アジア太平洋地域におけるHIVおよびエイズの蔓延に関する考察

HIV/AIDS (HIV/エイズ)
APLF - 2003
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2002年は、アジア太平洋地域で約100万人が新たにHIVに感染し、このウイルスへの感染者は、2001年から10%増の720万人に上ると推定される。さらに昨年は、49万人がエイズにより死亡したと推定される。若年層(15ー24歳)の約210万人がHIVに罹患している。カンボジア、ミャンマーおよびタイを除いたアジア太平洋諸国では、国内のHIV罹患率が比較的低い状態にとどまっている。

ただし、中国、インド、インドネシアなど、国土が広く、人口が多い国では、国内の罹患率が低いことで、流行の実態が不明瞭になっている。例えば、中国とインドでは、数百万人もの人が感染する深刻な流行が局地的に起こっている。

インドでは、成人のHIV罹患率が1%未満で、国が直面する重大な事態を示唆するには至っていない。2001年末時点でのHIV感染者は400万人と推定されるが、これは、南アフリカに次いで世界で2番目に高い数字である。2004年には、5,134,000人になると推定されている。妊婦検診を受ける女性のHIV罹患率は、アンドラー・パラデシュ、カルナータカ、マハラシュトラ、マニプール、ナガランド、タミルナドで1%を超えている。インドで先日行われた行動調査の結果、特定の人口集団(性産業で働く女性や薬物注射を行う人など)を対象にした予防努力により、HIV/エイズに対する知識の強化や性教育という形での成果が認められる。しかしながら、一部の州では、これらの主要な人口集団におけるHIVの罹患率が増加を続けており、十分に計画された継続的な介入を大規模に実施する必要があることは明らかである。

中国での流行は衰える気配を見せていない。当局は、2002年半ばで、中国のHIV感染者数を100万人と見積もっている。有効な対応策を早期に行わなければ、2010年までに、ベルギーの全人口に匹敵する1000万人の中国人がHIVに感染することになると予想される。当局の発表では、新たにHIVに感染した人の数は、2002年の上半期で約17%増加している。HIVの罹患率は、社会経済格差の広がりや、移動性の拡大(約1億人の中国人が登録住所から一時的または永久的に離れている)が著しい国において、複数の経路を通じたウイルスの拡散により急増する可能性がある。

太平洋諸島の国々や領土の中で、パプアニューギニアのHIV感染率が最も高い。最近の調査において、妊婦検診を受ける女性のHIV罹患率が、首都ポートモレスビーで1%を示し、都市部での罹患率の増加を示す兆候となっている。都市部でエイズ以外の性感染症の治療を求める患者において、2001年のHIV罹患率は7%だった(2000年の2倍)。(HIV/エイズの認識および知識の低さを考慮した)性教育および性に関する情報網のレベルの低さから、この国が、重大な流行に直面する可能性が伺える。この予想を裏付けるのが、ポートモレスビーおよびラエの性産業従事者のうち、2001年のコンドームの使用を継続しなかった人は85%、その他の性感染症における非継続使用者は36%という調査結果である。予防策を迅速に拡大することが急務である。

アジア太平洋地域を通じて、薬物注射が流行の拡大に深く関与している。マレーシア、ミャンマー、ネパール、タイの一部およびインドのマニプールでは、薬物注射を行う人の50%が、すでにHIVに感染している一方、インドネシアでは、薬物注射を行う人口の増加に伴い、HIV感染が急増している。10年前のインドネシアではほとんど知られていなかった薬物注射は、今や都市部の現象として拡大を続けている。当局は、現在、124,000196,000人のインドネシア人が薬物注射を行っていると推定している。

ジャカルタにあるインドネシア最大の薬物治療センターのデータは、この人口集団においてHIVの罹患率が急増していることを示している。国は、薬物注射を行う人口の約43,000人がすでにHIVに感染していると推定している。バングラデシュおよびベトナムでは、注射針の共有率が非常に高く、さらにベトナムでは、街の売春婦のうち、かなりの割合が薬物注射を行うことがわかっている。HIVの流行を食い止めるには、薬物注射を行う人々が被害抑制などの予防サービスを利用できる体制が必須である。

男性間のセックスは、アジア太平洋地域のどの国においても行われており、HIVの流行の主な原因となっている。男性とセックスする男性のHIV罹患率を調査した国では、2000年にカンボジアで14%と高く、性産業に従事するタイの男性と同等であった。同性愛嫌悪が優勢な社会規範では、男性とセックスする男性の多くは自分の性行動を隠すことになる。その多くが女性と結婚したり、女性とも性的な関係を持ったりする。

一方、タイでは、最近の調査により、主な感染経路が変わりつつあることが示唆されている。1990年には、HIVの主な感染経路は商業的なセックスだったが、現在は、新たなHIV感染の半数が、数年前に新たに感染した男性の妻やセックスパートナーとなっている。また、タイの若者の間で、安全でない性行動の増加も見られる。このことから、適応性の高いこうした感染方法がタイ全土に広がらないように、対策を拡大および強化する必要が強く感じられる。また、今後も十分な治療および看護が優先されるべきである。

政府と民間団体が協力し、さまざまな社会領域へと拡大した継続的な予防プログラムが功を奏し、カンボジアでの流行は安定しはじめている。

2003年のHIV/エイズの世界的概況

HIV/エイズの感染者数

2002年に新たにエイズに感染した人

2002年のエイズによる死亡者

アジアでHIV成人感染者が最も多い国であるカンボジアでは、ハイリスクな行動の減少に伴い、感染数が安定し始めている。最新のデータによると、都市部の妊娠中の女性におけるHIV罹患率は、1996年の3.2%から2002年の2.8%へとやや減少している。最新の調査データでは、性産業従事者の罹患率は1998年の42%から2002年の29%に減少しており、20歳未満の性産業従事者において減少率が最も顕著だった。カンボジアの性産業従事者の多さを考えると(約3/4が性産業に2年未満従事する)、この着実な減少は、性産業従事者に焦点を置いた予防努力が新たに性産業に就く人の間で効果を表した結果と言える。

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