日本 プロライフ ムーブメント

教会の教示とヒトの生殖

避妊:

カトリック教会は、「生殖過程が既に始まっている、何より、直接的な意思に基づく中絶や説得されての中絶は、たとえ治療目的であったとしても、誕生を調節する合法的理由として絶対的に許されない。同様に許されないのは、永久的か一時的かに関わらず、男性か女性かに関わらず、直接的な避妊である。」(1) この教示では、コンドーム、避妊リング、精管切除術、卵管結紮術および経口避妊薬、緊急避妊薬、注射または皮膚パッチによる避妊薬の投与などの化学的避妊薬による避妊を禁じている。これらを禁じる理由は、神の意思によって行なわれ、人間の自発性によって断ち切ることができない夫婦の行為の結合的意味と生殖的意味との切り離せない関係が、避妊によって破壊されるからである。 

避妊は、Dietrich von Hildebrandが称えた婚姻の偉大さを大きく傷つけることになる。「新約聖書において、人間の美徳はそれほど称賛されていない。その他の美徳も7つの秘蹟の1つに選ばれていない。神の国の建設に参加する名誉を与えられている美徳は他にない。…新しいヒトが生み出される神秘と最も親密な愛の親交の間で、神によって行使されるすばらしい関係は…この結合の壮大さと厳粛さを表している…したがって、婚姻は、この結合の神秘を目指す夫婦の敬虔な態度を失わないために行なわれる。生殖と愛の親交とのこうしたつながりは、常に維持されなければならない。」(2) 

教皇パウロVI世は、避妊という行為が、男性が女性を尊重する気持ちを失わせ、女性を自己の享楽の単なる手段としか見なさなくなると予見したことで、その洞察力がいかに優れていたかを歴史的に証明した。中絶や性感染症の爆発的な増加は、化学的避妊薬の合法化とその利用が拡大した結果、不特定の相手との性交が増えたことの証明である。また、教皇は、道徳的危機を無視した当局が、婚姻している男女にとって不正な手段によって社会問題を解決しようとする危険があることも警告している。その証拠は、現在、国連が支援している世界的な避妊と中絶の推進、中国政府による一人っ子政策に表れている。 

パウロVI世は、『フマネ・ヴィテ』において、「夫および妻の身体的または精神的状況、あるいは外部的条件によって、出産を制御する重大な動機がある場合に、教会は、生殖機能が持つ自然なリズムを考慮し、不妊期にのみ夫婦生活を用いることが正当であり、そうすることで、先に回想した道義に反することなく、出産を調整できると教示している。」(3) ピウスXII世は、重篤な状況が生じない限り、夫婦は子どもを持つ義務があると教えている。ただし、十分に重大な理由がある場合、家族の規模を制限したり、子どもを持つことを控えたりすることは、夫婦にとってのモラルであるとも教えている。彼は、「いわゆる医学的、優生学的、経済的および社会的「表明」においてしばしば言及されているような重篤な動機は、積極的且つ義務として行為を実施して以降、長期的、おそらくは婚姻期間を通じて排除される。」と述べている。(4) 

Gaudium et spes  では、「神に与えられた使命を全うする夫婦のうち、熟考と共同決定の後に、勇気を持ってより多くの子どもを適切に養育する決意をした人々について、特別な言及をすべきである。」と記載されている。また、子どもの数とその間隔を決めるのは両親の義務、ただ彼らだけの義務であり、「物質面および精神面から、彼ら自身の幸福とすでに誕生した子どもたち、あるいはこれから誕生する子どもたちの幸福、ならびに時代の兆候と彼ら自身の状況を考慮し、最終的には、家族、社会、そして教会の利益を考えるべきである」とも記載している。(5) 

子どもの誕生間隔を空ける方法として容認できるのは、「自然な家族計画」である。最適な方法のひとつに、ヒルジャーズ法がある。この方法による妊娠回避率は、使用12ヶ月目で99.5から98.8であることが証明されている。(6) これは、家族計画連盟のウェブサイトに記載されたピルの使用に勝るとも劣らない:家族計画連盟のウェブサイトに記載されているのは、「ピルを使用する女性100人のうち、通常使用した場合に、1年目に妊娠するのはわずか8パーセントである。」 

関連する医学的事実

幾つかの化学避妊薬は絶対中絶を引き起こし、すべての化学避妊薬は時々中絶を引き起こす。化学避妊薬は、胚の子宮への着床を阻止することで、これを行う。(7) 医療に携わる精鋭たちは、着床前に胚は存在しないと主張することで、機能的「避妊薬」の使用を正当化しようとしてきた。この主張は偽りである。ヒト発生学の科学は、100年以上前から、新しい個としてのヒトは、受精またはクローン形成のいずれかによって単細胞の接合子が形成されたときにその存在が始まることを実証している。(8) 最初の子どもが誕生する前に経口避妊薬(OCP)を使用することで、乳癌のリスクが40%上昇する。最初の子どもが誕生する前に4年以上使用すると、リスクは72%まで増加する。OCPは、子宮頸癌と肝臓癌のリスクも高める。(9) コンドームでは、性感染症のリスクを完全に回避することはできない。(10) 

人工生殖技術(ART)

ヒトは、精子によって卵子が受精することで、存在が始まる。これは、性交、あるいは実験室における体外受精(IVF)により実現できる。ヒトの生殖は、クローン形成によっても実現する。核移植、胚分割など、クローン形成にはさまざまな方法がある。 

教会では、IVFおよびヒトクローン形成は、道徳的に禁止された行為であると教えている。それはなぜか?夫と妻の間のIVFは、それ自体が不正であり、生殖と夫婦間の結合の尊厳に反することから、非難されるものである。第三者の精子や卵子を使うIVFも、夫婦の相互義務を侵害し、婚姻に欠かせない資産である和合への敬意の重大な欠如であることから、非難される。また、女性または男性の最終的な関係で誕生する子どもと親子の関係を奪い、個人のアイデンティティの完成を妨害し、家族内の個人的な関係を傷つけ、礼節ある社会に影響を与えることになる。(11) 

IVFは、実際、婚姻による結合という特別な行為の実りや表現として実施されないしまた肯定的な意思によるものではない。ヒト胚は、神の贈物ではなく、技術の産物として扱われる。その利用および、遺伝工学のその他多数の技術を使用することで、人間は、彼または彼女にふさわしい完全性を客観的に奪われることになる。こうした受精方法は、人間の起源と尊厳に対する技術の優越をもたらす。技術の優勢は、親と子に共通するべき尊厳と平等性に相反するものである。したがって、IVFとクローン形成は、道徳的に許容できないのである。(12) 

関連する医学的事実:

  • IVFによって受精した子どもの多くは誕生しない。各々の周期において、6個から8個の胚が受精する。着床するのは最大2個である。残りはすぐに廃棄されるか、凍結され、最終的には、その大半が死に至る。受精した胚のうち、着床するのはわずか25%で、そのうち誕生するのはわずか20%である。したがって、生きて誕生するのはIVF胚のわずか5%となる。オーストラリアの生物倫理学者、Nicholas Tonti-Filippiniは、着床によってヒトの凍結胚を救済できる確率を2%未満と計算している。(13)
  • ARTに伴う出生異常:網膜の悪性腫瘍は4.97.2倍に増加;ベックウィズ・ヴィードマン症候群(巨舌、癌の素因)の発生率5%;ブラジルでは、癌の発生率が117倍に増加;脳性麻痺が1.41.7倍増加;発達の遅れが4倍増加;未熟児が5.6倍増加;低体重児が9.8倍、心臓の奇形が4倍増加。(14)
  • IVFを実施するには、多数の卵子を一斉に発達させるホルモンを女性に投与する。これにより、卵巣過剰刺激症候群が誘発されることがある。症状として、吐気、嘔吐および呼吸困難がある。稀ではあるが、血栓、腎臓または肺の疾患が生じ、致命的になることもある。
  • トーマス・ヒルジャーズ教授の受精ケアシステム:ヒルジャーズ教授の自然生殖技術は、ホルモンによる不妊の正確な診断とその適切な治療を行う医療の1つである。これは、不妊に悩む女性の受精を促す方法として道徳的に許容できるものであり、数分の一のコストでありながら、成功率はIVFの23倍になる。IVFに失敗した経験のある女性を対象にしたある試験では、成功率は36.2%だった。ヒルジャーズシステムは、流産を繰り返した女性において、80%もの妊娠成功率が確認されている。未熟児の割合が半分になることで、脳障害の発生率を低減することができる。(15)

Shea, John B. (シー・ジョン) 
Copyright ©February 1, 2006
Catholic Insight
英語原文lifeissues.net
2008.4.25.許可を得て複製