「生命倫理を考える」(下)
先月号に引き続き、第2回(7月10日)の講演会の内容を掲載します
第2回
遺伝子組み換えと作物
教会は「すべての命を守る」と信者に呼びかけているが、私たちは日々の生活においてどれだけ気にかけているだろうか。安いからと、環境や人体に有害な化学汚染まみれの食品や遺伝子組み換え(GM)食品を平気で摂取していないだろうか。その危険性と防ぐ手段を学んだ。
「腐らないトマト」
「腐らないトマト」を知っていますか。1992年アメリカ食品医薬品局(FDA)承認、94年商品化された。買う方は便利と思うが、食べる方は安全かと疑う。すでに食品には有害な化学物質が添加され長持ちするよう作られている。その上さらに、遺伝子が組み込まれた(ポリガラクツロナーゼ=細胞壁ペクチン加水分解酵素の発現をおさえるために、アンチセンスcDNAが組み込まれた)のだから、いっそう危険ではないかと疑う。
ところが、すでにGM作物は広く流通しているのだ。組み換え農作物は世界で米国をはじめ26カ国で栽培され、面積は日本国土の4・8倍となっている。主な農作物は大豆、トウモロコシ、ナタネ、ワタだ。これらを食料自給率の低い日本では大量に輸入している(大豆96%、トウモロコシ100%、ナタネ100%)。しかし、主な輸入元の米国では大豆100%、トウモロコシ70%(2007年)がGM作物なのだ。日本国内でGM作物の一般的使用・栽培・流通・加工等が承認されたのは、トウモロコシ、大豆、セイヨウナタネ、ワタなど、9作物118品種となっている(2014年5月)。
GM作物の目的は何か
①収穫量の増加(たとえば、病虫害に強い品種)②省力化(たとえば、除草剤に強い品種)③困難な環境(乾燥地帯とか塩分の高い地域など)に強い品種により作付け面積の拡大④栄養や味覚の改善⑤品質改善。これらは総じて利益を上げるためだ。
遺伝子組み換えの技術(遺伝子工学)とは何か
そもそも、遺伝子組み換えの技術(遺伝子工学)とは何か。それまで、品種改良は育種・交配によるもの(相同組み換え)であった。しかし、遺伝子工学とは、それとは決定的に違う「種の壁」を越える「非相同組み換え」と呼ばれるもので、①遺伝子を切るハサミ(制限酵素)とくっつけるノリ(リガーゼ=結合酵素)の技術であり、②出たとこ勝負、どこに入るかわからない、まぐれ当たりをねらう技術である。
それは、完成された技術ではなく、次のような危険性が指摘される。
①抗生物質耐性遺伝子、たとえば、腸内細菌への取り込みによる耐性菌出現、②その他の目的外遺伝子の混入の危険性、たとえば、ブラジルナッツアレルギー(組み換え大豆)事件、③遺伝子操作大豆から未知のDNA配列を発見。
さらに生態系混乱の危険がある。①新種ウイルス、微生物、耐性雑草の誕生、②標的昆虫以外の生物にも毒性(たとえば、オオカバマダラの幼虫が組み換えコーンの花粉を食べて半数以上が死んだ)、③将来の生態系混乱についてはまったく想像もできず、とりかえしのつかない深刻な事態も起こりうる。身近にも広がるGM作物の例として、名古屋港周辺にもGMナタネの広まりがNGOによって確認されている。
危険なGM食品にどう取り組めば良いのか
①買わない。消費者の行動が企業を動かすことの出来る時代だから②システムを変える。たとえば、中止を求める署名活動、組み換え食品の表示、基準や検査体制の強化を求める運動③スローフード運動④地産地消・流域内自給運動に取り組むなど。
Motoi Takeya(タケヤ・モトイ)
竹谷 基
カトリック半田教会
カトリック名古屋教区ニュース (4 0 7号)
Copyright ©2020年12月掲載
2021.3.12.許可を得て複製