≪ 感情(1)〜(3)≫

Shimazaki, Hiroki (シマザキ・ヒロキ)
嶋崎 浩樹
出典 LOGOS(みことば)
2012年10月2日#108
2012年11月1日#109
2012年12月1日#110
許可を得て複製

今回は、感情について考えていきたいと思います。人間は、誰しも感情をもっています。 あまり感情を表に出さない人がいますが、そのような人を見ると何か不気味で、能面のような顔に見えます。感情とは、 神からわたしたちに与えられた賜物の一つです。ある人は、「感情は良くない」と思っているかもしれません。もし、 感情が良くないものとするならば、なぜ、神はわたしたちに与えたのでしょうか?神は、すべての被造物を造られたときに 、「良し」と言っています。神が「良し」と言われたということは、そのものは完全であり、善であるということです。 人間の場合、その後に罪が入り込んでしまい、完全な善の存在とはいえなくなりましたが、その罪を通して、 わたしたち人間が、成長する一つのきっかけにもなります。

感情というのは、もっていることがダメなのではありません。ここで、感情の良い点をいくつか挙げてみましょう。 わたしたちの身に何か良いことが起きたとき、たとえば、子どもを授かったり、 誰かから思いがけなくプレゼントをもらったとか、その他にも誰かに親切にしてもらったときなど、 笑みがこぼれないでしょうか?普通ならば、笑みがこぼれます。そして、その笑みを他の人が見て、この人は今、「 喜んでいるんだな」と感じ取って、その人もうれしくなります。それから、何か悲しいこと、 身近な人が亡くなったときとか、自分が大切にしていたものがなくなったときなど、悲しくならないでしょうか?そして、 ある時には、涙がこぼれないでしょうか?この表情を他の人が見て、自分に対して共感してくれたり、 ともに喜んでくれます。また、「この人は、悲しんでいるから、慰めなければ」と思ったりします。また、 何かの出来事に対して怒りの気持ちをもつこともあります。怒りの気持ちは、自分にとって嫌なことを人にされたときとか 、自分の考えや価値観と異なるものを見たり聞いたりしたときなどに起こります。そのような態度を他の人が見たとき、「 この人に何か悪いことをしたのかな」と思わせたり、「この人は、このようなことがいやなんだ」とわからせたりします。

感情というのは、人間同士のコミュニケーションの一助となるものです。感情をあまり出さない、 ポーカーフェイスの人だと、「この人、何を考えているんだ」と思われてしまい、誤解を招くこともあります。 他の人に自分の思いや考えを伝えることはとても大切なことです。また、 わたしたちも他の人に感情を出してもらうことによって、その人のことをより理解することができます。だからこそ、神は 、わたしたちに感情を与えたのでしょう。

感情をうまく使うならば、わたしたちにとってはとても益になります。しかし、感情というのは、両刃の剣です。たとえば 、誰かが失敗したときに、冷笑することは、失敗した人に失礼ですし、何に対しても怒る人というのは、 どのようにつきあえば良いのかがわからなくなってしまいます。感情というのは、出してはいけないものではなく、 出すべきものですが、そこにはコントロールが必要となります。いつ、どのように出せば良いのか、つまり、 TPOを考えて出さなければならないということです。次に、 自分と価値観とか倫理観などといったものが異なった時に起こる怒りについてみていきます。

どのように感情を出していけば良いのかを考えていきたいと思います。感情は簡単に言い表すと「喜怒哀楽」 に分けられるでしょう。喜び、怒り、悲しみ、楽しみの四つです。このうち、怒り以外の感情は、 すぐにそのまま出してもあまり問題がないかと思います。ただし、 相手を傷つけるようなときには気をつけなければなりません。誰かが失敗したとき、 特に取り返しのつかない重大な失敗をしたときに、笑うということは、相手を傷つけます。小さな失敗だと、 笑ってごまかすということができるときもあります。この線引きは難しいと思いますが、 相手との信頼度や相手の表情を見ながらコントロールするのが良いかと思います。

もう一つ、悲しみについてですが、特に親しい方が亡くなったとき、パニックになったり、 感情をコントロールできなかったりします。しかし、そのときの感情を抑えることは控えた方が良いでしょう。 グリーフワークというものがありますが、それは、悲しい感情をそのまま素直に出すことによって、 心の傷や痛みを癒やしていくことです。その期間は、人によって大きく異なります。ですので、他人が判断したり、 自己判断で、そろそろ元気にならなくてはと思わないで、悲嘆の感情がある限り、その感情を出させることが必要です。 その一つとして、涙を流して泣くというのも有効な手段です。

もっともやっかいなのは、怒りです。怒りの感情を考えると、自分にとっていやなことが起こったときに起きます。 それは人から自分に直接何かをされたときもあるでしょうし、自分自身のふがいなさに対してもあります。また、 メディアなどを見ていて、自分の価値観などと違ったものに触れたときに怒りの感情が出てきたりします。

まずは、怒りの感情というのはどういうものなのかを今、挙げた事柄に従って考えていきたいと思います。 人から自分に直接何かをされるときというのは、いじめのように、自分には何の落ち度もなく、 人から責められるときがまず挙げられます。自分としては、落ち度があったとは思っていない、または気づいていないので 、そこで怒りの感情がでてしまいます。この場合の対処は、理想的には、冷静に対処して、 何が悪かったのかを聴くことができれば良いのですが、それができないことの方が多いと思います。そのようなときには、 怒りの感情を出した後で、「あの時は、どこが悪かったのか」と聴けるような関係作りがあると良いでしょう。

もう一つは、自分の中に持っているいやな部分、それは意識しているか、 あるいは多くの場合は無意識のうちに感じていることを、他者がしてしまうことによって怒りの感情が出てくることです。 このようなときは、他者のしていることが、必ずしも悪いことではない場合もあり得ます。他者のしていることを見て、 怒りの感情が出てきたならば、 その人の言動が自分のいやなところを鏡のように映していないかどうかを振り返ることが必要となります。 そうすることによって、自分の心の傷が癒やされて、怒りの感情がおさまってきます。

さらに、怒りについてみていきます。

自分と価値観とか倫理観などといったものが異なった時に起こる怒りです。たとえば、 誰かに何かをした時にお礼の言葉を言ってくれないとか、 自分にとってはいやなことを相手がしてしまって謝ってくれなかったり、間違いを認めないような時です。 よくある例としては、車を運転中にマナーの悪い車に出会った時にいらいらしたり、 テレビなどを見ていてコメンテーターなどが自分の価値観と違った時に、いらいらいらしたりすることです。これ以外でも 、いろいろと思い当たるケースは誰でもあるのではないでしょうか?

このケースの場合、自分の怒りの原因となっているものは正当/正義だと本人が思ってしまっているので、 すこしやっかいです。人が怒りの感情をもつ時には、何らかの原因があります。 その原因を探し出すことが必要ではないかと思います。ただし、なかなかその作業をするのは、難しいことかと思います。 でもその作業をすることによって、自分の弱い部分がはっきりしてきて、 より完成された人間へと変わっていくことでしょう。

ここで、先日読んだ本から紹介したいと思います。その本は、「怒りの心理学〜 怒りとうまくつきあうための理論と方法〜 」という心理学の専門書ですが、著者もいっています。けれども高校生レベルでも読める内容となっています。そこには、 怒りの原因として二つのことが考えられると指摘しています。

一つは、自己愛(ナルシスト)です。この言葉だけを聞くとわたしは関係ないと思われるかもしれませんが、 ごく一般的なものです。この本にはその説明として、「自分は特別な存在」、「評価が高いにも関わらず、 それを支える明確な理由や根拠がない」といったことを持っているのが自己愛の特徴だといっています。

二つ目は、パラノイドです。言葉は難しいのですが、その説明としては、「他者の言動の背後に、 自分に対する悪意や敵意を推測しやすい傾向」とあります。

以上の二つに心当たりはないでしょうか? そのような傾向をもっていること自体は悪くはないのですが、それを自覚しないと、自己中心的な生き方をしたり、 他人を必要以上に悪く見たりしてしまいます。そして、それがひどくなると、罪といっても良いかもしれません。 とはいってもあまり小心になってしまったり、卑屈になる必要もありません。大切なのは、 自分自身の傾向を知るということです。自分自身を知ることによって、怒りはもちろんのこと、 そのほかの弱さなども見えてくるでしょう。

最後に、この本にもありましたが、怒りがおさまるのは、ゆるすことができた時です。そのためには、 その怒りを誰か第三者に聞いてもらったりして吐き出すことによって整理していくことが望ましいと思います。そうすれば 、自分の間違っていたところ、弱さを気づかせてくれることもあるでしょう。

感情についてみてきましたが、最初にもお話ししましたが、感情はけっして悪いものではなく、 わたしたち自身の弱さや傾向を教えてくれるものです。肯定的にとらえて、 自分の成長のために生かす一つの道具と考えることが、神から与えられた感情をうまく生かすことになるでしょう。

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