前略・・・ さて、新型コロナビールス蔓延に関して、私なりの一考です。昔、疫病と一括して称されていた病いは現代では電子顕微鏡の開発やゲノム解析により、その原因が解明されつつありますが、その治療と感染予防薬はまだ開発途上です。そしていろいろな倫理的問題、つまりクリスチャンにとっては、「神を愛せよ、隣人を愛せよ」の観点からの問題が浮上しております。たとえば最善の治療を受けるにしても、医療施設・設備や医療者が不足の場合、だれから優先的に医療を受けるべきか(トリアージ)、通常は実用に10年要するといわれている薬剤が緊急事態だということで、長期の副反応が未知のまま、実際に使用され始め、有効で安全だとしても供給が需要に追い付かない場合、だれが優先的に接種を受ける権利があるのか、貧しい国にそれが届かないとか、ある倫理学者はmRNA型のワクチンの原料に中絶された胎児細胞を使っているのではないかを問題にしています。
そういうことで、公権やマスコミはとりあえず、まずワクチンだと強調していますが、接種を受ける側は接種されるワクチンや製造者など選択できないので、接種を奨める側はそれまでに解っている効用や副反応を公開し、それに基づいてワクチンの接種を受けるかどうかの判断を各自に任せるべきで、接種者と非接種者の差別をすべきではないでしょう。
因みに、教皇庁教理省は、昨年12月21日、新型コロナウイルスワクチンの生産過程で妊娠中絶された胎児の組織由来の細胞株が使用されていたとしても、ほかに選択肢がない場合はカトリック信者がその接種を受けることは道徳上容認可能との見解を示す教書を発表し、フランシスコ教皇とベネディクト16世名誉教皇は接種を受けたと伝えています。
そして、明らかに隣人愛に反する嫌がらせが伝えられているのはまことに遺憾です。つまり、新型コロナに感染した方、その人々の医療にあたっている方、およびその家族や関係者に対する嫌がらせです。だれでもいつ感染するか分かりませんし、いつ医療者のお世話になるのか分かりません。まして、医療にあたっておられる方は自分も感染する怖れの中で献身的に医療と看護にあたっておられます。
また、コロナ感染していても典型的な発熱、味覚・嗅覚の低下、呼吸困難などの症状がでなくても、あるいは発症して治った場合でも、虚脱感・脱毛などの後遺症が出る人が多いと報告されています。
この新型コロナビールス蔓延は、経済・社会・教育・教会活動に甚大な影響を与えており、いわゆる勝ち組と負け組、豊かな側と貧しい側に明暗が生じていますが、互助の精神に基づく調整が必要でしょう。日本の教会は独自に目立つ形の活動をする力がないので祈ること、特にフランシスコ教皇が本年12月8日までをヨゼフ年と宣言されていることに鑑み、聖ヨセフのお取次ぎを願い、そして市民としてこの情況に賢明に対処できるようにしたいと思います。
新型コロナの感染症の医療のために、その他の病気の患者さんの治療がひっ迫し、後回しにされていることも伝えられています。したがって、この新型コロナビールスを体内に取り込まないように不要不急の外出を控え、人がいるところでのマスク着用、手指の消毒や洗い、目のまわりや口腔や鼻腔の衛生、洗髪・洗顔・歯磨きの励行、免疫力低下の防止などに気を付けたいと思います。
最後に、ミサが膳棚教会なりの平常の捧げ方、つまり、参加者全員で声を合わせて歌い、唱えるときが早くくることを願うと共に、共用のスリッパやドアノブや聖堂の椅子を随時消毒してくださる皆様に感謝申し上げます。(2021年2月13日記)
(参考サイト)
教皇庁教理省 いくつかの抗Covid-19ワクチン使用の倫理性に関する覚え書き
フランシスコ教皇がワクチン接種「倫理的行為」と接種呼びかけ | NHKニュース 2021年1月15日 6時05分
Terao.Souichirou(テラオ・ソウイチロウ)
寺尾總一郎
カトリック膳棚教会 主任司祭
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