先月中旬、碑文谷教会で53歳という若さで帰天なさった方の葬儀がありました。長らく清泉インターナショナル学園に勤務された女性でした。喪主を勤めた長男の方もセント・メリーズ・インターナショナル・スクールで学ばれた方でしたので、葬儀ミサ・告別式には多くの外国籍の方、シスター方が参列なさっていました。桐ケ谷斎場での火葬の前の祈りが終わった後、シスター方が用意していたプリントを配り、英語で歌い始めました。
Nearer, my God, to thee, Nearer to thee !
E’en though it be a cross that raiseth me, still all my song shall be‥‥
で始まる英語の聖歌を3番まで歌ってお見送りをしました。日本語では「主よ、みもとに」という有名な聖歌です。
「主よ、みもとに」はカトリック聖歌集では658番ですが、プロテスタントの讃美歌集では320番、改訂された『讃美歌21』では434番です。この歌は葬儀や追悼の式のときによく歌われます。なんといっても1997年アカデミー最優秀賞を受賞した映画『タイタニック』で、沈みゆく船に残った楽団員がこの曲を静かに演奏するシーンは実話だけに胸を打つものがありました。
歌詞は下記のとおりです。
1番:主よみもとに 近づかん のぼるみちは 十字架に ありともなど 悲しむべき 主よみもとに 近づかん
2番:さすらうまに 日は暮れ 石のうえの かりねの 夢にもなお 天(あめ)を望み 主よみもとに 近づかん
3番:主のつかいは み空に かようはしの うえより 招きぬれば いざ登りて 主よみもとに 近づかん
この歌詞は、創世記28章の「ヤコブの夢」をもとにしたものです。父イサクと兄エサウをだまして、跡取りの権利を得たヤコブは、兄に命を狙われて逃亡生活をする羽目になります。野獣や盗賊に襲われる不安の中、疲れ切ったヤコブは、「その場所にあった石を一つ取って枕にして横たわった」(11節)のです。そしてヤコブは夢をみます。「先端が天まで達する階段が地に向かって伸びており、しかも、神のみ使いたちがそれを上ったり下ったりしていた」(12節)という夢です。夢の中で、主から祝福を受けたヤコブは、目覚めて、「まことに主がこの場所におられるのに、わたしは知らなかった」(16節)と述べるのです。
ヤコブの姿は、人間関係に悩み苦しむ私たちを表していると言えます。人と人との横のつながりを失い、孤独に苦しむヤコブに、神が働きかけます。縦の関係、神とのつながりを体験する恵みが与えられたのです。その後、20年に及ぶ様々なドラマを経て、「あなたの子孫は大地の砂粒のように多くなる」(14節)という神の言葉が実現していくのです。
この曲の作詞家・英国人サラ・F・アダムスSarah Flower Adams(1805~48)は若いころから女優を夢見ていましたが、彼女のステージ生活は健康が許さず、1837年にマクベス夫人を演じたのが最後になりました。その後作家に転じ、初期キリスト教殉教者にまつわる詩、「Vivia Perpetua」(1841)、「The Flock at the Fountain」(1845)などを残しています。また子供たちのための公教要理も著していますから、きっと聖書にも教理にも通じていた女性だったのでしょう。
53歳という若さで帰天されたアンジェラの洗礼名を持つSさんもきっと素晴らしい聖歌に見送られ、惜別の哀しみを超えて、希望と喜びのうちに神の国に入られたことでしょう。
Matsuo Mitsugi(マツオ ミツギ)
松尾 貢
主任司祭
Copyright ©2021年11月07日
2026年4月4日掲載許可取得