日本 プロライフ ムーブメント

避妊と妊娠中絶

一(生命を尊重する人のために)

避妊はプロ・ライフ運動に対して戦いを挑んでいます。と言われても避妊と妊娠中絶との間に何の関係があるのかすぐにはぴんとこないかもしれませんが、考察を進めていけば二者の関係が明らかになります。避妊の問題点から目をそらしていると、生命を最大限に尊重することが出来なくなってしまいます。避妊と妊娠中絶との間には考慮すべき関連が少なくとも三つあります

 1. 避妊具、避妊薬の多くは初期の中絶の直接要因となりうる。

 2. 避妊具、避妊薬を使用すると「バックアップ」としての中絶の必要性を認めることになる。

 3. 避妊具、避妊薬の使用は人間の生命の価値を軽んじることにつながる

避妊は本当に初期の妊娠中絶の要因となりうるのでしょうか?

そうです。まず始めに、今日使われている最もポピュラーな避妊薬である経口避妊薬ピルについて考えてみましょう。1経口避妊薬ピルには三つの作用があります。2主なはたらきは排卵の抑制ですが、時には効かないことがあります。34二つ目のはたらきは子宮頸管の粘液の性質を変化させ、精子が卵子のところに到着して受精させる能力を低下させます。自然な家族計画の研究によると、子宮頸管の粘液は受胎能力にとって重要な要因であるということが確認されています。56三つ目は、子宮内膜を薄くして受精卵を着床しにくくします。よって最初の二つが作用しなくて万一受精した場合でも、新しいいのちは子宮を通り抜けて膣の分泌物と一緒に消えてしまうことになります。

この最後のはたらきが作用している場合、我々は明らかに人工妊娠中絶薬を手にしていることになります。この三番目のはたらきは三つの可能性のうちの一つなので、それがどのくらいの頻度で効果を示しているのか測定するのは困難です。排卵成功率を推定2-10%として、経口避妊薬ピルによる初期の妊娠中絶の数を算出しようという試みはこれまでにもありました。7しかしそれらの計算方法は子宮頸管の粘液の影響を無視していますし、受精の頻度を評価することが必要です。

この問題に取り組むもう一つの方法として、経口避妊薬ピルの常用者の3%という妊娠率に着目してみましょう。8これらのケースは、三つのはたらき全てが作用せず、生存能力のある受精卵が着床したということです。ということはおそらく、卵子が受精したとしても子宮内の過酷な環境に生き残れず、初期の妊娠中絶(着床不能)によって死んでしまうことの方が多いということでしょう。ホルモン系の避妊薬がどの程度初期の妊娠中絶を引き起こしているのかを証明することは不可能ですが、生き延びて経口避妊薬ピルの失敗率の統計値3%に数えられる受精卵の数よりもさらに多くの受精卵が中絶させられていると考えらます。

他のホルモン系避妊薬(例えばノルプラントやデポ・プロべラなど)も子宮内膜に同様の影響を与えますが、排卵成功率がずっと高いために、初期の妊娠中絶のリスクはさらに高くなります。9

いわゆる「モーニング・アフターピル」、緊急事後避妊薬というものは、一連の経口避妊薬ピルと何ら変わりがないものである、という点に注意すべきです。この方法には多様な効果があるかもしれませんが、一般的にはその効用は子宮内膜の着床抑制効果によるものとされています。10

IUDの効果に関しては討論がなされていますが、11 少なくとも二つの、おそらく最も重要であろう機能は、着床を妨げ、成長する胚盤胞の酵素の作用を妨げることです。これらの機能は厳密に言えば人工妊娠中絶薬と同じことです。ごく近年になって、IUDには受精そのものを妨げる可能性もあるのではないか、と指摘されています。

これらの避妊具、避妊薬の全てに、すでに始まっている生命を絶つ可能性があるのです。

問:しかし、もし妊娠中絶を引き起こさない避妊具や避妊薬、すなわち、ただバリア方式(コンドームやペッサリーなど)のみを使用する場合、そのような場合でも生命の尊厳と矛盾するのでしょうか?

はい。避妊具や避妊薬の使用は、性的関係についての個人の考え方を完全に変えてしまいます。性革命への道が開かれたのは、効果的な避妊具や避妊薬が手に入るようになったからです。12避妊具や避妊薬がなかった頃、多くの人は妊娠を恐れて婚前や婚外の交渉を持とうとしませんでした。性的関係を持つ準備が出来ている、ということはすなわち、子どもを育てる準備が出来ているということを意味しました。しかし避妊具や避妊薬は娯楽としてのセックスを認めてしまいます。男女は性的関係を持つことの自然な成り行きである妊娠については考える必要なしに、そういう関係を持てることを期待します。だから実際に妊娠するということが起きると、その赤ちゃんは歓迎されず、中絶が「必要」となるわけです。実際、その関連は最高裁で明らかにされています。Planned Parenthood(訳注:家族計画を推奨するペンシルヴェニア州の団体)とケーシーとの訴訟で最高裁は次のように述べています。「批判的に見ればある意味で、妊娠中絶は避妊法を用いようと決心することと同様の性質を持っているといえよう。二十年間人々は、万一避妊が失敗に終わった場合には妊娠中絶が可能であることをあてにして、親密な関係を築いては産むか堕ろすかの選択をしてきた」13避妊は、妊娠中絶が選択されやすいようなライフスタイルに人々を移行させるものです。

問:では多分、もっと効果のある、妊娠中絶を起こさないような避妊具や避妊薬が必要なのではないでしょうか。それで問題は解決されるのでは?

仮に妊娠中絶を起こさずに、100%妊娠を防げる避妊具や避妊薬があったとしても、それらを使用することは生命の尊厳と矛盾するものなのです。そういったものを使用すること自体が生命に反することなのです。避妊(Contraception)とは、受胎(conception)に反する(contra)、という意味でしょう。それはセックスという行動からいのちを生み出すパワーをはぎ取って、人間の生命の価値を減じてしまうものです。するとセックスは、永遠に身をゆだねあう二人が、新たな生命を創り出す神の力を分かち合って強く結びつくことから生まれる奥深いミステリーではなく、意味のないゲームとなりえるのです。 避妊とはセックスという行為を生命に背かせ、それを意味深いものとしているパワーそのものにも背かせるものです。セックスの本質を変えることによって、当事者の人間関係をも変えてしまいます。生殖能力があるということはその人の人間性の肝心な一部分です。その生殖能力を互いに自分の思うように支配することによって、男女は自分自身から、また相手から、二人の関係からも人間性を奪ってしまうのです。14

すると自分自身の満足のために単に互いを利用する、ということがたやすく出来るようになります。それは自身の人間性をひどく堕落させることであり、大部分の人間が本能的に反感を覚えることです。人が自分自身、愛する者、その者たちとの関係を堕落させ、その価値を下げるようになると、そこから生まれる新しい生命の価値を軽んじやすくなるのも当然です。人の価値が、単なる物と同じレベルまで下がったとき、妊娠中絶は選択されやすくなるのです。

今日の我々の社会では、何と、もはや子どもは宝ではなく、重荷だという考えが浸透しているようです。そのような姿勢は避妊に通じるものであり、その姿勢こそが妊娠中絶という考えを可能にしているのです。


References:

1  Hatcher, R., Contraceptive Technology (New York, 1994) p108[Back]

2  Physician’s Desk Reference, 52nd Edition (Montvale, NJ 1998)[Back]

3  Kuhar, B., Infant Homicides Through Contraceptives (Bardstown, KY 1995) pp. 26- 27[Back]

4  Alcorn, R., Does The Birth Control Pill Cause Abortions? (Gresham, OR) pp. 22- 24[Back]

5  Odeblad, E., The Biophysical Properties of the Cervical–Vaginal Secretions, Human Life Center, Collegeville, MN 1983[Back]

6  Billings, J. J., Cervical Mucus, The Biological Marker of Fertility and Infertility, International Journal of Fertility 26: 182- 195; 1981[Back]

7  Kuhar, pp. 26-27[Back]

81  Hatcher, p 227[Back]

9  Kuhar, p 28-29[Back]

10  Hatcher, p 416[Back]

11  Kuhar pp. 20-22[Back]

12  Smith, J., The Connection Between Contraception and Abortion, Homiletic and Pastoral Review April, 1993[Back]

13  Ibid.[Back]

14  Hogan, R. and Levoir, J. Covenant of Love (New York, 1985) pp. 54-56[Back]

Teresa C. Menart, MD
テレサ・C・メナート医学博士
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2002.9.5.許可を得て複写
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