我が家に及んだ危機的妊娠

Valko, Nancy (ヴァルコ、ナンシー)
英語原文より翻訳: www.lifeissues.net

「選択」のためらいに直面しているのがまだ十代の未婚の我が子であっても、あなたはプロ・ライフで居続けますか?

「ママ、妊娠しちゃった」。

未婚でまだ十代の娘にこんな言葉をもらされたら、それはどんな親にとっても心臓がとまりそうなくらい恐ろしい瞬間となるでしょう。そして献身的なプロ・ライフであればあるほど、その衝撃は呆然とさせられるような驚き、羞恥心そして罪悪感に圧倒されるのです。「あの子は人の話を聞いていなかったのかしら?」「まさか私の娘に限ってこんなことがおこるはずがないのに!」「いったいどこで失敗したのかしら?」というのがよく見受けられる最初の反応です。

今年のクリスマスに私の18歳の娘が、二種類の自宅で試せる妊娠検査薬が陽性反応を示したと私にそっと言ってきました。聖母マリア様にちなんで命名したマリーは、長い間、私にとって「心配な子ども」でした。反抗的な十代のもろい皮が、長い間やわらかくて傷つき易い心を覆い続け、それが絶えず程度の差こそあれ、衝突や言い争いにつながっていました。大学での成績が平均で「B」だったことや、彼女が一生懸命働いている様子をみているうちに、私は最悪の時期は過ぎたのだと実感することができました。彼女は自分が恋をしているようだと打ち明け、その強烈なまでの感情がもたらす重圧や誘惑について私たちは話し合いました。世慣れしていてはっきりした性格なので、私は、娘は「安心」と信じていました。けれども、他の無数の親たちと同じように、純潔が欠陥であり、古臭い理想であると考えられるような世界に私の娘もいることに、私は気づかされたのでした。

あの涙と恐怖の夜にあって、ただ一つ救われたのは、マリーが中絶をまったく選択肢の中に入れていなかったことでした。「ママ、自分の子どもを殺すことなんて私にはできないわ!」娘の妊娠ですっかり悲嘆に暮れていましたが、中絶という「選択」を拒否する勇気と常識を持った我が子を誇りに思わずにはいられませんでした。 驚いたことに、彼女の友達はみな中絶することに反対していて、プロ・チョイスを支持しつつある友人たちも、自分の立場を今一度考え直しているというのです。そのうち二人の子達は、娘が中絶なんかしないと言い出す前に、実際に中絶をさせないようにと脅したというのです。

私たちはその夜、あるいはその後においても、すべてを解決できたわけではありません。養子縁組に出すのか、あるいは、赤ん坊を育てるのかはいまだに大きな問題であり、祈り、熟考そして論議がこれからもたくさん必要です。決して簡単ではありませんが、それでもこの危機に共に直面することは、私たちにすでに多くのことを教えてくれました。マリーとその子どもにどんな未来が約束されているのかはわかりませんが、それでも祈りと愛がありさえすれば、二人にとって明るい未来が期待できると思います。

よくある固定観念

1988年1月のあるニューヨーク・タイムズ紙の「女性の多くが中絶と政治の関連性を見出さず」という記事は、よくある固定観念を不朽のものにしています。つまり、プロ・ライフの人も、危機的妊娠が我が家に及んだ場合には中絶を選ぶというものです。記者のタマール・レウィンは、「ありとあらゆる中絶クリニックのカウンセラーのほとんどが、常に中絶に反対してきたのに自分の立場になると人は変わること、あるいは自分がずっと反対といい続けてきたそのクリニックに、自分の妻や十代の娘を連れてくる男性の話など、いくらでもあります。」と述べています。

しかしプロ・ライフ運動に活動的な人々と話をしてみると、彼らはもっと違った見方を暴露してくれます。驚くまでもなく、全く見ず知らずの人を危機的妊娠から助けようとするプロ・ライフの人々は、同じ危機に直面する自分の息子や娘にも手を差し伸べて支援しようとしています。

「あなたの娘が妊娠したと告白する日は、あなたの人生の中で最も暗い一日になると思うでしょう?」と長い間プロ・ライフ活動に積極的にかかわってきたルーシーRは言います。彼女の声が微笑みかけています。「でもそれは本当はものすごくありがたい幸せの始まりなのです。この6歳の少年は私たちのいのちの光なのです。」彼女は祈りと中絶反対の主義を幸福な締めくくりに添えました。

ジャネットBは、自分の妹が両親に知らせることなく中絶したと告白したとき、まだ若い社会人でした。両親ともプロ・ライフを強く支持していましたから、「(未婚の妊娠を)きっと受け入れられない」と妹は確信していたのです。

ジャネット自身が未婚で妊娠したとき、両親は彼女の最大の味方になってくれました。「ずっと近くに感じられるようになりました。」と彼女は言います。「妹は間違っていたのです。」とも。国中のプロ・ライフを支持する人々にインタビューしてみると、危機的な妊娠に対するこのような家族の支えは一般的であって、例外的なことではないのがわかります。

登録看護婦のマーシャ・ブテリンは、ミズーリのナーシズ・フォア・ライフの創設者でもあり、過去25年間プロ・ライフ活動に積極的にかかわってきました。彼女は危機的妊娠に直面した子どもを持つプロ・ライフの親たちをたくさん見てきました。「伝染病のように思えることが時々あります。」と彼女は言います。「プロ・ライフの人たちは、社会のその他の人々が何をしているかということに免疫がないのです。」

けれども、自分の子どもが性的に活動的であったと知った時の心痛にもかかわらず、彼女が見てきた親たちの反応は決まって自信過剰のものであると言います。さらに、このようなケースのほとんどにおいて、若い女性たちは赤ん坊を養子縁組に出すのではなく自分で育てたいと言います。これは未婚女性の90%以上が自分の子どもを育てているという統計にも反映されています。そしてこれはほとんどの母親が養子縁組を選択した一世代昔とほぼ反対の状況なのです。つまり、プロ・ライフの人々は、妊娠中の自分の娘や息子を支えているだけではなく、たいていの場合、自分たちの孫の育児までも協力していることになるのです。

プロ・チョイスの衰え

プロ・ライフの人たちが自分の未婚の子どもに対して、形にはまって中絶反対に見えるだけでなく、社会も中絶と未婚者に対する態度をゆっくり変えつつあるようです。ニューヨーク・タイムズとCBSニュースが行った最新の世論調査によると、必要に迫られた中絶の支持が1989年より約8%減少しただけでなく、妊娠によって女性の職業的地位や教育が妨げられる場合の中絶に対する世間の支持も、それぞれ14ポイント、8ポイントと下がっているのです。アンケートに回答した人々の大多数は明らかに、これらの状況を正当な中絶だと感じないのである。

プロ・ライフ感情の新たな波が、まったく思いがけない場所で押し寄せています。つまり、ローの影の下で成長した若い人々の間においてです。先ほどのNYTとCBSの世論調査では、18−29歳では必要に迫られた中絶に対する支持(229%)は、一般の人々のそれより(32%)も低いのです。「家族計画」の調査機関であるアラン・グートマッハー協会は、「ここ数年、妊娠した十代の若者たちは、中絶をあまり選択しなくなってきている」点に言及しています。マスコミさえも注目し始めています。1月21日付けのニューヨーク・タイムズ紙の「中絶に対抗する新たなジェネレーション」という記事の筆者ローリー・グッドシュタインは、ロック・フォア・ライフコンサートに参加していた幅広い層の若者グループにインタビューをしたが、刺青やパンク調の格好をした若者たちの中にも情け深く、プロ・ライフを強く支持する人たちがいたことを発見しています。  なかには、友人を自殺、薬の過剰投与や事故で失ってから、いのちの価値について考えるようになったと語る者もいました。

グッドシュタインは、また、彼女がインタビューした多くのコンサート会場の若者は、自分たちでいのちを守る権利を主張する立場に行き着いて、首尾一貫した態度をとるため、死刑や自殺幇助には反対し、禁欲を支持している点を強調しています。

ロック・フォア・チョイスや中絶の権利を守るために資金を集める他のグループとは反対に、ロック・フォア・ライフは音楽という強力な影響力をもつ媒体を通して、若者の心をつかむという比較的最近の現象です。コンサートの主催者であるブライアン・ケンパーは、すでに15のコンサートが開催され、110のバンドが「資金集めのためにすすんで演奏している」とグッドシュタインに語っています。ロック・フォア・ライフだけがプロ・ライフ運動と新しい世代と結び付けているわけではありません。ティーンズ・フォア・ライフは、1985年に始まった、いのちを守り地域社会の活動に参加することを奨励するために若い世代が運営する全国的な機関です。その支部は国中に存在し数もどんどん増えています。

もう一つの絶対的な兆候としては、プロ・ライフ・グループが、大学キャンパスにも次々と現れていることがあげられます。しかも宗教関係の大学キャンパスだけに限られず、プロ・ライフ・グループの存在に加えてインターネット上にウェブサイトまでもつ大学にはMIT、プリンストン、テキサス大学などがあげられるのです。

支えとなるもの、傷つけるもの

けれども傾向や統計は、突如として危機的妊娠に直面することになった個々の若い女性とその家族が望むものとは一致しません。突然の知らせへの両親や周囲の最初の反応が、女性にとっては極めて重要で、それによって生まれてくるはずの赤ん坊の生死を決定付けることにもなるからです。最初の反応が婚前の性交渉に対する怒りや厳格な小言であれば、若い女性は自暴自棄に陥り、絶望のあまり赤ん坊を消し去ることでみんなの気持ちが少しは和らぐのではないかと思い込んでしまいます。

若い男女の未婚の妊娠に対処しなければならない両親や友人たちは、どんな言葉をかければいいのか、あるいはその状況をどう解決すればいいのか確信をもてないことが多いのです。このような問題の手助けになるように新しく作られたのが、アメリカン・ライフ・リーグが作成した「最初の言葉、予期せぬ妊娠への最初の反応で子どものいのちを救えるか決まる」という題名のビデオとパンフレットです。

そのビデオには未婚で妊娠した4人の若い女性たちが、それぞれ友人や家族から違った反応を示される話が紹介されています。そしてその4人の若い女性たちは、周囲の反応が赤ん坊を中絶するかどうかの決断にどのような影響を及ぼしたかについて、それぞれ自分たちの言葉で述べています。またパンフレットの方は、キャシー・ブラウンという人が書いており、その中で著者は自分の体験を率直に紹介し、親たちのためになるアドバイスを提供しているものです。

だが、中絶をしないという決断をくだすのも、危機的妊娠の場合は単なる第一段階に過ぎないのです。赤ん坊を自分で育てるのか、あるいは養子縁組に出すのかどうかという決断も、若い女性にとっては最もつらい問題です。保険保護や胎児期保護について、また父親との関係を今後どうしていくのか、自分の他の子どもたちの反応についてなどは、実際的且つ目先の心配事のほんの一部です。生まれる権利や他のプロ・ライフを支持するカウンセリングセンターなどが、危機的な妊娠に悩む家族にとっては大いに役立つことでしょう。

一家の通う教会や地域の教会の人々も、必要とされる精神的、感情的支えを提供してくれることでしょうし、また新しいいのちの養育に地域社会を巻き込んでくれることもあるでしょう。

両親、特にプロ・ライフの両親が、当惑や敗北感を抱くことは一般的なことであるし理解できます。これらの感情を無視して息子・娘の気持ちや要求に集中することは困難です。しかし、長い間プロ・ライフ活動家で、自身も妊娠した十代の母親でもあるドナ・Bが言うように、「中絶こそが本当の失敗なのです。あなたの娘がいのちを選択したら、それは誇りをもっていいことなのです。」

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