「食の砂漠」高齢者のむ

Shimokawa, Masahiro (シモカワ マサヒロ)
下川匡洋
2012年9月5日、6日掲載
出典 ラグナベイの風に吹かれて
許可を得て複製

人口減少による過疎化と高齢化に直面する我が国の地方においても、生活インフラの弱体化問題は対岸の火事ではない。 2010-2020年において、人口の減少率は人口が少ない地域ほど高く、 過疎と高齢化は一緒に進むものであることがわかっている。日本国内でも、 交通手段を持たないお年寄りらが生鮮食品を食べられなくなる「フードデザート(食の砂漠)」が広がっているようだ。 大型店の郊外進出や車社会化で、中心市街地の商店が廃業していることが、「買い物難民」の増加を深刻化させている。

県庁そばの佐賀市城内1丁目。買い物帰りの女性(88)が運転手に一礼し、車を降りてきた。手には、 夕食用の鮮魚5匹とトイレットペーパー。週に1回程度、3人の手を借りて病院と買い物に行く。 まず整形外科へ息子の妻が車で送り、県庁北のスーパーへはタクシー。その後、 スーパー近くの亡夫の会社事務所で社員の営業車を待ち、家まで送ってもらう。 いずれも自宅から半径1キロも離れていないが、ひざが悪く、荷物を抱えると歩けない。「この地区で一人暮らしは無理。 一人になれば、施設に移るしかない」この地区には1985年まで、スーパーがあった。経営していた女性(78) も今は買い物難民だ。

夕食は宅配弁当サービスを利用。朝、昼は保存の効く粉末スープやイワシ缶詰を食べることも多い。 72年に開いた40坪の店は肉や野菜も扱っていた。日に40万円を売り上げたが、夫が体調を崩し、 大型郊外店に押されて、店を閉じた。「いかに大事な店だったかと、皆、無くなってから言うんです」市は昨年度、 市部の商店空白地の調査を始めた。赤松小学校区など県庁周辺で買い物難民が深刻化しているという。

「全国の地方都市で、商店街の空洞化などからフードデザートが広がっている」 と茨城キリスト教大学の岩間信之准教授は分析する。水戸市で調べたところ、 調査対象者の半数が生鮮食品店まで1キロ以上離れていたという。この言葉が生まれた90年代のイギリスでは、 外国人労働者や低所得層の問題だった。岩間准教授は「一人暮らしの高齢者が、 かつて家族と過ごしたリビングにカップ麺をため込む姿は悲痛だった。だが、コミュニティーがしっかりしているところは 、助け合えている。

行政・地域・企業が知恵を出し合うしかない」と話す。佐賀県は平野が多い。国勢調査によると、 人口集中地区居住者は28%(全国平均66%)と低く、居住者は郊外に散らばっている。県によると、 世帯あたりの自動車保有台数は80年に0.8台だったが、05年は1.6台で全国平均の1.5倍だ。 大型駐車場を備えた店舗が営業するには適している。公共交通機関の利用者も減り、バス会社は不採算路線網を縮小し、 車を運転できない高齢者がしわ寄せを受けている。

買い物難民を解消しようと、吉野ケ里町社会福祉協議会は2月、「食品・雑貨お届け事業」を始めた。 軽トラックに野菜などを積み、日替わりで40弱の地区を回る。1日に30〜40人が利用し、 仏前に供える果物や花も人気があるという。近く保冷車を導入し、肉や魚、牛乳も販売するつもりだ。担当者は「 軌道に乗せて、いずれ民間に事業を任せたい」。「移動コンビニ」は、幌を付けた軽トラック。パンや野菜などの食品、 洗剤や石けんなどの日用品を町内のスーパー「マルシェ」の協力で入荷し、値段は同店とほぼ同じとお得感もある。

対象集落を曜日と時間を決めて1週間に2度巡回。商品の販売とともに人が集まる機会をつくり、 地域の結びつきを強化することも狙う。巡回では音楽を流して来訪を知らせ、集落の広場に停車して営業。高齢者を中心に 、野菜やラーメンなどがよく売れるという。利用した76歳の女性は「車がないから助かる。値段も安くていい」 と感謝していた。だが、道のりは平坦(へいたん)ではない。

佐賀市が3月に中心市街地で実施した試験臨時店舗では、客はほとんどいなかった。試験に協力した店主は「 採算の合わない地区だから店が無くなった。そのままでは誰も営業できない」と話した。 そして最近の傾向として日本は猛烈な勢いで少子高齢化が進んでいるが、 その影響で今まで郊外の閑静な住宅街に住んでいた高齢者の都心回帰生活者が増加していることである。

郊外住宅団地の高齢化や居住者の減少が加速している。そして当該居住者を対象とした近隣商業店舗が不採算性から撤退、 閉店するケースが増え、買い物施設の消失を引き起こしている。近年になって都市近郊住宅団地では「買い物難民」「 買い物弱者」が増加しているのだ。経済産業者は全国で約600万人の買い物難民がいると推計している。 郊外住宅団地の買い物難民問題は1990年代半ばからすでに指摘されていた。

「首都大学東京の研究者が、多摩ニュータウンで初期に開発された2地区の商店街の変遷を調べ、 2008年に論文を発表した。それぞれ29の店舗と1つの食品スーパーで構成していたが、 2000年前後から青果店や精肉店、飲食店が消え始め、空き店舗が増加。スーパーは1つが閉鎖、 もう1つは経営母体が変わった。経営環境が急速に悪化したのはやはりここ10年だそうだ。」

このように社会問題となっている郊外住宅団地の買い物難民だが、 買い物難民の解決に向けた取り組みが全国各地で始まっている。 経済産業省報告書はその取り組を4パターンに分類している。

このような動きは、単身又は夫婦のみの高齢世帯が増え、高齢者の居住問題が深刻化している。 こうした方々が都心居住の予備軍となってきつつあるようだ。そしてまた都心居住の便利さの見直しなどなどが挙げられる 。この背景には、地価と住宅建設費の低下、少子化による資産効果などの経済的理由とともに、世帯の高齢化( 郊外居住の苦痛)、世帯規模の縮小など人口特性による理由や、都心の魅力向上、 都市コミュニティの復活など社会的な理由がある。

しかし一方で、都心回帰は医療、介護、身の回り品買い物、その他日常の生活利便施設の不足など、 都市により様々な問題を惹起している。これは何十年もの間、生活関連施設を郊外に移してきた都市政策の責任でもある。 郊外の居住者は高齢で車が利用できなくなると都心に戻りたがる傾向があるが、 皆が転出したがるために今まで住んでいた郊外の住宅地は資産価値が下落し、 都心への住み替えが難しくなっている例もある。

言葉を代えて言うならば高齢になり、食の砂漠化対策として買い物に行くことが出来なくなることを恐れて、 必ずしも都心でなくても、 最寄り駅に出来る限り近い場所に建設されたたマンションなどに引越しをする人が増えているようである。 高齢者にとって一番理想的なマンションは、駅まで1〜2分以内で行くことが出来るようなマンションであるか、 自分住んでいるマンションのエレベーターを利用して地下まで行くと、 そこにスーパーがあるようなマンションだそうである。

また病気になって病院に行く場合でも、最寄り駅が近くにあればどこに行くにも便利が良い電車の駅が、 住まいのすぐ側にあるマンションがお年寄りに脚光を浴びているようである。 今後少子高齢化が進んでいくことがはっきりしている、日本の食の砂漠、又は買い物弱者(難民) 対策はどうなっていくのであろうか。日本社会が長寿化に伴って、 長生きをするがためになお一層の認知症などの病気や健康に対する不安を抱えながら、また買い物弱者(難民) に対する怯えを抱えながら、高齢者は孤独化の道を進む人が多くなるのではないかと思われる。

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