「性感染症の“津波”に呑み込まれる若者たちは、この切迫した問題に立ち向かうために助けを必要としている。小児科医であり、また母親であり、著作活動も行うマーガレット・ミーカー氏は、子どもを持つ親や十代の若者たちにアドバイスを提供している。」
マーガレット・J・ミーカー医師は過去20年間、小児科医療に携わりながら、十代の子を持つ親や若者たちに思春期の健康についてカウンセリングを行なってきた。2002年には、著書『Epidemic: How Teen Sex Is Killing Our Kids 大流行の病:十代のセックスは子どもたちを死に追いやる』(Lifeline Press, Regnery Publishing, http://www.regnery.com)を出版している。この中でミーカー氏は、テレビ、映画、大衆文化が「偽りの性の世界」を作り出し、その結果、十代の性感染症の増加が加速され、貞潔よりも産児制限が強調されるようになっていると論じている。 ミーカーさんは、夫のワルター・ミーカー医師と共に医院を開業しているミシガン州トラヴァース市の事務所からColumbiaとのインタビューに応じた。二人には四人の子どもがあり、うち三人はティーンエージャーである。
Columbia: 先生は子どもたちを脅かす性感染症について親たちに伝え、警鐘を鳴らすため全米各地に行かれています。性感染症の脅威とは、ずばり何なのですか。
(ミーカー):性的活動によって急速に広まっている病気は25種類以上あります。あまりにも広まっているため、アメリカ合衆国疫病制御予防センター(CDC)はこれを流行病としています。性感染症の多くは治癒することがなく、しばしば感染者を不妊にし、また癌や、死さえも引き起こすのです。最も顕著なのはエイズを引き起こすHIVウィルスです。
どれくらい広まっているのですか。
非常に広範になっています。いくつもの研究によれば、性的に活動的な17歳から25歳の4人に1人が感染しています。最近の研究では、4人に2人とも言われています。これは、毎日、スタジアムの観客席いっぱいの子どもたちが感染している、という計算になります。考えてみてください。CDCの現在のデータによれば、毎年、3百万から4百万人の十代の若者たちが感染しています。アメリカには十代の若者が3千2百万人いることを考えると、単純に計算すれば、毎日約1万人の子どもたちが新たに性感染症に感染しているのです!
公的機関によってコンドームが広く配布されているのに、なぜこのようなことになるのでしょう。
精神的・霊的な問題をいったん脇に置くとして、コンドームは宣伝されているようには病気を予防しないのです。2001年に、U.S. National Institutes of Health全米保健協会は、コンドームがどれほどよく「機能を果たす」かについて書かれている最良の医学資料について吟味し、論評を行いました。その結論はあまり広く知られていませんが、驚くべきものです。彼らが発見したのは、次のことでした。HIVのような感染に対しては、コンドームは、100パーセントの使用率で、100パーセント正しく使われる場合、感染のリスクを低めるかもしれません。しかし、ヘルペスやHPV(human papilloma virus)の場合、肌を通して感染するもので、コンドームの効果は惨憺たるものです。
2004年の6月、CDCの長官であるジュリー・ガーバーディング博士は連邦議会に報告書を提出し、その中で、コンドームはHPVに対して子どもたちを適切に守ることができない、と述べています。HPVは、若い女性の子宮頸癌を引き起こします。さらに、コンドームは、やはり危険にさらされる身体のほかの部分を守ることもできません。性感染症の多くは、下肢、腹部、口にも見られます。医学的にはっきりしているのは、とにかくコンドームは子どもを感染から守る機能を十分に果たさないということです。
コンドームが十分に効果がないのなら、そもそもなぜ使用を勧めるのでしょうか。
それはいい質問です。私たちは同時に二つのことを手に入れたがっているのかもしれません。しかし、奔放なライフスタイルを営みながら体の健康を保つということは、ほとんど不可能になっているのです。コンドームはそうしようとする試みですが、うまくいっていません。なぜそれがわかるかといえば、過去20年間、学校での性教育プログラム、あるいは「安全なセックス」プログラムは、性的に活動的な十代の若者たちにコンドームを使用させようと強力に働きかけてきました。その結果はどうでしょうか。この努力が行われてきた間、若者の間で性感染症は増加したのです。しかし、コンドームの使用を促進することで、大人たちは、自分たちはこの問題に対して自分たちは何かやっていると感じることができます。実際は、私たちは事態を悪化させているかもしれないのです。
コンドームがなぜ問題を悪化させるのでしょう。
コンドームの使用を促進することは、いくつかの意味で十代の若者たちにとって問題を悪化させることになります。まず、もともと自分たちを無敵のように感じている十代の若者は、コンドームを万能薬のように思っています。彼らは、コンドームを使えば何も悪いことは起こらないと間違って信じています。第二に、子どもたちにコンドームの使用を勧めることは、危険なライフスタイルを促進することになります。少し立ち止まって考えてみてください。私がある若者にコンドームを差し出したとします。事実上、私はその若者に、性的に活動的でいいという許しを与えていることになりませんか。
今日、若者たちは性的に活動的である以外の選択肢がないように感じています。セックスがないなら「人生を楽しむ」ことから置いてきぼりになっていると、メディアのキャンペーンは若者たちを信じ込ませることに成功しています。コンドームをどのように使うかを彼らに教えるということは、このことを強調するだけです。
コンドームの使い方を子どもたちに教えるならば、教師は、子どもたちが道徳的に生きることができると自分たちは信じていない、というメッセージを伝えることになります。私たちは、このメッセージの持つ力を過小評価してはなりません。若者たちは、両親やほかの身の周りの人々が彼らに対して持つ期待に応えるものです。ですから私たちは、継続的に、そして一貫して、前向きな、道徳的立場を支持するメッセージを子どもたちに伝えつづけなければなりません。
すでに性的に活動的な若者の場合はどうでしょうか。いくらかでも予防があったほうがいいのではないでしょうか。
そのような提起は、一見、理に適っているかのように思われます。しかし、実際には、そのような論理は崩壊します。感染のリスクは、その人のセックスの相手の数に直接比例します。それに尽きます。これは十代の子どもたちにとっても、また大人にとっても同じことです。ですから、性的に活動的なライフスタイルを続けながら、コンドームを使うならより安全であるかのように一見思われるかもしれませんが、もっと重要な問題は、その人のセックスの相手が何人いるかということです。研究によれば、相手の数が多ければ多いほど、コンドームを使うことが少なくなります。さらに、相手が多くなれば、感染も増えます(コンドームの使用に関係なく)。繰り返しますが、本当の問題は複数の相手ということであり、コンドームの使用ではありません。ある一度の性行為でコンドームを使用することが、そのときのHIVの感染を防ぐかもしれません。でも、その一度、使うコンドームが欠陥品であることもあります(FDAアメリカ食料薬剤局はコンドームについて3パーセントまで欠陥品の混入を許しています)。あるいは、コンドームの着用の仕方が間違っていることもあります(珍しいことではありません)。コンドームがずれてしまうかもしれません。ですから、コンドームが最も効果を「発揮する」HIVの場合でさえも、リスクはなくなりません。一度の性行為にまつわるこのリスクを何百回と掛けてみてください。時と共に、また使用回数と共に、リスクが著しく増大することがわかるでしょう。コンドームがいくらかでも提供できる保護は、その繰り返しの使用によって相殺されてしまうのです。
第二に、少なくとも十代の若者に関するかぎり、性的に活動的な子どもに、ただコンドームを使うようにと言うだけで、性行為の回数を減らすようにしないなら、問題は解決できないということがわかっています。十代の若者はいずれも、性的に活動的である期間が長くなればなるほど相手の数も増え、コンドームも使用しなくなっていきます。なぜなのか、正確にはわかっていませんが、私個人は、そのような子どもがコンドームの使用をやめてしまうのは、自分が感染しようがしまいが、だんだんとどうでもよくなってしまうのではないかと思っています(ある種のうつの状態が始まります)。また、自分が感染するかもしれないという明確な認識がまだないのかもしれません。
第三に、性的に活動的な人が常時コンドームを使用したとしても、HPVやヘルペスのようなウィルスの感染は防げないということが、現在わかっています。コンドームを使えば感染から守られると信じ込ませることは、実際、人道に反することではないかと私は思います。現在、科学的データから感染を防げないということが実際にわかっているのです。基本的に、コンドームを使えば「安全」だと子どもたちに信じさせるならば、彼らは、どのようなセックスでもいい、何人の相手とでもいい、といったように何の制限もないと思うようになります。安全であると感じるほどに、彼らの行動は危険になります。性的活動に関しては、コンドームの有無に関わらず、とにかく子どもたちにとってセックスは危険すぎるのです。
最後に、複数の相手との性行為による情緒的・心理的な影響について、私たちはまだよくわかっていません。その影響は実に深刻なものです。特に、まだ性が十分に成熟していない十代の若者たちにとって深刻です。どのようなコンドームも、子どもたちの心や霊魂を守ることはできませんし、健全な心理的成長を確保することもできません。
性感染症の問題に携わられてきて、最も悲しく思われたケースは?
それは難しい質問です。どのケースでも若い人がこの問題で、霊的、感情的、身体的にに苦しむのを見るのは本当に辛いものです。しかし、影響のいちばん長く続くケースが最も辛いかもしれません。数年前、健康に生まれた新生児の女の子を診ました。その子は生まれて二日目からひきつけを起こしはじめました。ヘルペスが脳に感染したからです。怖いのは、自分がヘルペスにかかっていることを母親が知らなかったことです(炎症がなかったのです)。夫は、17歳のときにガールフレンドからうつされたと言いました。現在、この夫婦にはもう一人の子どもがいますが、この赤ちゃんは歩いたり話したりするのが困難です。
また、16歳の若い女性が子宮頸癌の手術によって不妊になるのを見るのも、胸が痛みます。子宮頸癌の唯一の治療は、子宮頸管の一部あるいは全部を摘出することです。その影響は、彼女と夫だけでなく、将来、祖父母となるはずであった人々やほかの家族にも及ぶのです。彼ら皆が、人生の最も豊かな祝福を奪われるのです。
こういった病気がこれほど蔓延しているのは、どうしてなのでしょうか。
複数の相手との性行為によるものです。ある相手と性行為を持つことは、相手がそれまでに性行為を持った全員と性行為を持つようなことです。愕然とさせられますが、真実です。ほとんどの若者は自分の身には起こらないと思っていますが、メディアを通して受ける性的刺激の多さと相まって、感染した若者の数がこれほど多いということは、驚くには当たらないのです。
先生はどのようにして子どもたちを助けようとされているのですか。
医療を通してというのが私の基本的な応えですが、そもそも感染を避けるように、ほかの人々にも目覚めてもらおうとしています。予防が最良の薬であると言えるでしょう。そのため、「新しいルールThe Rules Have Changed」というビデオの制作にも協力しましたし、「Epidemic: Raising Great Teens in a Toxic Sexual Culture 大流行の病:汚染された性文化の中で魅力輝く十代を育てる」という本を書きました。
ごく最近では、クリス・ゴッドフリーや「Life Athletes命のアスリートたち」と協力を始めました。彼らは若者たちとすばらしい活動をしています。人間関係の中で、若者たちが十分な情報を得て道を選ぶことができるように助けています。
Editorial (オピニオン)
Knights of Columbus
Columbia Magazine
January 2006
http://www.KOFC.ORG/un/publications/index.cfm
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