「ノルレボ錠0.75mg 」の医薬品製造販売承認に関する意見

Ishijima, Buichi (イシジマ・ブイチ)
石島 武一
日本カトリック医師会代表
平成22年12月6日
許可を得て複製

私たちは「ノルレボ錠0.75mg」の製造販売承認に反対します。理由は以下の通りです。

1)「ノルレボ錠0.75mg」の効能・効果は「緊急避妊」とされています。しかし、ノルレボ錠0.75mg の主たる目的は子宮内膜に作用して受精卵を着床しにくくして体外に排出させる、あるいは着床早期の胚を死亡排泄させるところにあると言われています。したがって、それは「避妊」ではなく明らかに中絶です。通常の人工妊娠中絶を細胞レベルで不可視化して隠蔽したものに過ぎません。

私たちは、人の受精卵は受精の瞬間から人となるべく定められた存在であり、人として取り扱われるべきであると考えています。これは何も宗教的信条からのみ出た考えではなく、一般通念としても受け入れられています。例えば、科学技術会議生命倫理委員会ヒト胚研究小委員会が2000年3月に答申した「ヒト胚性幹細胞を中心としたヒト胚研究に関する基本的考え方」の中にも、「・・・ヒト胚は、いったん子宮に着床すれば成長して人になりうるものであり、ヒトの発生のプロセスは受精以降一連のプログラムとして進行し、受精に始まるヒトの発生を生物学的に明確に区別する特別な時期はない。

したがって、ヒト胚はヒトの生命の萌芽としての意味を持ち、ヒトの他の細胞とは異なり、倫理的に尊重されるべきであり、慎重に取り扱わなければならないと考える」という記載があります。従来の経口避妊薬は排卵を抑制するものでしたが、ノルレボ錠0.75mgは受精卵あるいは胚の滅失・排除を目的とするもので根本的に性格が異なります。私たちはこのような人命を断つことを目的とする薬品の製造販売を認めることはできません。

2)WHOその他の臨床試験によれば、ノルレボ錠0.75mgの妊娠阻害率は約80%であると言われています。逆に言えば、約20%は妊娠の可能性があるわけです。こうして生き残った胎児には薬剤による障害が発生する危険性があります。動物実験では高用量使用の場合に胎児の死亡や障害発生が報告されています。人間における臨床用量でも障害児出生率を増加させる可能性は排除できません。

3)WHOその他の臨床試験において、多くの副作用、すなわち、頭痛、悪心・嘔吐、めまい、疲労感などが、どの試験においても高頻度に報告されています。今までの経口避妊薬による脳血栓症などの副作用は大きな問題となっていますが、ノルレボ錠0.75mgも将来問題を起こす恐れがあります。人工妊娠中絶よりも母体に与える身体的、心理的損傷が少ないという意見が一部医師たちの間にあるようですが、この薬剤の副作用も看過できないと考えます。

4)この薬剤によって簡単に中絶ができるということは人の生命の軽視につながります。人命軽視の風潮が社会に蔓延している現在、これをさらに助長するような薬を世に出すことは、日本の現在の道徳的頽廃をさらに推し進めることになるという危惧の念を禁じ得ません。

以上の理由から、私たちはノルレボ錠0.75mgの製造販売の承認に反対します。

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