日本 プロライフ ムーブメント

赤ちゃんの癒す力

赤ちゃんが何を考えているだろうかとか、赤ちゃんの心に何が起きているのだろうかとか考えたことがありますか。私は赤ちゃんに本当に戸惑った時がありました。私は赤ちゃんにどう話しかけ、赤ちゃんとどう関係を持ち、さらにはどう理解したらいいかわかりませんでした。どうしてお母さんが赤ちゃんが求めているものや、どこが痛いのかや、赤ちゃんの喜ばし方がわかるのか私はよく不思議に思いました。というのはお母さんは普通の言葉で赤ちゃんと意志疎通はできないからでした。 

一九六八年に聖職に就くまで、赤ちゃんのために働き、赤ちゃんのことがよくわかるようになる時が来ようとは、考えたこともありませんでした。私は、赤ちゃんにはみんな感情と意志があること、赤ちゃんの性格が早い時期から現われること、そして情緒に訴えることの方が言葉で訴えるよりも優先することを知りました。 

赤ちゃんを満足させるのは簡単です。ただ赤ちゃんのそばにいて、赤ちゃんを愛し、世話をし、かけがえのない贈り物だとして慈しんであげればいいのです。赤ちゃんは、私たちから受け取るよりもっと多くの物を私たちに与えてくれます。憂うつな日に、赤ちゃんのほほ笑みがあなたに何を与えてくれるか考えてみてください。人がいっぱいいる部屋や歩道でも、いかに人々の注意が自動的に赤ちゃんに引き付けられるか見てごらんなさい。赤ちゃんがいないと、何か欠けているような、物足りない感じがします。 

ここに、状況を一変させ、人に癒しを与える赤ちゃんの驚くべき力を証明するすごい逸話があります。何年も前、ベトナム戦争中のことですが、たくさんの重傷を負った兵士がサンディエゴの病院に移送されてきました。彼らに共通していたことは、彼らが両手両足をなくしていたということでした。彼らは頭と胴体だけでベッドに横たわっていました。彼らは深いうつ状態に陥っていたので、話すことさえできませんでした。その階の看護婦は彼らがうつ状態から脱することができるようにあらゆることを試みましたが、だめでした。 

最終的に行き詰まった結果、いいアイデアが浮かびました。彼女は他の看護婦たちを呼び集めて、「病院内の末期状態にある赤ちゃんを全て集めて、これらの退役軍人たちの胴体に赤ちゃんをうつぶせにして縛りつけなさい。」と言いました。病室を出ていくとき、彼女は退役軍人たちにこう言いました。「みなさん。この赤ちゃんたちはもうすぐ死ぬんです。面会者もなく、愛してくれる人もいない子がほとんどです。だれとも絆がないのです。そしてあなた方は何もすることがありません。『あなたたちの仕事は、これらの赤ちゃんを愛してあげることです。』」 

その看護婦は病室から出ていきました。看護婦たちはこのことを毎日繰り返しました。一週間経たないうちに、兵士たちはうつ状態を脱し、赤ちゃんたちの世話をし始めました。最初全員が抵抗していましたが、目を開けるたびに赤ちゃんの目が、兵士たちの心に当然あるはずの思いやりの心を探し求めて、魂まで突きささってくるのです。 

もし私たちの愛といたわりに包まれていれば、赤ちゃんは死ぬという現実を受け入れることができると私は思うのです。でも、自分たちが望まれてなく、愛されず、使い捨てられるものだと気づいたとき、これらの最も罪のない、無力な赤ちゃんが必然的に感じる悲劇的な拒絶のことを考えてみてください。 

もしあなたがもっとうまく人生の勝利者になりたいなら、赤ちゃんから、どうすれば暖かい心を持ち、生命の神秘に心を開け、より完全な人間に近づけるかを学んでください。赤ちゃんが生まれつき持っている善良さが、人間の子どもを作る能力と生まれる寸前の命を破壊するために人間が考えだした全ての手段の邪悪さを私たちが理解する手助けとなるでしょう。 

Habiger, Matthew OSB,PhD(マシュー・ハビガー神父)
ベネディクト会
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2003.6.3.許可を得て複製
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