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家族の価値と安全なセックス

私がBBCのインタビューに応じヨハネ・パウロ二世のローマ教皇在任25年周年の前日にあたる2003年10月12日に放映された、とマスメディアは伝えている。あの時、私は30分以上にわたりさまざまな質問に回答したが、家族に関するものが主だった。しかし、驚くべきことにインタビュー全体からBBCのパノラマ番組『性とバチカン(Sex and Holy City)』で放映されたものはわずか3つの問題、それぞれ30秒にも満たなかった。わたしの答えははるかに詳しいものであったのだが。この番組は明らかに、HIV/AIDSの予防にコンドームの使用を認めないことが人々の死の一因になっているのではないかと、カトリック教会を意図的かつ計画的に批判しようとしたものだと思われる。

要点

  • はじめに
  • AIDS予防プログラムでコンドームを用いることについてカトリック教会側からの批判
  • コンドームはHIVやSTDの伝染を完全には防止できないことを示す研究で提起された道徳主導者たちの懸念
  • 教会関係以外から出される同様の懸念
  • ワークショップ概要:コンドームの性感染症(STD)予防効果についての科学的証明
  • コンドームの失敗と妊娠
  • コンドームの破損とラテックス材
  • ユーザーに起因するコンドームの失敗
  • コンドームと純潔によるHIV/AIDSの増減
  • 正しく完全な情報を得る権利
  • 教会はHIV/AIDSとSTDを実際に防ぎ、生活を向上する
  • 真に責任ある性行動再発見の必要性
  • 終わりに:婚姻と家族の絆を強める必要性

はじめに

1。私がBBCのインタビューに応じヨハネ・パウロ二世のローマ教皇在任25年周年の前日にあたる2003年10月12日に放映された、とマスメディアは伝えている。あの時、私は30分以上にわたりさまざまな質問に回答したが、家族に関するものが主だった。しかし、驚くべきことにインタビュー全体からBBCのパノラマ番組『性とバチカン(Sex and Holy City)』で放映されたものはわずか3つの問題、それぞれ30秒にも満たなかった。わたしの答えははるかに詳しいものであったのだが。この番組は明らかに、HIV/AIDSの予防にコンドームの使用を認めないことが人々の死の一因になっているのではないかと、カトリック教会を意図的かつ計画的に批判しようとしたものだと思われる。 

イングランドとウェールズの主教らは直ちにBBCに対しこの番組はもう1つの番組と同様に、カトリック教会に対する偏見と敵意に満ちており、多くのカトリック信者を怒らせている」と異議を申し立てた。「何十年間もBBCは、特に報道と時事問題に公正かつ客観的であるとの世界的評価を得て、それに値してきたし、またそれを享受してきた。しかし、その名声は次第に低下している。」(1)多くの人々や団体がこのBBCのパノラマ番組に不快感を表明している(2)。 

あのインタビューで私は「安全なセックス」に警告を発し、「予防措置(prophylactic)」(3)としてコンドームを使用することは、HIV/AIDS(後天性免疫不全症候群を起こすヒト免疫不全ウイルス)ばかりでなく、他の多くの性感染症(STD)についてもその感染から客観的かつ完全に安全だとはいいきれない、と述べた。私は、この世界的感染症を抑制するには、責任ある性行為を推奨することが必要だと強調したのである。それは正統的な性教育で繰り返し教え込まれるもので、男女両性の人格を尊重し、異性を単なる快楽の道具であり「利用すべき」モノであるとは考えない。婚姻とは男女両性の相互的、排他的かつ完全な献身行為であるという前提のもとでは、そのような責任ある性行為は夫婦愛の中でのみ実現する、とも述べた。 

従って、一部の自由放任的な政治的措置や一部のマスメディアに煽られたいわゆる無節制なセックス、乱交に反対する私の立場はきわめてはっきりしている。それだからこそ私は視聴者に、教会は信仰を持つ者であれ持たない者であれすべてにかなう道徳的立場を教えていることを想起させたのである。また、各国保健省はタバコで行っているように、コンドームによる保護が絶対的なものではなく、実際にはかなりのリスクがあることをラベルに記載するよう提案もした(4)。 

HIV/AIDSやSTDにはコンドームによる予防が十分でないことを強調するため、私は科学的調査の結果から示唆されるコンドームの透過性も引用した。AIDSウイルスが精子細胞の450分の1以下の大きさであること、さらにはさまざまな要因でコンドームの構造やその実際の使用にもたらされるその他の危険を考えると、そのような問題にも注意を払わねばならない(5)。 

AIDS予防プログラムでコンドームを用いることについてカトリック教会側からの批判

2。カトリック教会は、AIDS予防の完全に有効かつ十分な手段としてコンドームを奨励しているプログラムを繰り返し批判してきた。世界いずれの地域の司教協議会もこのプログラムに関する懸念を表明している。南アフリカ、ボツワナ、スワジランドのカトリック司教協議会は、「無秩序に拡大するコンドームの使用奨励は、次の理由からHIV/AIDSと戦う我々にとって非道徳的で見当違いの武器であるとはっきり見なしている。*コンドームの使用は人間の尊厳に反する。*コンドームは愛という崇高な行為を身勝手な快楽追及の行為に変え、一方で責任を回避させる。*コンドームはHIV/AIDSの予防を保障しない。*コンドームはHIV/AIDS拡大の大きな理由の1つにさえ挙げられる。コンドームの品質の悪さや誤用の可能性は別としても、コンドームが一因となって自制する心や互いを尊重する心が薄れている(6)。 

スペイン監督教会派協議会の家族と生命に関する小委員会は、HIV/AIDSを予防するというスペインのコンドーム普及運動を次の三つの理由できわめて無責任としている。「それは人を誤解させる。情報を隠蔽する。予防に貢献せずむしろ危険な行為をいっそう広める。なぜならば、保健衛生当局が伝染病の原因である行為やライフスタイルを承認することになるからです。」(7) 

フィリピンのカトリック司教協議会は、HIV/AIDSに感染した人々との出会いは恩寵の時であるべきだが(われわれにとって、かれらにとってのキリストの慈悲深き存在であるとともに、かれらのなかに神の存在を体験する機会でもある)、しかし、HIV-AIDS問題の道徳的次元で、コンドームを配給してこの問題に取り組むことには、われわれはきわめて否定的な見解を取らざるを得ない」さらに、「避妊と同様にHIV-AIDS感染予防にコンドームを使用することは絶対安全な方法とはいいきれない」と述べている(8)。 

以前にも、米国の司教たちは1987年の宣言で次のように断言している。「婚姻外の禁欲と婚姻の貞潔は、麻薬中毒の静脈注射回避と同じで、唯一の道徳的に正しく医学的にも確かなAIDSの広がりを防止する手段である。いわゆる安全なセックスはせいぜい部分的効果しか期待できない。米国科学アカデミー(NAS: National Academy of Sciences)がAIDS研究でいうように「より安全な」セックスという用語を使えばまだ正確であろう。なぜならば、未知の要素が多すぎて、それが何であれ特定の行動を絶対に安全であると認定することは無責任だからである。」(9) 

3。教会の立場とその背後理由はすでによく知られている、と私は考えている。私が特に心配するのは、ことに若い人々がコンドームによる予防は完全であると思い込まされており、実際にはそのような完全な予防は存在しないことである。世界的流行の大きさを認識し、同時に道徳的なものと単なる保健衛生的なものの異なってはいるが補完しあうレベルを支持することで、私は、この世界的流行が継続的に拡大することを抑止する必要があることのみならず、コンドーム使用者が罹患するはずはないと考え、その誤解が今まで致命的な結果をもたらしてきたそのような人々を伝染病から防ぐ必要のあることを、声を大にして叫びたかった。 

自分の性関係を衛生上の観点から見ればまったく安全だと考えているにもかかわらず、汚染リスクのある人がいる。いったい何人がこのような誤りの犠牲となっているだろうか。彼らがもっと正しく客観的な情報を得ていたら、少なくともある程度は異なった行動をとっていただろう。実際コンドームが役に立たないという正しい情報を発信する多くの情報源は公的なものだが、もちろん宣伝は行き届いていない。このような議論によって、人々が伝染を防ぐという点でコンドームの有用性にある程度疑うようになっただけでも折りよく役に立った、と私は考えている。AIDSが広がっているところほど「安全なセックス」キャンペーンと大量の避妊具の配布によって乱交への誘いが行なわれたのだが、感染の問題はいっそう深刻になってしまった理由を読者はまず何よりも考えてみる必要がある(10)。 

これらはまさに、さまざまな情報源から集めた情報の助けを借りて、私がこの省察で検討したい点である。これら事項について国際的に知られた権威ある人々や機関の専門知識や技術を疑う理由は私にはない。教会の立場は真に人間的かつ責任のあるものである。すなわち、人間の自由と尊厳を十二分に重んじるよう呼びかけている。ことに貧しい国々で家族は病んでいる。家族や青年が往々にして誤った情報を与えられ、偽りの安全を与えられているという事実は、もはや見逃すわけにはいかない。私がこのような省察を行うかどうかは、それが家族と出産の間に密接な関係があり、家族に関係してコンドームやその他の避妊具に言及する問題で私どもの担当領域になることから明瞭なことである。教皇庁家庭評議会の任務を記述して、使徒教憲PastorBonus(良き牧者)は「社会の場でも政治の場でも家族の権利が必ず認識され、かつ守られるように努めること」としている。また、「受精の瞬間から人の生命を守り、責任ある出産を勇気つけるための率先を支持し調和させる。」(11) 

教皇がいわれるように、「神が作り給うものを恥じてはならない」。神が作り給うものを恥じてはならないのみならず、それを守らなければならない。なぜならば、神がつくり給うものはすべて善であるからである。人間のセックス、夫婦の愛、責任、自由、健康。これらはわれわれが大切にしなくてはならない神の賜物である。 

コンドームはHIVやSTDの伝染を完全には防止できないことを示す研究で提起された道徳主導者たちの懸念

4。私は先ほど次のように述べた、教会の立場と私の主張の根拠はすでによく知られていると思うと。とは言うものの、この立場は十分には、まだ十分に知られていないのかもしれない。科学的な観点がコンドームメーカー側のある種の経済的利益や、「産児制限」に沿った貧者に対する権力側の「イデオロギー」と結び付けられる具体的なキャンペーンで明らかなように。 

よく知られた権威ある道徳主導者、ディオニージ・テッタマンチは、今はミラノの枢機卿に就任しているが、これらの問題と取り組んで、2000年に『キリスト者の新しいバイオエシックス』という何巻にも及ぶ書物を著した。コンドームを予防具として使った場合、いわゆる「安全なセックス」を保障できない理由を同枢機卿ははっきり示し、次のように述べている。(イタリアの)保健省は、AIDSと戦う全国委員会(National Commission)を通じて、次のような情報を子ども、若者、その他利害関係者によく提供している。「付けていなければ感染の確率は高くなる。だから、パートナーを信じられないときには、必ずコンドームを使え」と(12)。しかし、コンドームは果たして感染を食い止める効果的手段なのだろうか。もっと批判的な考えが必要である。 

a)第一に考えることはコンドームの衛生具としての性質である。コンドームは性交渉で感染させることを防ぎ、感染されることを防ぐ「防御」手段として、つまり「障壁」として用いるべきだと言われている。ここで問題となっているのは自分の健康(と生命)と相手の健康(と生命)を守ることであり、この防御手段とか障壁との実際の効果を正確かつ決定的に分析しなくてはならない。 

「特に考えられる効果には二つのタイプがある。その一つは「技術的」効果である。いつからコンドームは感染のリスクを「防止」することになったのだろう。学者の間では、コンドームが実際には100%安全でないということは誰もが認めている。AIDS ウイルスは精子よりもずっと「透過力」が高いので、平均的には10~15%の失敗率とされている(13)。従って、有効性の「技術的」レベルにおいてさえ、コンドーム・キャンペーンの科学的な重要性、ひいては職業倫理のまじめさが問われるはずである。実際には安全でないのに、あるいは考えられたようには安全でないのに「防御できるから安全なセックス」を宣伝して人を「だます」という大きなリスクが存在する。「危険な」人々、つまり乱れたセックス関係にふける人たちが(パートナーにも、さらには現在のあるいは将来の子たちにも)感染を広げないようにする義務がますます重くなっているときに、このような幻想はますます危険で深刻なものとなってくる(14)。 

5。もう一人のイタリアの道徳主導者、エリオ・スグレッチャは、司教でもあり現在教皇庁生命アカデミー副会長を務めているが、コンドームの無料配布にのみ頼るキャンペーンは「人を惑わすどころか、逆効果で性の乱用を招く。いずれにせよ、それらは真の人間性を欠き、全体論的にも責任ある行動にはつながらない」と述べている(15)。これらの問題に取り組む道徳主導者や専門家は多数にのぼり、リノ・チッコーネやジャック・ソドをはじめ、そのなかかの何人かの説を本論でも引用する。 

テッタマンチ枢機卿は、さらにこの説を推し進め「安全なセックス」キャンペーンを国家が組織的に推進するのはまったく容認できない、コンドームは感染に対する「障壁」としては効果がなく、特に性行為に無責任に使用される危険があるためだ」と言う。例えば兵士にコンドームを与えたとしよう。兵士は感染を避けるべきだということは理解するが、同時にどのようなセックスも正当だと考えるようになるだろう。このような配慮には、個人の選択の自由に対するリスクも考えておかなくてはならない。「安全なセックス」キャンペーンは、コンドームの効果に関する幻想を振りまくのみならず、青少年や一般大衆に不当な圧力を加え、詐欺にも等しいものとなる(16)。(中立性を標榜する)国家が積極的に避妊具を宣伝し普及することを認められる一方、貞潔の価値(衛生的の理由も含む)について教育的なキャンペーンを行おうとすると、宗教的と非難されるのは何と矛盾することだろう(17)。 

教会関係以外から出される同様の懸念

6。コンドームがAIDSやSTDを完全には防ぎきれないという懸念はことさらに新しいものではなく、教会関係に限られているものでもない。ヘレン・シンガー・カプラン博士は、カーネル大学ニューヨーク・ワイル・カーネル医療センターで「ヒューマン・セクシャリティ」講座を始めた人であるが、その著書『女性とAIDSについての真実(The Real Truth about Women and AIDS)』で「コンドーム依存は死と戯れることだ」と述べている(18)。あるオランダの医学雑誌も、「患者を診ればHIVと妊娠の両方の防止が緊急に必要なことは分かっている。残念なことにそれはコンドームではできないことに人々はまだ気づいていない」と述べている(19)。1980年代および1990年代には、コンドームによる予防は完全かという疑問がラテックスの電子顕微鏡的検査の結果提起され、AIDSウイルスは精子細胞頭部の約25分の1であり、精子細胞の長さの450分の1以下であり、梅毒菌の60分の1以下であるという事実に関心が集まった(20)。 

1987年には『ロサンゼルス・タイムズ』が、「コンドーム業界、連邦による研究の中止を要請」という記事を掲載した(21)。同紙は、「コンドーム業界は、連邦が資金を出してロサンゼルスで行っているコンドームのAIDSウイルス感染予防効果の研究を縮小、遅延、できれば停止しようとする強力なキャンペーンを開始した。この研究はヒト免疫不全ウイルス(HIV)の拡散を確実に防止するコンドームの能力について提起された一連の疑問の結果、新たな緊急性を帯びていた」と書いている(22)。2年後に同じ記者が、「大手コンドーム4銘柄が臨床テストでAIDSウイルス漏れ」という記事で、「わが国の最大手コンドームブランド4種が、UCLAが行った実験室試験でAIDSウイルス洩れをおこした。そのため、消費者にコンドームすべてがAIDSの感染防止に等しく役立つものではないと考えるべきであると研究者が警告することを迫られている。何千というコンドームをテストした結果、そのうちの0.66%(200個に1つ以上の割で)に水漏れあるいは空気漏れ、引っ張り強さテストでの破れ、またはAIDSウイルスの漏れが検出された」と書いている(23)。 

種々の研究を総合して、ジョン・ウィルクス博士は2003年11月17日付け『オーストラリアン』紙の寄稿記事で次のように述べている。「1989年『ロサンゼルス・タイムズ』紙によると、UCLAが行った実験室試験では米国の4大ブランドのコンドームがAIDSウイルス漏れを起こしている。ケアリーおよびその他(『性感染症』1992年)は、性交のシミュレーションで、HIV程度の大きさの粒子は、市販のラテックス製コンドーム89のうち29を透過したと述べている。フェラー(『AIDS研究とヒト・レトロウイルス』1994年)は、試験室環境では製造後の期間も異なるさまざまなブランドのコンドームでウイルス程度の大きさの粒子の漏れが0.9%~22.8%の率で生じている、と述べている。ライトルその他の実験で(『性感染症』1997年)では、ラテックス製コンドームのうち2.6%がある種のウイルスを透過させている」。もうひとつの研究によると、「TROJAN」ブランドのコンドームからとった膜サンプルのうちまったく欠陥がないといえるのは30%だけである(24)。 

また、ある英国の新聞は次のように伝えている。「世界保健機関は、「継続的に正しく」コンドームを使用していればHIV感染のリスクを90%減らすことができるという。コンドームには破損や漏れの可能性がある」(25)国際家族計画連盟はさらに高い失敗率を示し、次のように述べている。「コンドームの利用は、使用しない場合と完全な禁欲の場合の間にあり総合的リスクを約70%まで減少させる。この推定はたいていの疫学的研究の所見と一致する。」(26) 

これらの数字から推定される10~30%という失敗率は、AIDSのような致死性の疾病を考えると、また特にAIDSの性交渉による感染を完全に防止する代替的手段、すなわち婚前禁欲と貞潔が考えられるとき、比較的高いと言わなくてはならない。 

AIDSの脅威は深刻で、予防具として用いるコンドームの安全性を誤認した不適切な情報は、はなはだしく無責任なものとなる。一般大衆の利益のためばかりではなく、AIDSその他性感染症の流行を防止しようとする真摯かつ多大な努力を支援するためにも、一切の曖昧性と混乱を排して正しい情報を明確かつ包括的に提示する継続的努力が求められる。 

ワークショップ概要コンドームの性感染症(STD)予防効果についての科学的証明

8。上に述べた医学的文献等は、コンドームの性感染症予防に種々の疑問を投げかけている。事実、2000年6月12~13日にはコンドームの研究、規制、使用奨励、HIV/AIDSおよびSTD予防プログラムを担当する米国政府の4機関が、まさに「ラテックス製男性用コンドームのHIV/AIDSおよびSTD予防効果を立証している公表済み証拠を値踏みする」ためにワークショップを共同で開催した。4機関とは米国国際開発庁(USAID)、食品薬品局(FDA)、疾病対策予防センター(CDC)、国立衛生研究所(NIH)である。ワークショップの概要『コンドームの性感染症(STD)予防効果についての科学的検証』は国立アレルギー感染病研究所、国立衛生研究所、保健社会福祉省によって、後の2001年7月20日に公表された(27)。 

このワークショップは、「ペニスと膣性交におけるHIV/AIDSおよびSTD予防のためのラテックス製男性用コンドーム」に焦点を当てている。「STD、尿生殖器解剖学、避妊、コンドーム、行動科学、疫学、内科学および公衆衛生」の専門家を含めた主催機関の代表者と外部の専門家が審査員団を構成するために招集された。「ワークショップは、同領域の専門家たちが評価した文献(全138ページ)を審査しただけであったが、これらの研究は公表前に第三者による科学的評価を受けることになっていたからだった。」さらに『ワークショップ概要』には別に42の文献が引用されている(28)。 

この『ワークショップ概要』は、入手可能な科学的証拠はコンドームでHIV/AIDSのリスクが85%減少したことを示した、と説明している(29)。つまり、まだ15%のリスクが残っている。 

このワークショップは特にその他の性病の感染も取り上げており、これらの研究は、コンドームの利用でまったく防止できないか、ある程度の防止しか得られないこと、あるいはコンドームによるリスク削減についてはデータが十分でないことがわかった、といつもと変わらない結論を出している。研究対象となった疾病は、淋病(淋菌Neisseria gonorrhoeaeが起こす)、クラミジア感染症(トラコーマ病原体Chlamydia trachomatis)、トリコモナス症(膣トリコモナスTrichomonas vaginalis)、生殖器ヘルペス(単純ヘルペスウイルスHerpes Simplex Virus=HSV)、軟性下疳(軟下疳菌Haemohilus ducreyi)、梅毒(梅毒トレポネーマTreponema pallidum)(30)。ヒト乳頭腫ウイルス感染症(HPV)はさらに注目を浴びたが、結論は明確で、「コンドームの使用がHPV感染症のリスクを減らすという証拠は何らなかった」というものだった(31)。HPVは子宮頸ガンを伴うきわめて重大なSTDで、米国ではHIVよりも多数の女性を死に追いやっている(32)。 

従って、コンドームの利用でHIV/AIDSあるいはその他のSTDを100%防ぐことは、今日では不可能である。青少年を含む多くの利用者がコンドームは完全に安全だと考えているので、このデータは見逃しておくわけにはいかない。 

『ワークショップ概要』で示されたこのような所見に関連して、カトリック家族および人権研究所(Catholic Family and Human Rights Institute)は『医師団、コンドーム隠蔽工作で米国政府を非難(Physicians Groups Charge US Government withCondom Cover-up)』という報告書を作成し、「コンドームがほとんどの性感染症を防ぐものではないことを示す政府自身の研究を米国政府の疾病対策予防センター(CDC)が隠蔽していることを、10,000人以上の医師を代表する複数のグループが非難している」と述べている。この報告書によると、これらのグループは次のように述べている。「CDCが組織ぐるみで隠蔽し、コンドームのSTD感染予防効果に関する重要な医療情報を虚偽表示した。CDCの臨床研究の確認拒否がSTDの大量感染を招いている。」(33) 

8。『ワークショップ概要』(34)の後、ある記事でワークショップパネリストのうち4名が他の専門家とともに、用語の定義(35)、リスク予防(絶対的保護、全面的保護)とリスク低減(部分的保護)(36)、蓄積リスク、コンドーム効果に影響を与える要因(37)、および公衆衛生との関係などこのワークショップで生じた問題点をさらに分析している。 

彼らの記事では、フィッチらが累積的リスク要因はきわめて重要であると強調している。「例えば1度の交接で99.8%安全な性交であっても、100回性交すれば失敗の確率は累積されて18%にもなり得る。」(38)同様に、国際家族計画連盟(IPPF)の記事によると、「いわゆる「保護されたセックス」でAIDSに感染するリスクは性交渉で挿入回数が増えるにつれて100%に近づく」(39)。IPPFはあらゆる形の「産児制限」を奨励している。 

従って、1回ごとのコンドーム使用リスクだけではなく、その連続使用についても考慮しなければならない。リスクは長時間になると劇的に増大する。これは安全なセックスという危険な賭け(ロシアンルーレット)がコンドーム使用の反復でさらに深刻さを増すことを意味する。 

コンドームの失敗と妊娠

9。コンドームのHIV/AIDSおよびSTD感染を予防するコンドームの効果におそらく一番関係あるものは避妊効果である。WHOは、コンドームを完璧に使用しても妊娠をいつも防げるとは限らない、と説明している。「コンドームを完全に使用している間の推定妊娠率、すなわち性交渉のたびごとに(継続的に)使用すべき(正しく)ように正確な方法で使っているという人々の推定妊娠率は12か月で3%である。」(40)言及するまでもないが、一般的にはコンドームが完全な方法で使用されることもあるし、不完全な方法で使用されること(性交渉のたびには使用しない、または正しくない使用)もあり、避妊の効果はずっと低くなる。「一般的に使用される場合の妊娠率は完全な使用の場合よりもずっと高く(10~14%)なるが、これは主として継続的に使用しない、あるいは正しく使用しないためで、コンドームの破損によるものではない。」(41) 

確かに、コンドームを使用したにもかかわらず妊娠したという記録はたくさんあり、避妊率(pearl index)は使用後最初の1年以内に、年間100人の女性の中で15回か15人程度が妊娠している(42)。コンドームの使用にもかかわらず妊娠の可能性があるとするならば、発症原因となる組織が精子細胞や精液に、またその他コンドームに覆われていない皮膚の表面などについてくることを考えると、コンドームがHIV/AIDSおよびSTDの感染を防げないとするのが当然ではないだろうか。さらに、女性は受精可能期間(精子の子宮内生存期間を考慮して一性周期に5ないし8日)でなければ妊娠しないが、HIVやSTDはいつでも感染することを考慮しなければならない。 

コンドームの破損とラテックス材

10。コンドームの欠陥を指摘する研究で上記のような考察は、理論上の議論にとどまらない。コンドームには欠陥があるということは理論だけにとどまらず、現実世界の現実生活経験で確認された事実である。コンドームが理想的あるいは完全な状態であれば、つまり表面にまったく傷がない場合、理論的にはラテックス材がHIV程度の大きさの粒子の透過は高い確率で防止できる、おそらくこのように考えられるであろう。しかし、コンドームとして流通する品目でラテックス材の実際の状態となると、状況はまったく変ってしまう。 

例えば、ある種の透過テストや電気的なテストでは、ラテックスはHIVよりも大きな粒子を通してしまうことがある(43)。同様に、米国食品医薬品局ウェブサイトの1998年の記事で見ることができるように、コンドームの孔や弱い箇所がテストで発見されることがある。「米国のコンドームメーカーはすべてのコンドームを孔と弱い箇所について電気的に検査している。加えて、FDAは漏れについてコンドームのバッチごとにサンプル試験で水試験を行なうよう、メーカーに求めている。試験で1,000個につき4個以上の欠陥が見つかれば、そのロットは全部処分される。FDAは国際標準化機構(ISO)の仕様に従って定めた破裂テストのサンプル試験を製品に実施するようにメーカーに奨励している。」(44)コンドーム1,000個のバッチごとに4個の漏れを許容するならば、世界全体では何百万個という漏れのあるコンドームが販売ないしは無償供与という形で流通していることになり、確実にHIV/AIDSおよびSTDの感染に一役買うことになる。一般大衆はこその事実がわかっているだろうか。前述のような累積リスク要因を考慮すれば、セックスの回数が増え、乱交的になるにつれ、リスクが増大することを知っているのだろうか。 

長年大きなリオデジャネイロ大司教管区の大司教(現在は名誉大司教)を務めたEugenio De Araujo Sales枢機卿は、多くのロットのコンドーム(有名ブランドを含む)が1999年、2000年、2003年にさまざまなテストで不合格となり、または偽造品が発見されてブラジル市場からリコールされたことを最近新聞に述べている(45)。サレス枢機卿によると、例えば1999年のリコールは、ブラジルで第3位の有力ブランドコンドームであるプルーデンス1,036,800個が含まれていた。リコールの理由はインメトロ(Inmetro:認定機関)、政府の開発・商工省が実施した試験に通らなかったためであった。同枢機卿が行ったこのようなコメント以前にも消費者グループCivitasInternationalが、「1991年、ブラジル消費者保護協会(IDEC:Institute of Consumer Defense)は、ブラジルの7大コンドームメーカーのうち5社(トップブランドのJontexを発売するジョンソン&ジョンソンを含む)が国際安全性テストで不合格となったと報告する研究を公表した」と述べている(46)。 

11。コンドームは製造上の欠陥の他にも、発送、取扱い、貯蔵の段階で劣化することがあり、また、エンドユーザーが購入してからさらに劣化する。日光、熱(ポケットや財布に入れているときの体温)、湿気、圧力、ある種の殺精子薬、または大気中のオゾンでさえも、これらの要素に曝されると多かれ少かれラテックスが劣化すると言われている(47)。その他、コンドームは、爪のように尖った鋭いものに触れて装着直前あるいは装着中の最後の瞬間まで物理的に傷つくことがある。 

米国食品医薬品局(FDA)のウェブサイトは次のように警告している。「消費者はコンドームの包みが傷ついていないか確かめ、使用のために広げるときに損傷はないか確実にコンドームを一つ一つ調べること。コンドームが粘ついていたり、もろかったり、色あせしたり、穴が開いていれば使用しないこと。また、使用期限後のコンドームは使用しないこと。使用期限の表示がないものは、製造後5年以後は使用しないこと。コンドームには水ベースの潤滑剤(例:グリセリン、KYゼリー)のみを使用すること、石油ゼリーのような油ベースの潤滑剤は天然ゴムを弱める。」(48)このような警告が存在するならば、実際の危険が存在するからに違いない、この場合は生命を脅かす危険、それを軽々しく考えるのは無責任であろう。 

ポリウレタンのような他の素材から作ったコンドームもあり、「精子やHIVウイルスに対する障壁としてはラテックス製コンドームに匹敵する」。天然の膜を使った(羊の皮)コンドームは、「避妊には役立つが、HIVやその他の性感染症を防ぐことはできない。精子は羊の皮を透過することはできないが、HIVなどの微生物はこれらのコンドームを透過してしまう」(49)。 

血清(検査)不一致のカップルの場合にも、医学的観点からは、コンドームは実際の解決策にはならない。コンドームを着実に使用する者の間にも、HIVの感染が起こりうる(50)。『ワークショップ概要』は次のようにも述べている。「(他にHIV/AIDSリスク要因のない)一定のパートナーとの性交渉によってもHIV/AIDS感染の危険がある。HIVプラスの者によってHIVマイナスの性交渉相手が感染するケースの長期的な研究により、コンドーム使用者および非使用者間のHIV/AIDS発病率を予測することが可能となっている。この二つの発病率の推定から、コンドームを継続的に使用するとHIV/AIDS感染リスクを約85%減らすことができる。」(51)「安全なセックス」をさらに奨励するため、コンドームの二重使用を主張する者もいるが、上述のようにさまざまな要因を考慮すると、その有効性には疑問が残る。(52)

ユーザーに起因するコンドームの失敗

12。コンドームの物理的完全性に関する上記の検討とは別に、コンドームの使用がしばしば不適切であることも忘れてはならない。例えば、コンドームを装着してからそれを誤った側に裏返すと、もし精子がすでに存在している場合、膣の中に直接持ち込むことになる。コンドームなしで性交渉を始めること、性交渉中に取り去ること、ペニスを抜去している間にコンドームを外すこと、ペニスが勃起している間に外さないこと、コンドームを再使用することなどは、しばしば見られるコンドームの正しくない使い方の例である。生体内ではコンドームの外れと破断はそれぞれコンドームの失敗の0.1~16.6%、0.5%~6.7%を占める、との研究がある(53)。 

実生活での一般的なコンドームの用い方は完全とはほど遠く、むしろ非継続的に不正確な使用をされることが多い。継続的使用は相当の自制(と記憶)を、そして正しい使用は、米国疫病管理予防センター(CDC)が定めたガイドラインに従えば、かなりの注意深さで7手順の操作を必要とする。このことを考えれば、そうなることも尤もなことである(54)。予防センターのパンフレットの一つによると、医学研究所(テキサス州)は「正しいコンドーム使用のための基本的な手続き一覧に照らすと、性行為を行う若者のうちコンドームを正しく使用している者は半分もない」という(55)。詳細は述べないが、性行為は本能的かつ情熱的なものであるため、時には最小限の自制を失うことが多く、コンドームの使用前、使用中、使用後に上に述べたようなリスクを負うことになる。 

医学研究所(テキサス州)は、非継続的コンドーム使用の結果をきわめて簡単に次のように説明している。「たいていはコンドームを使っているけど、というあなたは危険です。実際、CDCは「非継続的使用(その時100%に達しない)であれば、まったくコンドームを使わないよりは少しはましです。」と言っています。」(56) 

コンドームと純潔によるHIV/AIDSの増減

13。コンドームがHIVやSTD感染を完全に防止できないことが、「安全なセックス」キャンペーンが慎重さを深めるのではなく、乱交とコンドームの使用を増やす方向に向かっているという事実によっていっそうひどくなっている(57)。事実、HIV/AIDS患者がコンドームの配給数の増加とともに増加していることを示す研究がある(58)。人間の行動は、AIDS感染の重要な要因となる。ある種の危険な性行動を捨て、婚前禁欲や夫婦間の貞潔のように均衡がとれた性を守る適切な教育なしには、世界的流行病の破滅的な結果を永続させることになる。 

婚前禁欲と夫婦間の貞潔の推進に成功すれば、HIV/AIDSの流行が画期的に減少するという考えを裏付ける報告がある。例えば、ウガンダは純潔教育を推進しており、HIV/AIDS発生率は他の諸国と比べてかなり低く抑えられている。「AIDSがアフリカを席巻したとき、ウガンダだけは流行を食い止めることができた。それは何百万というウガンダの国民が感染を防ぐため、婚姻外の禁欲や夫婦間の貞潔など伝統的な性道徳を守ってきたからである。しかし、国際AIDS社会はこの戦略の推進をためらっており、他の国々では代わりにコンドームを頼みにし続けている(59)。 

これに関連して米国国際開発庁(USAID)はその事例研究『HIV流行の衰退、行動の変化、および国民の反応。ウガンダで何が起こったか?(Declining HIV Prevalence,Behavior Change, and the National Response. What Happened in Uganda?)』の中のウガンダ、ケニア、ザンビアにおけるHIV流行の傾向と人間行動のデータを示す表で、「ウガンダにおける発症率の低下は、コンドームの使用よりもセックスパートナーの減少による」としている(60)。同様に国連合同エイズ計画(UNAIDS)の『HIV/AIDS最新情報2003(AIDS epidemic update)』(2003年12月版)は次のように述べている。「HIV発症率はウガンダで減少し続け、2002年度カンパラでは8%に低下した。これは都市における二つの産婦人科医院で妊婦のHIV発症率が10年前には30%であったことを考えれば驚くべき成果である。ウガンダの国中で同じような成果が広がっており、かつての2桁発症率は今ではめったに見られなくなった。今日まで少なくとも国単位でこのような成果を達成したところは他にない。」(61) 

タイとフィリピンでは、最初のHIV/AIDS発症例が1984年に報告されている。1987年までにタイは112件、フィリピンはもう少し多く135件あった。2003年現在で、100%コンドーム普及運動がかなりの大成功を収めたタイで75万件となったが、一方のフィリピンではわずか1、935件にとどまった(62)。フィリピンの人口は、タイの人口よりも30%も多いのに、である。国民一般にはコンドーム使用率が比較的低く、教会による頑強な抵抗があり(63)、政府指導者の多くがコンドームと乱交反対に動いたことはフィリピン国内ではよく知られている。 

これらの報告書のいくつかコメントして、スペインのナバレ大学疫学公衆衛生Jokin de Irala教授は次のように述べている。「多くの国で行われていることはまったく無責任である。同性愛のように原因から結果へかかわりの深いグループの中の感染を止めるには、このような方法が十分ではないと分かっているとき、予防戦略として何にも増してコンドームを盲目的に信頼したことは誤りであり、結局高い代償を払うことになる。国民は当局にもっと多くの真剣さと創意を要求したくなる、そのときこのような問題は解決に至る。例えば、少なくともタバコ追放運動をまじめに取り上げたときに見せた勇気と同じ勇気を求めるべきである。このような複雑な問題がコンドームのような「パッチ」で解決できると、素朴に信ずるほど受身でいることはできない。」(64) 

14。HIV感染一般に関して、WHOは2002年にアフリカのHIV感染の99%はコンドームを使用しない性交渉のために発生していると断言しているが、ある著者たちが最近明らかにしたこと、つまり新しいHIV/AIDS患者の大多数は性交渉によるものではなく、アフリカ大陸の衛生基盤が十分ではないことからむしろ注射針の再使用によるものと考えられることを、考慮すべきである(65)。この意味で、AIDS撲滅運動の現在の方向がひたすら、さかんにコンドーム配布に焦点を当てていることは明らかに不適切であり、問題である。 

正しく完全な情報を得る権利

15。AIDSは治療法が今日なお発見されない深刻な脅威である。コンドーム使用者はこの病気が性交渉で感染するリスクとコンドームの本当の効果を正しく完全に知る倫理的法律的権利を保障されなくてはならない。AIDSがどこにでも拡散する伝染病であることを考えると、教会が目的とするところは単なる「リスクの緩和」(感染の本当のリスクが一般に説明されない場合、これは現実に「リスクの拡大」となる)ではなくて、「リスクの除去」である。「部分的防止」ではなく、「完全な防止」である。「相対的な防止」ではなく、「絶対的な防止」である。実際には「より安全なセックス」(コンドームを使用しないよりは安全だが、完全な防止にはほど遠い)を推進しているのに、「安全なセックス」を推進すると称するのはまったく誤解を招く。実際には「部分的に防止」、「85~90%の防止」、「相対的な防止」であるのに、コンドームは「防止になる」(人々を完全に防止されると誤認させる)と言って「技術的に正しい」と主張することは、多くの人を死に導くことになる。コンドームが「リスクの緩和」を強調し、「リスクを除去しない」という事実を隠していることは混乱を招く。 

実際にはコンドームが「HIVやある種のSTD予防にある程度の効果はあるが完全ではなく、HPV感染のリスクを緩和するという証拠はない」ことを意味するときに、「HIVやその他多くのSTD感染予防に効果ある」、あるいは「感染リスクの低減に役立つ」(おそらく国によってはコンドームの生産はすでに完璧だということだろう)と宣伝することは、女性の権利に対する尊重の念を欠いているばかりか、端的に反女性的であると同様に反男性的である。性教育プログラムで青少年に「行動の変革」を勧めることが「婚前交渉にはコンドームを使用し」、同時に婚前交渉を奨励するという意味であれば、青少年の生殖の健全性を損なうばかりでなく、情緒的、精神的な健全性、さらに霊的な健全性を損ない、彼らの未来とその一生を損なうことになる。 

16。「安全なセックス」キャンペーンで作り出される偽りの安全は、正しい完全な情報を得る権利に対する妨害である。コンドームの有効性(実は無効性)について完全かつ明確な形で入手可能な情報の開示を求める、まじめな消費者や医療問題に関する権利主張者、特に女性の健康に関する正統的な権利主張者の訴えは、あれこれの理由でたびたび完全に無視される。このような訴えは、自らが使用する製品の実際の機能を知るという消費者の権利に基づくものであり、その機能が消費者の健康と生命と関係がある場合にはなおさらである。たばこの煙は喫煙者やその周りの人々の健康に危険であるという警告をたばこに表示しているのと同じように、コンドームもその包装や陳列する棚や器具に、HIV/AIDSやSTDの完全な感染防止を保障しないこと、安全でないことを示す警告ラベルを表示するように求めるべきである。 

エルサルバドルのLuis Fernandez Cuervo博士はさらに一歩踏み込んで、「安全なセックス」を宣伝する者に対し、タバコ会社に対する訴訟と同じ法的行為に出る可能性を示唆している。「愛煙家がガンになれば、タバコ会社を法的に訴えて責任を問うことができる。米国では、愛煙家が何百万ドルという補償金を取り立てている。まるでタバコを吸うことがガンにつながると、この50年以上知らなかったかのようだ。性的に乱れた人がコンドームを使ってAIDSにかかった場合、コンドームを製造した工場やコンドームを「安全なセックス」として宣伝したグループを訴える権利はない。まったくおかしなことである。」(66) 

17。HIV/AIDSやSTD拡大防止の大変な努力にもかかわらず、流行は広がっている。さまざまな研究や現場の経験に示されているデータを考慮すると、コンドーム・キャンペーンで紹介されている「安全なセックス」という考え方は、誤りであるか、そうでなくても疑わしく、精密な調査を受ける必要がある。それだけでなく、一定のリスクがあるのだから、人々を死に導くかもしれないこのようなリスクの存在について正しく完全な情報を提供するために貢献することは、公私ともに、国内および国際的な諸機関だけでなくマスメディアの重大な責任でもある。あるグループがすべての真実を明るみに出そうとするこのような努力を妨害していると考えている人々が、これまで正式に抗議してきたし、今後も続けていかなくてはならない(67)。 

確かに医薬品でさえ、いつでも誰にでも100%の効果を期待できるというわけではなく、100%安全というわけでもない。しかし、そのようなリスクがあってもその使用は認められる。このような場合、医薬品が意図する効果ばかりでなく、予想されるリスク、副作用またはその他の合併症、さらに重要なことであるがそれらの代替品について情報を知ることが患者の権利でもある。HIV/AIDSやSTD予防のためには、「安全なセックス」キャンペーンはコンドームのリスクを全面的に開示し、コンドームの失敗により使用者が罹患する疾病についても記述すべきである。またこれも究めて大切なことであるが、それらの「代替的な」(というよりも実は「第一の」)これらの病気の性感染に100%効果を期待できる解決策を紹介すべきである。それには費用は要らず、人格と自由を強化しさえすれば良い、すなわち婚前禁欲と夫婦間の貞潔である。 

教会はHIV/AIDSとSTDを実際に防ぎ、生活を向上する

18。少なくとも国際機関や国の機関が行なう、コンドームの失敗という動かせぬ事実を反映する説明は、さらに学術的な研究や実生活の経験も加わって、教会に対する非難に対して形成はまったく不利である。はっきり言うと、教会はこの流行病との戦いにコンドームの使用を奨励せず、あるいは容認せず何百万という人々を死に導いているというのだ。実際に、反対しなくてよいのだろうか?コンドームの失敗率(完全な使用とともに普通の使用で、加えて累積的リスク)を一般の人々に正しく告知しないままコンドームを奨励する人々は、多くの人々をこれまで死に導いたし、今も導いており、将来も導き続けるのだから。コンドームの失敗をみちびく多くの要因があるという事実は明らかで、「安全なセックス」を奨励する運動が生み出す間違った安全の犠牲になっている多くの人々がいるではないか。 

「安全なセックス」という誤った考えの犠牲者は、カトリック教会が推進している数多くのHIV/AIDS救済センターで、彼らがその前に本当のリスクを知っていただけで、また適切な情報を与えられていただけで、無差別な性行動を行なわなかっただろうし、婚姻以外の性的関係を結ばなかっただろうし、家族には極めて誠実であっただろう、と私たちに語っている。カトリック教会はAIDS患者と非常に親密な関係にあり、慈愛をもって彼らを迎え入れ、彼らの人間としての尊厳を守り、よきサマリア人が示す慈悲の念をもって彼らが経験する人生のドラマを認知している。前ニューヨーク大司教、ジョン・オコーナー枢機卿と中絶反対運動のリーダーたちはAIDS患者の診療所に週1回見舞いに訪れていた。カトリック教会はHIV/AIDSとの戦いには確かに豊富な経験があると言うことができ、全世界での治療サービスの25%を提供し、聖職者や一般信者双方の献身的な医療者とボランティアが、患者個人だけでなくその家族にもあらゆる面でケアを提供し、性の正しい使用を通して患者とその家族の尊厳を敬い、配偶者に対する一生の貞潔を奨励している(68)。 

19。上述のリスクにすでにさらされている人々にとって責任ある行動とは、真に危険が存在することを考え、自らがすでに感染しているかどうかを知ることである。人はそれぞれ自らの健康と他人の健康に注意を払う責任がある。そうするためには、一人一人の人間をできるだけ社会的に援助しなくてはならない。道徳的な配慮と疫学的配慮から、潜在的な汚染の危険に繰り返しさらされてきた人々を実際にHIVまたはその他のSTDを起こす微生物に感染していないかを判定するテストを受けるように勧める(69)。それを行なわないとは、自らの、また他人の健康と生命を維持するために必要な注意を払わないことである。また、検査を受けないことは衰弱して死にいたる疾病に知らず知らずに力を貸して、自分自身の家族と広く社会へ拡散することになるだろう。これらの人々に必要な自発的なカンセリングと検査を提供している国際的または現地の施設へ行ってみるように彼らを励まし、支援しなくてはならない。 

教会はいつでも支援できる態勢にある。われわれの使命に協力する他宗教の信者を含めて、何百万という人々の寛大な行為によって、カトリック教会はHIV/AIDS患者ケアの25%を提供し、多くの病院、診療所、その他医療施設を世界中で運営している。教会は、明瞭な用語を用いた完全な情報を含め、信頼できる性と生殖に関する健康および女性の健康の推進、さらに信頼できる人間の性に基づいた真に安全な性行為を推進している。 

真に責任ある性行動再発見の必要性

20。この論文は、HIV/AIDSおよびSTDの性交渉による感染(70)に的を絞って、少数ではあるがまじめな調査のみを限定的に紹介した。コンドームがこれらの疾病を完全に防ぐことはできないことを説明した研究は他にもたくさんあり、それらの多くはインターネットですぐに見つけることができる。コンドームの適切な使用とさまざまな原因に基づくコンドームの失敗を、厳格に区別しなくてはならない。後者については、他の後悔する結果をもたらす事故と同じで使用者は安全ではありえない。このような考察を行なう最も大きな主旨は、コンドームの使用を考える以前に、無秩序な性行動、もっと悪ければ乱交がもたらすさまざまな結果を避けるように呼びかけることである。専門家による調査が扱うさまざまな局面だけにとらわれるよりも、正しい道徳の教えに従って正しい人の道に背かないことを念頭に置くべきであろう。これこそ感染病の拡散に対する完全な防止策となる。HIV/AIDSやSTDの脅威があろうがなかろうが、教会は常に純潔、婚前禁欲、夫婦間の貞潔の教育を求めてきた。これこそ人間の性の営みの正統的な表現である(71)。 

さらに、HIV/AIDSやSTDの感染に100%の効果を保障する品質の高いコンドームを開発せよと教会が提案しているのではない(72)。教会の提案とは、人間性と家族の本質に従い人の性生活を営むことである。WHOが禁欲と夫婦間の貞潔はHIVやその他STDの感染リスクを完全を排除することができる戦略であると認めていること述べておかねばならない。これに対して、コンドームはその感染リスクを緩和するだけなのである(73)。 

21。HIVを発見したといわれるルカ・モンタニエの勧告を、次にまとめて転記しておくことも重要である。「医学的手段は十分ではない。特に、若者に相手を特定しない性行為のリスクを教育することが必要である。」(74)CDCも同様に次のように述べている。「真に効果ある唯一の予防法は禁欲と、感染していないパートナーと互いに貞潔を重んじる性関係によって成り立つ、」(75)その理由は、イタリアでも最も権威ある感染病専門家の一人、マウロ・モローニ教授も次のように述べている通りである。「AIDSが行動により広がる典型的な感染病である。そのような行動を止めれば、AIDSは特別な予防具を用いるまでもなく、止まってしまう。」(76) 

リノ・チッコーネ教授はさらに次のように述べている。「従って、正しく効果的な予防は何よりもまず、何であれ性的あいまいさを促すものに終止符を打つことができる責任ある決断であり、自由と文明の勝利として提示されるものだ。これは若者が麻薬の奴隷とならず、麻薬から解放されることを支援する行為と同じである。さらに言葉を変えれば、正しい防止はまじめな教育努力によってのみ行なわれる。一切の中途半端なあいまいさを排除した教育は、性の多様な価値と人生の多様な価値を発見あるいは再発見させるものである。 

「このような方法を排除している他のいかなる選択肢も、ひどい場合は、ひそかに乱交や麻薬へと押しやるものは決して予防ではない。それを奨励することは悲劇的な詐欺である。このごまかしの代表例は、コンドームの使用が普及した場合のみAIDSを克服できるというキャンペーンである。この方法では感染の第一原因である性の乱れを奨励することになる。」(77) 

チッコーネの観察は、私が掘り下げようとした深刻な問題と完全に一致する。「さらに、コンドームを使用すれば感染を防ぐと保障することは、まさに罪にあたると言わなくてはならない。これは、「安全なセックス」のコンドームにかかわるスローガンと同時に出されたメッセージである。避妊具としてのコンドームは、すでにかなりの失敗率を記録している。しかし性感染症予防としての失敗率は明らかに、はるかに大きい。これはごく最近ある権威ある学者が確認したことだが、「総じて遮断法は[中略]性感染症を防止する(リスク緩和率約50%)。これは[中略]乳頭腫ウイルス、[中略]HIVのような多くは病原体に対するものである。」(78) 

終わりに:婚姻と家族の絆を強める必要性

22。私はチリで行われたある会議で、人間の尊厳に反すること、性の真の意義を矮小化すること、性を手段化し商業化して使用することの有害性を説明した(79)。無秩序で人間の全人格にも神の意志にもそぐわないライフスタイルは、真の善であるはずがない。われわれは、そのような性の矮小化で傷ついた人々をどんなに大勢見てきたことか。一般に、どの文化でも責任のない性と家族のために婚姻で保護された性を区別してきた。 

これは過大な要求であるという人々もいるだろう。しかし、主は「あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらない」(80)と確信しなければならない。性については責任ある態度を維持し、純潔をも守り、婚前には禁欲し、配偶者には貞潔を守ること、これらを公に誓う若者の運動が各所で出現している。混迷をきわめているように見える社会で多くの問題があるこのときこそ、このモデルを若者に紹介しないという理由があるだろうか。HIV/AIDS蔓延と戦うときには、乱れた性行動とも取り組まなくてはならない。 

23。夫婦は取り消すことのできない排他的で相互の全身的な誠実な献身行為という一生にわたるプロジェクトを約束するものであるから、婚姻は尊いもの、人に幸福と充足をもたらすものとして提示しなくてはならない。「「二人が一つになって」男性と女性は最初から「支え合い」「一緒に」生活するばかりでなく、相互に「一方が他方のために」存在することを求められる。婚姻における相互献身は、新しい生命、新しい人間の誕生に道を開き、その子も両親と同じような人間となるのである。」(81) 

道徳的神学者、リヴィオ・メリナ教授は、家族文化は、二つの明らかに脆弱だが重要な点、すなわち愛の誠実さと親子関係を強化することが家族にとって大切であることを改めてわれわれに想起させている。貞潔の危機について同教授は、それは次のように表わされると言う。「愛情の喜びあふれる行為を長期にわたって維持することができないこと。愛が「一つの歴史を持ち」、長期にわたって継続し、建設され、そして住まうことができる家庭となれることが次第に難しくなっている。」(82)今日支配的な愛のロマンティックな概念は、自然に発生する事象であり、自由を制御されず、慈しみと勤勉な働きを与える倫理的責任を逸脱し、(婚姻という)制度に異議を申し立てるものとして愛を考えている。」(83) 

教皇ヨハネ・パウロ二世は次のように述べている。「危機にある家族へ教会からの提案は、信者がとりあえずの義務として、性ならびに、生命の尊さについて倫理神学で正式に教えている明確な教義を守ることである。危機の根源には、人類学と倫理学の間の断絶が見られる。その特徴は、人間の行為は神が創造した自然に固有の永久的かつ客観的な原理に基づいて評価するのではなく、個人の生活設計の最大の利益となるものについて単に主観的に考えて従うのだという道徳相対論である。そのため意味論的な評価も、殺人は「誘発的死亡」となり、嬰児殺しは「治療的中絶」となり、姦通は単なる「婚外冒険」となっている。道徳的事柄に絶対的な確実さを失い、神の掟は最新流行の多様な考え方の中の一つの選択肢に過ぎなくなる(84)。足りない物は鳥のように「安定した巣」を作ることだ、彼らが本当に成熟しているのならね、とチェスタトンは皮肉を込めて笑わせてくれる。 

メリナ教授はさらに、家族の文化は「それが重過ぎて子どもに生命を与えないと見られ、その負担の引受けを拒絶する形で現れる」親の立場の危機を解決することにも役立つという(85)。このような危機は、われわれがしばしば「人口の冬」として描いた現象を引き起こしてしまう。貞潔の危機と親の立場の危機は道徳的主題の危機の次元であるが、個人の危機の次元である。同教授は、二つの道で道徳的主題を再構築することを進めている。それは「徳の道」と「人間関係の道」である(86)。 

24。愛の真面目な責任について教育がないところ、特に女性の尊厳に十分に重きが置かれないところ、誠実な一夫一婦制が嘲笑されるところ、コンドームがパーティに来た青少年や学校の生徒に配給されるところ、不道徳なライフスタイルが広がりすべての性的経験が肯定的に評価されるところ、両親が子どもに十分な教育を与えられないところでは、それらの「不可能」が深刻で制限的な条件となるのは真実である。最終的な結果は、HIV/AIDSの広がりが恐れられるばかりでなく、もはや男性も女性もお互いに全幅の信頼を置くことができなくなる。適切な情報も必要な両親の指導もなければ、そのような子どもたちの将来は一体どうなるであろう。 

しかし、教会がまたおそらくすべて善意の人々が神の摂理を頼り、この恐ろしい感染病を克服するため最大の努力を積み重ねて、家族を強化しなければならない(87)。家族と生命のために働くさまざまなグループ、運動、協会、機関、センターなどは、特別の役割を担っている。家族とは家庭の教会であり、社会の基本単位であり、徳の学校であり、子どもが最初の教師である両親から教育を受ける場所である。カトリック家族は聖なるものの模範となり、神との近しい経験を祈りの生活でまた秘跡で他人への偽りのない関心に向けなくてはならない。教皇は繰り返し説いておられる「家族よ、家族たれ。」と。家族がすべての家族のモデルである聖家族の例にならって真に家族とならんことを。 


Endnotes:

英語の記事を見て下さい。

Trujillo, Alfonso L (トゥヒリ・アルフォン) 
教皇庁家庭評議会議長 
2003年12月1日 
許可を得て複製 
英語原文より翻訳: www.lifeissues.net

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