

ここでちょっと気になって監修の折舘氏の製薬会社との利益相反について「Yen For Docs」というサイトで調べてみますと、調査時点で最新の2022年には、4価HPVワクチンと9価HPVワクチンの販売元であるMSD株式会社から約72万円のお金を、他の製薬会社からの報酬と合わせると約253万円を受け取っていることがわかります。

ただ、その中には2価HPVワクチンの販売元のGSK株式会社は入っていないようでした。

現時点で、折笠氏が「中咽頭がんの予防のためにHPVワクチンを打ちましょう」と勧めた場合、まずそのHPVワクチンは、折笠氏がお金を一番受け取っているMSD社製の、4価ワクチンか9価ワクチンのどちらかであるということに必然的になりますが、いずれの製品にも中咽頭がんの予防という効能・効果は書かれていないことが確定なので、これは薬機法違反にならないのだろうかと思ってしまいます。

薬機法違反についてはYouTuberの藤江さんとともに、ジャーナリズムの問題に鋭く切り込んでいるフリー記者の高橋清隆氏が厚労省大臣記者会見で質問してくれていますが、大臣の回答を聞く限り国は薬機法違反だと認めない意向のようです。

またHPVワクチンの特定の商品名を言わないで済むことも薬機法違反から逃れる理由になってしまうのでしょうか(どちらにしてもMSD社の製品であるにも関わらず、です)。

もしこれがサーバリックスの適応拡大が認められていない理由なのだとしたら、どれだけ国が製薬ビジネスに巻き込まれているんだと思ってしまいます。

いずれにしても、HPVワクチンの男性への接種拡大の動きは、非常に拙速かつ理屈が通らない(有効性が証明されていないのに有効であることが前提であるかのように推奨されている)ので、ブログ読者の皆様にはくれぐれもご留意頂きたいです。

Shuugo・Tagashira(タガシラ シュウゴ)

田頭 秀悟

オンライン診療医

出典 たがしゅうブログ

主体的医療ダイアロジカルスクール(Proactive Med Dialogical School)

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