日本 プロライフ ムーブメント

私たちが失ったもの

当方は最近、2冊の小説を読んだ。1つは村上春樹著「海辺のカフカ」、もう1つは小川洋子著「博士の愛した数式」だ。 いずれも一気に読めた。「海辺のカフカ」では幼少時代の記憶を失う一方、猫と会話できる「ナカタさん」に、「 博士の愛した数式」では、交通事故で記憶が80分しか保たなくなった主人公の数学者の言動に、非常に感動を覚えた。「 ナカタさん」も「数学者」も社会から取り残された環境下で生きている。物語では、行方不明となった猫を探す「 ナカタさん」や、一日中、数式を考え、数学の懸賞金問題の解明に耽る「老数学者」の生き方、 その言動に他の登場人物が次第に惹かれていく様子が巧みに描かれている。 

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難民と人々の出会いのスケッチ

オーストリア最大の難民収容所トライスキルヒェに入ったアフガニスタンの青年は、「難民が多くて、 テント生活を強いられているが、3度の食を与えられ、薬ももらえる。オーストリア政府には感謝している。 なんといってもここは安全だからね」(オーストリア国営放送ニュース番組で)と答えていた。 

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君は「多様性」の果てに何を見るか

南米3カ国訪問中のローマ法王フランシスコは11日、パラグアイの首都アスンシオンの市民集会で、「 社会の発展には多様性が不可欠だ」という趣旨の話をしたという。同集会には同性愛者グループが招かれていた。   フランシスコ法王の「多様性」は同性愛者を支持する意味で使用されたのではないという。だから、法王の発言を取って、 カトリック教会が同性愛者を承認したとは受け取れない。しかし、 フランシスコ法王は同性愛者が招かれていることを知ったうえで、「社会の多様性」 という言葉を意識的に選んだことは間違いないだろう。 

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“美しい貧困者”はどこにいるのか

資本家に搾取されている労働者の解放を標榜し、資本主義に挑戦した共産主義は“赤い貴族”を生み出し、 独裁政権を構築した後、自壊していったが、貧しさ、貧困の解放を標榜する思想や運動が生まれる時、革命を迎える。「 貧困は時限爆弾だ」と評した社会学者がいたが、その爆弾を抱えながら登場したのがローマ法王フランシスコだ。 南米出身のローマ法王は前法王べネディクト16世ら歴代のローマ法王とはその出自が違っていた。「貧者の聖人」、 アッシジの聖人、フランチェスコ(1182~1226年)を法王の名前に選び、奢侈な生活を戒め、 バチカン法王庁の改革を訴えている。 

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聖トーマスに学ぶ「疑い」の哲学

聖トーマスをご存知だろうか。キリスト教会ではイエスの使徒の一人、 トーマスは疑い深い人間のシンボルのように受け取られてきた。「ヨハネによる福音書」によると、 トーマスは復活したイエスに出会った時、イエスが本物かを先ず確認しようとした。 イエスのわき腹の傷に自分の手を差し込んで、その身体を確かめている。イエスはトーマスの求めに応じたが、「 見ないで信じる者は、さいわいである」と述べている。だから、教会で疑い深い信者がいたら、「 君は聖トーマスのようだね」といってからかう。 

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焼香を拒む韓国人の“病んだ情”

“隠れキリシタン”という表現に倣うとすれば、当方は“隠れ韓国ファン”だ。 日本の多くの文化遺産が朝鮮半島経由で日本に入ってきたことを知っている。 朝鮮民族と日本民族には同一性と相違点があることも学んできた。それでも「これはどうしたことか」 と思わざるを得ない出来事が16日、韓国メディアで報じられていたのだ。その話をする。 

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「どの人生にも『意味』がある」

オーストリアの精神科医、心理学者、ヴィクトール・フランクル( Viktor Emil Frankl,1905~1997年)が生まれて今月26日で110年目を迎えた。ジークムンド・フロイト(1856 ~1939年)、アルフレッド・アドラー(1870~1937年)に次いで“第3ウィーン学派”と呼ばれ、ナチスの強制収容所の体験をもとに書いた著書「 夜と霧」は日本を含む世界で翻訳さ れ、世界的ベストセラーとなった。独自の実存的心理分析( Existential Analysis )に基づく「ロゴセラピー」は世界的に大きな影響を与えている。 その心理学者の功績と生き方を紹介した世界初の博物館が26日、フランクルが戦後長く住ん でいたウィーンの住居でオープンされた。 

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「祈る人」が直面する試練

イスラエルの3人の青年が拉致され、後日、死体で発見されたというニュースが報じられた。 イスラム過激派組織ハマス側は関与を否定したが、イスラエル側は「ハマスの仕業」として報復を宣言した。その直後、 今度は1人のパレスチナ人の青年の死体が見つかった。イスラエル側は「パレスチナ人青年殺害とは関係ない、 ハマスの軍事拠点を中心に軍事攻撃をしたが、民間人を衝撃の対象としていない」と弁明したが、パレスチナ側は「 イスラエル側の報復」と確信し、イスラエルへの批判を強めている。 パレスチナ側とイスラエルの紛争はここにきて暴発する危険性を高めてきた。 

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韓国とユダヤ民族はここが違う

「ユダヤ民族は非常に知恵ある」ということを最近痛感させられた。ユダヤ民族はナチス・ドイツ軍によって数百万人の同胞を失った。大戦終了後、ナチス・ハ ンターと呼ばれたサイモン・ヴィーゼンタール氏(1908~2005年)は同胞を殺害した元ナチス責任者を世界の隅々まで探し回り、司法の場に引っ張っていった。その執念は想像を絶する。 その一方、毎年1月27日の「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」 (International Holocaust Remembrance Day)には、民族を救済してくれた「ユダヤ民族の救済者」を称えるイベントを開き、感謝を表明している。 

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万能細胞が蘇らせた「再生」への願い

世紀の大発見と呼ばれた万能細胞「STAP細胞」 を記述した論文に問題点があるとして理化学研究所の小保方晴子さんらがまとめ、 英科学誌ネイチャーに掲載された論文の撤回問題が話題となっている。門外漢の当方は、 論文の真偽問題で再生医学への期待が冷めないか、と心配している。

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「教会は正直でなければならない」

イタリア日刊紙イル・フォリオは1日、先月27日の枢機卿会議でのヴァルター・カスパー枢機卿( 前キリスト教一致推進評議会議長)の開会スピーチの全文を掲載した。テーマは教会の夫婦・家庭牧会への新しい捉え方だ 。フランシスコ法王はスピーチを高く評価したという。同内容は今年10月の世界司教会議で協議される「夫婦と家庭」 に関する基本テキストと見なされている。 

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「日本の信者は教会の教えに無関心」

世界のローマ・カトリック教会の司教会議はローマ法王フランシスコの要請を受け、「家庭と教会の性モラル」(避妊、 同性婚、離婚などの諸問題)に関して信者たちにアンケート調査を実施したが、 日本のカトリック信者を対象に同様の調査が行われ、このほどその結果が明らかになった( 世界各国司教会議が実施した信者へのアンケート結果は今年10月5日からバチカンで開催予定の世界代表司教会議で協議 される)。 

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ベルギーの安楽死法は悪魔の囁き?

ブリュッセルのベルギー議会(下院)で13日、18歳未満の未成年者への安楽死を認める法案が賛成86票、反対44票 、棄権12票で採択された。同国上院は昨年11月、既に採択済みだ。フィリップ国王の署名を受けてから成立する。 同法案は安楽死の年齢制限を撤廃し、医者と両親、そして未成年者の3者の合意があれば、 18歳未満の未成年者の安楽死が合法化する。同国では2002年、安楽死法を採択済みで、安楽死は合法化されたが、 年齢制限があった。 オランダの安楽法では安楽死は12歳以上と年齢制限があるから、 ベルギーの新法案は世界で最もリベラルな安楽死法となる。 新安楽死法に対して、「未成年者は自身の病が治癒可能かどうか判断が難しいのではないか」「医者と両親が相談し、 未成年者の生命を一方的に奪ってしまう危険性が排除できない」など指摘する声もある。その一方、 治癒不能な病にある未成年者の中には「自分が家族の重荷となっている。死んだほうが家族のためになる」 と判断するケースが出てくるかもしれない。 同国の185人の小児科医が「未成年者への安楽死を合法化すれば、両親の苦しみを更に深めるだけだ」 と疑問点を明記した公開書簡を発表している。 安楽死法反対派にとって、フィリップ国王が署名拒否することを期待しているが、ベルギーでは70% 以上の国民が安楽死法案を支持しているという世論調査結果が報じられている。だから、国王の署名拒否は非現実的だろう 。 ベルギーでは2012年、1432人が安楽死を行った。その数は全死者数の2%に該当する。 オランダでは2012年は前年度比で13%増で4188人が安楽死した。その数は年々増加している。 ローマ・カトリック教会のベルギー司教会議議長レオナール大司教は、「新法は苦しむ人間への人々の連帯を葬るものだ」 と主張、安楽死法案に強く反対しているが、 聖職者の未成年者への性的虐待が多発した同国のカトリック教会は国民から久しく信頼を失い、 その発言は影響力を失っている。 同国では過去、治癒が可能な人が安楽死したり、安楽死と臓器献品が絡むケースも出るなど、 安楽死の現場ではさまざまな問題が出てきている。 なお、スイス、ドイツ、スウェーデン、エストニアでは医療による回復が期待できない患者の希望を受け入れて、 安楽死を援助しても刑法には引っかからない。安楽死を禁止している国からスイスに安楽死ツーリストが殺到し、 社会問題となっている。 安楽死問題は非常に難しいテーマだ。個々のケースを慎重に考えなければならないからだ。 無意味な延命措置は非人間的である一方、「生命の尊厳」という譲れない部分があるからだ。 人間は肉体的な存在だけではなく、霊的な存在と信じる当方にとっては、「生命の尊厳」とは、霊肉両面の尊厳を意味する 。霊的な世界がもう少し理解されるようになれば、 安楽死問題も別の観点で考えられるようになるかもしれないと思っている。 Editorial (オピニオン)国連記者室出典 ウィーン発『コンフィデンシャル』 2014年2月17日掲載Copyright ©2014.2.25許可を得て複製 

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やなせたかしさんは死んでいない

漫画家のやなせたかしさん(94)が13日、心不全のため亡くなったというニュースが入ってきた。やなせさんの漫画「アンパンマン」のビデオを楽しんで観てきた一人として寂しい思いがしたが、それは束の間で、「やなせたかしさんは亡くなっていない」という確信に満ちた思いが湧いてきた。アンパンマンを描いたやなせさんはわたしたちの前からは去ったが、生きている。 

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「魂は何か」問う車椅子の心理学者

ゲオルク・フラベルガー氏(Georg Fraberger)はウィーン市にある欧州最大総合病院AKHの整形外科に勤務する心理学者だ。フラベルガー 氏が自身の経験や生い立ちを書いた著書「肉 体なく、魂で」(Ohne Leib. Mit Seele)を発表した。同氏は1973年、ウィーンで腕と脚がなく生まれた。その後、通常の学校を通い、 心理学を学び、心理学者として患者のケアを担当している。39歳。4人の子供がいる。 

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人は偶然の所産ではない

ローマ法王べネディクト16世は6日、一般謁見で「人間は偶然や非理性に運命付けられた存在ではなく、知性と自由によって生きていく存在だ。その創造秩 序の中で人間は神の筆跡を認知できる。聖書は自然科学の教本ではなく、世界の基本と人間の存在を問いかけている。全ての存在の最終原因、最終基本は非理性 的、非自由、非知性的ではなく、自由、認識、知性、そして愛に基づいていることが分かる」「信仰的な人間は自然の中で神の筆跡を読み取ることが出来るが、 創造主の特性を正しく理解するためには神の啓示が必要だ。世界は創造者の精神から由来する秩序をもつ。そして人間はその精神の似姿だ。そして人間は独りで はない。他者との関係で生きる。他者との関係性は決して依存性や制限を意味しない」という。

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「相違点」から「共通点」への飛躍

ウィーン市庁舎前のクリスマス市場が先月17日、オープンしたことは既に報じたが、同市のメトロ新聞「ホイテ」 が今月5日報じたところによると、欧州最 大のクリスマス市場を管理している人がイスラム教徒だという。ホイテは写真付きでその人物を紹介していた。 イスラム教ではイエスの生誕日のクリスマスを祝 わないが、同イスラム教徒は「キリスト者の祝賀を共に祝いたい」という心情から2005年以来、市庁舎前の市場を管理 、運営してきたという。 

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