心愛(みあ)ちゃんのマフラー

Hirata, Kunio (ヒラタ・クニオ)
医学博士 平田國夫
生命尊重センター副代
出典  カトリック名古屋信徒協スマホニュース 2020年3月号
許可を得て複製

平成31年1月に、千葉県野田市の小学4年生栗原心愛ちゃんが、 長期間に渡る両親からの激しい虐待の末に亡くなった事件は非常に衝撃的で、多くの方々が心を痛めていると思います。 普通なら遊園地やレストランに親子で出かけ、楽しい思い出作りをしている年齢です。それが心愛ちゃんの場合は、 直接の虐待を受けるだけでなく、夫による妻へのDVを見せられる面前DVにもさらされていたのです。 友達の家庭がどれ程うらやましく思えた事でしょう。

近所の方は大きな怒鳴り声と心愛ちゃんの泣き叫ぶ声を度々聞いています。 学校も児童相談所も母親すら心愛ちゃんを助けようとはしなかったのです。毎日が生き地獄のような生活を強いられ、 その挙句に虐待で亡くなっているのです。しかし心愛ちゃんは3年生の途中で野田市に転居してきていますが、 4年生になった時に自ら立候補して学級委員長を活発に務め、いつも満面の笑みで明るく友達と接していたのです。 父親への恐怖と服の下のあざを隠しながら。自分の苦しい状態で友達に迷惑を掛けたくないという暖かい思いやりが、 あふれていたのでしょう。

その象徴的な出来事が心愛ちゃんのマフラーの一件です。寒い日の通学途中で「すごく寒いね」 と話してきた友達を温めてあげようと、一生懸命に毛糸のマフラーを編んで「頑張って作ったから使ってね」 とやさしくプレゼントしているのです。ネットでこのマフラーの写真を見た時に、私は涙が止まりませんでした。

どなたでも自分自身の心身が順調な時には、周りの方の為に気を配り、手助けも行えると思います。 しかし心愛ちゃんのような凄まじい状態の中で、はるかに幸せな生活をしている他人の為に、 これほど純粋で美しい愛の行いをする事が出来るでしょうか。

愛という言葉はどこにでもあふれていますが、このマフラーは真実の本当の愛の行いとは何かを、 私達に教えているのではないでしょうか。今後私達にどんなにひどく辛い状態が来ても、 心愛ちゃんのマフラーを思い出せば、周囲への思いやりを忘れる事なく、乗り越えて行く事が出来ると思います。 心愛ちゃんの一生は短かったけれど、日本中の多くの方に本当の愛とは何かを教えてくれた、 とてもとても大きな仕事をされたのです。

いまは空の輝く星となった心愛ちゃんですが、私達の心の中でいつまでも愛の心となって生きているのだと思います。

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