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なぜ新たに導入されたHPV検査の詳細が書かれていないのか


HPVワクチン推進派医師たちは、対象者がHPVワクチン接種前にHPVに感染しているかどうか、またHPV感染しているとしたらどの型に感染しているのかについて全く調べようとしないし、調べないことに違和感も呈さないという一方で、別の場面ではある種、真逆にも見える行動をとっているところがあります。


それは子宮頸がん検診の現場では、2024年4月より「HPV検査単独法」と呼ばれる検査が新たに導入されることになっていたということです。

皆さん、この検査、ご存知でしたでしょうか。この検査に関する資料がこちらの厚生労働省のサイトにあったので読んでみました。


ところが、この資料をくまなく読んでみて、あることが説明されていないことに気づきます。


この「HPV検査単独法」というのが、何をどうやって調べているのかが書かれていないのです。


いや、正確には少しだけ説明があります。この資料の最後のページの「1.事業の目的」の中に、「HPV検査」に(※1)マークがついていて、
※1. 子宮頸がんの原因となる高リスク型HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染の有無を調べる検査」とだけ書かれていました。

なるほど、16型や18型などハイリスクのHPVに感染しているかどうかを調べることができる検査なのか」ということまではわかるのですが、そうなると、どうやってハイリスクのHPVであることを調べているのかというメカニズムが私は気になります

しかしそのメカニズムを示す検査の詳細情報が全く書かれていないのです。

従来、子宮頸がん検診と言えば、子宮頸部の組織を専用のブラシで擦って一部とってきて、病理を担当する検査技師や医師が顕微鏡で見て細胞の形を目視で確認して良性か悪性かを判断する「細胞診」と呼ばれる手法が行われています。

その細胞診を行う前に、このHPV検査単独法なる検査を行なって、陽性(ハイリスク)と判断される場合のみに細胞診を実施するという流れに2024年4月より一部自治体で変わっているようなのです。

PCR検査でも遺伝子の断片しか調べられなくてハイリスク型であるかどうかが難しいのに、そんなハイリスク型であるかどうかを都合よく調べられる検査があるのかというのがまず疑問ですし、もっと言えばそんな方法があるのであれば、検診の現場だけでなく医療機関でもHPVワクチン接種を受けるかどうか悩んでいる人に実施すればいいと思うのに、そんな検査が行われていると聞いたこともないのはなぜか、とか、いろいろ疑問がうずまく中、やはりその「HPV検査単独法」という検査の詳細が気になって、さらに調べを進めていきます。

2023年12月にも厚生労働省にてこの検査の検討会が行われており、そこには「HPV検査単独法」という言葉の定義がこう書かれていました。

HPV検査を実施し、陽性とされた場合にのみ追加的にトリアージ検査として同一検体を用いた子宮頸部の細胞診を実施する方法。ただし、トリアージ検査として実施する子宮頸部の細胞診については、子宮頸部の細胞診とは区別するものとする

いや、そのHPV検査がどんな検査なのか知りたいのに、結局それが書かれていないわけです。それどころか「トリアージ検査」というまたわからない言葉が出てきたので「トリアージ検査」を調べますと、「HPV検査単独法による子宮頸がん検診において、HPV検査を実施し、陽性とされた場合にのみ実施する子宮頸部の細胞診のこと。HPV検査と同一検体を用いる」と書かれていました。

頭がこんがらがりますが、私なりに整理すると、HPV検査なるものを陽性の時だけ次の細胞診検査につなげる場合のことを「HPV検査単独法」と呼び、その時に追加で行う細胞診検査のことを「トリアージ検査」と呼んでいるようです。

ところが肝心の「HPV検査」が何なのかについては、この27ページほどある大量の資料の中にも書かれていないのです。

唯一、「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン 2019年度版」という資料に詳細が書かれている可能性が指摘されていたので、その資料にも当たってみましたが、ここにも「HPV検査」とは何なのかがまともに書かれておらず、その代わりと言っては変ですが、「HPV検査単独法 (推奨グレードA)」、「浸潤がん罹患率減少効果のエビデンスがある」と書かれていました。ただその引用文献は具体的には示されていませんでした。

またそのすぐ後の文章に、「評価した研究で得られた効果は、HPV陽性者に対する長期の追跡を含む精度管理体制の構築が前提であり、追跡が遵守できない場合は効果が細胞診単独法を下回る可能性がある検診の間隔を 2~3 倍に延長することが可能である。ただし、細胞診に比べて偽陽性率が大幅に上昇し、1,000 人あたりの偽陽性は 42 人増加する。」というきな臭いことも書かれていました。

やり方によっては細胞診単独よりも効果が下回る可能性があって、偽陽性率が増加する検査法がなぜ「推奨グレードA」なのでしょうか

「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2010」の食事療法、31ページで、「炭水化物は指示エネルギー量の50~60%」と「グレードAで推奨」してあるのに、根拠はなんとコンセンサス(複数の専門家の意見)で実は科学的根拠に基づいていない、という話を思い出します。

まだまだ納得のできない私がようやくたどり着いたのは、一つ前の「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2009年度版」でした。

そこに求めていた「HPV検査とは何か」が次のように書かれていました。

(以下、「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2009年度版」より引用)

HPV検査(単独法)
検査法の概要
子宮頸がんの発生と関連があるとされる HIPV タイプ(いわゆるハイリスク HIPVを検出する方法には大別して液相ハイブリダイゼーション法と遺伝子増幅法(PCR 法)がある。現在、欧米を中心に子宮頸がんのスクリーニングやベセスダシステムの意義不明異型扁平上皮(ASC-US)症例におけるハイリスクグループの選別に用いられているのは液相ハイブリダイゼーション法で、ハイブリッドキャプチャー法が最も普及している米国FDA (Food and Drug Administration)も検査法として認可している。この方法で最も普及しているキットであるハイブリッドキャプチャー2(HIC2)は、子宮額がんを引き起こすいわゆる中~高リスク型 HPVを検出する検査法で、本検査では 13タイプ(16,18,31,33,35,39,45.51,52.56,58.59,68型)の中~高リスク型HPVのいずれかに感染していると陽性と判定される。わが国では保険適応の承認は現在では得られていない。

(中略)

直接的証拠
子宮頸がん死亡率減少効果や浸潤がん罹患率減少効果を証明した研究はない

(中略)

不利益
過剰診断
HPV検査ではCIN3以上に対する感度は細胞診(従来法)との比較で有意差がなく、また CIN2以上に対してHPV 検査は細胞診(従来法)と比べて有意に感度が良いが、CIN2では比較的多く自然消退が期待できるため過剰診断に結びつく可能性があることが指摘されている

(引用、ここまで)

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ここでようやく、HPV検査の正体が「液相ハイブリダイゼーション法」と呼ばれる検査法、中でも「ハイブリッドキャプチャー2(HIC2)」という方法が一般的であるということがわかりました。

しかしとりあえず検査法の詳細はさておき、この検査法はこの時点で「子宮頸がん死亡率減少効果や浸潤がん罹患率減少効果を証明した研究はない」となっていますし、過剰診断が問題になっていることも記載されています。それが故か「わが国では保険適応の承認は現在では得られていない。」とも。

しかし10年後のガイドライン2019年度版では、それが「浸潤がん罹患率減少効果のエビデンスがある」になっています。

本当でしょうか。HPVワクチンの先行接種国で軒並み子宮頸がんの患者数が減っていないというのに。

そして調べてみると、どうやらHPV検査は条件付きで保険適応となっているようで、具体的には子宮頸癌検診でASC-US(意義不明異型扁平上皮)の人に行う高リスクHPVの有無のみを調べる場合」と「子宮頸部組織診で軽度・中等度異形成の結果の人に行うより詳しくHPV型判定を行う場合」に限って保険適応となっているみたいです。



最後に「ハイブリッドキャプチャー2(HIC2)」という方法について、さらに詳しく調べると次の資料が出てきました。

腫瘍クリニカルカンファレンス子宮頸部上皮内病変のマネージメント
―HPV
時代のアップデート  2)ハイリスクHPV検査の意義とその解釈
2012
年9月 日産婦誌64巻9
岡山大学 本郷淳司
座長:金沢大学 井上正樹

(以下、上記資料より引用)

HC2法(=HIC2法)の実際は,子宮頸部より原則ブラシで採取された細胞の懸濁液や液状細胞診検体よりアルカリにてDNAを抽出し,それを13種のハイリスクHPVに対するフルレングスRNAプローブとハイブリダイズさせる

形成されたHPVRNAハイブリッドは96穴のキャプチャープレートに固相化された抗DNARNA抗体に捉えられ,ALP付加抗体による呈色反応により定量判定される.

本邦では平成22年4月より,ベセスダ分類でASC-USと判定された患者のトリアージュとして保険収載されている.

頸癌検診における細胞診とHC2の精度の比較では,細胞診の感度は40~84%と報告によりまちまちだが,特異度は概ね90%以上と良好である.

一方,HC2の感度は80~100%とより優れているが,特異度は51~89%と不良で,偽陽性者が精密検診に回る頻度は高くなる

米国では2006年のASCCPコンセンサスガイドラインに基づき,30歳以上の頸癌検診に細胞診とHPV検査が併用されていることは周知の事実であるが,これには米国における細胞診精度が必ずしも高くなく,わが国と異なる保険事情での医療経済の問題など異なった側面もあるので,米国方式をそのまま導入すべきかどうかは慎重に考慮する必要があろう

(引用、ここまで)


2012年のこの資料でわかったのは、HPV検査の正体である「ハイブリッドキャプチャー2(HIC2)」という方法は、PCRのようにごく一部の遺伝子だけではなく、「フルレングス」、すなわちハイリスクHPVの遺伝子の「全長」と検体の情報が一致するかどうかを調べているということ、しかしその一方でこのHPV検査は感度が高い代わりに、特異度が低いということです。

感度が高いというのは偽陰性率が低いということ、すなわちもしこの検査が陰性の場合にそれが間違いでハイリスクHPVを見逃している可能性が低いということ、逆に特異度が低いというのは偽陽性率が高いということ、すなわちもしこの検査が陽性であっても、本当はハイリスクHPVではないものまで陽性と判定してしまう率が高いということ、つまり過剰診断につながるということです。

だから「米国方式をそのまま導入すべきかどうかは慎重に考慮する必要があろう」とこの時点では評されていたはずなのに、約10年の時を経て様相は随分変わりました。この時指摘されていた過剰診断の問題は解決したのでしょうか。とてもそうとは思えません。

それどころか、この「HPV検査」が「ハイブリッドキャプチャー2(HIC2)法」であることがここまで調べないとわからないようになっている始末です。

どうやらこの10年ほどの間に、HPVワクチンの検診体制は非常に慎重さを欠いた体制に変わってしまった模様です。

どうか皆さま、騙されないようにしていただければ幸いです。

Shuugo・Tagashira(タガシラ シュウゴ)

田頭 秀悟

オンライン診療医

出典 たがしゅうブログ

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