皆さんには日本人の知り合いがいますか?もしいるなら、早く会っておいた方がいいですよ。絶滅危惧品種なんですから。
国連によれば、昼夜を問わず一時間ごとに30人ずつ日本人が減っているということです。今年(訳注:2012年)の終わりには、20万人減少し、2050年には今の人口の1/4近くまで減ってしまうことになるでしょう。これが、物質主義と死の文化を熱心にとりいれていった国の遺していく姿なのです。
日本は人口統計学的な実験室として極めて貴重な価値があります。というのも日本は事実上閉じたシステムとなっており、海外移住も移民もないからです。日本の99パーセントは民族的に言って単一な人口であることから、未来は何を世界にもたらすのかということについて、めったに見れないものを垣間見させてくれます。
問題はシンプルです。日本人女性が事実上赤ちゃんを産むことをやめたということなのです。合計特殊出生率(TFR)というのは、女性一人当たりが、その人の国が安定した人口を保つために産む子どもの数です。日本のような先進国で、この値は女性一人当たり2.1人になっています。(訳注:2021年は1.34。2.1人台は昭和40年代の値。)しかしながら、日本の人口は50年前の1960年には世界で初めて人口置換水準を下回り、その後も合計特殊出生率は低下し続けています。いまやその値は女性一人当たり1.1人という(人口置換水準の半分の数値)驚くべき数値となっており、このまま減り続ければ2050年には0.6にまで下がり続けていくことになります。女性たちが子どもを産むのをやめてしまえば、結果は避けられないものになります。国の人口はすぐにピークに達し、そこから減少していきます。日本の人口は二年前に1億2650万人という最多人口に達し、いまではそこから100万人減っています。この傾向は、日本が一年に100万人ずつ減少していくようになるまで拍車がかかっていくでしょう。
移民たちが安定的な勢いで入ってきて、数の増えない自国の若い世代に置き換わってくれる助けをしてくれるならば、出生率が下がること自体は重要な問題にはなりません。これはシンガポールで目下おこっているケースです。しかしながら、日本という国は、外国人が自分たちの国境の内側に住みにやってくることをいつでも極端に嫌がってきたので、外国人が日本に住んだり日本で働いたりすることはほとんど不可能なのです。日本に住みたいと願う外国人のうち1%くらいしか義務付けられた日本語能力試験にも受かりません。
その結果、日本は年齢層の両端において、深刻な状況に迫られています。その数値は不吉なほどはっきりとした単純さを示す厳しいものです。日本人の15歳以下の子どもの数は、人口の24%から現在の13%まで、30年連続で減少してきています。いまや日本は100年前よりも子どもの数が減ってしまいました。1949年に母体保護法が施行されて以来、この国で苦しみの声を上げてきた4000万人の赤ちゃんの中絶件数が、減った子どもたちの大部分の場所を占めるのです。経済が下り坂になってくると女性たちに労働の場に入っていくよう、政府が強く推進したため、今となっては70%もの日本人独身女性たちが結婚したくないと言っています。日本人の「ビジネス優先」のメンタリティは、子どもを産むことはキャリアをあきらめる決断だとみなすのです。
65歳以上の人たちの数はこの60年間ずっと増えてきています。1952年には人口のわずか5%に過ぎなかった数値が、目下23%となり、2050年までには43%にまで増える見込みとなっています。日本は世界でも最も高齢者の多い国です。今の日本の平均年齢は45歳ですが、2050年までには平均年齢が60歳というこんな信じられない数にまで上がってしまうでしょう。こういうわけですから、日本は65歳以上の高齢者の割合が世界で最も高く、15歳以下の子どもたちの割合が世界で最も低いのです。
若年人口が伸び悩んでいることと高齢者の人口が爆発的に増えていることが絡み合うと、必然的に深刻な経済的影響が出てきます。手始めに、退職したお年寄りたちを支える働き手がどんどん減ってきます。1950年には一人のお年寄りを面倒見るのに10人の働き手がいました。今や、一人の退職者に対して2.5人の働き手しかおらず、中国と比べる1/8の比率になっています。2050年までには、一人の働き手が一人の退職者の面倒を見ることになるでしょう。世界最低の比率になります。逆三角形になった日本の人口ピラミッド(若い人たちより高齢者が多い状態)はより多くの施設を必要とし、医療費がもっと嵩んでいくことも示唆しています。ベビーブーマーたちが次々と退職していく今、そして2025年までには、国家歳出の70%が国債業務と社会保障支出で費やされることになってしまうでしょう。反対の側から見て言えば、若い人たちが減るということは労働者が減るということで、政府にとっては税収が減るということになります。出費は増えて税収が減るということは債務が増えるということになります。経済的な心配をしている人々が結婚や出産を遅らせ、人口統計学的な負の連鎖、別の言い方をすると悪循環が続いていくことになるのです。
1995年以来、日本政府は女性たちにもっと子どもを産んでもらおうと、子育て支援を大いに手厚くすることを含めて、あらゆる挑戦をしてきましたが、結果は全く出ていません。2006年戌年には、小泉純一郎元首相は「犬はたくさんの子犬を生む。たくさん産めば生みの苦しみは楽になる。」とまで発言しました。政府はいわゆる「合コン」にまで税金を使っています。しかし、人々をものに執着するようにしむけ、「赤ちゃんがいることは重荷になって、自分のしたいことや必要なものを邪魔してくるよ。それに環境にも悪い」と何十年も語りつづければ、あなたの国は滅びに向かってしまいます。歴史上のどんな国でも、日本ほど低い出生率から、出生率を回復した国はありません。
学ぶべきレッスン
目下ゆっくりと進展中の日本の災難からなにを学ぶことができるでしょうか?日本が閉じたシステムであるのと同様に、世界もまた閉じたシステムです。日本の人口が横ばいになってから急落しているのと同じように、世界もまた、まもなくそうなるでしょう。こうなることで経済的に大きな影響を受け、人々はかつて体験したことのない規模で苦しむことになるでしょう。
にもかかわらず、人口をコントロールしようとするカルテルは、出来る限りのスピードを上げて世界中の人々に中絶、不妊手術、避妊の奨励を続けています。
世界規模の人口統計学的な流れは巨大タンカー並みの動きをしています。全世界の合計特殊出生率はたった二年で置換水準を下回ることになるでしょう。世界の人口はわずか30年後にピークを迎え、そこから減少し始めることにもなるでしょう。人口コントロールのプログラムを終わらせ、もっと大きな家族をもつことが奨励される時が今やきているのです。
Clowes, Brian
ブライアン・クロウズ
英語原文 lifeissues.net
翻訳者 多田 由理
Copyright © 2012年5月7日
2022年3月18日許可を得て複製