令和元年日本で緊急避妊ピルがオンライン診療で、初診時に医師との対面診察無しでも使用が可能とされました。
緊急避妊ピルは従来の低用量避妊ピルの作用としての、排卵抑制作用や子宮内膜を変質させての受精卵着床阻害作用のうち、特に後者の作用を強力にしたものです。両方のピルは共に、すでに人の命が宿っている受精卵を、強制的に流してしまう極早期化学的中絶剤とも言えます。
ピルの成分は両方のピル共に通常2種の化学物質から出来ています。いわゆる低用量避妊ピルは日本で平成11年に解禁になりましたが、それに先立って生命尊重センターは、先行している諸外国の状況を知る為に英国に調査団を派遣し、日本では伏せられていた様々な事実を知る事が出来ました。死亡例を含む女性達の深刻な健康被害やピルによる環境ホルモン問題等をビデオ「ピル先進国英国からの警告」にまとめ全国の会場で上映し、大きな反響を呼びました。DVDは今でもセンターで購入可能です。特に学校関係での視聴をお勧め致します。
ピルの成分の化学物質は天然の女性ホルモンと異なり、極めて分解しにくく、体内から消えるのに長期間かかり、女性の脳下垂体や免疫機能など体中に影響が残る恐れがあります。尿から下水に流れても分解されず環境ホルモンとして作用する懸念もあるのです。環境ホルモンは極微量でもその女性ホルモン作用により次世代の子供の生殖器に障害を起こす事が問題とされています。また低用量だから安全とは言えません。成分が非常に強力な別の化学物質に置き変えられており、重量を比較しても意味が無いのです。
更に強力な化学物質にして容量を減らした超低用量ピル「ヤーズ」が平成22年に月経困難症及び避妊用として発売されましたが、死者を含む多数の重症副作用者が出ており、厚労省から警告が発せられています。若年者が低用量避妊ピルを長期間使用していると、比較的まれな30代での乳がんの発生も多くなります。このように各種のピルは女性の健康を損ない時に命まで奪う化学物質なのです。低用量避妊ピル及び緊急避妊ピルにおける倫理的問題は極めて重大です。全てのタイプのピルは排卵抑制作用だけではなく受精卵の着床を阻害したり着床直後の胚を流出させてしまう作用がありますが、医師は使用者にこの重要な事を説明していません。刑法堕胎罪では女性に知らせる事無く本人の承諾も無く薬物を用いて中絶した場合最も厳しく罰せられています。受精卵の倫理に関して回勅いのちの福音では、「卵子が受精した瞬間から、父親や母親のそれとは異なる一つの新しいいのちが始まるのです。受精の時にすでに人間となるのでなければ、その後において人間となる機会はありえないでしょう。」と述べられています。
平成3年に開催された国連NGO「国際生命尊重会議」で胎児の人権宣言が採択されました。6ヶ条からなる素晴らしい宣言です。胎児の人権宣言と入れて是非検索してみて下さい。前文では「人間一人一人が受精の瞬間から自然死にいたるまで、生来の尊厳と固有の価値を有する」とあり、第1条には、「我々は胎児一人一人が受精以降の発育のすべての段階において、人間であるという科学的事実を確認する。」としています。受精卵が赤ちゃんに成長する過程は生命力にあふれ、人間の一生のうち最も神秘的でダイナミックな時期とも言えます。女性も男性もどなたの人権もしっかり守られなければなりませんが、最も弱い存在である受精卵の人権も、決して劣るものではないのです。
フランシスコ教皇来日のテーマでもある「すべての命を守るため」を実践するにあたっては、まず声すらあげられない受精卵からの母体内の命を守る事から始める必要があるのではないでしょうか。数年前に緊急避妊ピルを、一般のドラッグストアーで誰でも風邪薬のように買える一般薬にしようとする動きがありました。生命尊重センターやカトリック医師会は直ちに反対意見を厚労省に提出し平成29年の審議会ではストップさせる事が出来ました。しかし今もそれを実現しようとする運動が行われていますので、注意が必要です。緊急避妊ピルの一般薬化を阻止し、幼い命を守る為には、各種のピルの真相を広く伝える事と、レイプや十代での妊娠等深刻な問題を抱えた女性が相談出来るように、命を守る立場に立つ妊娠葛藤相談所を各地に置く必要があります。円ブリオ基金センターのSOS電話相談も皆様の支援でさらに充実させる事が出来ればと願っています。
これらの活動をするにあたってはどんなに小さな者の命でも神から授かったものであり、たとえ親であっても自由に処分出来るものではない事を深く心にとめる必要があると思います。
聖書エレミア1-4に「主の言葉が私に臨んだ。「わたしはあなたを母の胎内に作る前からあなたを知っていた。母の胎から生まれる前に、私はあなたを聖別し、諸国民の預言者として立てた」と記されています。
Hirata Kunio(ヒラタ クニオ)
平田國夫
生命尊重センター副代表・医学博士
聖母の騎士1月号掲載
Copyright ©2020.10.12.
2021.3.28.許可を得て複製