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保守派聖職者からレオ14世への警告

2025年はカトリック教会では「聖年」だ。「聖年(Holy Year)」とは、カトリック教会において特別な霊的恩恵を受ける年を意味し、ローマ教皇によって宣言される。「聖年」は、罪の赦し(免償)を得たり、信仰を深めたりするために設定される特別な年で、カトリック教会の伝統だ。多くの信者がバチカンや他の指定された聖地を訪れ、赦しを求めるために懺悔をし、祈りや慈善活動を通じて、信仰を再確認する機会という。

「聖年」の幕開けは、ローマ教皇が大聖堂にある「聖なる戸」(Holy Door)を開ける象徴的な儀式から始まる。これは、神への道が特別に開かれる象徴とされている。世界中から多くの巡礼者がローマを訪れ、教皇主催のミサや、平和、希望、連帯に焦点を当てたイベントなどに参加する。

ところで、今月に入り、約30カ国から1000人以上の信者たちがバチカンに集まったが、その中には公式にクィア(Queer)と認められたカトリック教徒も初めて含まれていた。メディアは‘LGBTQ巡礼‘と呼んで大きく報じた。

LGBTQ巡礼は、レインボー・カトリック教会のグローバル・ネットワークとイタリアのイニシアティブ「ラ・テンダ・ディ・ジョナータ」によって主催された。巡礼はデモンストレーションではなく、信仰の祝典だという。主催者は「誰も自らのクィアのアイデンティティを免罪するために聖なる扉をくぐるべきではない。私たちのアイデンティティは罪深いものではない。クィアのカトリック教徒が2流の信者ではないことを示すべきだ。巡礼は罪の告白でも抗議でもない」と、巡礼の意義を強調している。

レオ1世の前任者であるフランシスコ教皇は、教皇在位中、LGBTQグループと定期的に面会し、これらの信者に対して寛容な姿勢を示してきた。バチカン教理省は「フィドゥシア・スプリカンス(Fiducia Supplicans)」宣言を発し、2023年には一定の条件の下で再婚または同性カップルの祝福を認めた。その直後、バチカンは、「この宣言は男女間の結婚に関する伝統的なカトリックの教えから逸脱するものではない」と釘を刺している(バチカンユース9月6日)。

フランシスコ教皇の治世下で公布された教理省の文書「フィドゥシア・サプリカンス」(信徒の願い))文書は、同性間のパートナーシップにある人々の祝福を初めて認めたものだ。ただし、同文書は、特にアフリカのカトリック司教たちの間で激しい批判を巻き起こした。

フランシスコ教皇は以前、同性愛者のカトリック信者について「私が裁く資格があろうか」と発言し、同性愛者に歩み寄る姿勢を見せたが、教会の教義を変えることはなかった。教会の教義によれば、独身の同性愛者だけが教会生活に参加し、秘跡を受けることができる。

LGBTQ巡礼について、バチカンの元教理省長官だったゲルハルト・ルードヴィヒ・ミュラー枢機卿は「神は男女間の結婚を祝福している。罪は祝福を受けることができない。教会がLGBTQの性行為を容認し、祝福を与えるといった誤解が広がっているが、訂正しなければならない」と述べている。

ミュラー枢機卿の指摘は、LGBTQ問題で前教皇フランシスコの路線を継承するレオ14世を意識した発言だろう。ミュラー枢機卿はイタリアの通信社ANSAとのインタビューで、「聖年中に同性愛者の信者が免罪符を得るためにサン・ピエトロ大聖堂の聖扉をくぐった。同性愛行為は大罪だ。私たちは、懺悔やライフスタイルの変革ではなく、自己PRのためだけに聖扉をくぐることを拒絶しなければならない」と痛烈に批判している。

欧州のカトリック教会ではクィアの信者が増えてきている。同時に、同性愛者を差別してはいけないと考え、積極的にクィアの信者と対話を模索する聖職者が出てきた。ドイツのエッセン=デルヴィヒの聖ミヒャエル教区主催の祭典で今月13日、地元のカトリック青年共同体(KjG)がレインボーフラッグを掲げたことが発端となって、同性愛者を支援する信者とそれに反対する信者間で暴力事件が起きたばかりだ。

聖職者の未成年者への性的虐待事件と共に、同性愛問題はカトリック教会の大きなテーマだ。保守派聖職者の代表格ミュラー枢機卿の発言はレオ14世への警告と受け取られている。

Editorial (オピニオン)
国連記者室

出典 ウィーン発『コンフィデンシャル』

Copyright © 2025年09月19日
2025年10月14日許可を得て複製