日本 プロライフ ムーブメント

院長の独り言〜19年9ヶ月〜『感謝』

フジハラレディースクリニックでは、毎月一回、職員さんたちにFLC通信という院内会報を渡しています。そこに毎回書いていた「院長の独り言」。最後に書いた「院長の独り言」を皆様にもご紹介いたします。つたない文章ですが、お読みいただけましたら幸いです。今日でクリニックの理事長・院長を退任します。明日からは、何の肩書もない、ただの医師になります。今まで私に関わってくれたすべての皆様に、心より感謝申し上げます。藤原紹生

 先日の忘年会で「先生は優しい」「先生の優しさのおかげで勤められた」と多くの方々から言われました。俺、そんなに優しいかな~?私自身は、普通のつもりです。私は、医師家系の長男として生まれましたので、小さい頃から「医師になるのが当たり前」という中で、育ってきました。一方で、「医者はエラそう、金持ち」「医者は金をふんだくる」みたいな負のイメージ(父がそうだった訳ではありません)があり、「医者の子ども」という目で見られるのは嫌でした。そう思って生きてきたせいか、‘お金をとる’ことに抵抗があり、開業してからも、患者さんの支払いがなるべく少なくなるように、考えてやってきました。妊娠反応の尿検査をしない、必要最小限しか検査や処方をしない、ベッドの差額を発生させないように全部個室にする、分娩の休日・深夜加算をとらない、などです。それらは全て、幼少期から抱いていたイメージ「医者は金をふんだくる」、と思われたくないという気持ちからです。医師である前に普通の人でいたい。

2025.12.28 院長の独り言 『感謝』

 クリニックを建設中、砂原組の木本さんから「他の病院の先生と違って、藤原院長とだけはこんなに普通に喋っていいんだろうかと思うぐらい、普通に喋れる。それは、先生が下に下りてきてくれてるからだろうと思う。」と言われました。私自身は、‘下りてる’つもりはありません。

 私の落語の師である柳家小三治師匠は、「落語に出会って良かったことは、物事を下から見るのを知ったこと。‘その人の目線にしゃがんで見る’という言葉があるが、それは、自分は上に立ってる、と思っているから。そんなのは好きじゃない。」と仰っていました。小三治師匠と言えば、落語の本題に入る前の「まくら」が、とてもほのぼのして何とも言えず可笑しくて有名ですが、それは、「俺の落語を聴かせてやるから聞け!みたいな‘上から’ではなくて、お客さんと自分をまず初めに同一次元に置きたいから。」と仰っていました。小三治師匠らしいですね。

 私は、職業的な立場や立ち位置はありますが、それを除けば、誰とでもできるだけ同じ所に立っていたい、と思います。それが、自分の生きる姿勢だと思っています。私自身は、さほど何の取り柄もない人間です。仕事によってやっと生かされている、そんな人間です。ただただ一生懸命、真面目に、心と心のつながりを大切に、義理と人情と愛情だけでやってきました。

 サン=テグジュペリの『星の王子さま』の中で、王子と友だちになったキツネが、王子と別れるときに伝えてくれた言葉があります。「ぼくの秘密を教えてあげるよ。とっても簡単なことなんだ。ものごとは、心で見なくてははっきり見えないんだ。一番大切なものは、目に見えないんだよ。」これは、表面的なものにとらわれずに、その奥にあるものを、自分の感性や信念で見ることの大切さに気づかせてくれる言葉です。同時に、子どもは心で物事を見ているのに、大人になるにつれてその感覚を忘れてしまうことへの忠告や警鐘のようでもありますね。

 小三治師匠は、「言葉よりも心ありき」と仰っていました。人間国宝にまでなり言葉の紡ぎ手であった落語界の大名人が「言葉よりも心ありき」と仰っていたのは、まさに心に響きます。

 私たちの仕事にも通ずるところがあります。医師や医療者と患者さん、である前に、人と人です。上も下もありません。お客様でもないのに「○○様」と呼ぶのは嫌いです。人と人、としておつきあいできれば良いのです。なので、私は自分が特別優しいとは思いませんが、普通に出会って、普通に一緒に仕事をしてくれた皆さんに心より感謝いたします。

 最後の『院長の独り言』になりました。19年と9か月、本当にありがとうございました。      

               

Fujihara Tsuguo(フジハラ ツグオ)

藤原 紹生

産婦人科医

広島市 フジハラ レディーズクリニック 院長

出典 facebook

Copyright ©2025年12月31日
2025年12月31日許可取得