「自殺予防」をスーダンから学ぼう

Editorial (オピニオン)
国連記者室
出典 ウィーン発 『コンフィデンシャル』
2011年9月9日掲載
許可を得て複製

今月10日は世界保健機関(WHO)の「世界自殺予防デー」に当たる。世界では1日平均、約3000人が自殺している。

自殺者数では人口大国の中国が最も多く10万人以上。人口10万人に対する自殺率ではリトアニア、ベラルーシ、 ロシアなどの旧ソ連/東欧諸国が久しく上位を占めてきた。旧ソ連・東欧の共産政権時代では自殺はタブー・テーマだった (「ミス・ハンガリーはなぜ自殺したか」2006年12月13日参照)。

しかし、ここにきて韓国の自殺率が急増しているという。 韓国の保健福祉部が5日公表した09年度自殺死亡者数は1万5431人、1日平均42.2人が自殺している。 自殺率は28・4人だ。

欧州でも2008年の経済危機以来、自殺件数が増える一方、交通事故死の件数が減少してきたという。ちなみに、 前者が増加する背景として、「上昇する失業率」が挙げられ、後者の減少理由としては、「 経済危機で車に乗る回数が減少したからだ」と受け取られている。

ところで、自殺のことを考えるとスーダンの友人が語ってくれた話を思い出す。南北に分断される前のスーダンの話だ。

スーダンでは自殺件数や自殺率に関する資料がないので、統計に基づいて話せないが、同国では「自殺は非常に希」 ということは間違いない。

スーダンの友人は記憶を辿りながら、「1960年代だったと思う。 30歳ぐらいの男性が飛び降り自殺をしたことがあった。自殺の理由は、男が家族に送金していたが、 そのお金が家族の元に届いていないことが分かり、失望とショックで自殺した」という。 これは友人が思い出すことができた唯一のスーダン人の自殺事件だったが、 40年前の自殺ニュースをかなり詳細に記憶していた。それだけ、自殺事件は珍しかったからだ。

友人はまた、「恋に破れた青年が自殺を考えながら森の中を歩いていた。すると、 森の近くに住む叔父が彼を見つけて話し掛けてきた。青年は自殺できなくなった。青年の周囲には叔父、 叔母など親戚が多数住んでいたからだ。そもそも独り住まいのスーダン人なんて、ほとんどいない。 親戚や家族と一緒に生活している。食事も1人で食べることはない。だから、独り寂しく悩み、そして自殺を準備する、 といった“離れ業”はわが国ではとても考えられない」とも語った(「スーダンと『自殺』の話」(07年6月5日参照) 。

友人の話を思い出しながら、自殺予防対策の一つは、やはり「家庭の絆」の強化だと痛感する。

その「家庭の絆」が崩壊すれば、堤防のない河のようだ。大雨に襲われれば、住居が流されてしまうように、 人生で危機に直面した時、人は容易に最悪の道を選択してしまうからだ。「自殺予防」の分野では、 スーダンから学ぶ点が少なくないはずだ。

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