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ウイルスが誰にどのように感染するかを知る

ウイルス

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、エイズ(後天性免疫不全症候群)の原因となる。この症候群、すなわち、疾病のパターンは、1981年に米国ではじめて報告されたが、免疫不全の原因となるウイルスは1983年まで発見されなかった。HIVは、体内のT4白血球に感染し、それを損傷、破壊する。T4細胞には、免疫系の複雑な機能を調整する役割がある。また、HIVは、免疫(防御)系の他の細胞、脳細胞および臓器細胞にも感染することがある。 

感染の段階

ウイルスに身をさらして最初の2、3週間で、HIVは急速に増加する。次に、通常3ヶ月以内に、体内でHIVに対する抗体の形成が始まる。このプロセスは血清転換と呼ばれている。実際には、HIVに感染した人の大半は、数ヶ月間から数年間、何の症状も呈さない。この沈黙の感染期間は「潜伏期」と呼ばれている。ウイルスは潜伏期にゆっくりと複製を繰り返し、血中には低レベルのウイルスが存在する。HIV抗体検査の結果は陽性となる。 

その後、T4細胞(血中のヘルパー細胞)が減少し、感染者に臨床症状が現れる。感染者は、体重減少、疲労感、発熱、咳き、下痢など、様々な症状に見舞われる。潜伏期間は長く、個人差があり、4ヶ月から10年以上に及ぶこともある。3年以上症状が現れないのが典型的である。 

後天性免疫不全症候群、すなわちエイズは、免疫系が極めて脆弱になるHIV感染の最終段階につけられた病名である。HIVに感染した人の1030% が5年以内にエイズを発症し、さらに2530%がHIVに関連した症状を発症する。1213年以内に約60%がエイズを発症する。HIV感染者のうち、症状が出たり、免疫不全に陥らない人も少数だが存在する。先進国と比較して、アフリカやカリブ諸国では、HIV感染と病気の発症までの期間およびエイズを発症してからの生存期間が短くなっている。新しい混合抗ウイルス薬および日和見感染症を予防、治療する抗生物質を入手できるか否かが、こうした格差を広げている。HIVの治療および日和見感染症の予防が行えない場合、通常、患者はエイズの診断から1年以内に死亡する。徹底的なモニタリング/治療を行った場合は、長い年月に渡って生存する可能性がある。1歳未満でHIVによる疾患を発症する子どもの予後は不良である。彼らの状態は、1歳、2歳あるいは3歳で死亡するまでに着実に悪化することが多い。2歳か3歳で初めて症状が現れる子どももいる。軽い病気に頻繁にかかることはあっても、これらの子どもの多くは十分な成長を続けている。 

HIVの感染

HIVの拡大には、性交渉、輸血および母子感染の3種類がある。感染リスクの高い行動としては、感染者とのコンドームを使用しない肛門または膣セックス、ならびに薬物を注射するための針や注射器の共有がある。輸血による感染は、献血時にHIV検査を行わない地域において頻発している。幸運なことに、針刺し事故による医療従事者の感染リスクは非常に少ない。HIVに感染後、数週間経って、血中のウイルス数が急増すると、感染力が大きくなる。体内で抗体の形成が始まると、ウイルス負荷は減少する。その後、免疫系が損なわれることで、血中のウイルス負荷は再び上昇する。その結果、重症の免疫不全の徴候が現れ、他の人に感染しやすい状態になる。 

セックスによる感染

性行為は、HIVの感染経路として最も一般的なものである。肛門セックス(男性同士、男女間)は、膣セックスよりも感染リスクが高い。健康な生殖器を持ったパートナー同士が1回の膣セックスによって感染するリスクは低い。性器の潰瘍や腫れなどの性感染症(STI)がある場合、男女共にHIVに感染したり、相手を感染させるリスクが高まる。これは、STIにより炎症を起こした部分からウイルス分子が拡散しやすくなり、ウイルスの侵入口になるためである。 

血液による感染

アジアを中心とした多くの国で薬物注射が増加している。HIVは、一緒に薬物を注射したり、針、注射器などの注射器具を共有する人々の間で簡単に拡大する。注射器に戻された血液は、その注射器を次に使う人の血管内に直接送り込まれることになる。感染した薬物利用者は、その後、セックスや輸血を通じて他の人にHIVを広める可能性がある。 

汚染された血液の輸血により、HIVに感染する可能性がある。全血、赤血球、血小板、血漿および凝固因子濃縮物にHIVが含まれる場合がある。血友病の患者には血液凝固因子が不足しているため、出血を防ぐために、こうした因子を注射する必要がある。HIVが流行し始めた頃には、輸血による感染が多かったが、現在では、凝固因子に加熱処理が施され、HIV感染の原因ではなくなっている。輸血血液すべてを定期的に検査することで、輸血によるHIV感染の機会を大幅に減少できるが、リスクは必ず存在する。なぜなら、感染後、抗体が形成される前、すなわち検査が陽性になる前の「空白期間」に献血が行われる場合があるからである。輸血用の血液が検査されているかどうかに関わらず、輸血はそれが絶対的に必要な場合に限定するべきである。輸血に関して厳しい基準を定めることで、死亡率を上げることなく輸血の機会を大幅に減少することができる。術中または術後に患者自身の血液を輸血することも場合によっては可能である。 

母子感染

感染した母から子への感染リスクは、1545%となっている。感染は、胎盤経由、出産、または誕生後の母乳保育において起こる。母親のHIV抗体が胎盤に達すると、子どもの感染の有無に関わらず、HIV抗体検査は陽性になる。このことが、感染時期の特定を困難にしている。母親のHIV抗体は最大18ヶ月間、子どもの体内にとどまるものだが、通常は、生後9ヶ月までに母親のHIV抗体は失われる。エビデンス(徴候)に関する最近の調査から、母乳保育期の人口集団において、妊娠中の感染リスクが510%、出産におけるリスクが1020%、母乳保育の最初の2ヶ月におけるリスクが210%、さらに母乳保育後期のリスクが510%であることがわかっている。 

母乳保育

母乳保育による感染の平均リスクは、妊娠中に母親が感染している場合で14%、授乳期に母親が感染した場合に29%となっている。ただし、HIVに感染した母親から誕生し、母乳保育されている子どもの多くは、ウイルスに感染せず、母乳に含まれる一般的な抗体やHIV特異性抗体の恩恵を得ている点に注目すべきである。母乳保育を受けていない子どもは、栄養失調、下痢、呼吸器感染症などにより死亡するリスクが高い。母乳保育には、子どもの年齢間隔、心理学的および社会学的な利点もある。母乳保育の健康上の利点は、生後6ヶ月未満の子どもにおいて最も重要なものである。 

HIV感染の検査

現在では、迅速かつ簡単にHIV感染を検査する方法が普及している。これらの検査では、HIVウイルス自体の存在ではなく、HIV抗体の存在を検査する。したがって、抗体が生成される前の早期では、感染しているにも関わらず、検査結果が陰性になる可能性がある。感染している患者では、通常、感染から1ヶ月以内にHIV抗体が陽性になるが、稀に、この期間が3ヶ月以上に及ぶ人もいる(空白期間)。エイズによって健康状態がかなり悪化すると、ウイルスに対する抗体の生成がストップするため、抗体検査が陰性になることがある。しかしながら、彼らから他の人にウイルスが感染する可能性は残っている。 

HIV抗体検査には複数の目的がある:

  • HIVへの感染の有無を知りたい。
  • HIV感染を疑わせる徴候や症状のある患者を診断する。
  • 母子感染を回避するための介入法が利用できる場合に、出産前検査として行う。
  • 献血された血液を輸血前に検査する。
  • 流行の拡大を知るために、HIVの感染を調査する。
  • 研究目的。

HIV/AIDS (HIV/エイズ) 
HIVおよびエイズの攻撃 
APLF 
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