エイズを食いものにする人々よ、わが民を解放せよ

HIV/AIDS (HIV/エイズ)
サム・L・ルテイカラ(英国教会牧師、ウガンダ)
翻訳:佐倉 泉
2008年6月30日
Let My People Go, AIDS Profiteers
許可を得て複製

ウガンダ、カンパラ

米国大統領のHIV-AIDS救援緊急計画(PEPFAR)は、数か月間も、上院で暗礁にのりあげていた。先週、ようやく投票・可決の見通しが出てきた。この計画には500億ドルが投じられることになる。それは、エイズと闘うためにアメリカ国民一人当たり165ドル、ニューヨーク市民だけで13億ドルを払う計算になる。しかし、エイズのために割り当てられるこの支援金は、サハラ以南のアフリカで、エイズ・ウィルスの蔓延を止めることができるのだろうか。昨年、この地域のエイズによる死亡者数は、世界の同死亡者数の76%を占めている。

私がアフリカで目の当たりにした闇の取り引きが野放しにされるかぎり、答えは否である。エイズとの闘いにおいて、暴利をむさぼる人々によって予防は敗北してしまった。エイズはもはや単なる病気ではない。何億ドルも稼ぎ出す巨大産業と化してしまった。

私たちのやっていることはぜんぶ「間違っている」と言うために国際的な専門家たちがやってくる以前、1980年代の終わりごろ、私たちウガンダ人はHIVの蔓延を防ぐために、実践的なキャンペーンを考案した。アフリカの人々のあいだに蔓延するこの病は、一人以上の相手との性交渉によって感染が広がっていることに私たちは気づいた。そこで、私たちは、相手に忠実であるようにと、国民に呼びかけた。私たちのキャンペーンは、ABCキャンペーンと名付けられた(Abstain=貞潔、Be faithful=相手に忠実に、use Condoms=コンドームの使用)。私たちのメッセージの中心は、一人の相手に忠実であるように、というものだった。コンドームは最後の手段である。

自分たちの国でどうしたらよいか、私たちはわかっていた。そして成功した。HIVに感染しているウガンダ人の比率は、1991年の21%から、2002年の6%に激減した。しかし、ウガンダにやってきた国際的エイズ専門家たちは、人々の性の自由を制限しようとするのは間違っている、と説いた。もっと悪いことに、彼らは、自分たちのカジュアル・セックスのテーマを私たちに押し付けるために、経済力を持ち合わせていた。

PEPFARは,エイズ予防のために西欧の専門家がアフリカのリーダーたちと対等なパートナーとして共に働くようにと求めている。しかし、ウガンダ政府のエイズ予防委員会の共同委員長として、このプロセスが妨害されるのを私は目の当たりにした。25人からなる予防委員会は、PEPFARの援助金がわが国のためにどのように使われるかを定める国家計画に、繰り返し「忠実」と「貞潔」を盛り込んだ。そして、外国人アドバイザーたちは、繰り返し、私たちの勧告を削除した。出てきた文書草案には、「忠実」と「貞潔」の文言が消えていたのである。

そしてどういうわけか、結婚を標的にした怪しい統計が登場した。国家計画は、結婚している夫婦のHIV感染率が42%、売春婦の2倍の感染率であるとしている。私たちは、この統計がどこから出たものなのかを問いただしたが、繰り返し無視された。実際、2004‐05年ウガンダHIV/AIDS血清‐行動調査(2004-05 Ugandan HIV/AIDS Sero-Behavioral Survey)によれば、結婚したカップルのHIV感染率は6.3%にとどまり、寡婦・寡夫(31.4%)、離婚者(13.9%)の感染率を大きく下回っている。(http://www.measuredhs.com/countries/metadata.cfm?surv_id=224&ctry_id=44&SrvyTp=ctry)

ワシントンの関係者にこれらのスキャンダルが喚起されると、「貞潔」、「忠実」の文言はいつのまにか、再び計画書に戻っていた……紙の上で。しかし、その方法が実施されたり、促進されたりするという保証はない。その間にも、あの怪しげな結婚に関する統計はそのまま残っている。

忠実と貞潔が覆され、ウガンダのHIV感染率は再び上昇しはじめている。

西側のメディアは、HIV感染が新たな急上昇を見せているのは、「ウガンダに十分にコンドームがない」から、と聞かされている。ウガンダでHIV感染率が下がり始めた1990年代初頭よりも、現在、多くのコンドームが出回っているにもかかわらず。コンドームの促進は、アフリカで失敗している。おもな理由は、コンドームを着実に決まった相手との間で使用する人が5%に満たないからである。実に、アフリカで最も声高に告げられているHIV予防メッセージは、コンドームの「ユニバーサル・アクセス(いつでもどこでも手に入り、皆が使う)」、エイズ検査、アンチ‐レトロウィルス治療(anti-retrovirus treatment)、そのほか取り合わせる薬や器具である。こういった製品は、輸送、保管、配布、宣伝、補充を、いつまでも延々と続けなければならない。

一方、一人のパートナーに忠実であるようにアフリカの人々に勧める、といった効果的なHIV予防法には、もうけを生み出すユニバーサル・アクセスの地位は与えられないのだ。

誤解しないでいただきたい。治療はよいことである。しかし、HIVの治療を受けられるアフリカ人一人に対し、6人が新たに感染する。一人のエイズ患者に対しアンチ‐レトロウィルス薬で生涯にわたる治療を行うには、年間千ドル以上かかる。成功した私たちのABCキャンペーンは、一人当たり年間、たったの29セントしかかからない。

国際的な供給業者たちは、一般化した、あまりにも単純化したことを言う。例えば、「アフリカ人の性行動を変えることはできない」などである。たしかに全員を変えることはできないし、そうする必要もない。一年に3人以上のパートナーをもつ男性の比率が、1989年から1995年のあいだにウガンダで起きたように、15パーセントから3パーセントに落ちれば、HIV感染率は急落するのである。たったそれだけのことである。

私たち、アフリカの貧しい者は、国際的な対話の場で沈黙させられつづけている。自らの文化にかかわる私たちの知恵は、無視されている。

性を尊いものとして保つように、男性、女性に呼びかけること、すなわち、性を結婚のために取っておくように、結婚したら伴侶に忠実であるように人々に説くことは、お互いを深く、心を尽くして愛そう、と呼びかけることなのだ。アフリカにおけるHIV感染は、婚姻外のセックス ―カジュアル・セックスと不忠実― によって広まっている。解決策は、忠実な愛、である。

そこで私は言いたい。私の訴えを聞け、HIV-AIDSを食いものにし、暴利をむさぼる人々よ。わが民を解放しなさい。あなたがたにとってカジュアル・セックスは大事なのかもしれない、しかし私たちにとっては、死なずに生きることが大事なのだ。アフリカの知恵に耳を傾けよ、エイズをどのように予防したらよいか、あなたたちに教えよう。


* サム・L・ルテイカラ師は、ウガンダ・エイズ予防委員会の共同議長を務める。
* 「わが民を解放せよ」はエジプトのファラオにモーセが語ったことば。

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