家族の価値と安全なセックス

Trujillo, Alfonso L (トゥヒリ・アルフォン)
教皇庁家庭評議会議長
2003年12月1日
許可を得て複製
英語原文より翻訳: www.lifeissues.net

要点


はじめに

1。私がBBCのインタビューに応じヨハネ・パウロ二世のローマ教皇在任25年周年の前日にあたる2003年10月12日に放映された、とマスメディアは伝えている。あの時、私は30分以上にわたりさまざまな質問に回答したが、家族に関するものが主だった。しかし、驚くべきことにインタビュー全体からBBCのパノラマ番組『性とバチカン(Sex and Holy City)』で放映されたものはわずか3つの問題、それぞれ30秒にも満たなかった。わたしの答えははるかに詳しいものであったのだが。この番組は明らかに、HIV/AIDSの予防にコンドームの使用を認めないことが人々の死の一因になっているのではないかと、カトリック教会を意図的かつ計画的に批判しようとしたものだと思われる。

イングランドとウェールズの主教らは直ちにBBCに対しこの番組はもう1つの番組と同様に、カトリック教会に対する偏見と敵意に満ちており、多くのカトリック信者を怒らせている」と異議を申し立てた。「何十年間もBBCは、特に報道と時事問題に公正かつ客観的であるとの世界的評価を得て、それに値してきたし、またそれを享受してきた。しかし、その名声は次第に低下している。」(1)多くの人々や団体がこのBBCのパノラマ番組に不快感を表明している(2)。

あのインタビューで私は「安全なセックス」に警告を発し、「予防措置(prophylactic)」(3)としてコンドームを使用することは、HIV/AIDS(後天性免疫不全症候群を起こすヒト免疫不全ウイルス)ばかりでなく、他の多くの性感染症(STD)についてもその感染から客観的かつ完全に安全だとはいいきれない、と述べた。私は、この世界的感染症を抑制するには、責任ある性行為を推奨することが必要だと強調したのである。それは正統的な性教育で繰り返し教え込まれるもので、男女両性の人格を尊重し、異性を単なる快楽の道具であり「利用すべき」モノであるとは考えない。婚姻とは男女両性の相互的、排他的かつ完全な献身行為であるという前提のもとでは、そのような責任ある性行為は夫婦愛の中でのみ実現する、とも述べた。

従って、一部の自由放任的な政治的措置や一部のマスメディアに煽られたいわゆる無節制なセックス、乱交に反対する私の立場はきわめてはっきりしている。それだからこそ私は視聴者に、教会は信仰を持つ者であれ持たない者であれすべてにかなう道徳的立場を教えていることを想起させたのである。また、各国保健省はタバコで行っているように、コンドームによる保護が絶対的なものではなく、実際にはかなりのリスクがあることをラベルに記載するよう提案もした(4)。

HIV/AIDSやSTDにはコンドームによる予防が十分でないことを強調するため、私は科学的調査の結果から示唆されるコンドームの透過性も引用した。AIDSウイルスが精子細胞の450分の1以下の大きさであること、さらにはさまざまな要因でコンドームの構造やその実際の使用にもたらされるその他の危険を考えると、そのような問題にも注意を払わねばならない(5)。

AIDS予防プログラムでコンドームを用いることについてカトリック教会側からの批判

2。カトリック教会は、AIDS予防の完全に有効かつ十分な手段としてコンドームを奨励しているプログラムを繰り返し批判してきた。世界いずれの地域の司教協議会もこのプログラムに関する懸念を表明している。南アフリカ、ボツワナ、スワジランドのカトリック司教協議会は、「無秩序に拡大するコンドームの使用奨励は、次の理由からHIV/AIDSと戦う我々にとって非道徳的で見当違いの武器であるとはっきり見なしている。*コンドームの使用は人間の尊厳に反する。*コンドームは愛という崇高な行為を身勝手な快楽追及の行為に変え、一方で責任を回避させる。*コンドームはHIV/AIDSの予防を保障しない。*コンドームはHIV/AIDS拡大の大きな理由の1つにさえ挙げられる。コンドームの品質の悪さや誤用の可能性は別としても、コンドームが一因となって自制する心や互いを尊重する心が薄れている(6)。

スペイン監督教会派協議会の家族と生命に関する小委員会は、HIV/AIDSを予防するというスペインのコンドーム普及運動を次の三つの理由できわめて無責任としている。「それは人を誤解させる。情報を隠蔽する。予防に貢献せずむしろ危険な行為をいっそう広める。なぜならば、保健衛生当局が伝染病の原因である行為やライフスタイルを承認することになるからです。」(7)

フィリピンのカトリック司教協議会は、HIV/AIDSに感染した人々との出会いは恩寵の時であるべきだが(われわれにとって、かれらにとってのキリストの慈悲深き存在であるとともに、かれらのなかに神の存在を体験する機会でもある)、しかし、HIV-AIDS問題の道徳的次元で、コンドームを配給してこの問題に取り組むことには、われわれはきわめて否定的な見解を取らざるを得ない」さらに、「避妊と同様にHIV-AIDS感染予防にコンドームを使用することは絶対安全な方法とはいいきれない」と述べている(8)。

以前にも、米国の司教たちは1987年の宣言で次のように断言している。「婚姻外の禁欲と婚姻の貞潔は、麻薬中毒の静脈注射回避と同じで、唯一の道徳的に正しく医学的にも確かなAIDSの広がりを防止する手段である。いわゆる安全なセックスはせいぜい部分的効果しか期待できない。米国科学アカデミー(NAS: National Academy of Sciences)がAIDS研究でいうように「より安全な」セックスという用語を使えばまだ正確であろう。なぜならば、未知の要素が多すぎて、それが何であれ特定の行動を絶対に安全であると認定することは無責任だからである。」(9)

3。教会の立場とその背後理由はすでによく知られている、と私は考えている。私が特に心配するのは、ことに若い人々がコンドームによる予防は完全であると思い込まされており、実際にはそのような完全な予防は存在しないことである。世界的流行の大きさを認識し、同時に道徳的なものと単なる保健衛生的なものの異なってはいるが補完しあうレベルを支持することで、私は、この世界的流行が継続的に拡大することを抑止する必要があることのみならず、コンドーム使用者が罹患するはずはないと考え、その誤解が今まで致命的な結果をもたらしてきたそのような人々を伝染病から防ぐ必要のあることを、声を大にして叫びたかった。

自分の性関係を衛生上の観点から見ればまったく安全だと考えているにもかかわらず、汚染リスクのある人がいる。いったい何人がこのような誤りの犠牲となっているだろうか。彼らがもっと正しく客観的な情報を得ていたら、少なくともある程度は異なった行動をとっていただろう。実際コンドームが役に立たないという正しい情報を発信する多くの情報源は公的なものだが、もちろん宣伝は行き届いていない。このような議論によって、人々が伝染を防ぐという点でコンドームの有用性にある程度疑うようになっただけでも折りよく役に立った、と私は考えている。AIDSが広がっているところほど「安全なセックス」キャンペーンと大量の避妊具の配布によって乱交への誘いが行なわれたのだが、感染の問題はいっそう深刻になってしまった理由を読者はまず何よりも考えてみる必要がある(10)。

これらはまさに、さまざまな情報源から集めた情報の助けを借りて、私がこの省察で検討したい点である。これら事項について国際的に知られた権威ある人々や機関の専門知識や技術を疑う理由は私にはない。教会の立場は真に人間的かつ責任のあるものである。すなわち、人間の自由と尊厳を十二分に重んじるよう呼びかけている。ことに貧しい国々で家族は病んでいる。家族や青年が往々にして誤った情報を与えられ、偽りの安全を与えられているという事実は、もはや見逃すわけにはいかない。私がこのような省察を行うかどうかは、それが家族と出産の間に密接な関係があり、家族に関係してコンドームやその他の避妊具に言及する問題で私どもの担当領域になることから明瞭なことである。教皇庁家庭評議会の任務を記述して、使徒教憲PastorBonus(良き牧者)は「社会の場でも政治の場でも家族の権利が必ず認識され、かつ守られるように努めること」としている。また、「受精の瞬間から人の生命を守り、責任ある出産を勇気つけるための率先を支持し調和させる。」(11)

教皇がいわれるように、「神が作り給うものを恥じてはならない」。神が作り給うものを恥じてはならないのみならず、それを守らなければならない。なぜならば、神がつくり給うものはすべて善であるからである。人間のセックス、夫婦の愛、責任、自由、健康。これらはわれわれが大切にしなくてはならない神の賜物である。

コンドームはHIVやSTDの伝染を完全には防止できないことを示す研究で提起された道徳主導者たちの懸念

4。私は先ほど次のように述べた、教会の立場と私の主張の根拠はすでによく知られていると思うと。とは言うものの、この立場は十分には、まだ十分に知られていないのかもしれない。科学的な観点がコンドームメーカー側のある種の経済的利益や、「産児制限」に沿った貧者に対する権力側の「イデオロギー」と結び付けられる具体的なキャンペーンで明らかなように。

よく知られた権威ある道徳主導者、ディオニージ・テッタマンチは、今はミラノの枢機卿に就任しているが、これらの問題と取り組んで、2000年に『キリスト者の新しいバイオエシックス』という何巻にも及ぶ書物を著した。コンドームを予防具として使った場合、いわゆる「安全なセックス」を保障できない理由を同枢機卿ははっきり示し、次のように述べている。(イタリアの)保健省は、AIDSと戦う全国委員会(National Commission)を通じて、次のような情報を子ども、若者、その他利害関係者によく提供している。「付けていなければ感染の確率は高くなる。だから、パートナーを信じられないときには、必ずコンドームを使え」と(12)。しかし、コンドームは果たして感染を食い止める効果的手段なのだろうか。もっと批判的な考えが必要である。

a)第一に考えることはコンドームの衛生具としての性質である。コンドームは性交渉で感染させることを防ぎ、感染されることを防ぐ「防御」手段として、つまり「障壁」として用いるべきだと言われている。ここで問題となっているのは自分の健康(と生命)と相手の健康(と生命)を守ることであり、この防御手段とか障壁との実際の効果を正確かつ決定的に分析しなくてはならない。

「特に考えられる効果には二つのタイプがある。その一つは「技術的」効果である。いつからコンドームは感染のリスクを「防止」することになったのだろう。学者の間では、コンドームが実際には100%安全でないということは誰もが認めている。AIDS ウイルスは精子よりもずっと「透過力」が高いので、平均的には10〜15%の失敗率とされている(13)。従って、有効性の「技術的」レベルにおいてさえ、コンドーム・キャンペーンの科学的な重要性、ひいては職業倫理のまじめさが問われるはずである。実際には安全でないのに、あるいは考えられたようには安全でないのに「防御できるから安全なセックス」を宣伝して人を「だます」という大きなリスクが存在する。「危険な」人々、つまり乱れたセックス関係にふける人たちが(パートナーにも、さらには現在のあるいは将来の子たちにも)感染を広げないようにする義務がますます重くなっているときに、このような幻想はますます危険で深刻なものとなってくる(14)。

5。もう一人のイタリアの道徳主導者、エリオ・スグレッチャは、司教でもあり現在教皇庁生命アカデミー副会長を務めているが、コンドームの無料配布にのみ頼るキャンペーンは「人を惑わすどころか、逆効果で性の乱用を招く。いずれにせよ、それらは真の人間性を欠き、全体論的にも責任ある行動にはつながらない」と述べている(15)。これらの問題に取り組む道徳主導者や専門家は多数にのぼり、リノ・チッコーネやジャック・ソドをはじめ、そのなかかの何人かの説を本論でも引用する。

テッタマンチ枢機卿は、さらにこの説を推し進め「安全なセックス」キャンペーンを国家が組織的に推進するのはまったく容認できない、コンドームは感染に対する「障壁」としては効果がなく、特に性行為に無責任に使用される危険があるためだ」と言う。例えば兵士にコンドームを与えたとしよう。兵士は感染を避けるべきだということは理解するが、同時にどのようなセックスも正当だと考えるようになるだろう。このような配慮には、個人の選択の自由に対するリスクも考えておかなくてはならない。「安全なセックス」キャンペーンは、コンドームの効果に関する幻想を振りまくのみならず、青少年や一般大衆に不当な圧力を加え、詐欺にも等しいものとなる(16)。(中立性を標榜する)国家が積極的に避妊具を宣伝し普及することを認められる一方、貞潔の価値(衛生的の理由も含む)について教育的なキャンペーンを行おうとすると、宗教的と非難されるのは何と矛盾することだろう(17)。

教会関係以外から出される同様の懸念

6。コンドームがAIDSやSTDを完全には防ぎきれないという懸念はことさらに新しいものではなく、教会関係に限られているものでもない。ヘレン・シンガー・カプラン博士は、カーネル大学ニューヨーク・ワイル・カーネル医療センターで「ヒューマン・セクシャリティ」講座を始めた人であるが、その著書『女性とAIDSについての真実(The Real Truth about Women and AIDS)』で「コンドーム依存は死と戯れることだ」と述べている(18)。あるオランダの医学雑誌も、「患者を診ればHIVと妊娠の両方の防止が緊急に必要なことは分かっている。残念なことにそれはコンドームではできないことに人々はまだ気づいていない」と述べている(19)。1980年代および1990年代には、コンドームによる予防は完全かという疑問がラテックスの電子顕微鏡的検査の結果提起され、AIDSウイルスは精子細胞頭部の約25分の1であり、精子細胞の長さの450分の1以下であり、梅毒菌の60分の1以下であるという事実に関心が集まった(20)。

1987年には『ロサンゼルス・タイムズ』が、「コンドーム業界、連邦による研究の中止を要請」という記事を掲載した(21)。同紙は、「コンドーム業界は、連邦が資金を出してロサンゼルスで行っているコンドームのAIDSウイルス感染予防効果の研究を縮小、遅延、できれば停止しようとする強力なキャンペーンを開始した。この研究はヒト免疫不全ウイルス(HIV)の拡散を確実に防止するコンドームの能力について提起された一連の疑問の結果、新たな緊急性を帯びていた」と書いている(22)。2年後に同じ記者が、「大手コンドーム4銘柄が臨床テストでAIDSウイルス漏れ」という記事で、「わが国の最大手コンドームブランド4種が、UCLAが行った実験室試験でAIDSウイルス洩れをおこした。そのため、消費者にコンドームすべてがAIDSの感染防止に等しく役立つものではないと考えるべきであると研究者が警告することを迫られている。何千というコンドームをテストした結果、そのうちの0.66%(200個に1つ以上の割で)に水漏れあるいは空気漏れ、引っ張り強さテストでの破れ、またはAIDSウイルスの漏れが検出された」と書いている(23)。

種々の研究を総合して、ジョン・ウィルクス博士は2003年11月17日付け『オーストラリアン』紙の寄稿記事で次のように述べている。「1989年『ロサンゼルス・タイムズ』紙によると、UCLAが行った実験室試験では米国の4大ブランドのコンドームがAIDSウイルス漏れを起こしている。ケアリーおよびその他(『性感染症』1992年)は、性交のシミュレーションで、HIV程度の大きさの粒子は、市販のラテックス製コンドーム89のうち29を透過したと述べている。フェラー(『AIDS研究とヒト・レトロウイルス』1994年)は、試験室環境では製造後の期間も異なるさまざまなブランドのコンドームでウイルス程度の大きさの粒子の漏れが0.9%〜22.8%の率で生じている、と述べている。ライトルその他の実験で(『性感染症』1997年)では、ラテックス製コンドームのうち2.6%がある種のウイルスを透過させている」。もうひとつの研究によると、「TROJAN」ブランドのコンドームからとった膜サンプルのうちまったく欠陥がないといえるのは30%だけである(24)。

また、ある英国の新聞は次のように伝えている。「世界保健機関は、「継続的に正しく」コンドームを使用していればHIV感染のリスクを90%減らすことができるという。コンドームには破損や漏れの可能性がある」(25)国際家族計画連盟はさらに高い失敗率を示し、次のように述べている。「コンドームの利用は、使用しない場合と完全な禁欲の場合の間にあり総合的リスクを約70%まで減少させる。この推定はたいていの疫学的研究の所見と一致する。」(26)

これらの数字から推定される10〜30%という失敗率は、AIDSのような致死性の疾病を考えると、また特にAIDSの性交渉による感染を完全に防止する代替的手段、すなわち婚前禁欲と貞潔が考えられるとき、比較的高いと言わなくてはならない。

AIDSの脅威は深刻で、予防具として用いるコンドームの安全性を誤認した不適切な情報は、はなはだしく無責任なものとなる。一般大衆の利益のためばかりではなく、AIDSその他性感染症の流行を防止しようとする真摯かつ多大な努力を支援するためにも、一切の曖昧性と混乱を排して正しい情報を明確かつ包括的に提示する継続的努力が求められる。

ワークショップ概要コンドームの性感染症(STD)予防効果についての科学的証明

8。上に述べた医学的文献等は、コンドームの性感染症予防に種々の疑問を投げかけている。事実、2000年6月12〜13日にはコンドームの研究、規制、使用奨励、HIV/AIDSおよびSTD予防プログラムを担当する米国政府の4機関が、まさに「ラテックス製男性用コンドームのHIV/AIDSおよびSTD予防効果を立証している公表済み証拠を値踏みする」ためにワークショップを共同で開催した。4機関とは米国国際開発庁(USAID)、食品薬品局(FDA)、疾病対策予防センター(CDC)、国立衛生研究所(NIH)である。ワークショップの概要『コンドームの性感染症(STD)予防効果についての科学的検証』は国立アレルギー感染病研究所、国立衛生研究所、保健社会福祉省によって、後の2001年7月20日に公表された(27)。

このワークショップは、「ペニスと膣性交におけるHIV/AIDSおよびSTD予防のためのラテックス製男性用コンドーム」に焦点を当てている。「STD、尿生殖器解剖学、避妊、コンドーム、行動科学、疫学、内科学および公衆衛生」の専門家を含めた主催機関の代表者と外部の専門家が審査員団を構成するために招集された。「ワークショップは、同領域の専門家たちが評価した文献(全138ページ)を審査しただけであったが、これらの研究は公表前に第三者による科学的評価を受けることになっていたからだった。」さらに『ワークショップ概要』には別に42の文献が引用されている(28)。

この『ワークショップ概要』は、入手可能な科学的証拠はコンドームでHIV/AIDSのリスクが85%減少したことを示した、と説明している(29)。つまり、まだ15%のリスクが残っている。

このワークショップは特にその他の性病の感染も取り上げており、これらの研究は、コンドームの利用でまったく防止できないか、ある程度の防止しか得られないこと、あるいはコンドームによるリスク削減についてはデータが十分でないことがわかった、といつもと変わらない結論を出している。研究対象となった疾病は、淋病(淋菌Neisseria gonorrhoeaeが起こす)、クラミジア感染症(トラコーマ病原体Chlamydia trachomatis)、トリコモナス症(膣トリコモナスTrichomonas vaginalis)、生殖器ヘルペス(単純ヘルペスウイルスHerpes Simplex Virus=HSV)、軟性下疳(軟下疳菌Haemohilus ducreyi)、梅毒(梅毒トレポネーマTreponema pallidum)(30)。ヒト乳頭腫ウイルス感染症(HPV)はさらに注目を浴びたが、結論は明確で、「コンドームの使用がHPV感染症のリスクを減らすという証拠は何らなかった」というものだった(31)。HPVは子宮頸ガンを伴うきわめて重大なSTDで、米国ではHIVよりも多数の女性を死に追いやっている(32)。

従って、コンドームの利用でHIV/AIDSあるいはその他のSTDを100%防ぐことは、今日では不可能である。青少年を含む多くの利用者がコンドームは完全に安全だと考えているので、このデータは見逃しておくわけにはいかない。

『ワークショップ概要』で示されたこのような所見に関連して、カトリック家族および人権研究所(Catholic Family and Human Rights Institute)は『医師団、コンドーム隠蔽工作で米国政府を非難(Physicians Groups Charge US Government withCondom Cover-up)』という報告書を作成し、「コンドームがほとんどの性感染症を防ぐものではないことを示す政府自身の研究を米国政府の疾病対策予防センター(CDC)が隠蔽していることを、10,000人以上の医師を代表する複数のグループが非難している」と述べている。この報告書によると、これらのグループは次のように述べている。「CDCが組織ぐるみで隠蔽し、コンドームのSTD感染予防効果に関する重要な医療情報を虚偽表示した。CDCの臨床研究の確認拒否がSTDの大量感染を招いている。」(33)

8。『ワークショップ概要』(34)の後、ある記事でワークショップパネリストのうち4名が他の専門家とともに、用語の定義(35)、リスク予防(絶対的保護、全面的保護)とリスク低減(部分的保護)(36)、蓄積リスク、コンドーム効果に影響を与える要因(37)、および公衆衛生との関係などこのワークショップで生じた問題点をさらに分析している。

彼らの記事では、フィッチらが累積的リスク要因はきわめて重要であると強調している。「例えば1度の交接で99.8%安全な性交であっても、100回性交すれば失敗の確率は累積されて18%にもなり得る。」(38)同様に、国際家族計画連盟(IPPF)の記事によると、「いわゆる「保護されたセックス」でAIDSに感染するリスクは性交渉で挿入回数が増えるにつれて100%に近づく」(39)。IPPFはあらゆる形の「産児制限」を奨励している。

従って、1回ごとのコンドーム使用リスクだけではなく、その連続使用についても考慮しなければならない。リスクは長時間になると劇的に増大する。これは安全なセックスという危険な賭け(ロシアンルーレット)がコンドーム使用の反復でさらに深刻さを増すことを意味する。

コンドームの失敗と妊娠

9。コンドームのHIV/AIDSおよびSTD感染を予防するコンドームの効果におそらく一番関係あるものは避妊効果である。WHOは、コンドームを完璧に使用しても妊娠をいつも防げるとは限らない、と説明している。「コンドームを完全に使用している間の推定妊娠率、すなわち性交渉のたびごとに(継続的に)使用すべき(正しく)ように正確な方法で使っているという人々の推定妊娠率は12か月で3%である。」(40)言及するまでもないが、一般的にはコンドームが完全な方法で使用されることもあるし、不完全な方法で使用されること(性交渉のたびには使用しない、または正しくない使用)もあり、避妊の効果はずっと低くなる。「一般的に使用される場合の妊娠率は完全な使用の場合よりもずっと高く(10〜14%)なるが、これは主として継続的に使用しない、あるいは正しく使用しないためで、コンドームの破損によるものではない。」(41)

確かに、コンドームを使用したにもかかわらず妊娠したという記録はたくさんあり、避妊率(pearl index)は使用後最初の1年以内に、年間100人の女性の中で15回か15人程度が妊娠している(42)。コンドームの使用にもかかわらず妊娠の可能性があるとするならば、発症原因となる組織が精子細胞や精液に、またその他コンドームに覆われていない皮膚の表面などについてくることを考えると、コンドームがHIV/AIDSおよびSTDの感染を防げないとするのが当然ではないだろうか。さらに、女性は受精可能期間(精子の子宮内生存期間を考慮して一性周期に5ないし8日)でなければ妊娠しないが、HIVやSTDはいつでも感染することを考慮しなければならない。

コンドームの破損とラテックス材

10。コンドームの欠陥を指摘する研究で上記のような考察は、理論上の議論にとどまらない。コンドームには欠陥があるということは理論だけにとどまらず、現実世界の現実生活経験で確認された事実である。コンドームが理想的あるいは完全な状態であれば、つまり表面にまったく傷がない場合、理論的にはラテックス材がHIV程度の大きさの粒子の透過は高い確率で防止できる、おそらくこのように考えられるであろう。しかし、コンドームとして流通する品目でラテックス材の実際の状態となると、状況はまったく変ってしまう。

例えば、ある種の透過テストや電気的なテストでは、ラテックスはHIVよりも大きな粒子を通してしまうことがある(43)。同様に、米国食品医薬品局ウェブサイトの1998年の記事で見ることができるように、コンドームの孔や弱い箇所がテストで発見されることがある。「米国のコンドームメーカーはすべてのコンドームを孔と弱い箇所について電気的に検査している。加えて、FDAは漏れについてコンドームのバッチごとにサンプル試験で水試験を行なうよう、メーカーに求めている。試験で1,000個につき4個以上の欠陥が見つかれば、そのロットは全部処分される。FDAは国際標準化機構(ISO)の仕様に従って定めた破裂テストのサンプル試験を製品に実施するようにメーカーに奨励している。」(44)コンドーム1,000個のバッチごとに4個の漏れを許容するならば、世界全体では何百万個という漏れのあるコンドームが販売ないしは無償供与という形で流通していることになり、確実にHIV/AIDSおよびSTDの感染に一役買うことになる。一般大衆はこその事実がわかっているだろうか。前述のような累積リスク要因を考慮すれば、セックスの回数が増え、乱交的になるにつれ、リスクが増大することを知っているのだろうか。

長年大きなリオデジャネイロ大司教管区の大司教(現在は名誉大司教)を務めたEugenio De Araujo Sales枢機卿は、多くのロットのコンドーム(有名ブランドを含む)が1999年、2000年、2003年にさまざまなテストで不合格となり、または偽造品が発見されてブラジル市場からリコールされたことを最近新聞に述べている(45)。サレス枢機卿によると、例えば1999年のリコールは、ブラジルで第3位の有力ブランドコンドームであるプルーデンス1,036,800個が含まれていた。リコールの理由はインメトロ(Inmetro:認定機関)、政府の開発・商工省が実施した試験に通らなかったためであった。同枢機卿が行ったこのようなコメント以前にも消費者グループCivitasInternationalが、「1991年、ブラジル消費者保護協会(IDEC:Institute of Consumer Defense)は、ブラジルの7大コンドームメーカーのうち5社(トップブランドのJontexを発売するジョンソン&ジョンソンを含む)が国際安全性テストで不合格となったと報告する研究を公表した」と述べている(46)。

11。コンドームは製造上の欠陥の他にも、発送、取扱い、貯蔵の段階で劣化することがあり、また、エンドユーザーが購入してからさらに劣化する。日光、熱(ポケットや財布に入れているときの体温)、湿気、圧力、ある種の殺精子薬、または大気中のオゾンでさえも、これらの要素に曝されると多かれ少かれラテックスが劣化すると言われている(47)。その他、コンドームは、爪のように尖った鋭いものに触れて装着直前あるいは装着中の最後の瞬間まで物理的に傷つくことがある。

米国食品医薬品局(FDA)のウェブサイトは次のように警告している。「消費者はコンドームの包みが傷ついていないか確かめ、使用のために広げるときに損傷はないか確実にコンドームを一つ一つ調べること。コンドームが粘ついていたり、もろかったり、色あせしたり、穴が開いていれば使用しないこと。また、使用期限後のコンドームは使用しないこと。使用期限の表示がないものは、製造後5年以後は使用しないこと。コンドームには水ベースの潤滑剤(例:グリセリン、KYゼリー)のみを使用すること、石油ゼリーのような油ベースの潤滑剤は天然ゴムを弱める。」(48)このような警告が存在するならば、実際の危険が存在するからに違いない、この場合は生命を脅かす危険、それを軽々しく考えるのは無責任であろう。

ポリウレタンのような他の素材から作ったコンドームもあり、「精子やHIVウイルスに対する障壁としてはラテックス製コンドームに匹敵する」。天然の膜を使った(羊の皮)コンドームは、「避妊には役立つが、HIVやその他の性感染症を防ぐことはできない。精子は羊の皮を透過することはできないが、HIVなどの微生物はこれらのコンドームを透過してしまう」(49)。

血清(検査)不一致のカップルの場合にも、医学的観点からは、コンドームは実際の解決策にはならない。コンドームを着実に使用する者の間にも、HIVの感染が起こりうる(50)。『ワークショップ概要』は次のようにも述べている。「(他にHIV/AIDSリスク要因のない)一定のパートナーとの性交渉によってもHIV/AIDS感染の危険がある。HIVプラスの者によってHIVマイナスの性交渉相手が感染するケースの長期的な研究により、コンドーム使用者および非使用者間のHIV/AIDS発病率を予測することが可能となっている。この二つの発病率の推定から、コンドームを継続的に使用するとHIV/AIDS感染リスクを約85%減らすことができる。」(51)「安全なセックス」をさらに奨励するため、コンドームの二重使用を主張する者もいるが、上述のようにさまざまな要因を考慮すると、その有効性には疑問が残る。(52)

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