医学博士
エべリン・ビリングス著 AM,MB BS,DCH(Lond)
女性は排卵が近づいてくると、立った姿勢のときや、体を動かしているとき、膣か ら子宮頸管粘液が出てきます。この粘液は次のようにして膣口で観察できます。
観察記録は、毎日、就寝前につけます。この記録から、受胎可能期と不妊期がわかり ます。受胎可能期のパターンは変化するパターンであり、不妊期のパターンは変化し ないパターンです。これらのどちらのパターンも精子の生存と受胎を制御するホルモ ンのパターンを反映しているので、妊娠するため、あるいは妊娠を延期するために信 頼できる情報を提供してくれます。
図1は、女性の生殖器官の解剖図です。これは特に次の点を強調してあります。
受胎には次の条件が必要です。
ビリングズ排卵法を利用するにあたって、腔口で観察したことを毎日記録することは重要なことです。一日の観察の中で気づいたもっとも受胎可能な特徴をその日の晩に記録します。今から始める最初の記録は、通常、2〜3週間継続します。その間、性交や性接触で生じる分泌物が観察を狂わせることがないように、性器同士の接触は一切避けてください。作成された記録図は夫にも情報を提供し、夫婦のコミニケーションや子どもをどうするのかについて決める機会も与えます。観察を紛らわしくするので、膣内部を調べてはいけません。記録には、色別のスタンプ(シール)かシンボル・マークを使い、各スタンプの下に、膣口の感触や粘液の性質について、一言二言書き込んでください。不安な女性に対しては、「どのようにして、あなたは生理が始まるのがわかりますか?」と質問してあげると、助けに なるでしよう。彼女は、月経が膣口に達するときを感じ、目にすることで把握しているはずです。出血は赤のスタンプ(図2)で記録します。粘液の感触と性質の観察は、常に膣口で行います。日が経つにつれて、女性は自分の粘液パターンから、自分の受胎可能期か不妊期かのパターンわかるようになっていきます。
図2
感触/ 粘液の有無 |
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月経後、精子が子宮頸管の通路に入るのを阻止するため、さらに感染から守るために、子宮頸管はネバネバした濃い粘液の栓でふさがれます。この状態のときに精子が膣内に閉じ込められても、急速に授精能力を失い、周辺の細胞によって破壊されてしまいます。
卵巣は、この段階のときには静止状態にあります。子宮頸管からの流出物は何もないので、膣口は乾いた感じがします。そこは、何も感じないし、何も見えません。このように観察される時は、緑のスタンプ(図3)で記録します。
図3
感触/ 粘液の有無 |
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性交後、精液は24時間膣から流出することが可能で、その場合、膣口に湿った感じを与えます。この精液には生きた精子細胞はいません。子宮頸管が精子の進入を阻止しているとき、精子は1〜2時間で破壊されてしまいます。
基本的不妊形式とは、変化しないパターンのことで、卵巣が不活発であることを反映しています。平均的長さの周期の場合、次のようなことによって、それを認識します。
図4は粘液の基本的不妊パターンを示しています。3つの周(4a,4b,4c)は、(1)感触、あるいは(2)粘液の出現、あるいはその両方の変化の時点を正しく識別するための学習に役立ててください。
図4a
感触/ 粘液の有無 |
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図4b
感触/ 粘液の有無 |
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図4c
感触/ 粘液の有無 |
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卵巣は静止しています。このとき、エストロゲンというホルモンは少しだけつくられています。子宮頸管は閉じているので、精子は進入できません。もし3周期にわたって、毎日、同じおりものであれば、それは不妊状態の徴候です。膣口は乾いた感じがし、粘液は微量で不透明です。この粘液は栓の下の部分が少し剥がれ出てくるものです。多くの女性がこの変化しない不妊パターンを持っています。
図5は、卵巣が活動し、エストロゲン(図中〔一一一〕)をつくっていることを示しています。エストロゲンは子宮頸管を活性化するように刺激します。すると、流動性に富んだ粘液がつくられ、栓はなくなり、したがって、精子は子宮頸管に入ることが可能になります。膣口は、乾いた感じから、もう乾いていないという変化を経験します。そうしたら、白のベビースタンプを貼って記録します。
図5
感触/ 粘液の有無 |
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この時点での粘液の性質は濃密で不透明かもしれません。この不透明なネバネバした粘液は不妊状態を意味しません。この粘液が膣口に到達したということは、粘液が子宮頸管から出て、精子に通路を開いたことを意味しているのです。
粘液の基本的不妊パターン(図6)でも同様に、卵巣が活性化したことを示しています。変化する時点は、膣口の感触の変化で気づきます。これはもう精子が子宮頸管に入ることが可能なことを示しているのです。この変化は、白のベビースタンプで記録します。(図6)
図6
感触/ 粘液の有無 |
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図7は受胎可能期の特徴である変化するパターンを示しています。(不妊パターンは変化しないパターンです。)卵巣はますます多量のエストロゲンをつくります。(一一一)。粘液はネバネハした性質から、次第に湿ったスベスベした感触へと変化していきます。透明な糸状の粘液に気づくこともあります。
最大量だった粘液は減少するかもしれませんが、スベスベした感触はその後1日か2日続きます。スベスベした感触の最終日がその周期の中で最も妊娠する可能性の高い日で、この日のことを『ピーク』と定義します。妊娠の可能性がピークであり、膣口が敏感ではれぼったさを伴います。
図7
感触/ 粘液の有無 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
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「ピークはX印を書き込んで記録します。」この時点は排卵が間近にせまっています。卵胞が卵子を卵管に放出するための準備をしているとき、卵巣はすでにプロゲステロンをつくっています。(ー)プロゲステロンは濃いネバネバした粘液をつくるように子宮頸管の下部を活性化し、その粘液は3日間にわたって子宮頸管の通路を徐々にふさぎます。この3日間は精子が通ることのできる狭い通路がまだ残っています。これらの精子は、卵子が受精するために待ち受けている卵管の膨大部に素早くたどり着けます。
今、卵子が卵管の中に見えます(図8)。黄体からのプロゲステロン(ー)の影響により、子宮頸管は濃い粘液でふさがれ始めます。プロゲステロンは粘液に影響を与えますから、膣口も感触の変化に気づき、乾いた感じかネバネバした感じがします。
図8
感触/ 粘液の有無 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
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膣口にはもうスベスベした感じはありません。これは子宮頸管と膣下部双方に変化があったことによるものであり、いずれもホルモンによって制御されています。このときの粘液は膣を通るときに乾きます。
図9は月経周期における黄体期を示しています。それはピーク(膣口がスベスベする感じのする最終日)後、4日目から始まります。この期問は子宮頸管が濃密な粘液の栓でふさがれ、精子は子宮腔に入れません。卵巣内の黄体はエストロゲンとプロゲステロンの両方をつくります。粘液が変化した最初の時点から、ピーク後4日目開始以前(つまり、ピーク後、3日目終了まで)に性接触がなければ、卵子は受精しませんし、卵管内で崩壊します。
図9
感触/ 粘液の有無 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
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月経(図10)は、たいてい排卵後11〜16日目にありますが、それは、その周期の終わりであると共に、次の周期の始まりでもあります。子宮頸管の栓はなくなり、子宮から外部へ月経の通路ができます。卵巣は今や休止状態へと戻りました。
ストレスがたまったり、母乳哺育中や、閉経前には、よく排卵が遅れます。基本的不妊パターンの概念は、ビリングズ排卵法の根本的な要素です。排卵前期の変化しない不妊様式を認識しておけば、その期間が長いか短いかに関係なく、排卵前期に受胎することなく、性交渉が可能です。
基本的不妊パターンは変化しないパターンのことで、少なくとも2週間にわたって次のどれかの徴候が観察されるときのことをいいます。
(2)と(3)の例のように、おりものがある場合の基本的不妊パターンは膣が原因です。子宮頸管を反応させるためにエストロゲンが十分に増加すると、基本的不妊パターンが変化し、妊娠可能状態になったことを意味します。エストロゲン量の増減によって、子宮内膜に破綻性出血か消退性出血の反応を起こすことがあります。
基本的不妊パターンに適用する排卵前期規則(下記参照)は、ビリングズ排卵法に保障を与え、どのような原因であっても、排卵が遅れた場合、受胎可能状態に戻ったことを認識させてくれます。女性は閉経が近づくと、継続的な不妊状態を認識するでしょう。
粘液のピークの日の後4日目が始まるまで、一切の性接触を避けなければなりません。その後、周期の終わりまでは、毎日でも、何時にでも性交できます。
もし以上の指針を適用すれば、妊娠を避ける成功率は99パーセント期待できます。
毎日の記録をつけることは、女性が毎日の粘液徴候に注意を払うことになるので大切なことです。
その記録は、夫に貴重な情報を与え、夫婦は妊娠の可能性について話し合ったり、最初の子どもまたは次の子どもをいつ出産するのかを共同で決めることができます。このようにして夫婦間に力強い愛に満ちたコミニュケーションが整い、赤ちゃんは歓迎され愛されるのです。
この本のオリジナル・イラストを担当してくださったジェイン・ムー二一さんと編集 アシスタントのルー・ベネットさんに心から厚くお礼申し上げます。
日本版の刊行にあたり、翻訳を寺尾総一郎師、成相明人師、清水百合枝さん、監 訳を産婦人科医 井手信先生が奉仕してくださいました。心から厚くお礼申し上げます。
1 | ビデオテープ | 「ビリングズ・メソッド | 7,000円 |
(わかりやすく美しい画像です) | |||
2. | 本 | 「ビリングズ・メソッド」 | 1,553円 |
3. | 本 | 「ナチュラルウェイービリングズ・メソッドー」 | 1,000円 |
4. | 本 | 「図説排卵法」 | 1,200円 |
5. | パンフレット | 「素晴しいNFP知っていますか」 | 100円 |
ファミリーセンター
〒811−1365 福岡市南区皿山4−14−27
TEL 092-541-6207 FAX092-552-5022
一粘液観察と女性性周期の生理学的事象との相関関係一
発行: | 1996年10月7目 初版 |
1998年5月31目 再版 | |
定価: | 550円(祝別) |
著書: | エべリン・ビリングス |
発行者: | ショーン・M・ライル |
印刷: | 聖母の騎士杜 |
発行所: | ファミリーセンター |
〒811−1365 | |
福岡市南区皿山4−14−27 | |
TEL 092−541−6207 | |
FAX 092−552−5022 |
ISBN 0−908482−09−4
1. 排卵一発見 2.頸管粘液 3.性周期 4.自然な家族計画一排卵法
I.オーストラリア排卵法研究資料センター
II.タイトル 613.9434
第2版 1995年8月 世界ビリングズ・メソッド排卵法協会認可
1996年 日本版コピーライト S.M.RYLE
テキスト及び図版の複写・複製を固く禁じます。