中絶の浸透(続き)

人口調査研究所発行のレポート2000年
スティーブ・モッシャー

国際家族計画連盟(IPPF)の違法活動

IPPFは、法律の違反について単に口にしているだけでない。実際に大規模な法律違反を犯している。

IPPFはフィリピンで、少なくとも20年間に渡り、違法である中絶を奨励し実行させてきた。またバングラディッシュ、韓国、シンガポール、香港、タイ、ベトナム、インド等の開発途上国には、大量の中絶用器具を提供してきた。

以下のヘースティングス・センター・レポートの記事の抜粋には、IPPFが自分の加盟グループによる不正な活動を組織的に隠匿しながら、それらグループが開発途上国の法の目をくぐり抜ける手助けをしている様子が書かれている。

国際家族計画連盟(IPPF)ロンドン支部は、発展途上国における中絶事業合法化を最もあからさまに主張する支部である。活動の中心的存在として、AID(アメリカ国際開発庁)を含める世界中の寄贈者から基金を受け取り、そのお金や供給品をそれぞれの支部に支給している。IPPFが唱える自らの立場とは、「中絶は、中絶を望む人には合法化されるべきであり、地方支部は、可能であれば、必要なサービスを提供するべきである」というものである。

「中絶は違法であり、国の人口政策に明確に反する」とするフィリピンで、IPPFは200個の「月経調整法」(妊娠3ヶ月以内での中絶)用具一式を、デモンストレーションを目的として供給した。FPOP(フィリピン家族計画団体。IPPFの加盟団体)が地元の医師らに「月経調節法」キットを配った時には、多くの議論がかもし出された。フィリピン政府が中絶用具の輸入を法律で明確に禁止しているにもかかわらず、このような用具一式が「検査のためのサンプル組織」を得る為の「医療器具」として国に持ち込まれていたのである。このような例を見ると、IPPFやその賛同団体が、法律や政策をいかにうまく回避する能力を秘めているかが分かるであろう。

IPPFの最も大きなプロジェクトのひとつは、バングラディッシュで6万2千ドルかけた、地元の家族計画団体への5000個の真空吸引キットの配布であった。同じような用具一式は、韓国、シンガポール、香港、タイ、ベトナム、インドにも供給されている。ところが、これらのプロジェクトのほとんどが約3万ドル以下の比較的小規模なものだったとしても、IPPFはその活動の詳細をレポートに載せておらず、寄贈団体への主要レポートにも書いていない。その理由のひとつは、これらの活動が違法で議論を呼びがちな性質を持つという他に、IPPFがヘルムズ修正箇条に違反していないかどうか、米国政府が団体を常に監視している事にあるであろう。15

「月経調整法」の定義

「月経調整法」(MR)又は「子宮吸引中絶」(ME)という言葉は、「発展途上国における中絶禁止法をうまく欺く中絶方法」と同じ意味である。何故なら、これらの中絶方法では中絶があまりにも早い段階で行われるため、「証拠」が処置中に消え去るか、または簡単に消し去ることが出来るからである。

「医者の為のIPPF家族計画ハンドブック」によるMRやMEについての説明

月経調整法とは普通、普段定期的に月経を迎えていた女性が、月経が来るべき日より最高14日の間に月経がなく、しかも妊娠した可能性がある場合に、子宮の中を吸引することを言う。それは、妊娠した確証が得られる前に行われる事が多い。この方法は、1)診断的・治療的な掻爬術として2)不完全な中絶の手当てとして3)月経サイクルの後半に卵管結紮が行われる場合、妊娠していないことを確かめるための子宮吸引4)妊娠の可能性がある場合の子宮吸引という目的に使われる。

月経調整法は一部の国では大変普及しており、時には一人の施術者が一年に何千件もの手術を行うこともある。また、中絶法違反で訴えるには、実際妊娠していたものが人工的に終結されたことが証明される必要があるラテンアメリカ諸国のように、「治療上の中絶は法律違反だが月経調整法は合法的である」という国もあるのである…16

IPPF医療会報では更に、MR・MEは中絶手段であると明言している

「手で持って使う真空洗浄機を使った子宮内膜吸引は、早期妊娠を人工的に終結させるのに費用がかからず安全で効果的な技術であり、様々な医療関係者に使い方を教える事が簡単に出来る。一部の国での子宮内膜吸引方法は、女性の月経が最高14日遅れた状態で、まだ妊娠は確認されていない場合に使われている。こういう場合、この方法は月経調整法と呼ばれている。」…(4)

IPPFは、その称するところの「組織のサンプルを集める為」または「不完全な中絶を処理する為」に、何千個もの真空吸引機を供給しているが、それらは実に簡単に早期吸引中絶に使われることも出来るということを想起して欲しい。

マルコム・ポッツ氏は、IPPFが発展途上国の文化の中に、「要求すれば得られる中絶手術」の糸口をいかに作ったかを30年近く前に話している。またポッツ氏が、「MR・MEとはまさに中絶処置である」と認め、更に「中絶法違反ではあるが、起訴されにくい形で中絶を行えるシンプルで便利な方法である」と言っていることに注意すべきである。

「月経調整法」という名前を用いる事で、物事の本質がすり替えられてしまっている。バングラデッシュでは、新聞にあからさまに中絶について書かれる事はあり得ないが、首都ダッカで月経調整法についての大っぴらな会議が開かれることは許されるらしい。フィリピンでは、家族計画における中絶の役割について秘かに論じるだけでも「分別がない」とされる。しかし月経調整法についてなら、あっという間にあちこちで話されるようになった。「月経調整法は、もしかしたら他の中絶方法よりも安全なのかもしれない…子宮から取り除いた組織を顕微鏡で見ない限り、妊娠していたという証拠はない」と。中絶が法に反する国では、論点こそが、とても大切である。(8)

法律の裏をかくMR

国際家族計画連盟はしばしば、連盟自身や他の人口管理団体が、いかにMRを使って発展途上国の法律の裏をかいてきたかと自慢している。これは前述の通り、「危険な中絶」を減らすという名目で行われてきたことである。IPPFはこう言っている。

「一部の地域で、危険な中絶は大きな懸念である。しかしそれに対処できるFPAの活動は、現存する法律や設備の不足で束縛されてしまっている。中絶が法律違反である国では、多くのFPAは自分達の主張をバックアップ出来るように、この問題を研究し、主張運動を続けている。勢力を持つ人、宗教界や社会のリーダー達や政治家達と会って、話し合うこともある。一部のFPAは、中絶後に起きる合併症を管理するサービスや中絶後カウンセリングや避妊サービスの提供もしている。一部では月経調整法を施す事も出来る。中絶が合法的な国では、FPAは安全な中絶を提供出来る。」17

「MRを使ってどのようにラテンアメリカの法律の裏をかくか」をFPAに説明するIPPF;「しかし、南アメリカの大部分のように異なる司法システムを持つ所では、中絶を行う理由として妊娠している証拠を示すことが前もって必要となっている。こういう場合、月経調整法の実施を「月経が遅れているが妊娠はまだ認められない女性から求められた助けに応じる合法的な処置」と弁護すれば、事はもっと簡単になる。また、中絶に関わる法律にMRが違反したというケースはこれまで世界中にもないし、そのような先例がないことから、支持者は法律に頼らなければならないと言うことを忘れてはならない。18

月経調整法は、IPPFの将来計画の大きな部分を占めている。IPPFはこう予測する:「妊娠初期の真空吸引中絶は、更に増加し大規模に使用されるようになるだろう。手で持てる月経調整機も重要になってくる。」19

IPPFの医療会報はこう説明している。「中絶が合法的とされる国では、FPAは中絶の提供が健康と生殖規制サービスの一部であることを確実にしていかなければならない。又いくつかのFPAによれば、中絶の法的立場があいまいか規制されている国でも、その法律を細かく見ていけば、解釈に柔軟性の余地が見つけられる所もある。」20

発展途上国でIPPFがいかにMRを使って法律の裏をかいているか、多くの例があげられる。以下はその内のいくつかである。

バングラディッシュ:バングラディッシュでは中絶は法律違反であるにも関わらず、IPPFは、「ここでの中絶の22%は、訓練を受けた者によりMRセンターで行われている」と認めている。

ケニヤ:ケニヤでも中絶は法律違反であるが、IPPFは手動真空吸引機(MVA)の導入を、初めは「不完全に終わった中絶の処置」を理由に、次には実際「中絶を行う為」と言って承認した。IPPFの出版物の中でカーマ・ロゴ氏は、「法律が変わるのを待つのはもう止めよう、まだ法律が変わらなくたって出来ることはしよう」と書いている。

インドネシア:中絶はインドネシアでも非合法であるが、IPPFによれば「インドネシア家族計画協会(IPPA)は月経調整法を導入している。最初は避妊の失敗の対処のみに使われていたのだが、今ではMRにはいろんな可能性が考えられている」という。IPPFは今では15軒のクリニックを経営しており、そこでは法律を無視し、一年に何千件ものMR中絶を行っている。22

IPPFとその加盟団体は、MRには法律の「柔軟性の余白」が当てはまる事に目を付けた。国や地方の中絶を禁止する法律が元々意図する意味を無理に引き伸ばしてしまうのは以前述べたとおりである。その目的はもちろん、一人一人の良心を和らげ、中絶合法化に向けて、すべての中絶禁止法を施行不可能にしてしまうことである。

国際家族計画連盟は少なくとも過去30年間、多くの発展途上国において、中絶の大規模な奨励と実行に深く携わってきている。IPPFは、あらゆる種類の家族計画を奨励するために何十億ドルも使っており、家族計画プログラムには中絶が不可欠であると明言している。

IPPFは、発展途上国の中絶禁止法の廃止を援助するに当たって、独自のポジションにいる。NGOであるから、発展途上国の国内問題に働きかけたり口出ししても「新植民地主義」と非難されずに済む。実際はもちろん、IPPFの得る財源のほとんどは、先進国の寄付でまかなわれている。オーストリア、カナダ、デンマーク、フィンランド、ドイツ、日本、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、イギリス、そしてアメリカ。23

一番重要なことは、IPPFが、戦略プラン「2000年の展望」や他の多くの関係文書の中で、140ある国別加盟支部すべてを通して中絶を奨励し促進し続けていくという意思を強く述べていることである。

IPPFは、その主要な根本方針として、「家族計画とは人間の権利であり、中絶は家族計画に含まれるべきである」としている。つまり推測するに、IPPFは「中絶は人間の権利である」と考えているようである。

先進国からIPPFへの経済的援助は、「すべての発展途上国における中絶の合法化」というIPPFの最も大きな目的のひとつを促進していることになる。

ベニン、ブルキナファソ、カメルーン、コートディヴォワール、ギニア(コナクリ) 問題点:「中絶を禁止する法律」戦略:「安全な中絶サービスの可能性とアクセスを改善する。」

エチオピア 問題点:「中絶は法律で禁止されている」目標:「中絶を含む家族計画サービスの規制の廃止と、女性がそれらサービスを利用する権利を求めてキャンペーンする。」目的:「女性に不利な慣習や法的制限を除外し、女性が家族計画サービスをもっと利用しやすくする。安全な中絶をサービスできるセンターを作る」活動:「女性や若者の生殖的健康状態に影響する中絶禁止法律を法律家とサービス供給者と協力して廃止していく。」

ガンビア 問題点:「中絶法の現状」活動:「安全な中絶サービスの提供を擁護していく。」

ケニヤ 目標:「危険な中絶の確率を減らす為に、家族計画サービスや中絶と中絶後のケアサービスを向上させていく。」戦略:「現在の中絶法の見直しを主張する。家族計画と中絶サービスを向上させる。」目的:「5年以内にもっと自由な中絶法への改正を達成する。3年以内にMVA(手動式真空吸引機)によるサービスを、すべての県や地域の病院、また10軒のミッション系病院で可能にする。」

モーリシャス 問題点:「中絶を禁止する法律がとても厳しい」目標:「現在の法律を改正し、中絶を非犯罪化する。」目的:「2000年までに、女性活動グループの75%が危険な中絶に危機感を抱く様にし向け、法律改正を求める活動を起こすように持っていく。」

ナイジェリア 問題点:「中絶規制法」目標:「どんな社会グループの調査にも、中絶の測定基準を導入する。政治家やオピニオンリーダー、伝承や宗教のリーダー、若者や女性の団体に、家族計画と適切な環境での安全な中絶の大切さを教育する。」

タンザニア 問題点:「とても厳しい中絶禁止法」目標:「生殖的健康についての情報提供やサービス・中絶合併症の有効治療・中絶後のカウンセリング・避妊サービス・安全な中絶の実践を促進することで、危険な中絶の合併症からくる母体の死亡率と罹患率を減らす。」戦略:「いずれは中絶が犯罪でなくなるよう働きかけると同時に、女性の利益のために現存する法律をこちらに都合良く解釈し、安全な中絶へのアクセス提供の基礎をうち立てる。」目的:「安全な中絶サービスの提供を許可する法律を確立する。」

ウガンダ 問題点:「中絶の研究や議論さえ禁止する中絶禁止法」戦略:「中絶禁止法と政策の改正を主張。」

ザンビア 戦略:「1995年末までに、主な4つの病院に形式的な中絶ケアセンターを作る。1997年末までに、同じようなセンターを残りの州立病院や、主なミッション系病院に作る。2000年には地方の病院に作る。1996年末までに主な病院の産科・婦人科のすべての医師に、手動真空吸引(MVA)技術の訓練をする。1998年末には、看護業務、医療・臨床職員の教育過程に「安全な中絶手術の訓練」を組み込む。1997年末には、人工的妊娠終結条例(1972年)についての法的・政策的ガイドラインを修正する。」

IPPFアフリカ地域女性相談委員団(RWAP)。 問題点:「規制的で不適当な中絶法」目標:「全地域において、母子健康・家族計画(MCH/FP)サービスに中絶を組み込み、危険な中絶を減らす。女性相談委員団(NWAP)は、安全な中絶の合法化を確実にするため、現存する法律の改正と自由化を働きかける。」戦略:「NWAPは、現存する中絶禁止法の改正と、必要な場合はその廃止に向けた陳情運動の先頭に立たなければならない。」目的:「1995年から1997年の間に、少なくともこの地域の10ヶ国で中絶禁止法が再審・廃止・自由化され、危険な中絶の発生率が少なくとも10%減ること。」

References:

1.   IPPF Income and Expenditure Account for the year ended 31 December 1991 and accompanying chart entitled "Growth of IPPF's Income." Amount is in adjusted 1995 U.S. dollars, corrected for an average five percent inflation. [Back]

2.   IPPF Annual Report, 1989-1990. [Back]

3.   International Planned Parenthood Federation, Africa Region. The Mauritius Conference: Unsafe Abortion and Post-Abortion Family Planning in Africa. London: IPPF, 1994. Pages 13-15 and 24 to 35. [Back]

4.   "Statement on Unsafe Abortion and Reproductive Health." IPPF Medical Bulletin, Volume 26, Number 1 (February 1992) [Back]

5.   International Planned Parenthood Federation. "Vision 2000: Moving Forward After Cairo and Beijing." London: IPPF, 1996, page 30. [Back]

6.   Dr. Fred Sai, former president of IPPF. "Unsafe Abortion Must Be Tackled Now." Planned Parenthood Challenges: Unsafe Abortion. 1993. [Back]

7.   "An Interview with Peng Yu, Vice Minister of the State Family Planning Commission." Integration, March 1994, page 32. [Back]

8.   Malcolm Potts, Peter Diggory and John Peel. Abortion. London: Cambridge University Press, 1970. Pages 230 to 232. [Back]

9.   Internet news release entitled "IPPF Strengthens Stand on Reproductive Rights and Unsafe Abortion," dated November 29, 1995, taken from IPPF's home page at http://193.128.6.150/ippf on April 2, 1996. [Back]

10.   "Encounter: Dr. Fred Sai, International Planned Parenthood Federation." Sunday Inquirer Magazine, November 26, 1995, pages 3-5. [Back]

11.   International Planned Parenthood Federation. "The Voluntary Sector in Population and Development." London, 1979. [Back]

12.   Malcolm Potts, M.D., former director of the International Planned Parenthood Federation (IPPF). "Population Growth and Abortion," in Gerald I. Zatuchni, John J. Sciarra, and J. Joseph Speidel (editors). Pregnancy Termination: Procedures, Safety and New Developments. New York: Harper & Row Publishers, 1979, page 424. [Back]

13.   International Planned Parenthood Federation. The Human Right to Family Planning. 1984, paragraph 106. [Back]

14.   Undated IPPF/WHR pamphlet entitled "20 Questions About International Planned Parenthood Federation Western Hemisphere Region." [Back]

15.   Donald Page Warwick. "Foreign Aid for Abortion." The Hastings Center Report, Volume 10, Number 2, page 33, April 1980. [Back]

16.   IPPF Family Planning Handbook for Doctors. Chapter 15, "Menstrual Regulation," pages 241, 242, and 247-248, date not given, but post-1987. [Back]

17.   International Planned Parenthood Federation. "Sexual and Reproductive Health: Family Planning Puts Promises Into Practice." London: IPPF, 1995, page 25. [Back]

18.   Translated from the Spanish. Federacion Internacional de Planificacion de la Familia [International Planned Parenthood Federation].Regulacion Menstrual. London: IPPF, 1976, page 10. [Back]

19.   "The Challenge of the 1990s: Induced Abortion." IPPF Medical Bulletin, Volume 25, Number 1 (February 1991), page 2. [Back]

20.   "[IPPF] International Medical Advisory Board Statement on Abortion." IPPF Medical Bulletin, Volume 27, Number 4 (August 1993). [Back]

21.   International Planned Parenthood Federation. Challenges: Unsafe Abortion. London: IPPF, 1993, pages 31 to 35. [Back]

22.   "Support from Around the World," International Planned Parenthood Federation/Western Hemisphere Region 1990 Annual Report. [Back]


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