人クローン胚の作成・利用を容認する
総合科学技術会議 生命倫理専門調査会の方針決定に対する見解

Editorial (オピニオン)
2004年7月1日
カトリック中央協議会 広報部
許可を得て複製

2004年6月23日に開催された総合科学技術会議の第35回生命倫理専門調査会において、薬師寺泰蔵会長が提案した「人クローン胚の作成・利用に関する暫定的結論の提案」および「報告書作成に向けた人クローン胚の作成・利用に関する暫定方針(案)」に沿って、研究目的の人クローン胚の作成・利用を容認する方針が決定されました。私たちは、これに関して憂慮の念を禁じえません。

すでに、2003年末に発表された総合科学技術会議の生命倫理専門調査会「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」(中間報告書)について、日本カトリック司教協議会は2004年2月20日付で、受精卵の研究目的の作成と、ヒト胚性幹細胞研究をめざす人クローン胚作成に反対するパブリックコメントを発表しました。

人クローン胚の作成・利用は、たとえ人クローン個体産生が禁止され、その目的が研究・治療に限定されていても、大きな倫理的問題を含みます。なぜなら、人クローン胚の作成は、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)の作成に伴うヒト胚の滅失・破壊をめざし、人の道具化へと道を開くものだからです。

ヒト胚は受精(クローン胚の場合は、核移植)の瞬間から人間としての生命をそなえた個体であり、これを損なうことをめざす研究は、基礎研究であっても容認することはできません。

今回、ヒト胚の尊厳にかかわる重大な倫理的問題が、議論を尽くさない性急なしかたで決定されたことにも、私たちは深い憂慮を感じています。この決定は、将来のクローン研究への「扉を開く」だけでなく、日本における倫理的議論の相対主義化へと「道を開く」、きわめて危険な一歩と言わざるをえません。

また、第35回生命倫理専門調査会の席上で表明された、今回の採決で容認に反対した諸委員の意見は、採決の結果よりも重要な意味をもつと私たちは考えます。すなわち、「人クローン胚の研究が再生医療で使えることが十分明らかにされていない」(位田隆一委員)。「人間と動物が違うから、はじめから人で実験するというのはきわめて危険な思想であり、すでに動物実験で明らかにされたクローンのデフェクトは人間の場合にも予想できる」(勝木元也委員)。「ヒト胚が道具化される危険について倫理的議論が十分なされていない」(島薗進委員)。「基礎研究は臨床研究を内包しているので、基礎的研究に限るという限定が一人歩きする危険がある」(鷲田清一委員)。

今後、最終報告書のとりまとめに際しては、今回の採決にとらわれることなく、「生命倫理専門調査会」の本来の使命である、ヒト胚に関する倫理的議論が、あらためて深められることを切に要望します。

この記事の上へ