「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」(中間報告書)についての意見

Editorial (オピニオン)
2004年2月20日
日本カトリック司教協議会
内閣府政策統括官(科学技術政策担当)付
ライフサイエンスグループ
「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」
(中間報告書)に関する御意見募集担当 殿
許可を得て複製

今回の中間報告書で扱われている問題の中心は、ヒトES細胞の再生医療への利用のための研究に必要とされる、

であると考えます。

カトリック教会は一貫して、人はその受精の瞬間から個体としての人間であると考えています(教理省「生命のはじまりに関する教書」1・1)。また、最近のヒトES細胞の研究の進展に対して、カトリック教会では、教皇庁立生命アカデミーを中心に、専門的な検討を加えた結果、上記2点に関して、いずれも認めることができないことを明らかにしました(教皇庁立生命アカデミー「ヒト胚性幹細胞の作製及び科学的・治療的用途に対する宣言」2000年8月25日)。なお同生命アカデミーの議論には、日本の青木清上智大学教授(当時)も会員として加わっています。「生殖を目的とする胚細胞クローン」と、「生殖以外の目的(たとえば、クローン技術を用いてヒトの組織や器官を作成する)で行われる体細胞クローン」の両方について、これを研究のために利用することが許されないことを、日本のカトリック司教団も表明しました(「いのちへのまなざし」83)。

さらにカトリック教会では、昨年7月、第57回国際連合総会での「人クローン個体産生禁止条約」の審議に向けて、治療目的クローンと生殖目的クローンの双方を禁止するコスタリカ案を支持するポジションペーパーを発表しています(教皇庁国務省「ヒト胚クローンについての教皇庁見解」2003年7月17日)。カトリック教会では、人クローンの研究がそれ自体としてもつ倫理的問題だけでなく、こうした研究が女性の身体や貧しい世界に及ぼす影響、ヒト胚の売買への進展についても憂慮しています。同時にカトリック教会では、ヒトES細胞の研究・利用の代案として、ヒト体性幹細胞の研究・利用を支持しています。

なお、「中間報告書」13頁22〜30行では、カトリック教会の立場として、教書の引用に加えて、ヒアリングの結果に基づく意見が紹介されていますが、このコメントはカトリックの立場を代表するものではありません。そこで、26〜30行目を、以下のように正式なカトリック教会の見解と差し替え、合わせて22〜25行の引用も補足・補正してくださるよう要望致します(下線部が補足・訂正箇所)。

「○カトリックでは、「人間の生命は、その存在の最初の瞬間から、すなわち接合子が形成された瞬間から、肉体と精神とからなる全体性を備えた一人の人間として、倫理的に無条件の尊重を要求する。人間は、受精の瞬間から人間として尊重され、扱われるべきである。そして、その同じ瞬間から人間としての権利、とりわけ無害な人間誰にでも備わっている不可侵の権利が認められなければならない(「生命のはじまりに関する教書」1987年)」としている。

また、ヒト胚の研究に関連して、2003年7月にあらためて次のような声明が公表されている。「初期のヒト胚は、子宮着床前であっても、人間のいのちをもつ、個体としての人間であることに変わりはなく、またそれは、自立的有機体として、十分に発達して人間の胎児になることに向けて成長していくものである。したがって、この胚を破壊することは重大な道徳違反である。なぜなら、それは罪のない人間存在を意図的に抹殺することだからである(教皇庁国務省「ヒト胚クローンについての教皇庁見解」2003年)」。」

中間報告書32〜35頁では、人クローン胚の作成・利用に関して、専門委員のあいだでも反対・賛成の意見が2つに分かれていることが明記されています。貴専門調査会におかれましては、ヒト胚の取扱いという重大な問題に関して、決して 最終的な結論を急がず、人の生命の尊厳に基づく、より慎重な検討を継続してくださることを、日本カトリック司教協議会として強く要望致します。

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