日本 プロライフ ムーブメント

Q&A 妊娠中絶についての真実を探る

なぜ女性は中絶するのでしょうか?

たいていの女性(少なくとも70%)は妊娠中絶を道徳に反すると考えています.しかし他人から受けるプレッシャーや自分の境遇から、良心に背く選択をしてしまいます。中絶を選択する理由は、子どもを育てられないのではないか、もし中絶しなかったらパートナーを失うのではないか、自分の人生を管理出来なくなるのではないかといった恐れからです。そうした女性たちの大部分は家族や愛する人からのサポートを得られていません。彼女たちの80%以上が、もしもっと経済的に恵まれていたなら、もし愛する人々からもっと協力が得られていたなら、子どもを産んでいただろうと答えています。妊娠中絶というのは女性から見れば喜びの「選択」ではありません。絶望の結果とる行動なのです。非常に基本的なレベルにおいて、中絶とは良心や母性本能に背いた行動であるからこそ、その心理的影響力は絶大なのです。

C.・エヴェレット・クープ前公衆衛生局長官の出した結論では、『妊娠中絶による心理的影響は無い』ということではありませんでしたか?

本当のところは、ノーです。クープ博士はロナルド・レーガン大統領から、妊娠中絶が女性に及ぼす心理的影響について報告書を作成するように命じられました。クープ博士が大統領に告げたのは、当時の研究には、重大な不備のないものなど一つもなかったということです。結果として、その時のデータは全く不十分で、妊娠中絶の及ぼす心理的影響の大きさや程度を判断することは、あったとしてもとても出来なかったのです。ク-プ氏はこの問題を評価するために政府の財源による調査が行われるべきであると勧告しましたが、残念ながらそれは実現されることはありませんでした。

中絶経験が持つあらゆる心理的重要性を否定しようとする過激派の人々は、たびたびクープ氏の陳述を誤って引用しては意味をゆがめてきました。クープ氏の公式陳述の本質的な意味はただ、論破できない結論に達するには、さらに調査する必要があるということでした。それを過激派は「クープは何も発見しなかった。従って何も存在しない」という意味に歪曲してしまったのです。しかし、その後多くのインタビューで氏は自分の見解をそのように解釈するのは間違いであると異議を唱えています。そして個人的には、実在する証拠から見て、多くの女性が確かに深刻な中絶後の心理的障害に苦しんでいると確信していると述べています。しかしながら公衆衛生局長官として控えめかつ正確に出した結論は、『さらなる調査が必要である』というものでした。

では、妊娠中絶の心理的後遺症とはどのようなものなのですか?

女性は一人一人違っています。反応もそれぞれ違っていて、違った時期に現れることがあります。何年もの間、後遺症をいっさい抑圧している、あるいは後遺症に気付かないでいる女性もいます。多くの反応は遅れて現れるのですが、それは後に、子どもの誕生や愛する人の死、ある人とのつきあいが終わったとき、信仰に目覚めたとき、などの重大な出来事によって引き起こされます。

一般に報告されている反応には次のようなものがあります。罪悪感、羞恥心、不安感、無力感、深い悲しみや良心の呵責、泣くことを自制できない、怒り、苦々しい思い、恨みの念、不信感や裏切り感、自尊心の低下、赤ん坊や小さな子ども、あるいは妊娠に関連する物事を避ける、将来の妊娠に対する不安、あるいは「代わり」の赤ちゃんが欲しいという欲求、中絶経験のフラッシュバック、悪夢にうなされる、睡眠が不規則になる、憂うつ感、性的機能不全、食生活の乱れ、薬物の濫用やその他の自虐的行為、人間関係の破綻、虐待、他の子どもと密接に関わることが難しい、自殺を考える、または自殺しようとする傾向がある、その他です。4

主な問題は、当事者の男女が他人と悲しみを分かち合うことが出来ない、と感じる場合があるということです。中絶という選択に「賛成」の人に救いを求めても、多分「忘れなさい。まだ本当の赤ん坊ではなかったんだから、悔やむことは何もないよ」などと言われてしまうでしょう。そのような「慰め」の言葉は実は当事者が悲嘆にくれているという現実を否定し、傷の回復を遅らせるものです。一方、中絶に「反対」の人とは痛みを分かち合うことを恐れる傾向があります。拒絶され、非難されるのではないかと思うからです。その結果、中絶という過去に苦しむ男女は、どちらの側からも「隔離された」ように感じるでしょう。では一体、誰に相談できるというのでしょうか?誰だったら、これ以上罪の意識を感じさせることなく、自分たちの深い悲しみを分かってくれるのでしょう?そういうわけで実に多くの人が悲しみという重荷を一人で背負っています。そしてこの重荷は、自らの機能や他人と良い人間関係を築く能力に過大な負担を強いることがあるのです。

そのような反応は後で現れたり、抑圧されていることがあるとういことですが、それが現れやすい時期や情況というものはあるのですか?

先に述べましたように、女性の人生における重大な変化(例えば子どもの誕生、家族の死、ある関係が破綻したとき、あるいは閉経のような肉体的変化でさえ)がきっかけとなって、そうした反応の一部が引き起こされることがあります。また赤ん坊を堕胎した日や、出産予定日だった日の近くに毎年「記念日反応」を起こす女性がたくさんいます。

中絶は、後から生まれた子どもに影響を及ぼすことがありますか?

はい、あります。中絶をした女性の多くが、その後の妊娠の際に流産、子宮外(卵管)妊娠、死産、(子どもの発達に影響を及ぼす)早産など、身体的問題を体験します。その他の身体的合併症によって不妊症になったり、妊娠が困難になったりすることがあります。

子どもたちもまた、母親の情緒不安定の影響を受けます。我が子と親密な関係を築くことが難しくなったり、過保護になったりする女性が多いからです。

中絶は子育ての能力にも影響を与えうるということですか?

そうです。中絶してしまった子のことが頭から離れないために、他の子どもと親密な関係を築けず、愛することを恐れ、あるいはそうできないのかもしれません。今いる子どもを中絶した子の「代わり」として見て、常に「あの子が生きていたら」と比較してしまいます。うつになって子どもの世話をすることが出来なくなったり、怒りの感情のために子どもの虐待につながったりします。5例えばニュージャージーのレネ・ナイスリーの場合、中絶のトラウマがきっかけで「精神異常」になり、その結果3歳の息子ショーンを撲殺してしまいました。彼女は法廷精神科医に、自分は「中絶が悪いことだと分かっていた」し、「中絶した罰を受けるべきである」と話しています。けれど不幸にも、ショーンが彼女のフラストレーションの犠牲になってしまったのです。6

あるいは極端に過保護になってしまう母親もいます。それは中絶した罰として、神が後から生まれた子どもを傷つけたり、取り上げてしまうのではないかと恐れる気持ちからです。

妊娠中絶は、恋人との関係にはどのような影響を与えるのでしょうか?

女性の中には、恋人との関係を終わらせたくないからとか、ボーイフレンドを「引き留めて」おきたいからという理由で中絶を選択する人が多くいます。男性の考え方は非常にずるいものであり、「決めるのは君だから」とか、堕ろさなければ別れるという公然とした脅しです。しかしそれでうまくいくことはまずありません。ほとんどの関係は中絶を機に破綻します。7

多くのカップルの間で、片方がただ相手を喜ばせるためだけに「中絶に賛成した」場合、恨みや怒りの念が生じることがあります。パートナーから支えてもらえなかったと感じる女性、あるいは自分の願いにもかかわらずパートナーが中絶してしまったという男性にとっては、中絶という問題にうまく対処することが特に難しいようです。片方、あるいは両方が深い悲しみや罪悪感を覚えているかもしれないのに、パートナーを動揺させてはいけないと思って、自分の感情を分かち合おうとしないのです。これは特に男性によくある問題です。喜怒哀楽をあらわさないようしつけられることが多いからでしょう。これら全てが別れの原因となりうるのです。

では中絶が結婚に与える影響は?

中絶が結婚前に、配偶者以外の人との間であったことだとしても、その精神的重荷を結婚生活に持ち込んでしまう当事者に影響があります。特に、配偶者に中絶のことを秘密にしている場合が問題です。そうすると配偶者に自分の感情面での問題を理解してもらえないからです。秘密を持っていると無条件の愛を受け、与えることが出来なくなるので、結婚生活に大きなダメージを与えます。

中絶が結婚生活の中で起きた場合、それは配偶者間に怒りや恨みの感情を呼び起こす温床となりえます。二人は互いに、より恨みや怒り、憤りを感じやすいからです。家庭内暴力を扱った訴訟事件としてよく知られているものの中には、ロリーナ・ボビット8の件やO.J.とニコール・ブラウン・シンプソンの件9など、中絶が関係していた例がいくつかあります。

妊娠中絶は家庭内暴力のリスクを増大させることがあるということですか?

そうです。中絶率と家庭内暴力の発生率がほぼ並行して増加しているのは偶然ではありません。中絶はパートナーとの間に怒り、苦々しい思い、恨みといった感情を起こしがちです。自滅的あるいは自殺願望がありながら故意に自分を傷つけることが怖くて出来ない女性は、暴力を振るう男とかかわってしまう傾向があります。そういう女性は無意識のうちに、中絶のことで「罰を受けて当然」だと感じているのかもしれません。中絶によって自尊心がうち砕かれたために、自分を虐待する今の男以外の人とよりよい関係を築く資格はないと思うのでしょう。

家庭内暴力のカウンセラーが最も頭を悩ませる問題は、虐待されている女性の実に多くが現状にとどまってしまうということです。多くのケースにおいて、自ら犠牲者になるというこの行為は、中絶のトラウマの持つ自己懲罰という性質によって最もうまく説明されるのではないでしょうか。したがって、家庭内暴力のカウンセラーが、そこに潜む中絶のトラウマに関する問題に取り組まない限りは、彼女たちが陥っている暴力という悪循環から救い出してあげることは決して出来ないのです。

中絶は男性には何らかの影響を与えますか?

はい。妊娠中絶に巻き込まれた男性からは様々な問題が報告されていますが、それらは中絶という経験によって直接もたらされた結果である、と彼らは述べています。それらの問題には人間関係の破綻、性的機能不全、薬物の濫用、自己嫌悪、危険な行動、自滅的な行動、時を越えて増す悲しみ、無力感に罪悪感、憂うつ感、怒りやすく暴力的になりやすいという傾向、男としての能力が失われたという感覚、などがあります。10 

中絶はよくないもので、肉体的にも精神的にもリスクを伴うものかもしれません。しかし合法的な中絶は不法な中絶より安全であると認めるべきなのではないでしょうか?

いいえ。合法であるということは、施術する時に何も不法な行為をしていないという理由から、中絶医が直面するリスクを減らします。合法的な中絶では、ばれては困るという感覚がないので、中絶医が基準を下げることになりかねません。いいですか、不法な中絶のほとんどは医師によって施されていました。技術レベルは上がってはいません。ただ広告することが容易になっただけです。

それでも合法的な中絶は、不法なものよりわずかでも安全なはずと私は考えます。確かに、合法化された今では、中絶による身体的合併症を患った女性は、犯罪捜査に巻き込まれる心配をせずに緊急治療をより速く受けることが出来ます。

それは事実ですね。そしてその点が合法化された中絶のもたらす唯一の医療的恩恵なのです。それでも全体的に見ると、合法化には非常に悪い影響力があります。中絶する女性の総数が劇的に上昇するからです。それはなぜか?中絶を合法化することによって、気の進まない女性に中絶を受けさせるよう圧力をかけることがたやすくなったからです。合法化される前は、女性には少なくとも、中絶は安全ではないからという言い訳がありました。しかし現在では、中絶は安全なものと見なされているために、その理由で中絶を拒むことができません。結果として、安全面でいくらかの進歩があったにせよ、中絶数は急上昇したのです。よって出血多量や感染症で死亡する女性の割合は減少するかもしれませんが、それらの合併症を患う女性の実数は増加してしまうのです。加えて心理的合併症は身体的合併症よりもよくあることなので、どちらかの合併症を患う女性の数は劇的に増えています。


Reference:

  Los Angeles Times Poll, March 19, 1989 See also Mary K. Zimmerman, Passage Through Abortion (New York: Praeger Publishers, 1977) and David C. Reardon, Ph.D., Aborted Women: Silent No More (Chicago: Loyola University Press, 1987). [Back]

  Reardon, Making Abortion Rare (Springfield, IL: Acorn Boos, 1996). [Back]

  “Revisiting the Koop Report,” The Post Abortion Review, Summer 1995, 1-3. See also “Surgeon General C. Everett Koop’s Statement on Post-Abortion Syndrome,” Life Cycle, September 1989, 2. [Back]

  For more information about studies documenting these symptoms, see the list of resources on the back page of this insert. You can also visit the web site of the Elliot Institute for Social Sciences Research at www.prolife.org/afterabortion/ for documents on post-abortion research. [Back]

  See Philip Ney et al. “Relationship between induced abortion and child abuse and neglect: four studies,” Post-Abortion Syndrome: Its Wide Ramifications, Peter Doherty, ed. (Portland, OR: Four Courts Press, 1995). [Back]

  See Reardon, Aborted Women, op cit. [Back]

  Linda Bir Franke, The Ambivalence of Abortion (New York: Random House Inc., 1978) p. 63. See also Reardon, Aborted Women, 45. [Back]

  See “The John and Lorena Bobbitt Mystery Unraveled.” The Post-Abortion Review, Spring/Summer 1997. [Back]

  Paraphrased from a letter b Christine Shaw, quoted in Abortion and Violence: Is there a connection? by Linda D. Bartlett (Lutherans for Life, 1229 South G Ave., Bldg. B, Suite 100, Nevada, IA 50501). [Back]

10   Strahan, Thomas, “Portraits of Post-Abortive Fathers Devastated by the Abortion Experience,” Assoc. for Interdisciplinary Research in Values and Social Change, Nov./Dec. 1994. [Back]

デーヴィッド・C・リアドン医学博士
David C. Reardon, Ph.D.
Copyright 1997
英語原文より翻訳: www.lifeissues.net